2020年5月22日に行なわれた、明治ホールディングス株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:明治ホールディングス株式会社 代表取締役社長 川村和夫 氏
新型コロナウイルス感染拡大への対応
川村和夫氏:明治ホールディングスの川村でございます。この度の新型コロナウイルス感染症に罹患されたみなさまとそのご家族に、心よりお見舞い申し上げます。1日も早いご回復をお祈り申し上げます。また、お亡くなりになられた方、そのご家族には衷心よりお悔やみを申し上げます。
そして、現在も厳しい環境の中で、最前線で奮闘されている医療従事者の方々、介護従事者のみなさまに心から敬意を表するとともに深く感謝を申し上げます。明治グループは感染拡大防止に最大限の努力を行ない、生活に必要な食品および医薬品の安定供給に努めていきます。
それでは説明に移ります。本日は、新型コロナウイルスの影響について、2019年度の総括と2020年度の見通しについて、そして最後に将来の成長に向けた取り組みについてご説明します。
まず、新型コロナウイルスの影響に関してです。はじめに、明治グループの新型コロナウイルス感染症拡大への対応についてご説明します。お客さまに対しては、食品や医薬品の安定供給のため、すべての工場を稼働させています。お取引先に対しては、お客さまへの商品の安定供給のため、いつにも増して連携を強化させています。
現在、大きな課題となっているのは生乳の処理についてです。例年、5月、6月頃に生乳生産はピークを迎えますが、現在は学校給食用の供給が停止し、業務用の需要も減少していることから、大切な生乳が廃棄とならないように最大限の受け入れ努力を行なっていきます。
従業員に対しては、原則テレワークでの勤務となっています。生産や需給に関わる従業員については、適切な感染防止対策を行なった上で業務にあたっています。また、地域社会に対しては、フードバンク団体への製品の寄贈などを継続的に行なっていきます。
株主・投資家のみなさまに対しては、適切な情報開示に努め、業績に大きな影響が発生する際は速やかに情報を開示します。また、財務の安全性にも配慮して事業活動を行なっていきますので、ご支援のほどよろしくお願いします。
新型コロナウイルスの影響に関して①生産・販売への影響
それでは、事業への影響についてご説明します。生産面への影響については先ほどお伝えしたとおり、食品、医薬品ともに国内外ですべての工場が稼働しており、現在のところ大きな支障はありません。
国内における販売面への影響については、新型コロナウイルスの影響は2月からですが、推移がわかるように1月も記載しています。食品では、健康意識の高まりにより、発酵デイリーのプロバイオやヨーグルトの売上が伸びています。加工食品では、冷凍食品やレトルトカレーなどの売れ行きが好調ですが、業務用食品は外出自粛の影響により売上が減少しています。
菓子は、新型コロナウイルスの影響はなく、高カカオチョコレートが前期にメディアに取り上げられた反動が出ており、市場全体も前年割れとなっています。栄養では、生活必需品として乳幼児ミルクが伸長していますが、運動機会の減少により、3月からスポーツ栄養がマイナスとなっています。
医薬品については、2月は4月からの薬価改定前の買い控えが発生しました。3月からは新薬価に対応した価格になるため、通常ですと2月の反動で伸びるのですが、感染を恐れて病院に行くことを控える動きが広がり、先発品はマイナス、ジェネリックも戻りが弱くなっています。
海外では、中国の業務用の牛乳の売れ行きが減少していましたが、テイクアウトでの営業が再開するにつれて徐々に回復してきています。医薬品では、インドのロックダウンの影響により、メドライクで一次生産がストップしましたが、現在は再開していますので大きな影響はない見込みです。
新型コロナウイルスの影響に関して②業績への影響
次に、業績への影響についてです。スライドの左の表は、連結ベースの第4四半期の売上高と営業利益です。ご覧のとおり、売上高は前期並みで営業利益は増加しました。利益率の高いプロバイオの売上が伸びたことでプロダクトミックスが改善し、コストコントロールにより経費も減少したことで増益となりました。
