盗電は立派な犯罪です

スマホ時代になってから、外出先で思わぬ電池切れで困った経験をお持ちの方は非常に多いと思います。最近では、来店者向けに充電コンセントが設置されたコーヒーショップも増えていますが、これはあくまでも顧客サービスの一環であり、コーヒーショップに電気をタダで使わせる義務はありません。

そうしたサービスを提供していない店で、こっそりと電気を使い(例えばシャワー式トイレのコンセントを抜いて使うなど)、それが見つかった場合には窃盗罪に問われる可能性がありますので、十分に注意しましょう。

ちなみに、電気を盗むことを盗電と言います。発展途上国などでは電信柱に上り無断で電気を自宅に引き込んでタダで使うという大胆な盗電が行われていますが、たとえ数分のスマホの充電でも、やっていることに変わりはないのです。どうしても充電したい時には、お店やの人や駅員さんなどに許可を得て、トラブルを事前に避けることをお勧めします。

お金を払って正々堂々と充電ができるようになるサービスとは

とはいえ、ポケモンGOに代表されるように電池を大量に消費するスマホアプリはますます増えています。そのため、外出先での充電の必要性は高まるばかりです。一方、電気はタダではないので無料サービスコンセントの普及拡大にも限界があります。

そうした中で注目されるのが、公衆電源サービス(以下、espotサービス)の実証実験開始というニュースです。2016年8月22日に発表された内容によると、東京電力ホールディングス(9501)の100%子会社である東京電力エナジーパートナー、ソニー(6758)の同じく100%子会社であるソニービジネスソリューション、関電工(1942)の3社は、8月後半から2017年1月まで、都内36か所のコンビニや飲食店で実証実験を行うとのことです。

サービスの仕組みは、事前に購入したプリペイド方式の「espot(エスポット)カード」を専用の認証型コンセントにかざすことなどで電源サービスを利用するものです(20分で100円・税別)。ちなみに、espotというのは、「誰でも、“電気(energy)”を使える“場所(spot)”」を意味した造語で、東京電力ホールディングスが登録商標としています。

こうしたサービスがあれば、充電ケーブルさえ持っていれば盗電などしなくても正々堂々とどこでも充電が可能となります。実用化が待ち遠しいところですが、現時点では本格的な実用化は2018年からとされています。

サービス提供者側の狙い

ユーザー視点からは非常に興味深いサービスですが、このサービスを提供する各社の狙いについても少し考えて見たいと思います。

まず、東京電力エナジーパートナーですが、同社は電力小売りに特化した東京電力ホールディングスの子会社です。従来は、家などの固定した場所に電気を送ることがメインの仕事でしたが、今後はespotサービスを活用することで、外出先でも電気を使える新しい形態の契約が可能になります。

また、今回の実験はスマホなどのモバイル機器の充電が対象となっていますが、将来は電気自動車の充電システムなどへの活用も想定されます。

また、espotサービスを設置するコンビニや飲食店は、このサービスを集客などのプロモーションにも活用できるようになるため、電気を売ること以外の付加価値サービスの提供も考えられます。

一方、ソニービジネスソリューションは、今回の実験で使われる認証型コンセントの開発・製造やコンセント利用の認証・課金を実行するための管理サーバーの構築や運用を通して、IoTサービスに関する知見を蓄積とすることが可能になります。それを通じて、スマートホームに最適な家電製品の開発にも弾みがつくことが期待されます。

まとめ

冒頭で、”盗電疑惑”に気を付けましょうと申し上げましたが、このサービスが実用化されれば、そうした不安なしに、どこにいても電気に困らない生活が実現しそうです。一方、これまで電源サービスを提供できなかった飲食店やコンビニなどの設置事業者も、長時間使用者を排除しながら電源を提供することが可能になり、集客増や顧客サービスの向上も見込めそうです。

ぜひ、これが実験で終わらずに、ユーザー、設置者ともにハッピーなものとなるような実用サービスにまで高めていってほしいものです。

ちなみに、筆者は実験が予定されている都内のコンビニや飲食店を数店舗訪問してみましたが、残念ながら発表の1週間後の8月30日時点では、まだ、どこも認証型コンセントすら設置されていませんでした。まずは早期の実験開始を願いたいところです。

なお、9月11日まではモニターを募集中ですので、ご興味をあるかたは、espotのサイトまで

 

和泉 美治