ここ数十年、平均給与の伸びは横ばいになっているにもかかわらず、大学の学費は上昇の一途をたどっています。大学進学者の約半数が奨学金を利用している状況で、卒業後の返済に苦労している人も多いことでしょう。そこで、奨学金の返済が難しくなってきた場合の3つの対処方法と一番やってはいけないことをお伝えします。
奨学金の借入額は平均いくら?
労働者福祉中央協議会が行った「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)によると、奨学金の借入総額は平均324.3万円、借入総額が500万円以上という人は12.4%いました。また、毎月の返済額の平均は1万6,880円、返済期間の平均は14.7年でした。
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「奨学金の借入総額」出典:労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)
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「奨学金の毎月の返済総額」出典:労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)
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「返済期間」出典:労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)
同調査のその他の結果もご紹介しておきましょう。
「奨学金の返済を延滞したことがあるか」を聞いたところ、15.7%の人が「ある・あった」と回答しています。延滞した理由の1位は「単に返済を忘れていた」53.9%、2位「収入が少ない」42.5%、3位「奨学金以外の借入金の返済がある」17.8%となっています。
また、返済の負担感を正規労働者と非正規労働者に分けて聞いたところ、正規労働者では約4割が「苦しい」と回答しているのに対して、非正規労働者では6割弱が「苦しい」と回答しています。
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「返済の負担感」出典:労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)より一部筆者修正
実際に延滞という状況になっている人は1.5割とまだ少ないものの、返済が苦しいと感じている人は多いことがわかります。こうした人たちが奨学金の延滞へと向かわないために、回避方法を次にお伝えします。
返済が厳しくなったらどうするか
1、2、3と順番に状況が軽い→重いとなっていますので、最初に返済が厳しいと感じたら、まずは1番から試してみましょう。
1.減額返還
減額返還とは、毎月の返還額を減額して返還(返済)することです。たとえば、毎月1万5,000円を返還していたのを、毎月1万円にするという方法です。この場合、減額した分、返済期間は延びます。しかし、月々の負担が減ることで返還を続けていくことができるのであれば、この方法は有効です。減額返還をするには、減額返還を開始する月の2カ月前までに申請しなければなりません。1回の申請における適用期間は12カ月間、最長15年(180カ月)まで延長することができます。
2017年度以降の第一種奨学金採用者は、所得に応じて返還額が決まる「所得連動返還型奨学金制度」が利用できます。これは、返還者の所得に応じて、毎月の返還額が決まる仕組みです。この場合、返還額に応じて返還期間も変わる(少なければ長くなる)ため、返還総額は変わりません。この「所得連動返還型奨学金制度」を利用した場合、減額返還は申請できません。
2.返還期限猶予
返還期限猶予とは、一定期間返還期限を延長できる制度です。申請して承認された期間は返還の必要がなくなります。返還が再開されると、猶予された期間に応じて返還終了年月が延期されます。適用期間は通算10年(120カ月)が限度です(※)。
※事由や利用している制度によって、上限がないもの、または延長できる場合があります。
考え方としては、少し返済額を減らせば奨学金の返済を続けていける場合は「減額返還」を申請し、返済額を減らすだけでは無理な場合(無収入になってしまったなど)は、「返還期限猶予」を申請するとよいでしょう。ただし、どちらの場合も、返済額の総額が変わるわけではありません。将来、安定的な収入が得られることを前提とした、一時しのぎ的な方法であると思っておいたほうがよいでしょう。
3.自己破産
いきなり「自己破産」と聞くと驚いてしまうと思いますが、1、2の制度を利用しても根本的な解決とならず、将来的にも返済の目途が立たない場合は、自己破産することで、奨学金の返済義務はなくなります。言ってみれば、最悪の事態というわけですが、日本学生支援機構によると奨学金返還者(約410万人)のうち2016年度に新たに自己破産となった数は2,009件となっています。割合としては0.05%ほどなので、滅多にないと言ってもいいのかもしれませんが、それでも2,000人はいるわけです。
ただ、自己破産に行くまでに、日本学生支援機構による個別の返還指導や制度の案内などが行われているようなので、まずは相談をしてみましょう。
一番やってはいけないこと
最後に、一番やってはいけないことをお伝えしておきます。それは次の状況の時に、「連帯保証人に親や親族を立てる」ことです。次の状況とは、①奨学金を多く借りている、②親や親族が経済的な余裕がない、③返還が困難な状況が想定できる、の3つ中で2つ以上当てはまっている状況です。
奨学金を借りる時には必ず保証人が必要です。これは機関保証でも構いません。機関保証とは、保証料を支払うことで保証人の代わりをしてくれる機関です。仮に自己破産をして、本人の奨学金の返済が免除されたとしても、債務はなくならず、連帯保証人や保証人に移ります。親が連帯保証人となっていた場合、元々奨学金を借りるということは経済的に余裕がないケースであるため、その親までが自己破産をしてしまうという自己破産の連鎖が起こることがあります。機関保証を利用すれば、こうした最悪な事態を避けることができます。
もちろん、保証人となる親や親戚の経済力が盤石である、返済に困ることはないという自信があるなら、親や親戚を保証人にしてもいいと思います。そうすることで決して安くはない保証料を機関保証に支払う必要がなくなります。奨学金の借入者の状況によってケースバイケースですが、少しでも不安があるなら機関保証を検討してみましょう。
参考資料
- 労働者福祉中央協議会(中央労福協)「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」並びに「奨学金に関する一斉相談」の結果(概要版)
- 返還が難しいとき – JASSO
- 奨学金事業への理解を深めていただくために– JASSO〔報道等を見て関心を持たれた皆様に向けたデータ・ファクト集〕
- 奨学金返還者の自己破産に関する報道について – JASSO
石倉 博子
