流動性のあるオルタナティブ資産を使った適切な資産分散

ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ博士はかつて「金融市場における唯一のフリーランチ(うまい話)が分散投資である」と述べています。

分散投資のカギは、ポートフォリオの幅広い資産クラスへの投資にあります。そして各資産間においては低相関が望ましいです。以前は、株式投資家にとって国債は、金融市場が混乱した際などに強さを発揮する分散投資の対象とされてきました。2008年の金融危機がその典型的事例です。

しかし、残念ながら現在は、世界の多くの国の長期国債利回りは過去最低水準にあります。したがって、国債が分散投資先としてこれまで通りの役割を果たせるとは考えにくいため、オルタナティブ資産への投資を検討すべきと考えられます。

オルタナティブ投資については多くの誤った通説や誤解があります。典型的なものでは、オルタナティブ資産は流動性が低く個人投資家は投資できないといった誤解や、リスクが高く価格変動幅が大きいといった誤った情報が挙げられます。

実際は、オルタナティブ投資は数十年の実績があり、今日では個人投資家もさまざまな流動性条件の下で幅広いオルタナティブ資産への投資機会があります。

オルタナティブ資産の価格変動要因は時に複雑で大きなリスク(大きなリターンの振れ幅)を伴うことがあるものの、流動性のあるオルタナティブ資産は、債券や株式などの伝統的資産との相関が低いことからリスクを軽減しボラティリティを低く押さえる効果があり、ポートフォリオを守る分散投資の緩衝材として活用が可能です。

結論として、投資家はより長期の視点で投資を行うべきであり、また市場心理や周囲の意見に惑わされることなく冷静に投資先を選択すべきです。

多くの投資家がFOMO(取り残されることへの恐怖)の影響を受け、一時の感情に流されて投資判断を下し、その結果として株式相場の急上昇や急落が生じます。

重要なことは、全ての卵を一つのカゴに盛ることなく、不安心理を克服し、合理的で緻密な分析に基づいた投資判断により分散投資を行うことです。そして今回紹介した2つの方法は、資産運用に適した手法であると確信しています。

HSBC投信株式会社 代表取締役社長 金子 正幸