2020年7月30日に行なわれた、大東建託株式会社2021年3月期第1四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:大東建託株式会社 常務取締役 経営管理本部長 兼 関連事業本部長 川合秀司 氏
令和2年7月豪雨の被害状況
川合秀司氏:本日はご多用のところご参加を賜りまして、誠にありがとうございます。川合でございます。中間と期末の決算説明会は社長の小林が行なっておりますが、第1四半期と第3四半期につきましては私が担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
また、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、5月に行なわれました前期の決算説明会に引き続き、このようなかたちでの決算説明会とさせていただきます。私も誰もいない前で説明すると勝手が違っており、なかなか不自由な点もあると思いますが何卒よろしくお願いいたします。
それでは決算説明に入る前に、先日発生した令和2年7月豪雨および新型コロナウイルスの当社への影響と対応状況についてご説明したいと思います。4ページをご覧ください。
先日、九州を中心に西日本で発生した豪雨の被害についてです。工事仕掛中物件における被害は、施工中に外壁が土砂に巻き込まれた物件が1棟です。管理物件においては床上浸水が83棟、床下浸水が68棟、その他被害が33棟となっています。合わせて都道府県別の被害状況も記載していますが、九州の広範囲に被害がもたらされ、中でも福岡県の被害が甚大であると言えます。
なお、本豪雨災害では長野県や岐阜県等も被災しましたが、当社の施工中または管理物件に大きな被害はありません。また記載はありませんが、先日の山形での記録的豪雨では、仕掛中物件で1棟、管理物件で3棟の床下浸水の被害がありました。いずれの災害についても、業績に与える影響は軽微と想定しています。
令和2年7月豪雨に関する当社支援
5ページは本災害における当社の支援状況です。義援金や当社のオーナーと当社管理建物入居者を対象とした無償住居の提供、家具家電の無償レンタル、あるいは住み替え契約時の優遇などを行なっています。
無償住居の提供は63件、住み替え契約時の優遇策は66件の利用がありました。復旧復興まである程度の時間を要すると思われますが、継続的な被災地支援に尽力していきたいと思います。
新型コロナウイルス感染拡大による影響
6ページをご覧ください。当社グループへの新型コロナウイルスの影響について触れたいと思います。業績への影響については後ほど説明します。4月から6月にかけて、緊急事態宣言の発令および解除に伴い、どのように事業活動を行なっていたかをお示ししているのがこちらの図です。
赤い矢印が休止、黄色の矢印は順次再開や規模縮小、緑の矢印は全面再開を表しています。建築営業、施工現場、入居斡旋、その下に緊急事態宣言の発令と解除について記載しています。緊急事態宣言の状況に合わせて5月中旬から段階的に制限を解除し、5月末にはすべての業務を再開しています。
新型コロナウイルスに関する当社支援
7ページには当社の支援内容が記載されています。5月の決算説明会でご説明した賃料およびガス料金の支払い猶予については、どちらも4月20日から受付を開始し、6月末で終了しました。支払い猶予を受け付けた件数と金額については、賃料が8,003件で15億9,000万円、ガス料金が1,141件で1,257万円でした。また一番下に記載しているとおり、日本医師会への寄付も実施しています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響への対応
8ページには、7月以降の当社事業の活動状況について記載しています。感染拡大防止策を講じた上で業務を遂行していることはもちろんですが、3密回避と接触時間低減のための取り組みを各職種ごとに実施しています。
とくに営業活動については、マスク着用やソーシャルディスタンス確保などの徹底した感染対策を行ない、地域性を配慮しながらダイレクトセールスや顧客開拓も徐々に再開しています。施工現場においては、作業員同士の間隔確保と現場入場者数の制限を実施しています。
