(2)公的年金の受給額は?

公的年金の受給額について、厚生労働省が公表している推計値を見てみましょう。現在50代の世帯(二人世帯)が65歳になった時点での年金月額は、モデル世帯の例で20万~24万円と予想されています(※2)

モデル世帯とは、「平均的な賃金で40年間就業してきた夫と、40年間専業主婦だった妻」という世帯のことです。公的年金の受給額は加入実績により異なり、また、今後の経済成長率によって変動する可能性もあります。

もし、夫婦二人分の生活費を(1)の必要最低限度に抑えることができれば上記の年金額でカバーできそうに感じます。しかし、老後、何十年も経つ間に健康面の変化もあるでしょう。抑えた生活を維持できるかどうかは分かりません。生活費が少しでも増えると貯金の取り崩しが必要になってきます。

また、国民年金・厚生年金の加入実績についても注意が必要です。上記モデル世帯の場合、夫は厚生年金へ加入していますので国民年金の第2号被保険者でもあり、国民年金と厚生年金の両方を受給します。被扶養者の妻は国民年金の第3号被保険者ですので、国民年金のみを受給します。二人とも未納期間のない満額受給者という想定です。さらに老齢厚生年金については給与(標準報酬月額)の階層により受給額が異なるため、個人により年金額は異なるのです。

そのため自身の年金受給額については、日本年金機構から誕生月に郵送されてくる「ねんきん定期便」で確認してみましょう。50代からは老齢年金の受給見込み額が表示されていますし、インターネット経由で年金記録を確認できる「ねんきんネット」もあります。早めに年金額を把握することで、家計の見直しにもつながります。

(3)退職金はいくらもらえるのか

退職金を老後資金に充てる見込みの方も多いでしょう。では、定年時の退職金は十分にもらえるものなのでしょうか。厚生労働省の資料(※3)によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は 2018年の時点で80.5%にとどまり、退職金の支給額も減少傾向にあります。

とくに大学・大学院卒の人の減少幅が大きくなっているようです。退職金については一般的に学歴や勤続年数がベースになるため、転職経験がある場合、退職金が想像以上に少なくなる事態も考えられます。大学・大学院卒で勤続年数35年以上の人には平均2,000万円を超える退職金が支給される一方、高校卒で勤続年数が35年未満の人は1,000万円に届きません。

50代は、年代的に収入が増える期待感がありますが、一方で教育費などのピークが来る時期でもあり、住宅ローンを利用中の人も少なくないと思われます。できるだけ安定的な収入を得られるうちにローンを完済に近づけておくことも、老後に向けての大切な準備となりそうです。

まとめにかえて

50代になると老後の生活を考える機会が増えてくると思います。退職金や年金の額は人それぞれですので、情報収集が第一です。勤務先に再雇用制度や継続雇用制度があるかどうかを知ることも重要です。

前述の通り、50代の平均的な貯蓄額は二極化が進んでいます。貯蓄は時間をかけて増やしていくものなので、自分独自のライフプランが必要となるでしょう。家計の見直しや資産計画について不安がある場合はファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも1つの方法です。50代は老後までにできることをすべてやっておきたい大切な時期だといえそうです。

参考

(※1)「高齢社会における資産形成・管理」金融審議会「市場ワーキング・グループ」
(※2)「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)2019(令和元)年財政検証の資料(経済成長率(実質<対物価>)0.0~0.9%の場合での推計値)」厚生労働省
(※3)「平成30年(2018年)就労条件総合調査 結果の概況(退職給付(一時金・年金)制度」厚生労働省
「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)」総務省統計局
「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)」生命保険文化センター

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部