2020年12月21日に行われた、住友金属鉱山株式会社の事業説明会「住友金属鉱山 IR-Day 2020」の内容を書き起こしでお伝えします。各パートの記事は、以下のリンクからご覧いただけます。
・開会のご挨拶
・製錬事業パート
・電池材料事業パート
・機能性材料事業パート
・閉会のご挨拶
スピーカー:住友金属鉱山株式会社 取締役専務執行役員 資源事業本部長 朝日弘 氏
⻑期ビジョン実現に向けて
朝日弘氏(以下、朝日):資源事業本部長の朝日です。まずは、当社の資源事業の概要からご説明します。
こちらは長期ビジョンです。資源事業本部は世界の非鉄リーダーを目指し、銅では権益生産量年間30万トン、金では優良権益獲得による鉱山オペレーターシップの獲得を目指しています。特に質的な側面になるのですが、海外オペレーターの鉱山を確保することに重点をおき、技術基盤の確立を重視しています。
本年策定の「2030年のありたい姿」では、長期ビジョンの実現に向けた生産面での成長性の確保に関して、具体的な目標を設定しています。加えて、鉱山業による環境破壊や文化的遺産の破壊などから高まる社会的ライセンスに対する要求の高まりを受けて、SDGs側面を重視しています。気候変動、環境対応、従業員、先住民、さまざまなステークホルダーとの関係に関する目標も設定しています。
SMM 権益保有鉱山と生産量
次に、資源事業本部の権益保有鉱山と生産量をお示ししています。金鉱山については、国内においては鹿児島県の菱刈鉱山が収益の柱であるとともに、技術者育成の場として機能しています。また、カナダ・オンタリオのコテ金鉱山開発については、本年7月の建設を決定し、工事を本格化させています。
銅鉱山については、世界トップクラスの米国・モレンシー銅鉱山、ペルー・セロベルデ銅鉱山に加えて、チリ・シエラゴルダ銅鉱山とカンデラリア銅鉱山、豪州のノースパークス銅鉱山において操業を進めています。生産量については、概ね年間25万トンレベルの水準です。さらに、大型案件になりますが、チリにおいてQB2鉱山建設が進行中です。
事業戦略①
次に、事業戦略です。長期ビジョンの銅権益生産量30万トンを確保し、これを維持することは容易な目標ではありません。年産30万トンの規模ということは、グラフにお示ししていますが、世界の産銅業界でトップ10に準ずる「準メジャークラス」と言っていい生産規模となります。
当社は、2016年にモレンシー銅鉱山の権益を追加しており、その後、概ね25万トン前後で生産を上げてきていますが、今後のQB2プロジェクトの生産開始以降は、さらなる生産量の拡大を期待できると考えています。
ただし、資源は掘ると減耗していきますので、長期的に銅の生産量を維持しながら、企業価値の向上を実現するためには、資産の入れ替えを含むダイナミックな事業展開が必須であると考えています。
事業戦略②
次に、2019年の世界の銅鉱山のトップ30を示しています。当社の関係の銅鉱山でもモレンシー銅鉱山とセロベルデ銅鉱山は世界のトップ5に入ります。それ以外はこの下に入るのですが、建設中のQB2については、拡張により世界トップクラスの鉱山となるポテンシャルがあると考えています。
当社の技術スタッフも現地派遣を通じて、世界規模の操業を学び続けています。30万トンを達成するためには、操業鉱山の周辺探鉱、拡張投資などへの挑戦に加えて、新しい資産の獲得が大きな課題となります。
探鉱
次は探鉱です。探鉱は、容易に成功へと結びつくことはないのですが、鉱山会社においては成長のために必須の活動であると考えていますので、続けていく必要があります。
当社では、銅や金を対象として、初期ステージの探鉱から展開を続ける方針です。新型コロナウイルス感染症の拡大により各拠点の探鉱活動は停止しました。
しかし、北米、豪州において限られたプロジェクトではありますが、試錐、ドリリングを含む探鉱活動を実施しているところです。機動的にプロジェクトを形成しながら、スピード感をもって、成果が上がる探鉱活動を展開していきたいと考えています。
事業開発
