「免除・納付猶予」の状態が続いた場合の受給額は?
前出のデータからは、多くの人が免除や納付猶予の制度を利用している様子がうかがえます。こうした保険料免除・納付猶予の承認を受けた期間がある方は、老齢基礎年金の年金額を計算する際、保険料を全額納付した場合と比べて低額となります。
なかには、経済的に年金保険料の支払いが厳しい場合、「いつになったら払えるのか」が明確に分からないケースもあるはず。もし「免除」が長期化すると、将来の年金受給額はどうなるのでしょうか。
保険料「免除・納付猶予」の場合、年金受給額はどう変わる?
ここからは、日本年金機構の「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」を引用しながら確認していきます。
全額免除
平成21年4月分からの保険料の全額が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が支給されます。
4分の3免除
平成21年4月分からの保険料の4分の3が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の5/8(平成21年3月分までは1/2)が支給されます。
半額免除
平成21年4月分からの保険料の2分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の6/8(平成21年3月分までは2/3)が支給されます。
4分の1免除
平成21年4月分からの保険料の4分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の7/8(平成21年3月分までは5/6)が支給されます。
「納付猶予」の場合の年金額
納付猶予の期間は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にはカウントされますが、老齢基礎年金額へ反映はされません。
引用:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
続いて、「免除」を受け続けた場合の老齢基礎年金の受給額を試算してみましょう。なお、ここでは2020年度の国民年金の金額(満額:78万1,700円)をもとにしています。
※試算の仕方は、「満額×(保険料を納付した月数/480)+満額×免除率に応じた支給率×(免除した月数/480)」
※保険料を納付した月数+免除した月数は、120以上(10年間)であることが必須
●40年間全額免除した場合(国庫負担2分の1で算出した場合)
78万1700円×1/2×(480/480)=39万850円●20年間(半分の期間)全額免除した場合
78万1700円×(240/480)+78万1700×1/2×(240/480)=58万5375円●40年間半額免除した場合
78万1700円×6/8×(480/480)=58万6275円
ただし、こちらの試算は「あくまで2020年度の金額をもとにした概算」となります。あくまでも、目安のひとつとして捉えておきましょう。
さいごに
年金保険料が「未納」の状態のままだと、もしものときに障害者年金を受給できなかったり、財産を差し押さえされたりといったリスクが伴います。さらには、ご自身亡きあと、残された家族が遺族年金を受け取れないといった事態も起こります。
経済的な事情で年金保険料の支払いが難しい場合は、放置するのではなく「免除」「納付猶予」の制度を活用しましょう。
とはいえ、ずっと免除し続けていると、低年金での老後生活を送ることに。経済状況が改善したときは「追納」の制度を活用できると、将来の年金受給額を少しでも増やしておくことが可能です。
参考資料
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」
- 厚生労働省「令和元年度の国民年金の加入・保険料納付状況」
- 日本年金機構「国民年金保険料の法定免除制度」