スマートグラスメーカーの米Vuzix Corporation(ビュージックス)は、2021年にマイクロLEDディスプレーを搭載した次世代スマートグラスを発売予定だと発表した。これまでは液晶や有機ELを搭載してきたが、マイクロLEDを搭載するのは今回が初めてになる。

 手ごろな価格の一般消費者向けから、セルラー接続機能を搭載したハイエンドのエンタープライズ用まで幅広くラインアップする予定で、特許申請中である没入型ステレオ音響スピーカーに加えて、より大きな視野(FOV=Fields of View)、高度な導波路光学、3Dを含む双眼のディスプレーを備え、高品質な音声や通話を支えるノイズキャンセリングマイクも搭載するという。

コロナ対策でスマートグラスへの注目度上昇

 ビュージックスは1997年に設立されたウエアラブル機器、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)機器のメーカーで、現在はメガネに外付けするタイプや、メガネ一体型のスマートグラス製品として「Vuzix M400」「Vizix Blade」「Vuzix M300XL」などを商品化している。2015年1月には半導体世界最大手のインテルから2480万ドルの出資を受け、インテルが発行済み株式の約30%を保有している。

 AR/VRスマートグラスは、新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、リモートワークや遠隔作業支援に活用できるツールとして、世界的に注目度が急上昇している。3月には、すでにM400を100台受注していたオランダの医療サービス会社1Minuut Innovationから、新型コロナウイルス対策として110台の追加受注を獲得。9月には、台湾のChi-Mei Medical Centerで外科手術にM400が数百時間使用された事例を報告するなど、医療や業務用に新たな市場を開拓している。

マイクロLEDで高性能化を図る

 マイクロLEDディスプレーは、画素に発光するLEDを採用した新型ディスプレーであり、既存の液晶や有機ELに比べて、鮮やかな発色や高い輝度が得られ、ディスプレーを低消費電力化できるのが利点と言われている。ARスマートグラスを開発中とされる米AppleもマイクロLEDディスプレーの実用化と採用に興味を示しており、数年内にApple Watchに搭載する可能性も噂されている。

 ビュージックスのマイクロLED搭載スマートグラスは、できる限りサイズを小さく設計しており、テンプルにデュアルバッテリーを搭載しているため、操作に配線は不要。Wi-FiとBluetoothに加え、セルラーLTE統合オプションを用意する。Androidを実行する最新のCPUを搭載し、サードパーティ製アプリケーションもサポートする。

 社長兼CEOのPaul Travers氏は「当社は過去20年間、ウエアラブルディスプレー技術の開発に取り組んできた。(マイクロLEDディスプレーの採用によって)消費者向け、企業向けスマートグラスの新たな波を開く画期的な集大成を発表できることを嬉しく思う」と述べている。

協業先の英LEDメーカーが供給か

 ビュージックスは18年8月にモノリシック型マイクロLEDディスプレーを開発している英Plessey Semiconductorsと開発提携を結び、19年5月には専用ディスプレーの長期供給契約を締結した。Plessey SemiconductorsのマイクロLED光源とビュージックスの光学技術を組み合わせ、ARスマートグラスの開発・製造をサポートする。

 Plessey Semiconductorsは、自社でモノリシック型マイクロLEDアレイの開発・量産体制の確立を進めるのと並行して、シリコンバックプレーン(背面駆動基板)を開発する台湾のJasper Display、米Compound Photonicsと協業し、LEDアレイとの統合(貼り合わせ)も進めている。20年3月には、AR/MR(複合現実)用マイクロLEDディスプレーおよびコンピューティングプラットフォームを開発するため、SNS大手の米Facebookと協業することも明らかにし、Facebookが開発するARスマートグラスにマイクロLEDディスプレーを独占供給するとみられている。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