2020年11月10日に行われた、日本光電工業株式会社2021年月期第四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日本光電工業株式会社 代表取締役社長執行役員 荻野博一氏

1)当第2四半期の決算概要

荻野博一氏:みなさま、こんにちは。日本光電の荻野でございます。ただいまから第2四半期決算の概要と、通期の業績見通し、当社の経営戦略および新長期ビジョンについてご説明いたします。

まずはじめに、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日々医療の最前線で患者さまの治療に尽力されている医療従事者のみなさまに、心から敬意を表するとともに、深く感謝を申し上げます。また、医療機器メーカとしての社会的な使命を果たすために、日々奮闘している社員、たくさんの激励をくださいました株主のみなさまに心から感謝いたします。

第2四半期決算概要についてご説明します。売上高は2.8パーセント減の872億円となりました。国内売上高は16.6パーセント減の562億円、海外売上高は39.0パーセント増の309億円、現地通貨ベースでは43パーセントの増加となりました。上期の計画は公表を見送りましたが、社内計画に対しては、国内、海外ともに、上回って推移しました。

粗利率は、自社品比率が上昇したことから2.5ポイント増の50.8パーセントとなりました。営業利益は、粗利率の改善と販管費の減少により24.9パーセント増の87億円となりました。経常利益は29.7パーセント増の82億円、純利益は47.8パーセント増の58億円となりました。

2)営業利益増減の要因分析

営業利益が前期の70億円から87億円に増加した要因についてご説明します。為替の影響は3億円のマイナス要因となりました。減収による粗利の減少は、9億円となりました。粗利率の改善については、自社品比率の高い海外が好調だったこと、国内でも自社品販売の注力により売上構成が良化したことから、25億円のプラス要因となりました。販管費については、営業活動の制限による旅費交通費などの減少により、4億円のプラス要因となりました。

3)国内売上高

続いて地域別の状況です。国内売上高は112億円減の562億円となりました。前年同期の消費税率引上げ前の駆け込み需要の反動から、すべての市場で減収となりました。大学、官公立病院市場では、前年同期の新築移転に伴う大口商談の受注の反動も影響しました。反動減の影響は、合わせて70億円から80億円程度あったと見ています。

新型コロナウイルスについては、40億円程度のマイナス影響があったと見ています。検査、手術、入院の延期や、生体計測機器など一部製品に対する予算執行の延期、凍結が影響しました。一方で、補正予算の寄与もあり、人工呼吸器の需要が増加したことから、社内計画を上回りました。

4)海外売上高

海外売上高は87億円増の309億円となりました。感染症患者の増加に伴い、生体情報モニタ、人工呼吸器の需要が急増し、すべての地域で社内計画を上回りました。米州は42億円増の154億円、現地通貨ベースでは42パーセント増加しました。米国、中南米ともに二桁成長となり、中南米はメキシコ、ブラジル、コロンビアが好調に推移しました。

欧州は25億円増の62億円、現地通貨ベースでは66パーセント増加しました。西欧諸国を中心に大幅増収となり、特にイタリア、イギリスが好調でした。

アジア州他は21億円増の93億円、現地通貨ベースでは33パーセント増加しました。ベトナム、カタール、インドネシアでの大口商談の受注が寄与しました。中国では、感染収束に伴い、第2四半期に入って感染対策による需要は一巡しています。

5)商品群別売上高

商品群別の売上高の状況はご覧のとおりです。生体情報モニタや、人工呼吸器を含む治療機器は大きく伸びましたが、それ以外の生体計測機器やその他商品群は需要が鈍化し、前年同期を下回りました。消耗品・保守サービスの売上構成比率は45.7パーセントとなりました。国内で検査や手術が延期されたことから、カテーテル、SpO2センサ、電極などの消耗品の売上が減少しました。

5.1)生体計測機器

生体計測機器は、全体で21.3パーセント減の163億円となりました。国内は24.1パーセント減の126億円となりました。検査、手術の減少や予算執行の延期、凍結もあり、すべての商品が二桁減収となりました。一方で、新型コロナ軽症者対策のため、パルスオキシメータや「LAVITA」の需要は増加しました。

海外は、10.4パーセント減の37億円となりました。脳神経系群は需要の減少に伴い、米州、アジア州他で低調に推移しました。一方で、心電計群は新型コロナ対策による需要もあり、すべての地域で好調に推移しました。