これから暑さが本格化してきますので、新型コロナウイルスだけでなく熱中症にも配慮した対策を実施していきます。なお、本社事務所においては出社を制限し、出社率は関東1都3県で30パーセント、そのほかの地域で40パーセントとしています。
損益(連結PL)
続いて、2021年3月期第1四半期の決算の状況についてご説明します。とくに断りのない限り連結ベースとなっています。
10ページは当期の損益の状況です。売上高は前年同期比3.4パーセント減少の3,552億8,600万円、営業利益は前年同期比15.3パーセント減少の236億2,700万円、経常利益は前年同期比17.2パーセント減少の244億7,200万円です。親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比18.7パーセント減少の165億7,900万円となりました。
損益(営業利益増減要因)〈前年同期比〉
11ページには、営業利益が前年同期を下回った理由について、セグメント別にご説明しています。今期の営業利益は236億円となり、前期の279億円を43億円下回りました。内訳は、完成工事総利益で72億円の減少、不動産事業総利益で2億円の減少、その他の事業総利益で2億円の増加、販管費の減少による29億円の増加となっています。
セグメント別損益(建設事業①)
12ページをご覧ください。セグメント別の損益についてご説明します。まず建設セグメントの業績は、完成工事高が前年同期比17.5パーセント減少の898億円、完成工事総利益は前年同期比23.4パーセント減少の234億円でした。営業利益は前年同期比40.2パーセント減少の70億円となりました。
なお、この第1四半期に新型コロナウイルスの影響で工事現場の稼働が10日間ほど休止しました。その影響による売上高マイナス100億円と総利益マイナス約25億円から30億円がこの減少の中に含まれています。
セグメント別損益(建設事業②)
13ページをご覧ください。建設セグメントの利益率です。濃い赤の折れ線グラフは完成工事総利益率の推移です。前年同期比で2.0ポイント低下し、26.1パーセントとなりました。
総利益率低下の内訳は、労務費でマイナス1.6ポイント、資材費、為替・輸入資材は前年と同水準です。また、支援機構利用案件の増加により、大東ファイナンスの二次融資が増加したことに伴う繰延利益の増加で、マイナス0.4ポイントとなっています。
このうち、労務費の1.6ポイントの内訳については、主に鉄筋加工等を行なう職人の工賃、手間賃により0.5ポイント上昇、完成工事が減少する一方で当社技術社員の人件費や経費などの固定費は減少しないため、間接原価で1.1ポイント上昇しています。
薄い赤の折れ線グラフで示しているのは、完成工事営業利益率の推移です。営業利益率は前年同期比で3.0ポイント低下し、7.8パーセントとなりました。営業利益率が総利益率より大きく低下したのは、こちらも人件費や固定費などがそれほど減少していないことによるものです。
セグメント別損益(不動産事業①)
14ページをご覧ください。不動産セグメントの業績です。売上高は前年同期比2.5パーセント増加の2,498億円となりました。売上総利益は前年同期比0.8パーセント減少の269億円です。
これは一括借上物件の増加および好調な入居率により家賃収入が増加する一方で、新型コロナウイルスの影響による店舗閉鎖に伴って仲介件数が減少し、仲介手数料収入が減少したこと、そのほか営繕工事が減少したことによるものです。また、営業利益は前年同期比0.5パーセント増加の174億円となりました。
セグメント別損益(不動産事業②)
次に、不動産セグメントの利益率についてご説明します。濃い緑の折れ線グラフで示しているのは売上高総利益率の推移です。総利益率は前年同期比で0.3ポイント減少し10.8パーセントとなりました。薄い緑の折れ線グラフで示しているのは、売上高営業利益率の推移です。営業利益率は前年同期比で0.1ポイント減少し7.0パーセントとなりました。
こちらは建設セグメントと逆で、販管費の方に使っていない部分があり、前年同期総利益率との差が0.3ポイントほどになっています。
セグメント別損益(その他事業)
16ページをご覧ください。その他事業についてご説明します。売上高は前年同期比2.9パーセント増加の約155億円、売上総利益は前年同期比3.5パーセント増加の約65億円となりました。
