パワー半導体などを手がける国内半導体中堅の新電元工業は、収益構造の改善を図るため、事業構造改革を実施する。半導体デバイス事業では前工程クリーンルーム(CR)の集約化による、稼働率の改善を図るほか、パワーモジュール組立などの後工程分野でもラインの統合など効率化を追求する。

2年連続で営業赤字

 米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、足元の半導体デバイス事業は収益が悪化。2020年度(21年3月期)は、売上高が前年度比9%減の281億円、営業損失14億円を予想しており、2年連続で営業赤字を計上する見込み。収益改善に向けた施策が求められるなか、上期決算発表にあわせて、事業構造改革が発表された。

 構造改革では研究開発などを担ってきた飯能工場(埼玉県飯能市)の活動を停止。同社は埼玉県朝霞市に新事業所の建設を進めており、同事業所および国内生産会社に飯能工場の各種開発機能を移設し、開発の合理化と効率化を図る。朝霞新事業所には飯能工場の研究開発機能、事業運営機能、大手町本社の営業機能などを集約。あわせて飯能工場のCRは21年3月をもって閉鎖する。

 同様に前工程を担う㈱東根新電元(山形県東根市)でもCR1棟を閉鎖し、前工程の稼働率を20%程度改善させる。これにより、飯能工場のCR閉鎖とあわせて、国内に5棟あったCRは3棟となる見込み。加えて、東根新電元と㈱秋田新電元(秋田県由利本荘市)におけるウエハーの大口径化により、グループにおける前工程の生産性を30%程度向上させていく。

パワーモジュール比率を24年度に2割へ

 秋田新電元でパワーモジュールの生産ラインの一部をタイのランプーン新電元のIoTを導入した生産性の高いラインに統合する。秋田新電源は次世代パワーモジュール製品の生産ラインを構築し、モビリティー・産業機器市場向けにパワーモジュール事業のさらなる成長を目指す。

 デバイス事業のうち、パワーモジュールの売上比率は11%程度(19年度ベース)であったが、今後自動車分野での製品ラインアップを拡充することで、24年度をめどに売上比率を20%まで引き上げていく方針。

 急激な収益悪化に対応し、海外生産子会社ではすでに人員の適正化を進めているは、国内においても20年度中に希望退職の募集などにより、本体および国内グループ会社で10%程度にあたる人員を削減する。海外子会社を含めて、合計で約400人の人員削減を見込んでいる。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