次に、事業開発、権益の獲得です。銅、金、ニッケルの新たな海外権益の獲得を目指していきます。成長戦略の実現のためには、初期探鉱から多様なステージにある案件を積み重ねていくパイプラインの形成が必要です。
現状でも、世界規模のQB2プロジェクトが進行中であり、QB3の検討が進む中ですが、技術的な拠点が必要な銅、金の案件については、自社操業を目指した案件の獲得に向けて、努力を継続していきます。ニッケルについては、製錬技術を担う金属事業本部と連携して、案件発掘や評価を行うことにしています。
事業環境
次は事業環境です。金属価格ですが、銅価格は中国経済の回復などにより、上昇基調で推移しています。また、金価格についても、米中対立、米国の大統領選、新型コロナウイルス感染症の拡大による不安の高まりなど、さまざまな要因があり、中央銀行の金融緩和などを背景として上昇基調で推移しています。銅、金ともに極めて良好な状況が続いているという認識です。
一方で、南米の政情の不安定化など、事業環境の変化が確認されています。当社としても、事態の進展に注目しているところです。
チリでは昨年以降、政治への不満が高まり暴動が発生しています。10月25日に憲法改正に関する国民投票が行われ、賛成多数で改正に向かっています。その動向については、私ども資源関係者も注目せざるを得ない状況です。
ペルーについても同様であり、11月10日に国会で大統領が罷免され、一時的に政治の混乱が発生しました。豪州においては、中国との関係悪化が報道されており、豪州からの輸出については影響を受けている状況です。
資源国の動向、政治、環境など、さまざまな状況の変化があります。そのようなものについては、アンテナを最大限に高くして、状況の理解に努めていきたいと考えています。
菱刈鉱山
次は操業鉱山の現状について報告します。まず、菱刈鉱山の状況です。菱刈鉱山は、本年度も安定操業を続けており、資源セグメントの利益に着実に貢献しています。上期の産金量の実績は3.1トンで、年間では計画どおりの6トンの金の生産を行う見込みです。
菱刈鉱山は、より下部、深部に生産が移行しつつあります。そのため、下部鉱体開発に必要な温泉水の水位を引き下げるために新しい「抜湯室」の建設を続けています。来年には抜湯を開始する見込みです。
こちらは1985年の出鉱開始以来になりますが、約35年を経て、生産が深部化に向かっています。より深い部分、あるいは周辺部分の探鉱活動について、改めて取り組みを強化していく方針です。
また、最近の動きですが、AIの利用、あるいは重機の自動化などについて「DX化」と称して生産性を高めるため努力を行います。デジタル化に向けた坑内通信インフラの整備に着手したところです。
モレンシー銅鉱山
次に、銅鉱山です。まず、フリーポート社との1986年以来のジョイントベンチャー、米国アリゾナ州モレンシー銅鉱山では、約7割を占めるリーチングの操業が好調です。
モレンシー銅鉱山のリーチング能力は、銅生産で34万トンと、世界最大規模になります。2020年には、昨年度並みの銅45万トンを生産する見込みで、同時にコスト改善も見込んでいます。
銅生産量については、2016年のピークの約50万トンから緩やかな減少傾向にありますが、堅調な生産が続くと考えています。
セロベルデ銅鉱山
同じく、フリーポートとのジョイントベンチャーであるペルー・セロベルデ銅鉱山です。こちらは世界最大級の選鉱処理能力を誇っています。「39万トン/日」という鉱石処理能力は世界最大であると考えています。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、ぺルーの国家非常事態宣言がこの春宣言され、3月以降、約2ヶ月間、実質的に操業が停止したのですが、この間、感染対策を進めまして、操業再開後の立ち上げは極めて順調であると認識しています。通年での銅生産量は、2ヶ月に及ぶ操業の停止がありましたので、前年比で約9万トン減産の、約37万トンを見込んでいます。
シエラゴルダ銅鉱山
次は、チリ・シエラゴルダ銅鉱山の状況です。ポーランドのKGHM社とのジョイントベンチャーで、当社は権益31.5パーセントを保有しており、13.5パーセントを保有する住友商事とともに共同で操業に当たっています。