今後の見通しについて、スライド右側のグラフをご覧ください。主要事業会社3社の月別の単純合算売上高の前年からの増減率です。2020年の2月から4月の売上高は不調カテゴリーを好調カテゴリーがカバーし、グループ全体ではプラスマイナス2パーセントに収まっています。5月以降も同様の傾向が続くことを想定しています。生活に必要な食品と医薬品の安定供給に万全を期すと同時に、コスト管理を徹底していきます。
2019年度 連結決算のハイライト
では、2019年度の総括についてご説明します。2019年度連結業績はご覧のとおり、売上高は前期並みの1兆2,527億円、営業利益は前期比4.4パーセント増の1,027億円で着地しました。計画には届かなかったものの、8期連続の増益となり、はじめて1,000億円の大台に乗せることができました。
当期純利益は前期比8.8パーセント増の673億円で、ほぼ計画並みとなりました。ROEについても12.4パーセントとなり、前期から改善しました。
食品 2019年度 決算概要
続いて、セグメント別の実績についてご説明します。まず、食品セグメントです。売上高は1兆495億円でわずかに減収となりましたが、事業譲渡やSKU削減で終売した商品もありますので、実質的には増収です。
営業利益については、前期比3パーセント増の873億円となりました。売上面の影響については、主力のプロバイオやヨーグルトの減収の影響があったものの、スポーツ栄養や乳幼児ミルクなどの増収や価格改定の影響などにより、56億円の増益要素となりました。
原価に関しては、主に国内の乳価の上昇により23億円の減益要素となりました。経費については、価格改定の対策として拡売費や宣伝費が増加し、物流費も配送効率の悪化により増加しました。
子会社は、海外では中国を中心に順調に売上を伸ばし、利益額も拡大しました。国内は物流系の子会社で苦戦しましたが、全体としては増益となりました。
医薬品 2019年度 決算概要
次に、医薬品セグメントです。売上高は前期比3パーセント増の2,043億円、営業利益は前期比12パーセント増の159億円となりました。
営業利益の増減内容についてご説明します。薬価改定の影響は35億円となりました。売上面では抗うつ薬「リフレックス」の減収があったものの、ワクチンの販売が寄与し、19億円の増益要素となりました。
原価面では原価低減に取り組んだものの、前期の生産体制変更に伴う在庫評価替えの影響により、19億円の減益要素となりました。経費面では、商品廃棄が前年に比べ減少したことや、研究開発費の減少などから19億円ほど増益効果がありました。
その他、子会社ではインドのメドライクが好調に推移しました。また、前期に同社ののれんの一括償却を実施したことやKMバイオロジクスの業績も増益に寄与しました。
2020年度の計画について
続いて、2020年度の見通しをご説明します。今期は従来の重点方針に加えて、新型コロナウイルスへの対応を十分に考えていく必要があります。まず、足元では需要やマーケットの変化にしっかりと対応していくことが重要です。
とくに需要が拡大している「R–1」については、お客さまに安心してお買い求めいただけるように、安定供給に努めていきます。医薬品についても、グローバルネットワークで安定的に供給できる体制を築いていきます。
終息時期を見通すことは難しいですが、アフターコロナということで政府の経済対策には期待するものの、海外経済の回復の遅れや国内での失業、収入減少により消費が低迷する可能性がありますので、やはりコストダウンを徹底していきます。
また、需要を喚起していくような対策も講じていきたいと考えています。予防・健康意識は高まりますので、プロバイオやヨーグルトなどはしっかり健康価値を訴求していきます。外出自粛によって高まった運動欲求や行楽需要への対応も行なっていきます。
2020年度 通期連結見通し
こうした事業環境を踏まえ、今期の売上高は1兆2,530億円で前期並み、営業利益は1,100億円で前期から約70億円増の計画としました。2020中計で目標としていました営業利益1,250億円には届かないものの、1,100億円を達成すれば2017年度からの年平均成長率で5.2パーセントとなり、順調に利益成長を続けているといえます。
食品 2020年度 営業利益増減分析
それでは、セグメント別に説明していきます。まず、食品セグメントです。売上高は1兆414億円、営業利益は930億円で、減収ながら増益を計画しています。ただし、前期実績には連結除外となったアサヒブロイラーなどの3社の売上が約190億円含まれていますので、主力事業では増収を見込んでいます。