これはガス供給事業のガスパルで稼働メーター数が増加したことや、大東ファイナンスで営業貸付金の増加による利息収入が増加したこと、その一方、新型コロナウイルスの影響によりマレーシアのホテルの稼働率が低下し、売上利益が減少したことによるものです。また、営業利益は前年同期比3.2パーセント増加の約34億円となりました。
損益(販管費)
17ページをご覧ください。販管費についてご説明します。販管費は前年同期より29億円減少の332億円となりました。内訳は人件費で14億円、広告宣伝費で12億円、その他費用で3億円です。
なお、新型コロナウイルスの影響でイベントを取りやめたり、広告宣伝を実施できなかったりしたものが、この29億円減少のうちの17億円に含まれています。この結果、売上高販管費率は前年同期比0.4ポイント減少の9.4パーセントとなりました。
財務状況(連結BS)
18ページをご覧ください。連結貸借対照表の状況についてご説明します。スライドの一番右が今期の6月末の貸借対照表となります。スライドの真ん中に示す前期末との比較で、総資産は528億円減少の8,274億円、負債は453億円減少の5,488億円、純資産は76億円減少の2,785億円となりました。この結果、自己資本比率は1.6ポイント低下し34.1パーセントでした。
財務状況(連結CF)
19ページはキャッシュフローの状況です。営業キャッシュフローは194億円の使用となりました。これは税金等調整前四半期純利益を244億円計上したのに対し、法人税の支払いが285億円、夏季賞与の支給が73億円、未成工事受入金の減少が58億円あったことによるものです。
投資キャッシュフローは21億円の使用となりました。これは社債を償還した一方で、有形固定資産の取得が23億円あります。これには、3月に完成し5月にオープンした東雲にある当社の「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」の、工事代金の残りの部分9億円も含まれています。それからシステム開発等にかかるソフトウェアの取得12億円などによるものです。
財務キャッシュフローは297億円の使用となりました。これは配当金の支払い、長期借入金の返済などによるものです。以上の結果、2020年6月末の現金及び現金同等物の残高は、期首と比較して515億円減少の1,084億円となりました。
受注関連(受注高・受注工事残高)
続いて主要指標の実績についてご説明します。21ページをご覧ください。はじめに受注高、受注工事残高についてご説明します。スライド左側のグラフで示している受注高は、前年同期比86.7パーセント減少の138億円となりました。
スライド右側のグラフで示している受注工事残高については、前年同期比15.1パーセント減少の7,448億円となりました。受注が減少した主な理由は、新型コロナウイルスの影響による営業活動の停止やダイレクトセールスの自粛などです。
受注関連(受注効率)
22ページは受注効率についてのご説明です。棒グラフが建築営業担当者の人数です。6月末の営業担当者は前年同期比255人減少の3,185人となりました。また、折れ線グラフで示している営業担当者1人当たりの受注高は、前年同期比902万円減少の147万円となりました。
受注関連(中層比率・建替比率)
23ページは中層比率と建替比率の状況を示しています。スライド左側のグラフで示しているのが中層比率です。前年同期比で1.8ポイント低下し17.0パーセントとなりました。スライド右側のグラフで示しているのは建替比率です。前年同期比で2.2ポイント低下し35.1パーセントとなりました。
受注関連(受注単価・キャンセル率)
24ページには受注単価とキャンセル率を記載しています。スライド左側のグラフで示しているのが受注単価で、前年同期と比べ1,875万円減少の9,692万円となりました。スライド右側のグラフで示しているのがキャンセル率の推移です。前年同期比46.6ポイント増加の77.1パーセントとなりました。
受注関連(受注件数・ルート)
25ページでは、新規顧客とリピート顧客の契約数の割合と構成比についてご説明します。スライド上段右側の円グラフで示す今期は、一番左の円グラフで示す前年同期と比較して、新規顧客の割合は3.0ポイント減少の30.1パーセント、リピート顧客の割合は3.0ポイント増加の69.9パーセントとなりました。