2015年、2016年と、大規模な減損損失を計上するなど、立上げに苦労してきたことは事実ですが、その後の操業改善、それからデボトルネッキングの実現により、生産は飛躍的に改善しています。2020年の銅生産量は、昨年度と比べて33パーセント増加の14万5,000トンを見込んでいます。
シエラゴルダ銅鉱山の今後の可能性
シエラゴルダ銅鉱山の今後の可能性についてです。シエラゴルダ銅鉱山では、デボトルネッキングを進め、今年中に鉱石の処理量を11万トン/日から13万トン/日の体制に拡大する見通しです。当社の技術者も操業面で大きく貢献しています。チリのトップ10に相当するレベルの生産規模に到達しつつあると考えています。
2020年の新型コロナウイルス感染症対応では、鉱山側のリスク管理が徹底されました。大胆なコストカットを行い、安定操業が続いています。
一方、10月8日に公表しましたが、当社保有の権益持分については売却を含めた戦略的選択肢の検討を開始しています。
カンデラリア銅鉱山(オホスデルサラド含む)
カンデラリア銅鉱山です。カナダ・ルンディン社とのJV(ジョイントベンチャー)であるチリ、カンデラリア銅鉱山ですが、新型コロナウイルス感染症の影響はほぼありませんでした。しかし、組合との契約交渉が今年は難航してストライキも発生しました。10月20日に操業停止して、11月24日に生産を再開していますが、非常に厳しい交渉が行われました。現在はフル操業へのランプアップ中です。
カンデラリア銅鉱山の生産銅量については、2013年のピークから減少傾向にあり、今後は対策を講じて、生産量を順次拡大する計画だったのですが、今回のストライキの影響で、2020年の生産量は足踏みとなっています。
ケブラダ・ブランカ(QB)銅鉱山 概要
続きまして、重要プロジェクトの状況です。大型銅鉱山開発プロジェクトの「ケブラダ・ブランカⅡ・プロジェクト」です。こちらはチリの北部に位置し、標高は4,400メーターという高地にあります。権益の比率は、Teck社が60パーセント、当社が25パーセント、住友商事が5パーセントという体制です。
マインライフについては28年、可採銅量が約620万トンですが、さらなるアップサイドの期待があります。建設費は約52億米ドルということで、工事が進捗中です。年間の生産数量は、全体で、約24万トン/年を期待しています。
QB2 プロジェクトの特徴
本件は非常に規模の大きなプロジェクトでして、期待も高くなっています。特徴を申し上げると、まず1点目としては、「資源量の大きさと高い拡張ポテンシャル」です。QB2の計画を進めていく中で、下部に豊富な資源量が確認されています。そのため、さらなる拡張計画の検討も並行して進んでいます。
2点目は「剥土比の低さ」です。この銅鉱山については上部の酸化鉱が採掘済のため剥土が少なく、低コストで生産が可能であるという利点があります。
3点目は「平坦な地形と尾鉱ダム建設の容易さ」ということで、極めて高地に存在するのですが、敷地については非常に緩やかな地域で広大なために拡張が非常にしやすい環境にあります。
4点目は「海水の利用」です。海水の利用になりますので、チリでは非常に乏しい資源である水の利用について制約がないということになります。
5点目です。これは非常に重要なことなのですが「パートナーTeck社と当社との信頼関係」です。アラスカの金鉱山での共同事業などを進めた約50年以上にわたるパートナーシップがあります。建設初期から当社の関連の技術者を派遣し、プロジェクトに積極的に関与しています。
QB2 プロジェクトの進捗
進捗状況です。プロジェクトの参入以降、速やかに建設工事を開始したのですが、チリにおける新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2020年の3月には建設工事の一時中断を決断しました。その後、感染症対策を講じながら再動員を慎重に進めています。現時点では、8,200名という規模の人員が建設にあたっています。さらなる人員の増加、増強を図りながら、工事を加速させていきます。