また、今期の第4四半期では、新型コロナウイルスで前期伸びた反動も想定されますが、通期では増収基調のプロバイオなどによりカバーしていきます。菓子の坂戸工場やプロテインの倉敷工場などの立ち上がりにより減価償却費は増加しますが、主力品の数量増やプロダクトミックスの改善でカバーします。
原価については、カカオや海外乳原料などのコストアップを見込んでいます。経費については、物流費は増加するものの、拡売費などのコストコントロールの徹底により削減します。子会社については、国内・海外ともに増益を見込んでいます。
食品 プロバイオ、ヨーグルトともに健康価値を徹底訴求
それでは、個々の事業について詳しく説明していきます。まずプロバイオです。2019年度の上期は苦労しましたが、第3四半期以降徐々に回復し、第4四半期は前期比約5パーセント増となりました。
予防や健康意識の高まりにより、「R–1」の売上が大きく伸びており、足元でも好調に維持していますので、今期は増収を目指します。3月に関東地区で発売した「R–1」のプレーンの大容量タイプについても取り扱いが徐々に増えており、今年度は全国展開を計画しています。現在の状況を考えますと、今後も需要が伸びると思われますので、万全の供給体制を築いていきたいと思います。
ヨーグルトについても、体調管理意識の高まりにより売上が伸びています。2019年度の第4四半期は前期比約5パーセント増となり、通期ではほぼ前期並みとなりました。「明治ブルガリアヨーグルト」を中心に、ヨーグルトの健康価値の訴求を一層強化して売上を伸ばしていきます。
現在、スーパーでは従来の定番品の補充をするので手一杯の状況であり、新製品を取り扱うのが難しい状況となっています。我々も店頭フォローができない状況ではありますが、状況が好転した際には、プロバイオの新製品である「素肌のミカタ」も積極的に拡売していき、市場のさらなる拡大を目指していきます。
食品 健康志向チョコレートで市場を拡大
続いてチョコレートです。2019年度の上期は好調でしたが、第3四半期以降は気温の高い状況が続き、売上の伸びが鈍化しました。第4四半期では、2018年度に高カカオチョコレートの健康機能がテレビに頻繁に取り上げられた反動から売上がマイナスとなりました。
しかしながら、売上は通期では約2パーセント増で着地したことから、チョコレート市場は今後も拡大していくと考えています。今期も引き続き健康志向チョコレートの拡大に努めます。
「チョコレート効果」は習慣化が定着し、箱タイプの商品から大容量の大袋タイプへの移行が続いています。包装ラインの増設を行ないましたので、今後は供給を増やしていきます。また、昨年2月に発売した「オリゴスマート」にも新製品を追加し、オリゴ糖の健康価値を訴求していきます。
食品 栄養事業は主力ブランドを更に拡大
続いて、栄養事業です。運動意識の高まりにより、「ザバス」は粉末、ドリンクタイプともに伸長を続けています。とくにドリンクの「ザバスミルク」について、2019年度は前期比2倍以上の134億円となりました。
冒頭にお伝えしたように外出自粛の影響で足元では厳しい状況となっていますが、状況が緩和してくれば運動不足解消に向けて消費が伸びるはずであり、そのための仕掛けを今はしっかりとやっていきたいと考えています。
粉末タイプは倉敷工場での生産をはじめた新製法により、スプーンで軽く混ぜるだけで溶けるようになりましたので、この品質の良さをしっかりと訴求していきます。ドリンクタイプでも、女性向けにソイタイプを用意するなどラインナップを強化していきます。
粉ミルクは、2019年度は年間を通じて好調を維持し、4月に入ってもそのトレンドに変化はありません。また、今期で2年目となる液体ミルクについても、普段使いに加え、災害時のストック需要などの訴求を図り、売上を拡大していきます。
流動食については、市場拡大に伴い順調に売上が伸びています。現在は病院や店頭での営業活動は難しい状況ですので、テレビでのインフォマーシャルや新聞・雑誌広告を強化していきます。
食品 海外事業はそれぞれのエリアで更なる成長へ
海外事業は、それぞれのエリアで順調に売上を伸ばしています。中国では、牛乳、ヨーグルト、菓子、アイスクリームの既存事業がそれぞれ順調に拡大しています。
冒頭にお伝えしたとおり、新型コロナウイルスの市販商品への影響はそれほど出ていません。業務用についても、コーヒーショップのテイクアウトでの営業が再開しており、売上が戻りつつあります。今後はeコマースの重要性がますます高まってきますので、ネット販売の強化をこれまで以上に図っていきます。
