老後2,000万円問題など、老後の不安を抱えている人は少なくありません。まわりの人たちはどのくらいお金を貯めているのでしょうか。データでは50代以降の貯蓄額が1,000万円をゆうに越えていたり、3,000万円近かったりと驚くような数値が並びますが、本当にそんな人ばかりなのでしょうか。金融広報委員会の調査をもとに、40~70代の実際の貯蓄額を紐解いてみました。
40~70代の世代別平均貯蓄額はこちら
まず、金融広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」から40~70代の各世代が保有する平均貯蓄額、および中央値をみてみましょう。平均値は集団のデータを足して割った数値であるため、極端に大きな数字が入ることで値が変化してしまいます。しかし中央値はデータのちょうど真ん中の値を指すため、よりリアルな数値を確認することができるのです。
【40歳代】平均694万円/中央値365万円
【50歳代】平均1,194万円/中央値600万円
【60歳代】平均1,635万円/中央値650万円
【70歳以上】平均1,314万円/中央値460万円
平均値と中央値では、大きな差が出ていることが分かりますね。これは、貯蓄額の多い層が平均値を引き上げているためと考えられます。
老後2,000万円問題が取り沙汰された金融庁の「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」によると、老後20年での試算で必要な貯蓄額は1,300万円であるそう。老後を意識し始める50代の貯蓄額をみると、最も多いのは1,000~1,500万円の10.8%。
一方で、60代・70代で最も多い層はともに3,000万円以上でした。1,500万円ある50代世帯が定年後に退職金を受け取るなどすれば到達可能な数値ではありますが、退職金自体が減少傾向にある昨今、必ずしも3,000万円に届くとは限りません。さらに中央値の実情に鑑みると、これはごく一部の恵まれた世帯にすぎないような印象です。実際、同データによると40代以上の全世帯で2割程度は金融資産を持たないことも分かっています。