2020年9月17日に行われた、イオンリート投資法人2020年7月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:イオン・リートマネジメント株式会社 代表取締役社長  関延明 氏

Executive Summary

関延明氏:イオンリート投資法人第15期決算説明動画をご視聴いただきありがとうございます。イオン・リートマネジメントの関でございます。さっそくではございますが、今期決算説明資料に沿って説明させていただきます。

今回発表のサマリーをまとめています。当期は目に見えないウイルスの影響により厳しい環境下ではありましたが、15期の分配金は3,178円と、当初予想からプラス53円、1.7パーセント増の着地となりました。16期、17期の分配金は共に3,130円と、計画どおり安定した分配金を見込んでいます。

新型コロナウイルス、この後はコロナと略しますが、この影響は我々の保有施設においても例外ではありません。しかし、イオンリートの特徴であるマスターリーススキームの強みが発揮され、公表を超えるしっかりとした実績をお示しすることができました。16期、17期についても、引き続き安定した運営を継続できると考えています。

また、地域に根差し生活を支えるインフラ施設の機能として、緊急事態宣言下においてもGMSや食品スーパーは営業を継続しました。制限の解除後には全館の営業を再開し、店舗売上も回復しています。詳細については後ほど説明します。

第15期(2020年7月期)決算概要

今期の決算概要となります。一部でコロナの影響がありましたが、公表を上回る分配金を実現しています。スライドに記載の表のB列をご覧ください。賃料収入は計画どおりに推移し、2月の「イオンモール多摩平の森」の取得による増収に加え、コロナに対応した取り組みを進め、IR費用などのファンドコストの削減もあったことから増収増益となりました。

第16期(2021年1月期)・第17期(2021年7月期)業績予想

続いて、今後の業績予想となります。第16期、17期の分配金は3,130円を見込んでいます。「イオンモール多摩平の森」の固都税の費用化が始まる第17期の3,130円が現在の巡航分配金となります。引き続きコロナの感染状況に留意し、エンドテナントやマスターレッシーへの影響については注視しなければなりませんが、現時点において、業績への直接の影響はないと考えています。

ただし、万が一想定していないような事象が発生し、分配金にマイナスの影響が生じた場合であっても、配当準備積立金や利益超過分配を活用し、分配金の安定性に最大限配慮したいと考えています。

第15期運用状況 ~国内37商業施設 営業状況~

このページと次のページで、コロナの影響について国内37施設の営業状況および店舗業績を説明します。まずは営業状況ですが、期間を通じて全館休業を行った施設はありません。緊急事態宣言中もなんらかの営業は継続していました。

丁寧に説明しますと、専門店は一時的に営業の自粛をせざるを得ませんでしたが、GMSや食品スーパーは営業を継続しました。そして現在はすべての施設で営業を再開しています。

ご存知のように、緊急事態宣言は首都圏から始まり、全国へと拡大しました。そして宣言解除後、今日に至るまで地域的な差を持ちながら終息への道を歩んでいます。

イオンリートの保有する施設は立地が分散しているため、それぞれの地域特性に応じた対応を行い、お客さまの生活を支えるインフラとして機能することにより、影響を小さくできたと考えています。これは、もし今後、感染が拡大する状況となっても変わることはありませんので、運用の安定に貢献すると考えています。

第15期運用状況~国内37商業施設 店舗業績(前年比)~

この営業状況を踏まえた店舗業績を9ページに記載しています。従前より、店舗業績については四半期ごとの動向を参考資料として開示しており、今回も掲載していますので、ご確認ください。

今期は、コロナの影響について投資家のみなさまの関心が高いことを踏まえ、月次の動向について特別にお示しします。15期を通じ、リートの賃料収入は計画どおり、エンドテナントの売上高は4月を底に回復しています。

予断を許さない感染状況ではありますが、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」と言われるような新しい環境を見据え、競争力のある支持され続ける商業施設として、マスターレッシーであるイオングループ各社とコミュニケーションを取り、協議を重ね、イオンリートとしても取り組みを進めていきます。

なお、マレーシアでは日本とは異なり、法的拘束力のある厳しい制限、いわゆるロックダウンが行われ、大半のテナントが一時休業しました。しかし現在は営業を再開しています。

現時点で業績に与える影響は見込んでいませんが、なんらかの事象が発生した場合でも、資産規模に占める割合は1.5パーセントに止まりますので、ポートフォリオにおける影響は小さいと考えています。

Withコロナにおけるイオングループの対応

ここでは、この業績の背景にあるイオングループの取り組みを一部記載しています。コロナに対して、グループを挙げて感染予防を徹底し、安心安全をお客さまに提供することを掲げています。

また、記載していませんが、グループの対策会議において、感染拡大期には中国武漢にあるイオンモールの状況をシェアすることで、お客さまと従業員の安心安全を支えてきました。この対策会議には資産運用会社もすべての回で参加しています。

