女子マラソンで目立った武装警官

日本選手の活躍に湧くリオオリンピックですが、8月14日に行われた女子マラソンでは、日本選手の結果よりも武装警官が異様に多かったことが印象的でした。室内競技では気付かない、ブラジルの現実が思い出されたからです。

筆者は昨年11月にブラジルを訪問する機会がありましたが、最も記憶に残ったのは、現地駐在員の方から「治安が悪いので細心の注意を払うように」と何度も言われたことでした。そのことを思い起こしつつ、女子マラソンの映像を見ながら治安の悪さは相変わらずだと感じました。

ちなみに、8月16日付け日本経済新聞によると、選手や観光客が強盗に襲われる被害が相次いでいるとのことです。

そもそも、なぜ治安が悪いのか

治安が悪いと言われているとはいえ、ブラジルの日常は非常に穏やかなラテンの世界でした。イデオロギーや宗教の対立による内戦状態にあるわけでも、過激派によるテロが頻発しているわけでもありません。治安の悪さの原因となっているのはテロリストではなく、貧困層のギャング達であることがブラジルの特色です。

ブラジルの政治体制は、不安定ではありますが、民主的な手続きにのっとって行われています。たとえば、中国やロシアのような人治政治でもなく、れっきとした法治主義国家です。

それなのに、強盗が絶えない背景には、貧富の大きな格差や、犯罪者に対してやや寛容である国柄から(刑務所が満杯であるためという話も聞きました)、犯罪者が街に多く潜んでいるからと言われています。

なお、ブラジルに旅行等で行かれる方は、ホテルから外出する時は、いつホールドアップ(ピストル強盗)に遭ってもいいように必要最小限の現金だけを持ち、パスポート、クレジットカードは置いていくことをお勧めします。また、現地の方によると、サングラスをすると、どこを見ているかわからないので、強盗に襲われる確率が減るとのことです。

ブラジルのATMには爆破対応が

昨年11月のブラジル訪問は、OKI(6703)のATM事業の見学が目的でしたが、非常に驚いたのはATMの仕様が日本とは大きく異なることでした。

多くの日本人にとっては、にわかには信じ難いと思いますが、ブラジルでは、偽札被害対策よりも、ダイナマイトによる爆破への対策が大きな課題になっているとのことです(年間3,000台前後が爆破されているという話もあります)。

また、カード読み取り部分に本物そっくりの新たな読み取り装置を取り付け、スキミングが行われることも頻発しているとのことでした。今回のオリンピックでも何件かスキミング被害に合われた方の報道がありましたが、これが日常だということです。そのため、ブラジル向けATMの仕様は日本とは大きく異なることになるわけです。

具体的には、爆破されても紙幣が盗難されないように金庫部分の鋼鉄を厚く頑丈にする、爆破されたときに紙幣を特殊インクで汚し使えないようにする、ダイナマイトを投入されないように現金取り出し部分を改造する、などです。

当然、こうした要求に応えるとコストアップにはなりますが、現地でのシェアを維持・拡大させるためには避けて通れないことになります。

まとめ

リオオリンピックは21日の閉会式まであと残りわずかになってきましたが、大きな混乱なく無事に閉会して欲しいと心から願うばかりです。

ちなみに、21日21時30分(日本時間、日曜日)には男子マラソンが開催予定です。テレビ観戦される際に、貧富の格差問題を背景にした治安問題という観点を頭の隅に置いてみいてはいかがでしょうか。格差問題を放置してきた代償があまりにも大きすぎることが感じられるはずです。

 

和泉 美治