純資産総額が減る理由は、(1)解約、あるいは(2)運用損のどちらか、または両方です。経験上、純資産総額が9割以上減少した投資信託が、息を吹き返して再び大ヒットになることはありません。また、純資産総額の多寡に関わらず、いったん売れなくなった投資信託もほぼ復活することはありません。
なぜなら、設定当時は運用会社も販売会社も、流行りのテーマを掲げた投資信託(主としてアクティブ投信)のマーケティングや営業活動に目一杯尽力するわけです。今、同じリソースをかけるのであれば、当然ながら“旬”で“目新しい”テーマの投資信託にお金をかけた方が、結果的に販売額が上がります。もちろん、旬や目新しさは作り出していくのですが。
というわけで、新発の投資信託が売れなくなった後には、また新しいテーマを掲げた投資信託が出てきます。前述の投資信託は約4千億円の資金を1カ月程度の募集期間で集めました。この数字は対面でのセールス活動でないと達成できません。営業日数20日間として、いわゆるノルマである目標販売金額は、1日あたり200億円といったところですね。
流行っているのではなく、流行らせている!?
最後にまとめると、タイトルの「流行りのESG投信は”いい投資信託”か、それとも”ダメな投資信託”か?」に対する答えは、運用会社・販売会社にとっては間違いなく”いい投資信託”です。ノーリスクで販売手数料(上限3%・税抜)と信託報酬(年間1.68%・税抜)合計で初年度180億円弱程度の収益(年間平残3800億円とする)が見込めるからです。
では、投資家にとってはどうでしょう。筆者ならこう考えます。当該コスト以上(初年度4.68%)のリターンとなれば”いい投資信託”、それ以下であれば”ダメな投資信託”です。そういう観点では、ESGというテーマにこだわる必要はないのです。
もっとも、金融機関から声がかかり投資信託の勧誘をされるのは、ごく一部の富裕層。多くの賢明な方々は、もっともっと効率的に運用できる方法で、着実に資産形成されていると信じています。