長期化するコロナ禍。
株式会社東京商工リサーチの調査によると、2020年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は93社。前年(2019年)の35社の2.6倍も増えていることが分かっています。
さらにいうとこの数は、2009年リーマン・ショック直後の191社に次ぐ高水準とのこと(※)。
みなさんの中でも「勤務先で早期退職を募る動きが出ていて、他人事ではない」と感じる方もいらっしゃることでしょう。
ビジネスパーソンとして充実したポジションにある時期であるとはいえ、「退職金が割増になるということであれば、検討の余地があるかもしれない」と考える方もいるかもしれません。
そこで今回は、民間企業の会社員の退職金について、「定年退職」と「早期優遇退職」でどう変わってくるのかについて、深掘りしていきます。
「定年退職」vs「早期リタイヤ」の退職金事情
さいしょに「早期優遇退職」について触れておきましょう。
早期優遇退職とは、企業が人員の削減のために従業員が有利な条件(例えば退職金の割増支給など)を示すことによって従業員が自らの意思でこれに応じ、労働契約の解除をすることです。
ではここで、民間会社員の退職金の平均額が「定年退職」と「早期優遇退職」でどのくらい違うのか、見ていきたいと思います。
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況(一時金・年金)の支給実態」より、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に対し支給した、または支給が確定した平均退職給付額で、最終学歴別の退職者1人あたりの額は以下の通りです。
大学・大学院卒
定年:1983万円
早期優遇:2326万円
高校卒(管理・事務・技術職)
定年:1618万円
早期優遇:2094万円
高校卒(現業職)
定年:1159万円
早期優遇:1459万円
いずれの場合も、定年退職より早期優遇退職の方が受け取る退職金の平均給付額が多いことがわかります。
高校卒(現業職)以外は「早期優遇」を選んだ場合、2000万円以上の退職金が支給されるようですね。
「定年」と「早期優遇」を比較した場合の差を、学歴別に整理すると以下のようになります。
- 大学・大学院卒…343万円
- 高校卒(管理・事務・技術職)…476万円
では、同じ「勤続20年以上かつ45歳以上の退職者」で、会社都合や自己都合だったケースは、次のような給付額になります。
大学・大学院卒
会社都合:2156万円
自己都合:1519万円
高校卒(管理・事務・技術職)
会社都合:1969万円
自己都合:1079万円
高校卒(現業職)
会社都合:1118万円
自己都合:686万円
当然ではありますが、自己都合より会社都合の方が多くの退職金を支給されています。
先述の「早期優遇」と「会社都合」を比べると、いずれの場合も早期優遇が高く、大学・大学院卒では170万円、高校卒(管理。事務・技術職)では125万円、高校卒(現業職)では351万円多く支給されています。
「早期優遇退職制度」で退職金の金額が300万円以上増えるのであれば、アーリーリタイヤも悪くはないかな、と考える人もいるかもしれませんね。