入居斡旋関連(入居斡旋件数)
入居斡旋の状況についてご説明します。26ページをご覧ください。入居者斡旋件数は前年同期比8.1パーセント減少の7万2,060件となりました。内訳は、スライド左側の棒グラフで示す居住用が前年同期比8.0パーセント減少の7万1,572件、スライド右側の棒グラフで示す事業用は前年同期比13.5パーセント減少の488件となっています。
繰り返しになりますが、ともに減少しているのは、新型コロナウイルスの影響で店舗を一時閉鎖したことによるものです。
入居斡旋関連(家賃ベース入居率)
27ページは家賃ベースの入居率について記載しています。スライド左側の棒グラフで示す居住用は、前年同月比0.4ポイント低下の96.5パーセントとなりました。スライド右側の棒グラフで示す事業用は、前年同月比0.3ポイント低下の98.5パーセントとなりました。店舗閉鎖によって入居斡旋件数は減少しましたが、やはり新型コロナウイルスの影響で退去する方が少なかったこともあり、引き続き高い入居率を維持することができました。
入居斡旋関連(件数入居率)
28ページには6月末時点の件数入居率について記載しています。ほぼ家賃ベースの入居率と同等で、居住用は前年同月末比0.6ポイント低下の96.6パーセント、事業用は前年同月末比0.4ポイント低下の97.7パーセントとなりました。
当期見通し(通期PL)
続いて、公表を差し控えていました当期の見通しについてご説明したいと思います。30ページをご覧ください。損益の計画です。新型コロナウイルス感染拡大の第2波による再度の緊急事態宣言の発出等の社会的制限が実施されず、2020年7月以降緩やかに収束へ向かうことを前提として、業績予想を算定しています。
売上高は前期比6.7パーセント減少の1兆4,800億円、営業利益は前期比37.5パーセント減少の800億円、経常利益は前期比36.9パーセント減少の840億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比38.0パーセント減少の560億円をそれぞれ計画しています。
当期見通し(営業利益増減要因)〈前期比〉
31ページでは、営業利益が前期から減少する理由についてご説明しています。今期の営業利益は800億円を計画しており、前期の1,279億円から479億円の減少となります。内訳は完成工事総利益で563億円の減少、不動産事業総利益で74億円の増加、その他事業総利益で13億円の減少、および販管費の減少による22億円の増加になります。
完成工事総利益の563億円の減少は、完成工事高の減少と完成工事総利益率の低下によるものです。これについては後ほど詳しくご説明します。不動産事業総利益の74億円の増加は、内訳にあるとおり、好調な入居率を背景に一括借上事業が順調に進展することや、連帯保証人不要サービスを提供しているハウスリーブの収入が拡大することなどによるものです。
これも記載していますが、その他事業総利益の13億円の減少は、マレーシアのホテルの稼働率低下による売上利益の減少が大きく影響しています。
販管費22億円の減少は、人件費が増加する一方で、広告宣伝費の減少あるいは昨年のパソコン購入費、「Windows7」から「Windows10」への移行等の費用が今期は発生しないことによるプラスです。
当期見通し(完成工事高)
32ページをご覧ください。完成工事高と完成工事総利益率の計画についてご説明します。完成工事高は前期比26.1パーセント減少の4,070億円を計画しています。前期と比較して1,441億円の減少となります。内訳がスライドの吹き出しにもありますが、1点目は昨年の受注低迷を受け受注残高が減少したことで、マイナス385億円です。
2点目は当期受注高減少の影響で、マイナス630億円です。毎年当期に契約して当期に完工、売上計上できるものが大体700億円から1,000億円程度ありました。今期は新型コロナウイルスの影響で、先ほどご説明したとおり4月から6月の第1四半期の受注が激減しました。このため、当期に完工、売上計上できるものが少なくなり、630億円ショートする見通しになりました。
3点目は融資確定遅延によるマイナス426億円です。こちらも新型コロナウイルス対応のため、とくに銀行が企業支援のための緊急融資対応に追われていること、あるいはテレワークによる窓口減少等によって融資手続きが伸びています。この影響により、約1ヶ月分の工程が後ろにずれることを想定しました。
