シーテックにシャープは今年も出展、東芝は今年も不参加
2016年10月4日から7日まで、幕張メッセ(千葉県)で国内最大のエレクトロニクスショーである「CEATEC」(以下、シーテック)が開催中です。
エレクトロニクス業界には、現在「経営再建中」と表現される企業が2社ありますが、このうちの1社である東芝(6502)は、残念ながら昨年に続き今年も参加を見送りました。一方、もう1社のシャープ(6753)は、ホンハイが再建スポンサーとなることが決定していなかった昨年も、そして東証1部から2部へ指定替えとなった今年も参加しています。
今後、どちらが先に「経営再建中」というレッテルを外されるのか、非常に興味が持たれるところです。
独自製品に絞り込まれていたシャープの展示ブース
さて、そのシャープの展示ブースでは、1)AI(人工知能技術)とIoT を融合させたスマート家電関連、2)昨年のシーテックで衝撃的なデビューを行ったロボット電話「ロボホン」、3)IGZO技術を活用した曲面型FFD(フリーフォームディスプレイ)や 8Kの高精細映像モニターなどディスプレイ関連製品、の3つのコーナーが設けられていました。
期待されていた有機ELパネル関連の展示はなかったものの、いずれのコーナーでも話題を呼んでいる、あるいは独自性の高い技術を採用した製品に絞り込んだ展示となっていたのが印象的でした。
ちなみに、ブースの一角には液晶ビューカムなど「目の付けどころがシャープでしょ」という特徴が評価され、大ヒットした商品も展示されており、“他社がまねしたくなるようなユニークな商品を作る”というシャープの原点に回帰して再建を目指す意気込みも感じられました。
成長したロボホンに再会
個人的に最も興味がそそられたのはロボホンの展示でした。昨年のシーテックでは参考出品という位置づけでしたが、その後、2016年5月から発売が開始されています。今年の展示では、さらにビジネスとして飛躍させるため、サービスロボットとして法人向けに新たな用途提案を行うことに力点が置かれていました。
具体的には、オープンイノベーションの発想で様々なパートナー企業と連携したアプリが開発されてきている中、「レストラン」、「観光地」、「遠隔見守り」の3つの利用シーン別に展示が行われていました。
たとえば、お寿司屋さんで「今日のおススメは?」とロボホンに尋ねると「アワビのいいのがありますよ」などと教えてもらうこともできます。会話のシナリオも、パソコンが使える人であれば簡単にカスタマイズが可能であるため、様々な業種や用途での活用が期待できそうです。
また、遠隔地からロボホンに搭載されたカメラを使った写真撮影も可能で、離れた場所で暮らす高齢者の健康状態の確認などにも活用可能です。もちろん、こうしたことはロボホンでなくてもできますが、「写真を撮らせて」というロボホンの声や仕草が非常に可愛らしいので、あたかも孫からお願いされたように、お年寄りと円滑なコミュニケーションができるのではないでしょうか。
SIMフリーを活かしたスピード感ある展開が重要
このように、ロボホンは昨年に比べると大きく進化していました。しかし、気になるのは、先行しているソフトバンクグループ(9984)の「Pepper」以外にも、日立製作所(6501)の「EMIEW」、トヨタ(7203)の「KIROBO mini」など、AIを活用したサービスロボットの参入企業が続々と現れていることです。
まだまだ揺籃期ではあるとはいえ、競争に打ち勝つためには、“この用途では絶対に負けない”という差別化ポイントを早期に確立していくことがシャープには求められていると感じます。
そこで注目されるのが、現時点ではロボホンは特定のキャリアとは提携せず、SIMフリー端末としてどの回線業者とも連携できる体制になっていることです。そうすることで、より早く、より多くの顧客と接点を確立することが可能になると見られるため、極めて妥当な戦略であると判断できます。
あとは、そこから吸い上げられた多様な顧客ニーズを、製品・サービスに反映させていけるかが成功のカギとなるのではないでしょうか。
スピード感を持ってそれを実現し、ロボホンが再び「目の付けどころがシャープでしょ」と言われるヒット製品となる日が訪れることに期待したいと思います。
和泉 美治