キュレーターから読者に伝えたいポイント
今回は、米国の経済指標や日本株の業種ごとの株価パフォーマンスなどを振り返りながら、今後の投資戦略を考えるためのポイントを整理したいと思います。
9月利上げの可能性は後退したが
2016年8月26日に行われたジャクソンホールでのイエレンFRB議長講演後、9月の米国利上げ観測が一気に高まりました。しかし、9月6日に発表された米供給管理協会(ISM)の8月非製造業景況指数が思いのほか弱かったことから、そうした見方は一夜にして霧散しました。
とはいえ、この記事にあるように、単月データはブレが大きいこと、また、景況感指数が悪化した業種が輸送、倉庫、卸売りなどの特定業種に限られるため、米国景気に対して過度に悲観的になるべきではなく、年内利上げの可能性は依然として残っていると考えるべきでしょう。
出所:ISM非製造業景況指数、9月利上げ支持派を土俵際へ(ピクテ投信投資顧問)
世界貿易の停滞は循環的要因、あるいは構造要因なのか
米国景気にはまだ期待が持てるとはいえ、世界全体の景気を見ると、まだまだ先行きに不安が残ります。このことは、世界全体のモノの動き、つまり貿易統計からも見て取れます。
世界の貿易額の推移を振り返ると、2001年12月に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以降、2007年まで急拡大が続きました。その後も2008年の金融危機でいったんは大きく縮小しましたが、短期間でV字型回復を示しました。
しかしながら問題はその先です。2011年からは停滞色が色濃く表れ、直近までその傾向に大きな変化はありません。
こうした世界貿易停滞が、主要国の景気悪化という循環的な要因によるものなのか、あるいは保護主義政策の影響等の何らかの構造的な要因によるものかは専門家でも意見が分かれており、明確な答えはいまだに現れていません。
一方で、以下の記事にあるように、米国の大統領選挙では環太平洋経済連携協定(TPP)が争点の1つとなっており、選挙後に米国がグローバリゼーションを推進するのか、あるいは保護主義的な方向へ舵を切るのかが明確になると予想されています。
この問題は、政治と経済が密接に絡み合った複雑な問題ですが、世界経済の今後を左右する大きなポイントです。また、経済の血液ともいえる貿易が活発化しなければ、金利も上がらず、景気や株価も持続的な上昇は期待できません。
そうした観点でも、11月の米国の大統領選挙とその後の動向について注視する必要があると考えられます。
業種間で大きく異なる株価パフォーマンス
上述のように、米国のIMS非製造業景況指数が弱かったことから、年内の米国利上げや、それに伴う円安期待から外需株を見直す動き、およびバリュー株を見直す動きは終わったという声も聞かれ始めました。
とはいえ、どの株やセクターがバリュー株であり外需株なのかよく分からない、という個人投資家も多いと思います。実際、銘柄ごとに定義が明確になっているわけではありませんので仕方がないことだと思います。ただし、東証1部に上場する銘柄は17業種に分類されており、各業種の株価指数が日々算出されていることは覚えておきましょう。
この記事では、2016年上期(1月~6月)と、2016年下期(7月~9月1日まで)の株価パフォーマンスを17業種別に示していますが、前半と後半では、業種ごとの株価パフォーマンスに大きな違いがあることが一目瞭然です。
具体的には、バリュー株の代表である銀行は、上期は▲38%と17業種中で最低のパフォーマンスでしたが、下期は+23%と17業種中で最も高い上昇率になっています。
一方で、グロース(株価指標が割高で成長期待が高い銘柄群)の代表である医薬品は、上期は▲10%の下落とTOPIXの▲20%をアウトパフォームしていますが、下期は▲6%とTOPIXの+7%に対してアンダーパフォームしています。
このように、相場の局面ごとに業種間でパフォーマンスに大きな差が現れるため、定期的に17業種ぞれぞれのパフォーマンスの状況をチェックしながら投資戦略を練ることをお勧めします。
LIMO編集部