8月の既存店売上高が対前年同月比を上回った企業はわずか

2016年9月12日に内閣府が発表した7月の機械受注統計は、船舶・電力を除く民需の受注額(季節調整済)が2か月連続で前月比プラスになり、基調判断が「持ち直しが見られる」へ上方修正されました。

しかし、こうした景気に対する明るい材料とは裏腹に、このところ気になるのは順次開示が進んでいる8月の小売企業の売上トレンドです。

既に発表された数値を見ると、主要小売企業で8月の月次売上高が既存店ベースで対前年同月を上回っている企業はごくわずか(4社程度)であり、多くの企業が下回っています。対前年同月比で▲5%以上減少した企業は、

  • アパレル系(既存店ベース):しまむら(8227)、アダストリア(2685)、ユナイテッドアローズ(7606)
  • 百貨店(全店売上ベース):三越伊勢丹ホールディングス(3099)、J.フロント リテイリング(3086)
  • 衣料・雑貨・食品(既存店ベース):良品計画(7453)
  • 家電(全店売上ベース):ケーズホールディングス(8282)、ビックカメラ(3048)

などになります。上記で既存店ベースとして取り上げた企業は、国内全店ベースで見るともう少し良い数値になるのですが、それでも対前年同月比でマイナス基調となっています。

少し要因を考えてみましょう。

要因1:2016年8月の土日祝が少ないうえ、天候も芳しくなかった

2016年8月の土日祝の日数は9日で、2015年8月の10日に比べて減少しました。今年は「山の日」が新設されましたが、あまり効果はなかったようです。

さらに、天候も不順でした。ゲリラ雷雨が各地で発生し、月の後半は台風が北・東日本を中心に何度も上陸しました。東海から西は暑い夏でしたが、関東から北は雨と湿気の8月後半になりました。

特に人口の多い関東圏で週末に悪天候が続いたことは、小売企業の集客にマイナスに響いた模様です(多くの会社が月次報告のコメントにこの点を上げています)。

要因2:2016年7月が好調だった

8月だけを見ると弱めの数値に見えますが、実は7月の数値は各社とも大変好調でした。ここでも暦の違いが影響しています。2015年7月の土日祝は9日でしたが、2016年7月は11日もありました。

要因3:インバウンドの客単価の低下

これは特に百貨店で顕著です。中国の関税引き上げ、及び、海外からの旅行者の消費行動の変化から、客数はほぼ確保できているものの、高額品の売上が減少したことが影響しています。

肝心の9月は土日祝が少ない正念場。気候が気になる

以上、8月は小売りが冴えない月になりました。しかし、7月が好調だったことや、8月の天候不順と暦のめぐりの悪さが重なっていて、消費の基調を語るにはやや時期尚早と考えられます。

むしろ、消費の足腰を測るには秋物商戦が本格化する9月以降が大変重要です。特に、衣料は今からが最大の稼ぎ時となります。

しかし、9月に入ってからも台風の影響などで天候は相変わらず良くありません。8月24日発表の気象庁の向こう3か月(9-11月)の天候見通しでは「秋は前半を中心に暖かい空気に覆われやすく、全国的に向こう3か月の気温は高いでしょう」とされ、衣料分野には逆風が予想されます。

さらに、暦を見ると2016年9月の土日祝は10日で、2015年9月よりも1日少なく、連休が減っています。

こうした環境では、消費者のEC利用やコト消費へのシフトが進みかねません。

小売業が今まで以上に知恵を絞る時期が来ているようです。

 

LIMO編集部