2021年2月10日に行われた、株式会社クラレ2020年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社クラレ 代表取締役社長 川原仁 氏
株式会社クラレ 取締役・常務執行役員 経営企画室担当、CSR本部担当、管理部門担当 兼 経営企画室長 多賀敬治 氏

2020年度 実績

川原仁氏:本年1月1日から、代表取締役社長を務めさせていただいております川原仁でございます。よろしくお願い申し上げます。本日はお忙しいところ、当社の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。さっそく、2020年度通期の決算説明を始めさせていただきます。

続きを読む

2ページ目をご覧ください。2020年度の業績は、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な景気減速の影響を受け、多くの事業において需要が落ち、販売が減少するとともに、 生産調整を余儀なくされました。

スライドでお示ししているように、売上高は前年同期と比べて5.9パーセント減の5,418億円。営業利益は18.1パーセント減の443億円。経常利益は17.7パーセント減の397億円。当期純利益は26億円となり、前年同期比で当期純利益を除き減収減益となりました。

前年に続き、当期純利益は、米国における訴訟関連損失の影響を大きく受けました。為替および原燃料の前提はお示ししているとおりです。

2020年度の主要施策実績

3ページ目をご覧ください。このスライドでは、2020年度に実施した施策を説明いたします。「競争優位の追求」では、光学用ポバールフィルムで、倉敷事業所の広幅新ラインが年初より稼働を開始しております。水溶性ポバールフィルムでは、新たに米国工場の新ラインを稼働させました。また、欧州でも、需要の伸びに対応するため、ポーランドでの新工場建設を進めております。

カルゴン・カーボンは、活性炭の世界的な需要拡大に対応するため、米州と欧州でそれぞれ新ラインの増設を決定しました。クラフレックスでは、岡山工場のメルトブローン設備を稼働させました。この設備は当初マスク用ではなかったのですが、コロナ感染拡大に際し、マスクフィルターも生産できる設備に変更し、対応しています。

「新たな事業領域の拡大」では、「プランティック」は、米国樹脂工場の建設を完了し、下期から生産を開始いたしました。「グループ総合力強化」については、スライドにお示ししているとおりです。

中期経営計画『PROUD 2020』:概要

次に、4ページ目をご覧ください。こちらのスライドからは、2018年から2020年までの中期経営計画『PROUD 2020』の振り返りをご説明します。『PROUD 2020』では「競争優位の追求」「新たな事業領域の拡大」「グループ総合力強化」そして「環境への貢献」という、4つの主要な経営戦略を掲げておりました。

この経営戦略のもと、主な経営課題の実施状況をご説明します。「コア事業、新事業の成長を目指した継続的な設備投資」では、光学用ポバールフィルム、水溶性ポバールフィルム、「セントリグラス」などのコア事業において、設備投資を実施しました。

「イソプレン:タイプロジェクトの推進による事業拡大」は、コロナ影響で工場建設に要する作業員の手配や、設備導入に若干の遅れが生じたものの、2022年度の稼働に向け、準備を進めております。

「炭素材料事業:カルゴン・カーボン社買収の早期シナジー発現」では、2018年から2020年でのシナジー目標30億円に対し、20億円強の発現となりました。需要拡大に対応すべく、欧米のそれぞれの工場に新設備を導入することを決定し、さらなる拡大とシナジー発現に取り組んでまいります。

「グローバル経営基盤の構築」ですが、経営情報のタイムリーな把握のためにグローバルSAPシステムを導入し、中期期間中に海外子会社への導入を完了いたしました。

「環境への貢献」については、カルゴン・カーボンは、活性炭事業を通じて、水と大気の浄化により、自然環境の向上や資源の有効利用に貢献しています。バイオ由来の「プランティック」や「エバール」については、フードロスの削減により、生活の質と自然環境の向上に貢献しております。

中期経営計画『PROUD2020』振り返り

5ページ目をご覧ください。前中期計画の決定ベースの設備投資額は、タイプロジェクトを除いて2,500億円を計画していましたが、同期間における実績は、タイプロジェクトを含めて2,588億円となりました。

投資決定を行った主な設備投資は、イソプレン、タイ工場、水溶性ポバールフィルム欧米工場、光学用ポバールフィルム増設、最後にこの中期間中に買収したカルゴン・カーボンの欧米工場の新増設です。設備投資とは別に、M&Aとして、今お伝えしましたとおり、Calgon Carbonを買収いたしました。

中期経営計画『PROUD2020』振り返り (売上・利益)