また、新しい取り組みとして、今年度上期から中国市場で「ザバス」の展開を計画しています。最初はホエイタイプの2品の展開ですが、徐々にラインナップを拡充していきます。北米や東南アジアにおいても、引き続き菓子や栄養の事業を伸ばしていく計画です。
食品 中国における牛乳・ヨーグルト事業の展開強化
中国における牛乳・ヨーグルト事業について、もう少し説明します。中国でのチルド牛乳事業は順調に拡大を続けており、今後も能力増強に向けて設備投資していきます。2021年の春には蘇州工場にライン増設を行ない、2022年度の下期には天津工場も稼働の見込みです。すでに第3工場についても検討しており、2026年度までには稼働できるよう準備を進めていきます。
中国において、牛乳・ヨーグルト事業を拡大していく上でもっとも重要なのは、品質のよい生乳を安定的に調達していくことです。先日、オーストアジア社の株式取得について発表しましたが、これにより調達における安定性は格段に高まりました。次期中計では売上を倍増させ、2026ビジョンの最終年度にはさらに倍増を狙っていきます。
食品 ダノン社と欧州でのキューブタイプの粉ミルク製造で提携
もう1つ、海外事業について新たな取り組みをご紹介します。欧州において、キューブタイプの粉ミルク製造でダノン社と提携します。明治はミルク作りの手間を減らし、より便利に粉ミルクを利用してほしいという思いから、2007年に世界初のキューブタイプの粉ミルクを発売しました。
添加物を加えずに粉ミルクを固める技術は、明治の独自の特許となっています。今回は明治がこの製造技術を提供し、ダノン社が同社ブランドのキューブを発売します。今年度の第4四半期にはテスト販売を開始します。これをきっかけに、海外での乳幼児ミルク事業が大きく成長していくことを期待します。
食品 牛乳事業は20年度下期に単月黒字化へ
牛乳事業は順調に構造改革が進み、2020年度下期には単月での黒字化が見えてきました。今年の1月に中四国、九州から開始した中容量の450ミリリットル化を進め、秋には全国展開を完了させます。また、前期に発売した「明治おいしいミルクカルシウム」「明治おいしい低脂肪乳」などの取り扱い店率の拡大にも注力していきます。
不採算商品については、今年3月に「明治牛乳」の販売が終了しました。今後は「明治ラブ」も段階的に販売を終了し、「おいしい牛乳」ブランド中心の商品ラインナップを推進します。合わせて、ゲーブルラインの撤去をはじめ、生産体制の最適化にも引き続き取り組んでいきます。
医薬品 2020年度 営業利益増減分析
ここからは、医薬品セグメントについてご説明します。売上高は2,123億円、営業利益は180億円で増収増益を見込んでいます。薬価改定の影響が59億円ほどありますが、ワクチンや「ビラノア」などの主力品の増収でカバーしていきます。また、農薬について今期は利益改善する見込みです。
原価面では、原価低減に努めるものの、2018年度に行なった生産体制の変更で16億円の減益要素となります。経費面では、一時金の減少のほか、研究開発費などのあらゆるコストのコントロールを行なっていきます。また、子会社については増益となる見込みです。
医薬品 国内はワクチン、ビラノア、シクレストにより伸長
個々の事業について詳しく説明していきます。まずは国内事業です。前期はKMバイオロジクスで製造したワクチンの販売をファルマで本格的に開始したことにより、大幅に伸長しました。今期はさらに伸ばす計画としており、前期販売移管直後で実績の少ない第1四半期での拡売がポイントとなります。
また、新型コロナウイルスの影響により、接種意向が高まることが予想されるインフルエンザワクチンは前期以上の供給を目指し、ワクチン合計の売上では前期から40億円増売の約300億円を目指します。
前期は特許切れの影響により、抗うつ薬「リフレックス」が半減しました。大きな伸びを期待していたアレルギー性疾患治療薬「ビラノア」も、新型コロナウイルスの影響で外来の受診患者数が減少し、2018年度並みに留まりました。今期も「リフレックス」は減収となる見込みですが、「ビラノア」と統合失調症治療薬「シクレスト」の増収でカバーしていきます。
医薬品 新たなビジネスモデルでジェネリック事業の展開を強化