2020年末には、全体の進捗率で40パーセントの達成を目指しています。新型コロナウイルス感染症による遅延は概ね5ヶ月から6ヶ月になっており、この結果、生産開始は2022年下期にずれ込む見込みです。
コテ金開発プロジェクト 概要
コテ金開発プロジェクトです。こちらは、カナダのIAMGOLD社とのJV事業です。オンタリオ州のトロントから北西に位置しています。権益比率についてはIAMGOLD社が64.75パーセント、当社が27.75パーセントです。
露天掘りの鉱山で、マインライフは18年、給鉱品位0.96グラム/トン、産金量205トンと大規模な金鉱床であると考えています。建設費については約14億米ドルです。
現在の状況は、最初の工事として、建設予定地にある沼に生息する魚類の回収・移動など、生物多様性に配慮した作業から着手し、終了したところです。
コテ金開発プロジェクトの進捗
進捗の状況です。コテ金開発プロジェクトは2018年にはFSを終えて、その後建設決定を行う計画だったのですが、さまざまな要因から遅延しました。その後、投資環境が整いましたので、本年7月に建設移行を決定しました。9月11日にはカナダ・トルドー首相のご臨席をいただき、起工式を実施しています。その場には先住民のみなさまも参加され、式典が開催されました。
コテの建設については「2030年のありたい姿」に合致した、環境保全や先住民との協力など、SDGsに十分配慮した対応が進んでいると理解しています。
また、新型コロナウイルス感染症対策ですが、入坑者に対する厳格なPCR検査等を実施しており、現状感染者はゼロで、建設工事を本格化させています。2023年の生産開始を目指し建設工事を進めています。
海洋資源開発
最後の項目は技術開発です。海洋資源開発について、我が国の周辺においては、深海底におけるマンガン団塊、コバルトリッチクラスト、海底熱水鉱床の賦存が知られており、JOGMEC等の政府機関の開発に向けた取り組みが進展しています。商業化という観点では、相当な技術のブレイクスルーが必要であると考えているのですが、やはり将来の資源としての可能性に注目しています。
当社は国のプロジェクトに積極的に参画しており、掘削計画の作成(コバルトリッチクラスト、海底熱水鉱床)や、最適な選鉱・製錬プロセスの構築(コバルトリッチクラスト事業)などで、私どもの技術力をもって貢献しています。
新たな技術への取り組み
次に、新たな技術への取り組みです。資源産業においても、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に向けた検討が進んでおり、ドリリングやトラックについても自動運転の導入が進むなど、技術革新が進展しています。
当社も生産性の向上に向けて、DXの動きに注目しています。具体的には、地質情報のデジタル化や重機の自動化、ドローンの活用、プラント操業のデジタル化、遠隔監視等、検討に着手したところです。
菱刈鉱山での取り組みについては、坑内のため難易度は高いと理解しているのですが、すでに述べたとおり、坑内通信設備の強化など、重機の自動化や遠隔監視、坑内通気管理システム等の検討に着手しているところです。
以上、資源事業における事業戦略、概況、大規模プロジェクトの状況、技術開発などについてご説明させていただきました。
質疑応答1:シエラゴルダ銅鉱山とQB3について
司会者:「シエラゴルダ銅鉱山を手放すと、30万トンへの道が遠退くと思うのですが、どのようにお考えでしょうか? また、ケブラダ・ブランカ3(以下、QB3)について言及されていましたが、話せる限りで内容を教えてください」というご質問です。
朝日:まず、シエラゴルダ銅鉱山については、現状ではまだ詳細が決まっていないというのが今お伝えできることです。資源事業におけるポートフォリオについては当社として絶えず見直しを行っていきますが、当社の長期ビジョンの「30万トン」の目標にはまったく変更はありません。資産の入れ替えなどについては、機動的な評価を行った上で取り組んでいきますが、長期ビジョン「30万トン目標」については堅持します。