当期受注高の減少による630億円と融資確定遅延による426億円は、新型コロナウイルス影響によるものです。机上の数字にはなりますが、新型コロナウイルスが発生しなければ完成工事高は7パーセント程度の減少にとどまっていたと考えています。
折れ線グラフで示す総利益率については、前期比3.6ポイント減少の25.3パーセントを計画しています。これも内訳がスライドの吹き出しにありますが、労務費の上昇でマイナス1.2ポイント、資材費と為替・輸入資材は前期同水準、支援機構等の融資が増加した二次融資による繰延利益の戻しが減少することによる影響で1.1ポイントのマイナス、その他でマイナス1.3ポイントです。
労務費については、工賃や手間賃が上昇するわけではなく、第1四半期と同様に完成工事高が減少したことによって技術社員の人件費、経費の固定部分の割合が上昇するものです。また、5番目に記載している「その他」については、先ほど完成工事高のところでお伝えした当期受注高の減少の影響によるものです。
この第1四半期等で受注して今期完工計上できるというものには、工期が短く粗利率の高いツーバイフォー物件が多く含まれています。それが今回完工計上できないことにより、相対的にRC物件の割合が高まった結果、粗利率に1.3ポイントの影響を与えています。
当期見通し(受注高)
33ページをご覧ください。受注計画についてです。今期の受注高は前期比13.3パーセント減少の4,500億円を計画しています。建築営業人員は前期末より60人増員の3,200人、1人当たり受注高については前期比133万円減少の1,190万円を予定しています。なお、7月から3月までの比較をした前期比では、プラス5.8パーセント、105.8パーセントを計画しています。
当期見通し(入居斡旋・家賃ベース入居率)
34ページでは入居斡旋の計画について記載しています。今期の入居者斡旋件数は、居住用で前期比0.4パーセント増の33万4,000件、事業用で11.6パーセント減少の2,000件、合計で33万6,000件を計画しています。また3月の家賃ベースの入居率は、居住用で前期比プラス0.5ポイントの97.7パーセント、事業用で前期と同水準の98.7パーセントを計画しています。
2021年3月期 株主還元(配当金)
当期の株主還元についてご説明します。36ページをご覧ください。2021年3月期についても、当社の基本方針である総還元性向50パーセントを計画しています。計画している当期の純利益560億円に対してEPSは816円になりますので、配当は連結業績に応じた配当性向50パーセントにあたる408円、前年に対して245円の減配という計画です。
これで私からの説明を終わらせていただきます。またこの時期にきて新型コロナウイルス感染拡大の傾向が出てきています。繰り返しになりますが、感染拡大防止を徹底した営業活動を実施し、早期に受注を回復していきたいと考えています。
質疑応答:月次受注が苦戦している理由について
続いて、みなさまからいただいたご質問に回答したいと思います。まず、「大手ハウスメーカー2社に比べて月次受注が苦戦しているようですが、どのような理由と考えていますか?」というご質問です。
大手ハウスメーカー2社とは受注計上のタイミングも違い、一概に単純比較できるわけではないと思っています。しかし、ハウスメーカーは金融機関などからの紹介による受注獲得が多いと認識しています。一方、当社はダイレクトセールス、飛び込み営業が受注獲得に大きく寄与しています。
先ほどご説明したとおり、新型コロナウイルスの影響で十分な営業活動ができなかったことが受注に苦戦している原因となっています。ダイレクトセールスについては、首都圏の1都3県においては控えていますが、そのほかのエリアでは徐々に実施しています。さらに、ダイレクトセールスに加えて、DMやテレコールなどのインサイドセールスや紹介営業等に注力して受注を回復していきたいと考えています。
質疑応答:貸家着工戸数について
次に、「前年度の貸家着工戸数は33.4万戸まで減少し、今年度はさらに減る可能性が高いですが、妥当な貸家着工戸数はどの程度と考えているのでしょうか?」というご質問です。
