2020年5月14日に行なわれた、株式会社ミライト・ホールディングス2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ミライト・ホールディングス 代表取締役社長 鈴木正俊 氏
1.2020年3月期決算概況
鈴木正俊氏:みなさまおはようございます。社長の鈴木でございます。本日は電話会議ということで例年と違う形式ですが、ミライト・ホールディングスの2020年度3月期の決算概況をご説明します。おかげさまでこのような機会をいただき、御礼を申し上げたいと思います。
3ページをご覧ください。本日の一番のメインとなる2020年3月期の決算概況です。内容を見ていただくとわかりますが、受注高、売上高、営業利益、経常利益とも過去最高で、増収増益となりました。当期純利益は、東北のTTK、中国のソルコム、四国の四国通建を経営統合した関係上、特別利益が剥落し、反動減となっています。ただ、経営的には堅調に進んできたと思っています。
スライドの左の数表をご覧ください。受注高は4,465億円で、前期比539億円の増加となっています。スライドの右側に4事業区分での内訳を記載しています。環境・社会イノベーション以外の受注高は、経営統合の影響もあり、順調に伸びています。
売上高は4,441億円で、前期比プラス652億円です。売上高の下にNTT、マルチキャリア、環境・社会イノベーション、ICTソリューションの順番に事業区分で記載していますが、すべての分野でプラスになっています。また、営業利益は219億円で、前期比プラス13億円となっています。
また、2021年3月期に影響します繰越工事高は1,503億円で、昨年より54億円増加しています。1,503億円は例年に比べても非常に高い水準です。
(参考) 2020年3月期決算概況(従来グループ)
経営的には非常に堅調だったと見ていますが、3ページは経営統合した結果です。4ページに経営統合する以前の会社のグループ、つまりミライト、ミライト・テクノロジーズ、Lantrovision(S)Ltdのグループがどうなったかをお示ししています。売上高は前年に比べて過去最高でしたが、営業利益が169億円で前年より7億円低い水準です。工事損失の引当金あるいは貸倒引当金があり、不採算事業などのリスクの回避や担保を精査した結果、若干利益が落ちました。それでも、トータルとしては堅調だったのではないかと見ています。
売上高の詳細[対前期増減]と営業利益の詳細[対前期増減]
5ページをご覧ください。2020年3月期の増加あるいは減少の要素についてご説明します。5ページの左側は売上高です。NTT事業はプラス280億円で、固定事業の比率が70パーセントから80パーセントの会社を経営統合した関係や、設備運営業務や保守業務が増加していることもあり、大幅な増加となります。
マルチキャリア事業は一部キャリアの工事遅れで、ハイテンションボルトの部材が供給不足に陥った関係が相当影響を受けましたが、楽天向け工事あるいはCATV工事の増加で補い、プラスになっています。また、環境・社会イノベーション事業はプラス104億円です。メガソーラーの完成工事の増加、あるいは土木、電気、照明分野が増加しました。
ICTソリューション事業は大幅なプラスの221億円です。LAN・PBXと非常に地味な分野と思われるかもしれませんが、この分野は堅調に伸びてきています。また物販のところでモバイル系の楽天工事が増えてきたこと、あるいはモバイル系の工事が増えたことにともなう物品の扱いなどが大きく伸び、ICTソリューションを伸ばしています。もちろん、ベースは大阪の第1データセンターがフル稼働して軌道に乗り、これまでの蓄積に下支えされて伸びてきていることです。また、売上高は対前期約652億円の増加ですが、計画よりも111億円の増加となり、堅調だったと思います。
営業利益については、売上高の増加により、82億円の増益効果をもたらしました。一方で不採算案件の引当計上等で30億円ほどマイナス影響を被りました。貸倒損失等による販管費が増加しましたが、販管費率自体は下がっています。営業利益は前年度に比べて13億円、対計画で4億円の増加となっています。営業利益率も当初の計画どおり5.0パーセントで着地しました。以上が2020年3月期の概況です。
株主還元について
次に株主還元についてご説明します。8ページをご覧ください。株主還元は安定的・継続的な配当を維持しながら、総還元性向30パーセント以上を目線に、総合的に判断する姿勢です。当期は、目標のとおり年間配当40円を実行すると同時に、二度にわたって自己株式の取得を行ないました。5月と9月の2回で総計104億円です。したがって、連結の配当性向は26.7パーセントです。自己株式が104億円で、連結総還元性向として95.4パーセントの結果となっています。ROEは7.4パーセントでした。
2019年12月末日付で、当社転換社債を繰上償還しましたが、転換行使率が100パーセントでした。すべて自己株式の割り当てで対応しましたので、発行済の株式総数は増加していません。安定という意味で危機対応していきます。
B/Sの状況や各種経営指標は33ページ以降に記載していますので、あとでご覧ください。自己資金比率もおかげさまで59.3パーセントから61.2パーセントと60パーセント台に届き、非常に安定していると思います。