5.2) 生体情報モニタ

生体情報モニタは、全体で13.6パーセント増の350億円となりました。国内は13.6パーセント減の172億円となりました。前年同期が好調だった反動により、臨床情報システム、ベッドサイドモニタが大きく減少しました。一方で、医用テレメータは、新製品効果に加え、新型コロナ対策もあり好調に推移しました。海外は、63.7パーセント増の177億円となり、すべての地域で大きく増加しました。特に、欧州、中近東、中南米で売上が倍増しました。

5.3)治療機器

治療機器は、全体で16.7パーセント増の193億円となりました。地域別では、国内は3パーセント増の122億円、海外は52パーセント増の70億円となりました。商品別では、医科向け除細動器は、国内は好調だった前年同期から反動減となりましたが、海外がすべての地域で好調に推移したことから、5.9パーセント増の30億円となりました。

AEDは、販売台数が全体で39,400台、売上は7.9パーセント減の68億円となりました。国内は更新商談の受注もあり好調でしたが、海外のすべての地域で需要が減少しました。

人工呼吸器は、国内、海外ともに好調に推移し、前年同期の16億円から53億円に大きく増加しました。国内は、ハミルトン社製、自社製ともに好調に推移しました。海外は、すべての地域で需要が急増し、一定の事業規模に成長しています。

5.4)その他

その他商品群においては、全体で23.4パーセント減の164億円となりました。国内は、25.6パーセント減の140億円となりました。前年同期の大口商談の反動や自社品販売の注力により、現地仕入品の売上が大きく減少しました。海外は、7.5パーセント減の24億円となりました。血球計数器・試薬が、需要および検査数の減少により、すべての地域で前年同期を下回りました。

6)財政状態

財政状態はご覧の通りです。総資産は7億円増加し、1,685億円となりました。生体情報モニタ、人工呼吸器の増産に伴い、たな卸資産が70億円増加しています。

7)設備投資と研究開発費

設備投資、減価償却費はともに14億円となりました。研究開発費は30億円となりました。通期については、設備投資は39億円、減価償却費は36億円で変更ありません。一方、研究開発費は72億円に見直しました。長期ビジョンで掲げるデジタル技術の開発を加速させます。富岡生産センタでは、ご覧のとおり、各方面からのご支援をいただき、増産を進めています。

1)経営環境

続いて、通期の業績見通しをご説明します。まず新型コロナウイルスの影響ですが、国内では、延期されていた検査や手術が徐々に再開されているほか、補正予算の投入により、人工呼吸器や医用テレメータなどの商談が増加しています。一方で、患者の受診抑制や入院、手術の減少が続き、医療機関の収益回復には時間がかかる見通しです。新型コロナ対策以外の一部商談では、予算執行の延期や凍結が見られます。

海外では、人工呼吸器の受注案件で一部キャンセルがありました。足元では、第2波に直面する欧州で新たな問い合わせが発生しています。需要が減少した脳波計や血球計数器、AEDは、下期での回復を期待するものの、上期を補うには至らないと見ています。また、期初の想定どおり、第4四半期以降に反動減を見込んでいます。国内、海外ともに、感染再拡大の状況を注視しています。

2)通期の業績見通し

上期の実績が社内計画を上回ったことから、通期の業績見通しを上方修正しました。連結売上高は前期比0.5パーセント減の1,840億円、国内売上高は5.3パーセント減の1,272億円、海外売上高は12.1パーセント増の568億円、現地通貨ベースでは15パーセントの増加を見込んでいます。

国内売上高は、期初予想から10億円増加する見通しです。海外売上高は、すべての地域で期初予想を上回ると想定しており、30億円増加する見通しです。とくに、人工呼吸器の需要が想定よりも強く、今回の見直しに至りました。

営業利益については、減収幅の縮小および粗利率の改善により、期初予想から25億円増の165億円となる見込みです。経常利益、純利益については、ご覧のとおりです。下期の為替の前提については、ドルは106円、ユーロは124円としています。

3)売上見通しの要因分析

次に、売上見通しの要因分析です。国内の病院・診療所向けは、上期が社内計画を上回ったことから、71億円の減少に見直しました。同様に、AEDの通期売上は前期並み、販売台数は50,000台に見直しました。

海外売上高は、期初予想に対し米州が15億円、欧州が15億円上振れすると見ており、78億円の実質増を見込んでいます。為替については、17億円のマイナス影響を見込んでいます。