今年度の着工戸数は30万戸前後になると考えています。相続税法改正に伴い、一時は40万戸まで増加しましたが、今後の住宅の滅失等も含め、適正に賃貸事業を運営できるよう考慮すれば、30万戸が適当かつ妥当な範囲であり、その中でシェア拡大を図っていきたいと考えています。
質疑応答:非住宅分野の受注状況について
次に、「最近注力している非住宅分野の受注状況について教えてください」というご質問です。
いわゆる商業施設、物販、サービス、医療などですが、前年の第1四半期は約12億円の受注をいただきました。その半分の約50パーセント減少の6億円が今期の実績です。こちらも新型コロナウイルスに伴い、法人への営業ができなかったことが影響しています。
質疑応答:月次受注のプラス転換とダイレクトセールスのエリアについて
次に、「受注計画4,500億円を達成するには、7月以降の累積9ヶ月で前年同期比5パーセント増が必要となりますが、月次受注のプラス転換はいつ頃と見ていますか? またダイレクトセールスができるエリアは広がっていますか?」というご質問です。
これに対しては、新型コロナウイルスの影響がこれ以上広がらないという前提になりますが、6月の新規受注は前年に対して約60パーセント強という状況です。まだ7月は締めていませんが、受注前の申込段階においては前年に迫る勢いとなっています。これが受注までいくかはまだわかりませんが、そのような状況で回復はしてきていますので、下期にはプラス転換できるのではないかと考えています。
また、ダイレクトセールスについては、先ほどご説明したとおり1都3県以外のところで地域性を見ながら徐々に実施しています。
質疑応答:不動産事業への経営資源配分について
次に、「短信に記載の営業利益計画では不動産事業が617億円、建設事業が275億円と初の逆転となっていますが、今後は経営資源配分でも不動産事業への厚みを増やすことはありますか?」というご質問です。
これについては、ご指摘のとおり、建設事業は前期までの受注低迷と今期の新型コロナウイルスの影響を受けて大きく減益となっています。不動産事業はストックビジネスですので、ストックの増加に応じて経営資源をかける必要があるとは思います。
しかし、当社大東建託グループのコアビジネスとなるのは建設事業です。この成長がなければ当社グループの成長はないと考えています。そのため、受注の早期回復を進めて、建設事業が本来の成長軌道に戻れるよう強化していきたいと考えています。経営資源の配分の転換はありません。
質疑応答:融資不調によるキャンセルについて
次に、「銀行の融資条件に見合った受注活動により、融資不調によるキャンセルが減少してくると見ていましたが、なかなかキャンセルが減少しない理由はどのようなことがありますか?」というご質問です。
第1四半期においては、額としてはほぼ去年と変わらないのですが、融資不調によるキャンセルは若干減少してきています。一方、新型コロナウイルスの影響によって、個人の事業主の経営環境悪化を理由としたキャンセルが増えてきているというのも事実です。融資を要因としたキャンセルは減っていくとは思いますが、新型コロナウイルスの影響がどうなっていくかを注視していきたいと考えています。
質疑応答:本社費用が膨らむ理由について
次に、「営業利益の調整額が、2020年3月期のマイナス186億7,000万円から2021年3月期計画ではマイナス212億円と増加しますが、理由を教えてください。本社費用が膨らむのはなぜでしょうか?」というご質問です。
この本社費用の中には、1人あたりの受注高と入居率を基準にした業績賞与が含まれます。2020年3月期は、その基準に達しなかったため業績賞与の支給はありませんでした。今期については、基準に達すると見込んでいますので、その分が含まれています。その結果、調整額がマイナス212億円になっています。
質疑応答:提携事業者からの利益について
次に、「7月27日の日経新聞夕刊1面に『賃貸入居者に対してサービスを強化する』との記事がありましたが、アパート稼働率のさらなる向上や良好なアパート稼働率を地主にアピールし、新規受注活動の一助とするなどのシナジー以外に、提携事業者からの広告収入などの直接的な利益はありますか?」という質問です。