したがって、今回もお伝えしているのですが、操業の可能性も含めたオペレーターシップを目指した事業展開、権益の獲得については、引き続き着実に検討を進め、努力を傾けていく方針です。
それから2点目のQB3です。現状ではQB2の建設に集中しています。一方で、QB3の周辺のアップサイドとなる資源量の評価については作業が続いていますし、その開発についても内部的な議論や検討が進んでいます。
いつの段階でそれを具体化するかは現状でお伝えできる段階にはないのですが、評価は着実に前進していますし、アップサイドは確実に実現しなければならないものと考えています。
質疑応答2:シエラゴルダ銅鉱山の売却を含めた戦略的な選択肢の検討について
司会者:「シエラゴルダ銅鉱山の権益売却を検討されているとのことですが、今後のデボトルネッキングなどの計画については、特に凍結されるご予定はないのでしょうか? 運転資金も含め、今後売却を前提とすることで投資計画などをどのような方針でお考えでしょうか?」というご質問です。
朝日:シエラゴルダ銅鉱山の操業については、先ほどお伝えしたとおり、稼働率も含めて、極めて順調に実現する体制を構築することができました。
デボトルネッキングに関連した工事も進んでいますし、ほぼ完成に近づいてきていますが、さらなる生産性の向上に向けた検討についてはシエラゴルダ銅鉱山、それからKGHMおよび私どもの間で、積極的な議論を継続しています。
したがって、売却の議論とは別に、シエラゴルダ銅鉱山の企業、事業としての価値が最大限まで上がるための議論をきっちり進めていくというのが基本方針であり、現実にそのような対応を行っています。
質疑応答3:モレンシー銅鉱山での取り組み等について
司会者:「銅について、30万トンという量の目標だけではなく、質の目標、量以外の目標について、何かお考えはあるのでしょうか?」「QB3のポテンシャルはどの程度あるのでしょうか?」「モレンシー銅鉱山ではリーチング操業が好調とご説明いただきましたが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?」という3つのご質問です。
朝日:まず1点目ですが、銅の30万トンという目標については、先ほど申し上げましたとおり、まったく変更はなく、それに向けた努力を継続するということが基本ラインです。
それから、QB3のポテンシャルについては、QB2の生産規模いくつ分とは現状では申し上げられません。なぜなら、どの程度の規模のアップサイドを実現する計画にするかがまだ定まっていないためです。
この段階でお伝えできる数字はないのですが、相当規模、2倍くらいといったような規模のイメージかと思いますが、場合によってはそれ以上ということも含めて、検討が進んでいます。具体的にお伝えできる段階にはありませんが、積極的な拡張工事の検討が進んでいるとご理解いただきたいと思います。
モレンシー銅鉱山のリーチングについては、当初の計画よりも大きな数量を実現してきているという傾向にありましたが、その傾向は少しずつ落ち着いた生産トレンドに戻りつつあります。
今後の生産については、リーチングパッド建設工事の計画などさまざまなファクターの影響が及ぶと思います。今後どうなっていくかについてのコメントは非常に難しいのですが、私どもも計画がどのように推移するか注目し、モレンシー側と技術的な議論を積み重ねていきたいと考えています。
いずれにしても、非常に好調な生産トレンドは私どもにとって非常にありがたかったのですが、次第に落ち着いてきていることは事実であり、今後については、その生産能力が維持できるように最大限努力していきたいと考えています。
質疑応答4:菱刈鉱山について
司会者:「菱刈鉱山に関して、深部での開発を推進中とのことですが、今後の同鉱山での生産コスト上昇については、どのように考えているのでしょうか? 周辺部探鉱により、同鉱山のマインライフはどの程度延びる可能性がありますでしょうか?」というご質問です。
