取引開始から約1年を迎え、科創板が主役に躍り出た。中国国内で戦略的テクノロジーを確保する動きが強まる中、多くの企業が資金調達先に中国版ナスダックと呼ばれる科創板を選んでいる。
2020年はこれまでのところ、科創板での資金調達額が上海および深センの両メインボードにおける調達額を上回っており、科創板が上場先として注目を集めている。公表数値では、年初からの科創板での資金調達額(累計)は1,330億元に達する一方、上海、深セン両証券取引所での調達額は合わせて1,130億元にとどまる。
また、上場後の流通市場における力強いパフォーマンスから、科創板には上場予備軍が後を絶たない。ブルームバーグによると、科創板に上場する67社の上場後のパフォーマンスは平均+198%に達する。これは主にテクノロジー株と一般消費財がけん引したもので、上昇率は各々226%と195%となっている。
科創板における過去最大規模の案件は、半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)による75億米ドルの新規公開で、同社株は2020年7月の上場以来187%上昇している。米中貿易摩擦や、半導体やビデオストリーミング・プラットフォーム等のテクノロジー関連および戦略産業に対する米国からの監視強化を受けて、同社は昨年ニューヨーク証券取引所から撤退することを決め、科創板に上場した。
11月の米大統領選に向けて米中対立が激化する可能性があるため、テクノロジー、ヘルスケア、自動車セクターなど多くの中国企業が、上場審査の緩い科創板で資金調達を行う計画を発表している。
科創板が活況なのは、赤字企業が伝統的な資金調達手段より迅速に資金を調達することができるからだ。これら利益が出ない赤字のスタートアップ企業は上海と深センのメインボードの上場基準を満たせず、創業から間もないため銀行融資を受ける資格もない。
もう1つの追い風は、中国国内投資家がグロース株に喜んでプレミアムを払うことだろう。たとえば前述のSMICの科創板での株価は、重複上場する香港証券取引所よりも190%高い。全体で見れば、中国本土に上場するA株は、時価総額調整後で香港に上場するH株を59%上回る水準で取引されている。