次に6ページ目をご覧ください。こちらは『PROUD 2020』最終年度である2020年の計画と、全3ヶ年の実績をお示ししたものです。積極的な販売の拡大や、新規需要の創出を計画しましたが、2018年の米国「エバール」工場の火災事故による販売の減少や、米中貿易摩擦による世界的な景気の減速、2020年度に入ってからは新型コロナの影響が大きく、最終年度は当初の目標に対し売上、営業利益ともに未達となりました。

また、米国訴訟に関した損失の発生により、EPSにおいては、大幅な未達となりました。なお、2018年に買収が完了しましたカルゴン・カーボンの業績予想は、前中期計画には織り込んでいません。

同社による売上の影響は、灰色の部分で示しております。一方、営業利益につきましては、買収に伴うのれんの償却費が大きく、2018年、2019年はマイナスでありましたが、2020年度はほぼ「0」となっております。

中期経営計画『PROUD 2020』振り返り (営業利益分析)

7ページ目をご覧ください。こちらは、『PROUD 2020』の営業利益計画900億円と実績443億円との差、457億円を、主な要因ごとにまとめたものです。

前中期計画で、新たな需要の創出や、新興国市場での需要の創出や拡大を掲げましたが、ビニルアセテートセグメントをはじめ多くの事業において、想定どおりの販売とはいかず、240億円の減益要因となりました。新規開発の遅れにおいても、各事業における開発品の遅れや、新規事業の開発テーマの遅れにより、60億円の減益要因となりました。

コロナ影響による減益は、販売減と操業度低下によるものを合わせ、トータル250億円となります。原燃料・売値については、原燃料安による益を取り込んだものの、販売価格の対応や為替の影響もあり、トータルでプラス5億円の影響となりました。その他として、主に経費の減少によりプラス88億円となりました。

2021年度 重点経営課題

次に、8ページ目をご覧ください。前中期計画は、2020年までの3ヶ年計画であり、2021年から新たな中期経営計画を策定し、事業運営を行う予定としておりましたが、コロナウイルス感染拡大の影響により、経営に与える影響が不透明であることから、計画策定を1年遅らせることとし、次の中期経営計画は、2022年から2026年までの5ヶ年計画といたします。

従いまして、2021年度は、コロナ禍における安全操業と着実な業務の遂行、および新中期経営計画策定の推進に注力する中、以下の重点課題に取り組みます。まず、前中期経営計画で決定した設備投資であるイソプレンのタイプロジェクト、カルゴン・カーボンの米国新工場の新設備、水溶性ポバールフィルムのポーランド新工場を、確実に推進してまいります。

2点目ですが、活性炭事業は、カルゴン・カーボン事業部と炭素材料事業部の2事業部体制としておりましたが、2021年度より両事業を統合し、環境ソリューション事業部としました。統合による一体運営を通じて、さらなるシナジー発現に向けて取り組んでまいります。

次に、「エバール」新工場については、新型コロナの影響で、需要の見極めが必要となり、今後引き続き精査して検討してまいります。銅張積層板「ベクスターFCCL」については、本格的な5G普及に伴い需要の拡大が見込まれており、生産能力の拡大を検討いたします。また、全社グループのデジタルを統括する組織を新設し、全社的な業務プロセスの改革と、事業活動を後押しする仕組みを構築していきます。

2021年度 通期業績予想

9ページ目をご覧ください。こちらのスライドでは、2021年度の業績予想を説明いたします。前提条件としましては、為替は1ドル105円、1ユーロ125円としており、国産ナフサ価格はキロリットルあたり3万5,000円としています。

スライドに示しているとおり、2021年度は2020年比較で、売上高は282億円増の5,700億円、営業利益は107億円増の550億円、経常利益は103億円増の500億円、当期純利益は274億円増の300億円をそれぞれ見込んでおります。

配当金について

10ページ目をご覧ください。このスライドでは、配当の方針についてご説明いたします。2020年度の配当は、中間配当は1株当たり21円とさせていただきました。期末配当は19円とさせていただき、年間配当は1株当たり40円とさせていただく予定でございます。

2021年度の配当は、前中期計画の方針である「総還元性向35パーセント以上、1株当たり配当40円以上」を踏襲して、中間配当、期末配当ともに1株当たり20円とさせていただく予定としております。先ほどの通期予想を前提としますと、配当性向は45.9パーセントとなります。私からのご説明は以上です。ありがとうございました。

ビニルアセテートセグメントの概要

多賀敬治氏:続きまして、決算内容の詳細につきまして、私、多賀より説明申し上げます。12ページをご覧ください。ここからは、セグメント別に事業の状況を説明いたします。まず、ビニルアセテートセグメントです。ポバール樹脂は、世界的な需要の低迷により販売が減少し、それを受けて生産調整を実施したため、低調に推移しました。