朝日:1点目の生産コストについては、生産期間中で比較しますと少しずつ品位が下がってきているのは事実です。そういった中で、若干コストが上がってきているとご理解いただければと思います。このような中で、生産コストの改善に向け、生産性向上のためのデジタル技術の導入を考えています。
マインライフについては、掘った分だけは見つけるということで、これまで努力してきました。今回、抜湯室が完成することで、より深部へのアクセスが容易になると考えています。深部において一定規模の鉱量が追加できるのならば非常にありがたいのですが、こちらはやってみないとわからないという部分があります。そのような意味で、深部の探鉱活動を強化できる環境が整うと理解しており、具体的な成果については、今の段階ではお伝えできることはありません。
質疑応答5:協業における考えや姿勢について
司会者:「最初に社長から『DNA』のご説明がありましたが、こうした考えや御社の『ありたい姿』の姿勢については、鉱山経営のパートナーとしっかり共有できているのでしょうか? 協業する時にどの程度重視するのでしょうか?」というご質問です。
朝日:「ありたい姿」についてと、そちらをパートナーとどのように共有しているのかというご質問だと思います。私どもは、ジョイントベンチャーで資源事業を進めるにあたり、パートナーとの価値観の共有を極めて重視しています。
フリーポート、ルンディン、チャイナモリブデン、KGHMなどがパートナーの大きなところとなりますが、地元のステークホルダーとの関係、環境の保全、労働者の安全など、さまざまな意味でパートナーとは価値観が共有できるように緊密なコミュニケーションを行っています。
そもそも各社が鉱山業で有力な存在となっていますので、建設的な議論がいつもできていると考えています。いずれにしても、パートナーとの価値、「ありたい姿」の共有があればこそ事業はうまくいきますし、現地における労働者、現場の関係者のみなさまとの緊密な関係が構築できると考えています。現状においては、パートナーとの関係は極めて良好であると考えていただきたいと思います。
質疑応答6:QB2における環境への配慮について
司会者:「これまでに増して、環境に配慮する鉱山経営が求められるかと思います。プロジェクト建設、操業時においては、従来以上にコストを要するということで、コストカーブへの影響も想定されます。QB2においては、どのような動きがありますでしょうか?」というご質問をいただいています。
朝日:QB2は建設中ですので、建設工事にあたり、環境あるいはさまざまな周辺に残った植物や動物、それから先住民が残した遺跡などについて、非常に丁寧に対応を進めています。必要な許認可は大前提となりますし、必要な行動についても当局とよく相談をした上で進めています。
操業段階になると、また違った側面も出てきますが、建設段階において環境あるいは労働者の安全、文化的な側面、あるいは植物・植生などについての対応も丁寧に進めています。こちらについては、Teck社の方針も合致していますので、現状において、万全な努力を行っていると考えています。
質疑応答7:QB3の出資比率について
司会者:「QB3についても、同じ出資比率になるのでしょうか? もし進めば、の話ですが」というご質問をいただいています。
朝日:こちらはジョイントベンチャーの契約に基づいて進めます。開発計画が取りまとめられた段階で判断することになりますが、現状の比率は維持できるという計画になっています。
質疑応答8:シエラゴルダ銅鉱山における貸付金の取扱いについて
司会者:「シエラゴルダ銅鉱山の売却の場合、同鉱山に多額の貸付金(貸倒引当金を含む)があると思いますが、その取扱いはどうなるのでしょうか?」というご質問です。
朝日:現状、最終的な段階にあるわけではないため、具体的なことは申し上げにくいのですが、プロジェクトに関連した権利、義務、全体を売却するということになりますので、今ご指摘の点などについても、併せて企業価値、プロジェクトの価値に含めて売却が行われるとご理解いただきたいと思います。