このような地道な取り組みの一つひとつがお客さまの信頼感を高め、結果として、集客や売上の回復、向上へとつながり、生活インフラとしての価値を高めることになると考えています。

第15期末時点でのポートフォリオ指標

15期の各種指標となります。1口当たりのNAVは前期比で1,843円増加し、14万2,360円となりました。なお、鑑定評価額へのコロナの影響は期末時点において特に見受けられません。

着実な巡航分配金の成長

1年半前の決算説明会において、3年から5年の中期目標として「巡航分配金3,300円」と公表しました。この見通しに変わりはなく、これより1年半から3年半の間にこの目標を達成したいと考えています。

「イオンモール多摩平の森」の取得後の巡航分配金は17期の3,130円となります。豊富なキャッシュフロー、安定したマスターリーススキームといった強みを生かして、分配金の安定を重視し、着実に分配金を成長させていきます。

今後の成長目標達成に向けた分配金向上施策

成長目標として、中期的な巡航分配金目標は3,300円、また時期は定めていませんが、資産規模5,000億円を目指していきます。イオンリートの強みは豊富なキャッシュフローにあります。活用シミュレーションに示すように、長期的に最も投資主価値の向上につながる物件取得を第一としながら、マーケット状況に応じて、自己投資口取得などさまざまな施策を機動的に検討していきます。

イオンリートの強み

ここからは、他にはないイオンリート独自の強みについて、主な特徴を説明します。

地域社会に支持され続ける「生活インフラ資産」

「生活インフラ資産」とは、地域のお客さまに支持され、日々の暮らしにおいて頼りにされる商業施設と考えています。イラストの周りに事例を紹介していますが、物の販売だけでなく、さまざまなサービスを提供し、地域の大切な機能を担っています。

そして何より重要なことは、生活スタイルの変化やテクノロジーの進歩に応じ、求められる姿に変わり続け、地域社会に支持され続ける施設であるということです。

目下、コロナへの対応が課題となっていますが、先ほどお話ししたとおり、イオングループでは総力を挙げて対策を実行し、安心安全を確保した上でサービスを提供し続けています。

「生活インフラ資産」への目利き力

どのような視点で「生活インフラ資産」を見ているか、イオンリートの考え方についてお話しします。

具体的には、「立地」「建物設備」「運営力」という3つの視点で物件を評価しています。「立地」については、人口動態、商圏、交通アクセスや競合環境、将来の開発計画など、商業不動産としての土地そのものの力を見ています。

「建物施設」としては、利便性のポイントとなる大きな駐車場や建物構造、防災拠点としての機能など、人を引きつけ、地域の安定や発展に資するような機能を有しているかを見ます。

「運営力」については、地域にふさわしいテナントを幅広く揃え、加えて郵便局、保育施設といった公共の機能があり、地域の方にとって来店動機となる魅力的な施設となっているかを見ます。

こうした視点で個々の物件を総合的に判断することによって、イオンリートならではの目利き力を発揮し、投資主価値に資する物件を厳選し取得していきます。

生活インフラ資産の安定性 及び 賃料の安定性

リースストラクチャーをご覧ください。イオンリートはグループ各社と固定賃料を基本としたマスターリース契約、つまり、1棟貸しの契約を締結しています。そのためお客さまが買い物をする専門店、エンドテナントの営業リスクはマスターリース会社が負っているかたちになります。

つまり、イオンリートは、経済状況の変化やショッピングセンターの売上変動の影響を直接受けることなく、安定した賃料収入を見込むことができます。これは現在のコロナ禍においても影響を受けづらいということになります。

外部成長 ~パイプラインサポートを通じた厳選投資~

パイプラインについて説明します。イオンリートの強みは、パイプラインサポートを通じた厳選投資により、クオリティを維持しつつ、適切な条件で物件取得ができる外部成長力です。

スライドの左側にこれまでの実績を示しています。取得を検討した物件のうち、実際に取得したものは金額ベースで約3割に過ぎず、厳選投資を行っていることが数値として表れています。また、すべての取得が相対取引であり、適性な条件、優位な価格での取得ができています。

外部成長 ~パイプラインサポートによる更なる成長~

先ほどお話ししたパイプラインですが、現在合計で約2,600億円あります。イオングループ11社とサポート契約を締結しており、いち早くグループが運営する物件の情報を得ることができるため、優先的に物件取得の検討ができるという強みを生かし、継続的な成長を目指します。

内部成長 ~運用物件の価値向上のための活性化投資~

物件の価値向上のための改装投資を「活性化投資」と呼んでおり、これには2つの側面があります。1つは、増床や大規模なリニューアルといった、物件の競争力強化のための投資であり、もう1つは物件の機能維持、向上のための投資です。