4) 営業利益見通しの要因分析

次に、営業利益の増減要因をご説明します。上期に大幅増益を達成したため、デジタル技術の開発加速や社内ITインフラの整備など、長期ビジョンの実現に不可欠な戦略投資を実施します。また、海外事業のさらなる拡大を目指し、米国での事業基盤の強化に取り組みます。

これにより、減価償却費・研究開発費は5億円増加、人件費・経費は10億円増加に見直しました。為替は6億円のマイナス影響、粗利率改善によるプラス効果は31億円と見込んでいます。

[参考]商品群別売上高見通し/為替の影響

商品群別の売上高見通しについては、上期業績を踏まえ修正しました。為替感応度はご覧のとおりです。

1)COVID-19対応の基本方針

続いて、当社の経営戦略をご説明します。2020年度は、従業員とご家族の健康と安全の確保、医療機器メーカとしての供給責任を果たすことを基本方針に、事業活動を推進しています。

ご覧の通り、世界各国で感染予防対策を徹底しながら、製品とサービスの供給に尽力している社員を誇りに思うとともに、心から感謝しています。医療現場の最前線で新型コロナ対策に尽力されている医療従事者のみなさまのサポートに、引き続き最優先で取り組みます。

2)当期の取り組み①

既存事業における収益性の改善に向けた取り組みをご説明します。新製品の発売スケジュールを遵守することは、前中期経営計画からの課題ですが、4月から技術開発部門を機能別組織体制に移行し、開発効率の向上に取り組んでいます。

海外では、生体情報モニタ、人工呼吸器の設置が拡大していることから、消耗品やサービスの提案に注力し、安定した収益基盤の構築を進めます。国内では、コロナ禍における顧客価値提案を推進するため、オンラインセミナーの開催や会員制ウェブサイトのコンテンツ充実に取り組みます。

2)当期の取り組み②

グローバルでの企業体質の強化については、ガバナンス・経営管理体制の強化に向けて、4月にグローバル経営管理本部を設置し、海外子会社におけるリスク管理を強化しています。また、女性社外取締役を1名選任するとともに、役員報酬に譲渡制限付株式報酬制度を導入しました。

サプライチェーンマネジメントの向上に向けては、シンガポールでERPの導入を予定しているほか、国内販売で電子取引を推進し、業務のスリム化を図ります。

3)地域別事業展開の強化

次に、地域別事業展開の強化についてですが、国内では、新型コロナ対策として、患者さまの状態を病室の外からモバイル端末で参照できるソリューションの提案を強化します。新製品の医用テレメータ「WEP-1200」は、人工呼吸器とのデータ・アラーム連携を実現し、医療安全への寄与を期待しています。

軽症者向け宿泊療養施設には、「LAVITA」を使って別室から患者さまの容態を把握できるシステムを構築し、評価をいただいています。新たに投入した超音波ゲルソニックをはじめとする、ディスポーザブル消耗品の提案にも注力しています。

「esCCO」についても、国内展開を開始しました。非侵襲で連続的に心拍出量を算出する当社独自の技術であり、顧客価値の向上につながると期待しています。

米国 COVID-19対策プログラムの提供

米国では、新型コロナ対策のためのプログラムである「NK-HealthProtect」を展開しています。「患者トリアージソリューション」は、スポットチェックモニタで体温やSpO2を測定できることから、感染症患者のスクリーニングへの活用が期待されます。

「緊急時無線モニタリングソリューション」は、多人数モニタである「Prefense」を使ってバイタルサインを把握できるため、多くの患者で混雑する救急外来をサポートします。

「Pop-up ICUソリューション」は、ベッドサイドモニタとセントラルモニタで構成され、ICUの迅速な増設を可能にします。その他にも、医療従事者の感染リスク低減に向けた提案を強化します。人工呼吸器「NKV-550」は、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院にも採用いただき、今後の波及効果を期待しています。

新興国 日本・米国製、上海製の新製品の提案を強化

新興国では、新製品として、上海で開発、生産した心電計のラインアップを追加したほか、検体検査装置の新製品3機種を投入しました。「MEK-1305」は、赤血球が沈む速さであるESRを同時に測定できる世界初の血球計数器です。ESRは結核などの感染症のスクリーニングに使われています。従来の方式では検査時間が30分かかっていましたが、2分という短時間での測定を実現しました。

また、好中球と好リンパ球の比率であるNLRは、新型コロナウイルス感染症の重症化予測にも使われていることから、3機種すべてに搭載しました。ドバイの試薬工場は、計画どおり、2020年度中に生産開始する予定です。