続いて、ジェネリック事業について説明します。2019年度は前期比約4パーセント増となり、ジェネリック事業は順調に拡大を続けています。今後5年間で、ジェネリック市場は大型先発品の特許切れにより約2兆円の置き換え市場が出現する見込みですので、メドライクを活用した次の2つのビジネスモデルでジェネリック事業を拡大していきます。
1つ目は、メドライクを活用したコスト競争力のある商品で、自社販売のジェネリックを強化します。2つ目は、他社向けの製剤供給事業です。2019年度より一部供給を開始しており、今期は取り組みを本格化させていきます。毎年の薬価改定により薬価の引き下げ圧力が強まってきていることから、海外で日本品質の医薬品を低コストで安定的に製造できる強みが今後生きてくると思います。
医薬品 海外は製造受託事業に加え、抗菌薬も順調に拡大
次に、海外事業について説明します。インドの子会社メドライクの売上は順調に推移しています。2019年度にインドにおける増産体制が整ったことから、メインである製造受託事業の成長を加速させていきます。グローバル製薬企業からの受注も順調に増えており、新規の顧客獲得が進んでいる状況です。
メドライクだけでなく、欧州やアジアの子会社の現地販売も順調です。EUでは耐性菌の問題からキノロン系の抗菌薬が使用規制されており、当社の主力品であるセフェム系の抗菌薬「メイアクト」の需要が増えています。アジアにおいては、自社品に加え、他社からの導入品も積極的に拡売し、事業規模の拡大を図っていきます。
医薬品 生物産業事業の構造改革の進捗について
続いて、生物産業事業の構造改革についてご説明します。2020中計では、3年間で利益改善額26億円を見込んでいましたが、2019年度は中国産原薬の調達でトラブルが発生し、主力のいもち病防除剤「オリゼメート」の売上が大幅に減少したことで利益にも影響しました。
本来ですと、前期に新規殺虫剤「フルピリミン」の混合剤を発売し、売上・利益を拡大していく計画でしたが、今期以降にずれることになりました。原薬調達先の操業を今期は再開する見込みですが、より生産の安定を目指して、自社で農薬原体の製造会社を立ち上げることとしました。
今期中の商業生産を目指しており、農薬が本格的に散布される第4四半期に間に合わせたいと考えています。今期は、前期からは16億円の増益を計画しています。次の中計では海外での展開が視野に入っていますので、さらなる増益を期待しています。
2020年度通期 設備投資、減価償却費、キャッシュ・フロー
続いて、設備投資と減価償却費、キャッシュ・フローについて説明します。まず設備投資ですが、菓子の坂戸工場や粉ミルクの埼玉工場など、将来の成長に向けた投資をすることによって、前期に比べて約140億円増加する見込みです。
減価償却費についても約30億円増加する見込みですので、生産性の改善による歩留まりの向上や間接費の削減などに取り組むことで吸収していきます。
キャッシュフローについては、2017年度以降、安定的に1,000億円を超える営業キャッシュフローを稼ぎ出しており、2020年度については1,209億円の見込みです。先ほどお伝えした設備投資のほか、オーストアジア社の株式取得による支出がありますが、投資キャッシュフローは1,197億円となり、フリーキャッシュフローはプラスを維持できる見込みです。
株主還元(配当性向)
続いて、株主還元です。株主還元については配当性向30パーセントを目安に、安定的に配当していくことを方針としています。2019年度は6期連続の増配となる150円としました。前期からは10円の増配で、配当性向は32.3パーセントとなります。2020年度も今期と同様の150円を計画しています。株主還元の方針は中計ごとに決定することとしており、来年5月に発表する新たな中計では株主還元をさらに強化していきたいと考えています。
持続的な成長に向けて①価値共創センターの取り組み
続いて、将来の成長に向けた取り組みについて説明します。価値共創センターは設立して1年が経過しました。現在の要員数は約30名で、研究体制も徐々に整ってきています。最大のミッションは、健康寿命延伸につながる独自価値の創造により、高齢化などの社会課題を解決していくことです。
研究テーマとしては、「老化」「食事療法」「マイクロバイオーム」の3つを掲げていますが、これはそれぞれ独立したものではなく、関連しあっています。今回の新型コロナウイルスにより、人々の健康意識は非常に高まり、疾病の予防や健康の維持にはますます関心が寄せられるようになってきています。食品と医薬品を持つ明治グループの知見を最大限活用して、次の中計ではなんらかの成果をお見せしたいと思います。
