『いないいないばあ』でうまれるあかちゃんの笑顔のひみつとは?
乳幼児期の脳と心の発達が専門の京都大学大学院教育学研究科・明和政子教授が、あかちゃんの笑顔のひみつや読み聞かせのポイントについてお話しくださいました。(以下、明和政子教授のコメント)
ポイント1. 笑顔は“予測”から?あかちゃんを魅了する展開と本づくり
『いないいないばあ』は誰もが知っている遊びを絵本にした、非常にシンプルなつくりになっていますが、なぜあかちゃんは笑うのでしょうか。そこにはあかちゃんの脳の発達、特に “予測する能力” の発達が深く関わっています。生後9ヶ月くらいになると、いわゆる「人見知り期」に入りますが、これは予測する能力が発達してきた証拠です。
いつも聞いている親の声で「ばあ」という声を聞きながらページをめくる経験を積み重ねると、あかちゃんは「次に何が起こるか」を脳内で予測するようになります。予測のとおりになると、不安から安心へと気持ちが変化し、あかちゃんは笑います。
言い換えると、予測できない場面に直面するとあかちゃんは人見知りや場所見知りを示します。見知らぬ誰かが、 “いないいないばあ”をやっても、あかちゃんは最初は笑わないでしょう。なぜならこの時期のあかちゃんにとって、いつもとは違う誰かからの働きかけは予測が難しいからです。しかし、知らない人と『いないいないばあ』を読んで、その経験を積み重ねていくことでその人の声や表情が絵本と結びついて記憶されていきます。
『いないいないばあ』の特徴のひとつは、絵本のキャラクターの白目と黒目のコントラストがはっきりしていることにあります。生まれたばかりのあかちゃんでも、白目と黒目のコントラストに反射的に注意を向けることが知られています。あかちゃんは「ばあ」のページで、とくに目に注意を向けているはずです。
また『いないいないばあ』は、日常生活の中に溶け込むようなやわらかく温かいタッチ、色刺激が強すぎない日常場面で目にする質感に近い色彩で描かれていることも、あかちゃんが顔に注意を向けやすい一因になっていると思います。