光学用ポバールフィルムは、大型ディスプレイ向けを中心に需要が回復し、販売量が増加しました。水溶性ポバールフィルム、MonoSolは、個包装洗剤用途の販売が拡大しました。PVBフィルムは、建築、自動車向けともに需要低迷の影響を受けましたが、第3四半期以降に需要が徐々に回復しております。

「エバール」は、ガソリンタンク用途が低調となりましたが、食品包装用途は巣ごもり消費により販売量が増加しました。以上により、前年同期比で減収減益となりました。

イソプレンセグメントの概要

13ページ目をご覧ください。次に、イソプレンセグメントですが、同じく前年同期比で減収減益となりました。ファインケミカル、「セプトン」ともに、主に中国やアジアにおいて需要低迷の影響を受けましたが、第4四半期より需要は回復基調となりました。「ジェネスタ」は、電気・電子デバイス向けが好調に推移しました。

機能材料セグメントの概要

14ページ目をご覧ください。機能材料セグメントも、前年同期比減収減益となりました。メタクリルは、飛沫飛散防止用仕切板やディスプレイ向けの販売が増えましたが、事業全体では原料高と市況悪化の影響を受け、低調に推移しました。

メディカルは、歯科材料において感染蔓延に伴う歯科医の休診により、年度前半には主に欧米で苦戦し、販売が減少しました。活性炭事業は、カルゴン・カーボンと炭素材料ともに、コロナ禍においても生活を支える製品として、水処理用途を中心に堅調に推移しました。

また、すでに公表しておりますとおり、活性炭の需要拡大に対応するために、米国の工場に高機能活性炭の設備を、ベルギーの工場に工業用途の再生炭の設備を、導入することを決定いたしました。

繊維セグメントの概要

15ページ目をご覧ください。繊維セグメントですが、前年同期比減収、大幅減益となりました。「クラリーノ」は、アジアではシューズ用途、欧州ではラグジュアリー商品用途の需要減退の影響を受け、販売量が減少しました。

ビニロンは需要低迷が続き、セメント補強向け、ゴム資材向けともに販売量が減少しました。生活資材は「クラフレックス」でマスク用途の数量が増えた一方で、自動車用途やコスメティック用途が低迷し、販売量が減少しました。

セグメント別売上高・営業利益①

16ページ目は、各セグメントの2020年度の実績を前年同期と比較したものです。参考までにご覧ください。

営業利益増減分析(2020年実績 対 2019年実績)

17ページ目をご覧ください。このスライドでは、営業利益の増減要因を説明いたします。2020年度の営業利益は、2019年度対比で99億円減少しましたが、その要因は次のとおりとなります。まず、新たな設備による数量増として、20億円の増益要因とありますが、これは光学用ポバールフィルムや水溶性ポバールフィルムの設備増強によるものです。

次に、操業度は、コロナウイルスによる世界的な景気減速を受けて、ポバール樹脂、PVBフィルム、エラストマー、「クラリーノ」、ビニロンなどで販売量が減少し、生産調整を行ったことで、145億円の減益要因となりました。売値、銘柄構成および原燃料ですが、原燃料安が70億円の増益要因となったのに対し、売値、構成が50億円の減益要因となりました。

為替は、ドル、ユーロともに大きな動きがなく、影響はありませんでした。償却費の増加は、主に光学用ポバールフィルムや、水溶性ポバールフィルムの新ライン稼働に伴うものであり、43億円の減益要因になりました。経費その他は、物流費の減少に加えて、営業活動の制限に伴う経費の減少もあって、50億円の増益要因となりました。

2020年度 特別損失について

18ページ目をご覧ください。このスライドでは、2020年度の特別損失についてご説明します。訴訟関連損失は、米国訴訟に関する費用などで232億円となりました。なお、現時点で一部原告との訴訟が継続中であるため、詳細な説明については控えさせていただきます。事業整理損は、米国子会社における一部事業からの撤退に伴う費用です。

操業休止関連費用は、コロナ感染拡大に伴う需要低迷を受け、大幅な生産調整を実施したことによる費用となります。また、一部外部からのユーティリティ供給のトラブルにより、操業休止を余儀なくされたことによる費用を含みます。それに固定資産廃棄損を加えて、合計で335億円の特別損失を計上いたしました。

2020年度 キャッシュフロー

19ページ目をご覧ください。このスライドでは、2020年度のキャッシュフローについてご説明します。営業キャッシュフローはプラス799億円。投資キャッシュフローはマイナス833億円。その結果、フリーキャッシュフローは、マイナス34億円となりました。なお、M&Aに関わる支出はありませんでした。