これは、入居者向けにオンラインを接点としたサービスの拡大を図るため、新たなプラットフォームを作っていこうというものです。その中には買い物代行や家具家電の定額利用等、さまざまなサービスを予定しています。当然そのような中では、広告収入等の新たな収益事業を見込んでいます。これについては、もう少し具体的に事業構想が見えた段階でみなさまにご案内したいと考えています。
質疑応答:受注減少の要因について
次に、「受注減少の要因として、相続需要の減退や他社との競合激化のような、新型コロナウイルス以外の要因はないのでしょうか?」というご質問をいただきました。
受注活動を本格的に再開したばかりで一概には言えませんが、競合激化のような状況はなっていないと見受けられます。また、相続需要については、この新型コロナウイルスの影響によって相続を検討する方が増えているといった調査結果も見受けられます。そのため、相続需要、相続対策といったアプローチを継続して行なっていきたいと考えています。
質疑応答:受注回復のための施策について
次に、「コロナ禍で従来のようなダイレクトセールスができない中、受注回復のための施策はあるのでしょうか?」というご質問です。
これも先ほどご説明していますが、大部分のエリアでダイレクトセールスを再開しています。再開できないエリアについては、テレコールやDMなどのインサイドセールス、紹介営業の強化、あるいはデジタルマーケティング、先ほど言いました「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」へのご案内、Webセミナーなどを活用して受注回復に努めていきたいと考えています。
質疑応答:景気後退によるアパート入居率低下リスクについて
次に、「景気後退によるアパート入居率低下リスクをどうお考えでしょうか?」というご質問です。
現時点で、新型コロナウイルスの影響や景気後退による大きな変化はなく、一定水準以上の入居率で推移しています。2008年のリーマンショックの時は、製造業を中心とした派遣切りなどが社会問題となり、当社の管理物件でも派遣会社の退去が大きく増加し、入居率が悪化したということがありました。
現在は、そのような派遣会社との契約が低下していますので、大きな影響にはならないと思いますが、景気後退による退去が増加がする可能性はあります。そのため、動向を注視しながら空室抑制に向けた各種施策を行なっていきたいと考えています。
質疑応答:不動産事業総利益率の低下要因について
次に、「不動産事業総利益率の低下要因について教えてください」というご質問です。
これについては説明の中にもありましたが、新型コロナウイルスに伴う仲介店舗の閉鎖により仲介斡旋件数が減少し、仲介手数料収入が減少したためです。原価が発生しないため、仲介手数料収入の減少により利益率が低下します。そのほかにも、賃貸住宅の営繕工事が減少したことによって利益率が若干低下しています。これも一過性のものだと考えています。
質疑応答:粗利率の回復について
次に、「通期計画では建設事業の粗利率が25.3パーセントですが、私の理解では平準的な御社の目標は30パーセントであり、粗利率の回復には何が必要でどのくらいの時間が必要なのでしょうか?」というご質問です。
粗利率が低下しているのは、技術部門の人件費、経費等の固定費等の占める割合が上昇しているためです。そのため、受注を回復して完成工事高を増加させることによってこの影響は回避できると考えています。当社の粗利率の目標が30パーセントということは変わっていません。
質疑応答:配当性向について
最後に、「配当性向は50パーセントの計画で従来からのご説明どおりですが、配当性向を引き上げる、もしくは引き下げる可能性があるとすれば、どのようなことを想定しておくべきでしょうか?」というご質問です。
これも新型コロナウイルスの状況により経営環境が激変した場合には考えなければいけないと思います。4月の段階で完成工事の現場を一度止めたことによりキャッシュが回らなくなるという想定をし、700億円のコミットメントラインを設定をしましたが、そのような完成工事の現場が動かないといった状況になれば、考えなければいけないということがあるかもしれません。
そのようなことがない限りは、配当性向50パーセントとし、残りの50パーセントについては内部留保の確保や、昨年来より実施している中期経営計画に基づく成長投資に充てたいと考えています。そのため、基本方針についての変更はありません。以上ご質問に対し回答させていただきました。