持続的な成長に向けて②新たな市場を創造
続いて、今年3月に発売した「明治TANPACT(タンパクト)」についてご説明します。日本人の1人1日あたりのたんぱく質摂取量は、戦後間もない1950年代と同水準まで低下しています。この背景ですが、女性においては過度なダイエットが、また高齢者においても食が細ることで摂取不足の可能性が考えられています。昨年、厚生労働省でまとめられた食事摂取基準でも、高齢者の触れ得る予防の観点からたんぱく質の摂取が推奨されています。
当社は「TANPACT」シリーズの販売により、ヨーグルトやチーズだけでなく、菓子やアイスなどさまざまなカテゴリーで商品を発売し、いろいろなシーンで手軽にたんぱく質を摂取することができる環境を整えていきます。
現在はスライドに示した14品ですが、秋までにはラインナップを倍増させ、次の2023中計では100億円の市場を創造していきます。現代の低栄養という社会課題の解決に向け、今後も真摯に取り組んでいきます。
持続的な成長に向けて③フードバンクへのお菓子の寄贈
明治グループでは、本年3月から「明治ハピネス基金」という社内募金制度をスタートしています。「明治ハピネス基金」は、従業員が自発的に参加する活動で、社会課題を「自分ゴト」として捉えることを目的とした制度です。
今回はここで集まった募金に明治ホールディングスからの寄付金を加えて、フードバンク団体へ10万個のお菓子を寄贈しました。外出自粛で食費がかさんでいるご家庭に向けて、5月5日の子どもの日のプレゼントとしてお届けすることにしました。今後も継続的に活動を続けていきます。
持続的な成長に向けて④ESGに関する取り組み(環境・社会)
次に、環境や人権に関する取り組みの進捗についてご説明します。TCFDについては、3月に環境省のホームページにシナリオ分析の内容を開示しました。現在、社内ではその深堀りを実施しており、8月に発行予定の統合報告書でその内容について記載することとしています。
プラスチック使用量の削減については、2030年までに2017年度比で25パーセント以上の削減を目指すことにしました。具体的な取り組みとして、プロバイオに使用している小型ペットボトルの軽量化などに取り組んでいきます。
また、ストローや菓子の包装袋は順次バイオマスプラスチックに切り替えていきます。太陽光発電については、前期は九州工場に発電設備を導入しました。今期は関西工場や京都工場への導入を予定しています。
人権の取り組みについては、上期中にサプライヤーの行動規範を策定し、サプライヤー向けの説明会を開催する予定です。下期にはアンケートを実施して、その後に内容の分析や課題の洗い出しを行なっていきます。
持続的な成長に向けて⑤ESGに関する取り組み(ガバナンス)
ガバナンスに関する取り組みをご説明します。本年6月から新たにチーフオフィサー制を導入します。明治グループはこれまでホールディングスが持株会社としてグループ全体を統制し、事業の推進は各事業会社において自律的に運営してきました。しかしながら、ESG経営へしっかり対応し、持続的な成長を続けていくためには、今まで以上にグループを一体的に捉えた経営体制への移行が必要と判断しました。
新型コロナウイルス感染症のワクチン開発について
最後に、新型コロナウイルスのワクチン開発についてご説明します。新型コロナウイルス感染症は世界的な脅威となっており、ワクチンの研究開発は喫緊の課題となっています。
今回、KMバイオロジクスがワクチンの開発を実施することとなりました。従来からのワクチン製造のプラットフォームを用いて、不活化ワクチンを開発します。また、早期に十分な量のワクチンが供給できるように、新型インフルエンザワクチン用として保有している5,700万人分の生産が可能な設備が活用できるかについても検討を進めていきます。
本件はAMEDの採択事業であり、KMバイオロジクスが代表研究者として国立感染症研究所や東京大学医科学研究所などと共同開発を行なっていきます。現時点の計画では2020年度に非臨床試験を終え、その後、速やかに臨床試験を開始する予定です。
明治グループはコア領域に感染症を掲げる企業として、ワクチン開発を通じ、社会の安心安全や人々の健康に貢献をしていきます。以上で私からの説明を終わります。引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。