1株当たりの当期純利益は7円48銭、1株当たりの純資産は1,450円32銭となりました。設備投資は、カルゴン・カーボンにおいて米国とベルギーでの設備投資を決定したことなどにより、決定ベースで前年と比べて100億円増の614億円となりました。

受入ベースでは、191億円減の783億円になりました。減価償却費は、前年比43億円増の625億円、研究開発費は6億円減の206億円となりました。

貸借対照表①(資産の部)

20ページ目をご覧ください。このスライドでは、貸借対照表の資産の部を、2019年12月末と比較してお示ししております。流動資産は665億円の増加となりました。これは棚卸資産の減少に対し、長期借入金の増加や社債の発行により、手元資金を厚くしたためです。

固定資産は60億円の減少となりました。これは、タイのイソプレン新プラントをはじめとする、建設仮勘定などの有形固定資産が146億円増加したのに対し、のれんを含む無形固定資産が189億円減少したことによるものです。

貸借対照表②(負債の部)

21ページ目をご覧ください。このスライドでは、貸借対照表の負債・純資産の部を示しております。流動負債は、1年内に償還予定の社債の増加や、米国訴訟において確定した和解金の増加があったのに対し、同じく米国訴訟に関する未払費用の減少や、コマーシャルペーパーの返済などにより、トータルでは66億円の減少となりました。

固定負債が901億円増加したのは、長期借入金や社債の増加によるものです。純資産は、利益剰余金の減少や、為替換算調整勘定の減少などにより、231億円の減少となりました。以上により、2020年度の自己資本比率は47.4パーセントとなり、2019年度から5.6パーセント減少しました。

2021年度 業績予想

22ページ目をご覧ください。このスライドでは、2021年度通期の業績予想について説明いたします。売上高および各利益につきましては、先ほど川原が申し上げたとおりです。1株当たりの当期純利益は、300億円をベースに、87円23銭となります。配当は年間40円を予定しております。

決定ベースでの設備投資は「エバール」新工場、「ベクスター」の増設などで、750億円を予定しております。受入ベースでは、イソプレン、タイ新プラント建設、水溶性ポバールフィルムの米国およびポーランドにおける新工場建設などにより、850億円を予定しています。減価償却費は30億円減の595億円、研究開発費は9億円増の215億円となります。

セグメント別売上高・営業利益②

23ページ目をご覧ください。このスライドは、2021年度のセグメント別の業績予想を、2020年度実績との対比で示しております。ご覧のとおり、主要なセグメントにおいて、増収増益を見込んでおります。

ビニルアセテートセグメントは、光学用ポバールフィルム、ポバール樹脂、PVBフィルム、水溶性ポバールフィルム、「エバール」と、すべての事業で数量増を見込んでいます。イソプレンセグメントも、ファインケミカル、エラストマーの需要回復を見込んでおり、「ジェネスタ」はさらに販売を増やしていく予定です。

機能材料セグメントでは、歯科材料と活性炭の販売増を見込んでおります。繊維セグメントは、主に「クラリーノ」とビニロンの需要回復を想定しております。トレーディングセグメントは、繊維関連事業での需要回復を見込んでおります。

営業利益増減分析(2021年計画 対 2020年実績)

24ページ目をご覧ください。このスライドでは、2020年度実績に対する2021年度計画の、営業利益の増減要因を説明いたします。なお、今回からセグメント別の増減要因を公表させていただいており、これに併せて要因項目を変更しております。

2021年度は営業利益107億円の増加を見込んでおり、その要因は次のとおりです。数量差は、先ほどのスライドでもお伝えしましたとおり、ほとんどの事業において需要回復による販売増を見込んでおり、これが135億円の増益要因となります。

売値・構成および原燃料・為替に関しましては、原燃料高の影響マイナス5億円に加え、主に銘柄構成により15億円の減益を見込んでおります。その他は、減価償却費が30億円減少するのに対し、物流費や研究開発費などの増加により、トータルでは9億円の減益要因となります。

【ご参考】セグメント別 営業利益増減分析

25ページ目をご覧ください。このスライドは、セグメントごとの営業利益の増減要因になります。ご参考にしてください。

【ご参考】2021年度 業績予想

26ページ目をご覧ください。ご参考として、2021年度の上下別業績予想を、2020年度実績との対比でお示ししております。

【ご参考】2021年度 セグメント別予想

27ページ以降には、2021年度のセグメント別業績予想を示しております。ご参考にしてください。

以上で説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

記事提供: