「確定拠出年金(401k)」は節税とマッチングが魅力

企業年金は「ペンション」といわれるものと「401k」 と呼ばれる「確定拠出年金」があります。日本の「iDeCo」と同様のものです。ペンションは各企業が独自にあらかじめ設定した条件で退職後、生涯支給される制度です。過去世代は大手企業に長年勤めれば、ソーシャルセキュリティー年金と企業からのペンションで十分余裕のある老後を過ごせたといわれています。

しかし今は、多くの企業がこのようなペンション制度を廃止しています。1980年以降は401k(403b、457は非営利団体や州自治体職員に向けたもの)が主流となりました。401kは従業員の任意です。雇用主が提供する投資プランから選び、任意の積立額を特定の口座に税引前の給料から天引きするというものです。積立額は税法の上限があります。2020年の場合は年$19,500(約200万円)、50歳以上は年$26,000(約270万円)です。多くの企業が従業員の積立額に独自の条件で「マッチ」する制度を取り入れています(マッチングのない会社もあります。)

例えば、「給料の6%まで自己積立額の50%マッチする」という条件であれば、仮に年収$60,000とすると、$60,000x6%x50%=最大年$1,800まではマッチしてくれるということになります。401kを利用しなければ一銭ももらえません。もったいないですね。

401kのもう一つの魅力は節税です。税引前の給料から天引されるので課税所得が下がり所得税も下がります。場合によっては所得税率も下がるかもしれません。退職後引き出した時にその時の所得税率で納税することになります。一般的に退職後の所得は現役時より低くなるので、所得税率も低く節税できるという仮定です。また退職後、フロリダ州などの所得税フリーの州に移住すればさらに節税できます。

富裕層は投資、運用は自己責任

3つ目は個人的な投資や貯蓄です。特に富裕層は専門家を雇い積極的に投資します。中流世帯でも投資で老後資金を増やしている家庭も少なくありません。IRAやRoth IRAという401kのような節税効果のある個人老後積立口座を利用している人も多いようです。IRAとRoth IRAの積立額は合わせて年$6,000(約60万円)(50歳以上は$7,000)という税法上の制限があります。401kもIRAも運用の責任は自分です。同じ投資額でも運用の選択で差が出てしまうのは仕方がないことです。

3年に一度、連邦準備制度理事会が行う消費者財政調査の2020年の結果報告によると、アメリカ人の401kやIRSなどの老後資金の平均額は$255,000(約2,626万円)中央値は$65,000(約670万円) ということです(※4)

超富裕層を除く一般的なアメリカ人は公的年金を主な収入源としていますが、401kやIRAのような老後資金がどれだけあるかによって老後の生活の質に差が出るようです。

日本でも老後2,000万円必要といわれ老後に不安を感じます。しかし将来を案じるより、今できることを考えたほうがよさそうです。日本もiDeCoのような老後資金を自分で形成していく制度が普及し始めています。今できることは、少しでも若いうちから少額でもコツコツ積み立てていくことではないでしょうか。時間は強い味方となってくれるはずです。

参考資料

(※1)GALLUP “Snapshot: Average American Predicts Retirement Age of 66”
(※2)Social Security “Retired worker beneficiaries in current payment status at the end of
June 2020, distributed by age and sex”

(※3)Social Security “Workers With Maximum-Taxable Earnings - Worker with steady earnings at the maximum level since age 22-”
(※4)Federal Reserve BULLETIN“Changes in U.S. Family Finances from 2016 to 2019: Evidence from the Survey of Consumer FinancesChanges in U.S.”

美紀 ブライト