Q1決算翌日の株価は+3%上昇で引けた

トヨタ自動車(7203)は、8月4日に2017年3月期の第1四半期(4-6月期)決算を発表しました。翌5日の株価は大幅上昇となっており前日終値比+3%上昇で引けました。

トヨタのように時価総額が20兆円に迫る大型株が+3%超の上昇となるのは、比較的珍しいことです。ちなみに、同日の東京株式市場は、日経平均株価が微減、TOPIXは▲0.2%下落しており、トヨタ株の堅調さが際立っていると言えましょう。

Q1実績は減収・2桁減益、通期予想も下方修正

まず、Q1実績を見てみましょう。売上高は対前年同期比▲6%減、営業利益が同▲15%減、当社株主に帰属する四半期純利益が同▲15%減となりました。減収・減益決算です。

Q1の連結販売台数は同+3%増となりました。北米や一部新興国では減少しましたが、国内やアジアを中心に増加し、販売好調を維持する結果となりました。

一方、2017年3月期の会社予想は下方修正されています。営業利益は、従来予想の1兆7,000億円(同▲40%減)から1兆6,000億円(同▲44%減)へ▲1,000億円減額など、見た目は決して良い印象とは言えないものです。

この決算のどういった点が評価されて、株価は上昇しているのでしょうか。考えられる理由が2つあります。

Q1実績が“思ったほど悪くない”という印象を与えた

1点目は、Q1実績の想定以上の堅調さでしょう。確かに、円高の影響(Q1は約▲2,350億円のマイナス要因)を吸収することができずに、2桁減益を余儀なくされています。

しかし、このQ1は熊本地震等による部品供給の遅延などにより、国内減産の影響を受けました。その影響台数は約▲6万台、金額にして約▲700億円となった模様ですが、実態としてはもっと大きな影響を受けた可能性があります。こうした大きなマイナス要因、つまり、円高と震災影響を、コストダウン等で予想以上にカバーしたことがポジティブに評価されたと考えられます。

実際、Q1営業利益の減益率▲15%は、5月に公表した通期会社予想の▲40%(注:今回の下方修正前)から大きく改善されています。“思ったほど悪くない”というのが、株式市場での受け止め方だと見ていいでしょう。

下方修正は“一旦、悪材料出尽くし”という印象を与えた

2点目は、今後の下方修正リスクの後退です。今回実施した2017年3月通期の下方修正は、基本的には前提為替レートの変更によるものです。トヨタはQ2(7-9月期)以降の為替レートを、従来の105円/ドルから100円/ドルへ見直していますが、このQ1決算で100円/ドルへの見直しは、大手自動車メーカーではトヨタだけです。

本来、Q2以降の為替前提を5円も円高にすると、営業利益では約▲2,000億円近いマイナス要因になります。しかし、実際に減額したのは▲1,000億円でした。これは、円高の影響は少なくとも半分はカバーできるというトヨタのメッセージと受け取ることもできます。

また、今後の為替相場の動向に注視が必要ですが、ここで100円/ドル前提にしたことで、追加的な下方修正リスクは大きく低下しました。まさしく“一旦、悪材料出尽くし”と評価されたとも言えます。

今後の上方修正への下地ができつつある?

今後の注目点は、Q1決算でマイナス影響となった熊本地震等による国内減産のリカバリーです。既に7月以降から挽回生産が始まっており、Q1でビハインドした▲6万台はキャッチアップ可能と見られます。一過性的な要素はあるとはいえ、この増産効果はQ2からの業績に効いてきます。そして、次の上期決算では増額修正へのサポート材料にもなり得ます。

“下方修正したばかりなのに、すぐに上方修正なんて…“と訝る人が少なくないかもしれません。しかし、最近のトヨタは、四半期毎に業績予想を見直す傾向が強く、下方修正後の上方修正、あるいは、上方修正後の下方修正は珍しくなくなっています。ただし、引き続き、為替相場の動きだけは要注意であることは言うまでもありません。

 

LIMO編集部