シリコンウエハー大手の台湾グローバルウェーハズ(環球晶圓)は、同業で業界4番手の独シルトロニックを買収すると発表した。買収総額は37.5億ユーロで、2021年後半に取引を完了させる予定。買収により、グローバルウェーハズは業界2位に浮上する見込み。

積極的な買収で事業規模一気に拡大

 グローバルウェーハズはシルトロニックの株式を1株あたり125ユーロで取得。同社株式を30.8%保有する独ワッカー・ケミも売却に応じる方針。シルトロニックは1968年に独ミュンヘンに設立され、95年からはワッカー・ケミの子会社としてシリコンウエハー事業を展開していた。99年にシンガポールでの生産をスタートさせたほか、15年にIPO(新規株式公開)も実施していた。生産拠点はドイツのほか、シンガポール、米オレゴン州などグローバルに広がる。

 グローバルウェーハズは台湾シノ・アメリカン・シリコンの事業部が独立するかたちで11年に発足。以降、積極的な買収を仕掛け、12年にコバレントマテリアルズ(現クアーズテック)のシリコンウエハー事業、16年にサンエジソン・セミコンダクター(旧MEMC)を買収。国内の信越化学工業、SUMCOに次ぐ業界3位に浮上していた。

 グローバルウェーハズによれば、シルトロニックの買収により、過去12カ月(19年10月~20年9月)分の売り上げを基準に、両社合算の市場シェアは26.7%となり、SUMCOを抜いて業界2番手に浮上するという。

シルトロニックはエピウエハーに強み

 シルトロニックはもともと、エピタキシャルウエハーに強みを持っており、韓国メモリー顧客のほか、欧米ロジック顧客向けに強みを持つ。売上高に占める上位5社の顔ぶれもTSMC、インテル、サムスン、インフィニオン、SKハイニックスとなっている。

 かねてグローバルウェーハズはエピウエハーの強化を重点的に進めており、シルトロニックを傘下に収めたことで、事業スケールだけでなく、製品ポートフォリオも補完することができたと見られる。

 業界団体SEMIの最新予測によれば、20年の半導体用シリコンウエハーの出荷は前年比2.4%増の120億平方インチと過去最高を記録する見通し。00年以降、シリコンウエハー業界は継続的に再編が進んでおり、直近ではSKシルトロンを含めて、大手5社で市場の約9割を握るかたちとなっていた。今回、グローバルウェーハズがシルトロニックを買収したことで、信越化学、SUMCOに並ぶ企業体が誕生することになり、大手3社による寡占化が一層進む可能性もありそうだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