三菱商事、ローソンを子会社化へ

日本経済新聞は2016年9月15日、「三菱商事はコンビニエンスストア3位のローソンを子会社化する。TOB(株式公開買い付け)を実施、出資比率を現在の33%から51%に高めることを検討している。買収額は少なくとも1,400億円を超える」と報じています。

同日朝、三菱商事(8058)、ローソン(2651)は、共にそうした事案はあるが検討段階で決定事項はないと開示しています。しかし、早晩この通りの決定がなされると予想されます。

「いままで子会社ではなかったの?」

読者の皆さんの中には、ローソンはすでに三菱商事の子会社ではないかと思っていた方がいらっしゃるかもしれません。

もともとローソンは、1970年代後半にダイエーが関西からスタートした歴史あるコンビニです。三菱商事がローソンに出資をしたのが2000年。その後、ローソンは三菱商事出身の新浪剛史氏(現サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)が牽引し、コンビニ第2位のポジションを固めました。その後も三菱商事からマネジメント人材を受け入れてきたため、ローソンはすでに三菱商事の子会社だと錯覚しがちです。

しかし、正確には三菱商事はローソンの33.5%の議決権を保有する関連会社という位置付けです(三菱商事、2016年3月期有価証券報告書より)。

関連会社から子会社にするということは、三菱商事にとってはローソンの株を追加取得することで、よりローソンの事業リスクを取ることになります。その結果、収益が上がれば三菱商事の財務諸表に従来よりもしっかりこれを反映させることになるのです。

なぜ今なのか?

このタイミングである理由は3つほどあるでしょう。

第1に、ローソンの株価が冴えないことです。2016年2月には10,000円を超えていた株価は、この報道前の2016年9月14日には7,410円まで下げていました。三菱商事から見れば株買い増しの好機と見えたのでしょう。

第2に、ユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ファミマ)の発足によって国内コンビニ事業はセブン-イレブン・ジャパンとファミマの2強体制に移行し、ローソンは規模の面で業界3位が固定化しそうなことです。特に、ファミマは統合に伴って不採算店舗の整理を積極的に進めると見られ、体質強化が進みそうです。ローソンはこの状況を放置できないと考えたのではないでしょうか。

第3に、ローソンの国内事業における負の遺産の整理が進んだことです。低採算だったローソンストア100の店舗を大幅に整理し、ローソンの既存店では什器拡充などの投資を積極的に進め、コンビニ上位2社の攻勢に対抗する体制ができつつあります。

したがって、三菱商事は今、株を買い増し、しっかりと事業で攻めに転じれば、ローソンの業績もローソンの株価も好転する、そう考えていると筆者は想像します。

三菱商事は何をするのか?

では三菱商事はどんな手を打ってくるでしょうか。日本経済新聞によれば「(三菱商事が)出資する食品メーカーや弁当・惣菜などの生産委託業者との連携強化」、「決済サービスを中心とした金融事業」、「割安な電力プランの店頭での取り次ぎ」、「ローソンと(三菱商事が出資する)スーパーとの連携」「海外への出店」などが挙げられています。

このところローソンは守りを固める方向だったと述べましたが、攻め手はこのようにたくさんあります。下半期に入り、なるべく早くこうした成果が上がることを期待したいと思います。

いま親子上場か?

しかし、読者の方には「そういう攻め手は従来の延長線上のものが多い。今まで出し惜しみしていたのではないか」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。確かに、上に挙げた一連の施策は、ローソンを子会社化しなくても打てる手が多いと思います。

また、ローソンは成城石井を決して安値ではない価格で買い付けましたが、その後ローソンとのシナジーが十分に顕在化しているとは言えないと思われます。そんな中、上記の三菱商事の施策が目に見える効果を迅速に上げるイメージを描くのはなかなか難しいかもしれません。

筆者は、商品の調達の面で2強との規模の格差を埋めること、そして(できればPontaを活かした)モバイルコマース時代に相応しい独自の店舗集客エンジンの確立がローソンの中長期課題と考えます。その場合、一時的には目先の利益を犠牲にしても投資をしなければならない局面も出てくるでしょう。

ソフトバンクグループ(9984)は、英アーム社の買収にあたって100%完全買収を決めました。これはアーム社が目先の利益にばかり気をとられるのではなく、中長期的な視点で開発投資に力を注ぐことを容易にするためです。

新聞報道を前提にすると、三菱商事はローソンにテコ入れをしながら、今後段階的にローソン株の買い増しを進めることを基本路線にしているとも解釈できます。しかし、親子上場は少数株主との利益相反の問題を根本的に抱えていますし、思い切った投資もやりにくいと思います。ここは一気に100%子会社化を目指すほうが良いのかもしれません。

 

LIMO編集部