このAiPで先行していたのが、米クアルコムだ。18年に第1世代となる「QTM052」を発表、19年には対応周波数の拡大と低背化を図った第2世代の「QTM525」をリリース。モデムを含めて、ミリ波のソリューションを一元的にサポートできる体制を整えている。
搭載員数を削減か
アップルの新機種に搭載されるベースバンド(モデム)チップは、クアルコム製が搭載される見通しだ。アップルは従来インテルから同チップを調達していたが、インテルが同事業から撤退。その事業をアップルは譲り受けているが、ミリ波を含む5Gモデムについてはまだ開発が間に合っておらず、クアルコムを頼らざるを得ない状況だ。
これに伴って、AiPもクアルコム製が搭載されると見られていたが、新機種には独自設計のカスタム品が搭載される可能性が高まっている。先述のとおりAiPはスマホ1台に複数個搭載する必要があるため、員数削減がニーズとして強い。アップルはここに独自技術を盛り込むことで、搭載員数削減を実現できたとみられている。具体的には搭載員数を2点まで減らしたといわれている。
一部ではこのAiPは設計や生産の遅れによって、上位2機種の販売時期が後ろ倒しになる可能性も指摘されている。
電子デバイス産業新聞 編集部 副編集長 稲葉雅巳
まとめにかえて
今年のiPhone生産計画は例年にも増して強気な数字が並んでいます。初の5G対応ということもそうですが、ハイエンド機種で競合するファーウェイが米国政府からの制裁によって、実質的に市場から閉め出されてしまっていることも要因の1つです。兎にも角にもiPhone新機種の売れ行きは今後のスマートフォン(スマホ)市場を見通すうえで重要な試金石となります。スマホのボリュームゾーンは年々、低価格帯のミドルレンジ~ローエンドに移行しつつあり、半導体などのハイテク産業にとっても、必ずしも良い流れとはいえません。思惑どおり新機種が売れるかどうかは今後の業界トレンドを占う意味でも重要な指標となりそうです。
電子デバイス産業新聞