半導体受託製造(ファンドリー)世界最大手の台湾TSMCは、2021年の年間設備投資として過去最高の250億~280億ドルを計画している。建屋建設費用などが多く計上されているため、当初想定よりも金額が膨らむ見通しだ。

予想を大きく超過する金額

 20年の設備投資実績は172億ドル。これに対して、21年は5nmの追加投資や最先端の3nm(N3)立ち上げなどにより、200億ドルを超える可能性があると指摘されていた。しかし、同社が20年第4四半期決算発表時に公表した21年通年の投資計画はこれを大きく上回るものとなった。

 同社によれば、22年以降の顧客からの強い需要見通しに応えるためとしている。具体的には、投資金額のうち約80%を7/5/3nmの先端プロセス、約10%を先端パッケージおよびマスク製造、約10%をスペシャリティープロセス(RFやアナログ、高耐圧などの特殊プロセス)に充てる方針。

 なお、同社は20年11月に台湾証券取引所のMOPS(Market Observation Post System)に総額4342億台湾ドルの大型発注に関する資料をファイリングしている。発注金額のうち、建屋や不動産投資2296億台湾ドルが含まれており、21年は建屋に関する投資案件が多く含まれていることを示唆している。

 具体的には、N3の主力工場となる台南の「Fab18」のフェーズ1~3が今期含まれているものとみられる。N3に関しては従来計画どおり、21年からリスク生産を開始し、22年後半から本格量産を開始する。

21年成長率は10%台半ばの想定

 同社は21年の業績および市場見通しについて、非メモリー市場を前年比8%増、ファンドリー市場を同10%増と予想。同社はファンドリー市場全体を上回る成長率を達成できるとしており、前年比10%台半ばのプラス成長(米ドルベース)を見込む。長期的な成長予想としては、20~25年の売上高CAGRは10~15%(従来は5~10%)となる見込みで、HPCが成長ドライバーとして、より重要性を増していくとみている。
 スマートフォン、HPC(High Performance Computing)、IoT、自動車の主要4分野がすべて成長を牽引するとしている。なお、スマホ市場は21年に台数ベースで10%成長を予測。5Gスマホの比率は20年の18%から21年は35%以上になると予想する。

 21年1~3月期売上高見通しは、127億~130億ドルを予想しており、ミッドポイントは前四半期比で1%増となる見通し。HPC需要や自動車向けの回復に加え、スマホ向けも通常の季節性よりも減収幅が軽微で、これが下支えの要因になるという。

 自動車向け需要が回復するなかで、供給不足が顕在化しているが、これについて同社では供給不足解消に向けて顧客と共同で取り組んでいるとコメント。ただ、解消のめどが立つ具体的なスケジュールについては言及がなかった。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