いずれも商業施設にとって非常に重要な投資であり、イオングループと協議しながら「活性化投資」により物件の競争力を高め、賃料増額による内部成長を実現してきました。

特に、物件の機能維持、向上のための投資は、単なる設備更新だけではなく、防災や減災に対する投資も含まれています。防災、減災に対する投資は、直接集客力が向上する投資ではありません。しかし、お客さまの安全確保はもちろんのこと、災害時の早期営業再開にもつながり、地域の生活インフラとして非常に重要な投資と考えています。

防災、減災投資の1例としては、防煙垂れ壁の改修工事を進めており、来年の1月までで国内の商業施設の内36物件、約97パーセントで改修済みとなる見込みです。

財務方針 ~安定調達~

続いて、財務戦略について説明します。コロナの影響で非常に見通しづらい金融マーケット環境ですが、今後の環境変化にも耐え得るよう、IPO以来、安定調達に向けた取り組みを実施してきました。4本の柱の観点で、強い財務基盤を構築していきます。

LTVは15期末で44.9パーセントを維持しており、引き続き43パーセントから47パーセントを目安にコントロールしていきます。

リスクマネジメント ~自然災害への対応~

イオンリートは自然災害への耐性が強いリートです。そのポイントは4点あります。24都道府県に広がる地域分散投資、年間80億円の豊富なキャッシュフロー、火災保険に加えてJリートでは数少ない地震保険の付保、そして4億7,400万円の配当準備積立金です。これらの強みが分配金の安定性を支えています。

成長の原動力となるキャッシュフロー創出力

強みの1つであるキャッシュフロー創出力について説明します。年間のフリーキャッシュフローは約80億円にのぼります。この豊富なキャッシュを活用し、新規物件の取得や活性化への投資を行い、公募増資や借入によらず、ポートフォリオの収益力向上を実現できます。

これまで「イオンモール甲府昭和」の増築棟の取得や「イオンモール盛岡」の増床リニューアルなどに活用してきました。今後も豊富なキャッシュを活用し、着実に分配金を伸ばしていきます。

サステナビリティ ~イオンリート~

イオンリートとイオングループのサステナビリティへの取り組みについて説明します。イオンリートは、人々の豊かな生活の実現と、地域社会への貢献を理念とし、生活インフラ資産への投資を通じ中長期にわたる安定収益の確保を実現していきます。今期は「イオンモール多摩平の森」にてCASBEE不動産評価認証を取得し、認証取得物件は24物件となりました。

サステナビリティ ~イオングループ~

続いて、イオングループのサステナビリティ基本方針と取り組み事例です。今でこそサステナビリティという考え方が注目を集めていますが、イオングループは30年前から植樹活動を始め、さまざまな地域社会に貢献する取り組みを推進してきました。これからも先進的な取り組みを通じ、持続可能な社会の実現と、グループの成長の両立を目指します。

サステナビリティ ~社会的課題解決への取組み~

ここから、イオンリート並びにグループのサステナビリティの具体的な取り組みについて説明します。

まず、社会的な課題に対する取り組みについてです。普段から保有物件は地域交流やコミュニティの場となっており、商業施設という枠を飛び越え、まさに生活インフラ資産として地域のみなさまに頼られる存在となっています。

また、運用会社としても、働きやすい環境の整備をはじめ各種取り組みを推進し、経済産業省による健康経営優良法人に認定されています。コロナ感染の拡大の前から、パンデミック対策として、マスクや消毒液を全社員に配布するなど、運用体制を維持する取り組みも積極的に進めています。

サステナビリティ ~環境・ガバナンスへの取組み~

ここでは環境とガバナンスの取り組みについてお話します。環境については、エネルギー消費量およびCO2排出量抑制の取り組みや、エネルギー効率化の取り組みを積極的に進めています。例えば「イオンモール倉敷」では太陽光パネル、植樹、壁面緑化やガーデンミストなど、環境に配慮した多くの取り組みを行い、エネルギーの効率化を進めています。

また、ガバナンスという点では、透明性のある意思決定プロセスや、投資主価値と連動した運用報酬体系、セイムボート出資など、投資主価値を意識した体制を整えています。

マネジメントメッセージ

最後になりますが、前回の決算説明において「安定を強みとするイオンリートは、平常時にはおもしろ味に欠けると思われがちだが、マーケットが不安定な時により強みを発揮する」とお話ししました。今回の決算内容はまさにその強みが生かされた結果となりました。

さて、コロナに端を発したマーケットの混乱は、東証リート指数の軟調さというかたちで続いており、特に商業セクターへの厳しい見方が続いています。

繰り返しになりますが、イオンリートの強みは、マスターリース契約、豊富なキャッシュフロー、地域に支持される生活インフラ資産など、他のリートにはない独自の強みに支えられた安定性にあります。投資家のみなさまにご評価いただけるようなリート運営を続け、中長期にわたり着実に投資主価値の向上を実現していきたいと考えています。

以上で、説明を終わります。ありがとうございました。

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