4)利益配分の基本方針

利益の配分については、将来に向けた成長投資を継続します。研究開発では、既存事業の持続的成長に向けた製品、技術の開発に注力します。設備投資については、増産体制の構築に加え、IT投資を予定しています。M&Aでは引き続き新たな成長領域を探索します。人財育成も強化していきます。

株主還元については、長期にわたって安定的な配当を継続することを基本方針としており、配当性向は30パーセント以上を目指しています。株主還元は配当を重視しており、自己株式の取得については機動的に検討します。当期の年間配当金は35円、配当性向は27.1パーセントの予想です。

4 新長期ビジョン BEACON2030

9月に公表した長期ビジョン「BEACON2030」についてご説明します。長期ビジョンの策定にあたっては、約30名の次世代メンバーを中心にプロジェクトを進めるとともに、グローバルで34回、合計3,000名の社員とパネルディスカッションを開催しました。世代や文化の違いを越えて、世界中の社員が共通に想い描く2030年に向けて、日本光電が目指すべき姿を形にしたものです。

ビジョン・ステートメント – 2030年 日本光電のあるべき姿

「Illuminating Medicine for Humanity」「グローバルな医療課題の解決で、人と医療のより良い未来を創造する」「人に寄り添い、医療の未来をてらす」「新たな価値を共創し、命をてらす」「挑戦を楽しみ、人と組織の可能性をてらす」、このビジョン・ステートメントには、日本光電は医療、技術、人を礎として、医療機器を提供する企業からグローバルな医療課題を解決する企業へと進化していくこと、そして、これまで以上に社会の発展に貢献する企業に成長すること、その強い想いが込められています。

2030 VALUE CREATION COMPASS

日本光電がどのように新たな価値を創造していくのかを示したものが「価値共創の羅針盤」です。私たちの価値創造の中心にいるのは、常に「人」、患者さまです。患者さまとの接点であるヒューマン・マシン・インターフェース技術から得られるデータに、AIなどのデータサイエンスを活用し、新たなアルゴリズムを生み出します。

その結果を、リアルタイムにフィードバックすることで、患者さまに最適なケアサイクルソリューションを実現します。そして、疾患別、サイト別のソリューションを提供することで、患者アウトカムと医療経済性を追求し、グローバルな医療課題の解決に貢献していきます。

長期ビジョンの実現に向けた3つの変革

長期ビジョンを実現するために、3つの変革に取り組みます。「グローバルな高付加価値企業への変革」では、海外での高い成長と収益性の向上、国内での価値提案の高度化と新規事業の育成、グローバルな事業基盤を活用した新たなビジネスモデルの創出を目指します。

「顧客価値を追求するソリューション型事業への変革」では、機器の販売から医療課題を解決するビジネスモデルへの変革、データから価値を生み出す価値創造モデルの実現を目指します。

「オペレーショナルエクセレンスを軸とするグローバル組織への変革」では、ガバナンス体制やサプライチェーンマネジメント体制を確立し、グローバルな事業展開を支えるための組織機能の強化を図ります。

長期ビジョンの実現に向けた3つのフェーズ

2030年までの10年間を3つのフェーズに分けて、変革を推進します。2021年から始まる「PhaseI」では、グローバルに拡大したリソースの統合と融合を図り、全体最適により生産性を高め、既存事業の収益性を改善します。

「PhaseII」では、成長への投資を本格化します。新たな事業モデルの構築を進めるとともに、既存事業との連携により、統合的な課題解決力の獲得を目指します。

「PhaseIII」は、長期ビジョン実現のフェーズです。グローバルな医療課題を解決するソリューションプロバイダとしての地位を確立します。この3つのフェーズを着実に実行し、長期ビジョンの実現を目指します。

長期ビジョンの実現に向けた経営指標

「BEACON2030」では、単なる売上の拡大ではなく「高い顧客価値を生み出しているか」「どれだけ医療課題の解決に貢献しているか」を重視します。そこで、価値のあるソリューションを高い生産性で生み出しているかを表す営業利益率、およびグローバル企業に成長しているか、世界各国の医療課題の解決に貢献しているかを表す海外売上高比率を経営指標としました。

この2つの経営指標を追求することで、高い顧客価値の創造とグローバルな医療課題の解決に取り組みます。2021年4月から始まる中期経営計画は、来年3月末までに公表する予定です。

以上をもちまして、第2四半期決算の概要と、通期の業績見通し、当社の経営戦略および新長期ビジョンについてご説明しました。ご清聴ありがとうございました。

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