OKI(沖電気工業)は、独自のエピフィルムボンディング(Epi Film Bonding=EFB)技術を用いた3DマイクロLEDディスプレー技術を開発した。10月23日まで開催されたIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC 2020 ONLINE」に出展し、その概要を解説した。

LEDプリントヘッドの量産技術を応用

 EFBは、同社がLEDプリンターのプリントヘッド向けに開発し2006年に量産化を果たした独自技術。化合物半導体ウエハー上に形成したLED発光層の薄膜部分(エピ層)だけを剥離し、シリコンウエハーに形成したLEDドライバーIC上にこのLED薄膜を分子間力で強固に貼り付ける異種材料接合技術だ。

 ちなみに、LEDプリンター用に用いるLEDは、発光波長が700nm台後半の赤色(AlGaAs)である。これまでプリントヘッドとして累計で5億個(A4サイズのプリントヘッド換算で2000万本)の量産出荷実績を誇るが、膜剥がれなどの不良は起きていない。

 今回、このEFB技術を用いて、ドライバーIC上にLEDのRGB(赤緑青)発光層を個別に積層して貼り合わせ、フルカラーのモノリシック型3DマイクロLEDディスプレーを実現する技術「3D-EFB」の実証に成功した。エピ層を貼り合わせた後にチップ形成工程を行い、これをRGBそれぞれの発光層で繰り返し行うという。

RGB統合型はOKIが世界初

 1インチ以下のモノリシック型マイクロLEDは、ARスマートグラスやスマートウオッチへの搭載を目指して英Plessey Semiconductorsや香港のJade Bird Display(JBD)など世界中のメーカーが開発に取り組んでいるが、フルカラー化を実現した事例は、シャープが19年5月に開催されたディスプレーの国際学会「SID(The Society for Information Display)」で開発を発表した0.38インチの1053ppi品以外に例がない。PlesseyやJBDが開発したのは、現在のところ、いずれも赤や緑の単色ディスプレーである。

 シャープが開発した0.38インチ品は青色LEDを量子ドットで色変換してフルカラーを実現する手法を採用したが、個別に製造したRGBチップを統合してフルカラーを実現したのはOKIが世界初とみられる。

21年春にディスプレー試作へ

 OKIでは21年春をめどに3D-EFBでモノリシック型マイクロLEDディスプレーのプロトタイプを開発する計画だ。960×RGB×540画素の0.7インチ(チップサイズ8μm、1600ppi)と0.3インチ(同2μm、4200ppi)をターゲットにしており、いずれも輝度1万cd/㎡以上を実現する方針だ。

 エピ層を貼り合わせた後にLEDチップ形成工程を行うため、RGB各発光層の貼り合わせのずれは原理的に起こらない。今後さらなる高精度化を進め、1万ppi以上の高画素を実現する。また、単色では輝度3万cd/㎡以上が実現できており、さらに高輝度なディスプレーを実現することも可能になる見通しだ。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