Ⅲ 2021年3月期事業計画
次は2021年の事業計画についてです。2020年度の連結業績予想については、みなさまにも重々ご案内のところです。将来どういう変化を行なうか、具体的な想定がしにくい年ですが、通年で前年度の業績を維持していきたいということで、従来見ています繰越工事の状況、あるいはこれからの発注動向を展望しながら、営業利益のレベルで前年度の業績を維持することを目線に置いて計画していきたいと思います。
もちろん現在の状態で新型コロナウイルスの収束が見通せないことも事実です。東京オリンピック・パラリンピックの開催が延期されましたが、今後サプライチェーンの一時的な寸断で工事の遅れや、お客さまの投資マインドの減退があれば、受注環境が変わることもあります。
今はそのあたりの影響を合理的に算定できない状況であり、今回は業績予想には織り込んでいませんが、今できる最大限の見通しをお示ししています。もちろん業績予想との差異が明らかとなり、ある程度合理的に算定できる時期になりましたら、適宜公表したいと思います。なお配当については、前期並みの上期20円、下期20円の計40円を予定しています。
1.当社を取り巻く事業環境
10ページをご覧ください。スライドの真ん中に2021年3月期の事業計画ということで、受注高4,300億円、売上高4,350億円、営業利益220億円と記載しています。売上高は若干今年よりも堅めに見ていますが、営業利益は2020年3月期の219億円から同水準の220億円です。
ベースドメインはNTT事業のマルチキャリア事業、フロンティアドメインは環境・社会イノベーション事業とICTソリューション事業です。それぞれの事業分野4区分ごとに大きなポイントを記載しています。NTT事業は、引き続き生産性の向上が一番のポイントです。統合しましたので、ベンチマーク方式で各社も合理的な運営についてコスト削減を行なっていくことと、5Gが進展しますので、固定通信分野に置いてもネットワークが変化したり需要が変化したりするだろうということで、これらを含めて生産性を上げながら利益を確保していくことが大きなポイントです。
マルチキャリア事業はいわゆるモバイル事業になります。通信会社各社が5Gに集中していくことになりますので、詳細は後で述べますが、基地局の増加を大きく見込んでいます。楽天も拡大していくだろうと思っています。さらに、5Gが広がりますと通信環境以外にも、周辺の一般的なソリューション分野、関連の周辺ビジネスが出てきます。それらの取り組みで5G自体のコア事業を強化することにより、伸ばしていけると思います。
ただ、両通信事業の中では、マルチスキル化、いわゆる現実の人材や作業人員の高度化を同時に進めていくことがポイントになりますので、マルチスキル化を並行的に進めながら将来に対する地盤を伸ばしていきたいと思っています。
環境・社会イノベーション事業については、非常にたくさんの受注案件が動くと思いますが、利益率等をしっかりと見た選別受注や、あるいは将来に対する事業分野の伸びもセールスの重要なところだと思います。内訳を見ますと、太陽光のメガソーラー、いわゆる電力基地局的な発電は少し終息の方向かと思いますが、ミドルソーラーあるいは屋根置型の需要は堅調で、売電から自家消費型に変化しています。
また、Operation&Maintenanceの保守の分野が電気分野で非常に大切になってきます。温暖化もあり、EMSつまりEnergy Management Systemもこれからの重要なポイントになってくると思います。
ICTソリューション事業は非常に伸びる分野であり、変化が大きいところです。重点分野で新規分野を拡大しています。やはりローカル5Gが伸びていますので、そこに応じたソリューション、あるいはテレワークにおける在宅環境も素敵な変容を遂げてきます。教育ではGIGAスクール構想にも対応していきます。いずれにしても、グループとしてソリューション営業を拡大することも大事になってきます。その点をポイントに進めていきたいと思います。
ただこの4事業を進めるにあたり、重要な点をスライドの下半分に記載しています。国内5社体制になりますので、統合シナジーを本格的に効かせていきます。1年間、システム開発等の準備をしてきました。時代で需要も変わっていき、統合シナジーを発揮して、生産性を上げていくところに入っていきます。一方、デジタル・トランス・フォーメーションにおいては、グループのDXを推進して作業効率化を進めていきます。この生産性を上げることも非常に大事なところであり、成熟させていくところです。
もちろん新型コロナウイルスの長期化の問題や、来年度の東京オリンピック・パラリンピックの問題もありますので、足元はしっかり目配りをしていきたいと思います。グループや協力会社も含めて、これからの推進体制、資金、経営体制、人材にも十分目配りをしながら進めていく必要があると認識しています。ただ、少し高みを目指すことも大事かと思っています。
2.NTT事業の動向①
11ページ以降は各事業の動向です。大変細かいため、かいつまんでご説明したいと思います。まず11ページをご覧ください。売上高は若干下がっていますが、利益はしっかり出していきたいと思います。技術者のマルチスキル化を図ることや、AIやICTを活用した保守点検業務の高度化、業務の効率化、安全性の向上に引き続き取り組んでいきます。また、今何度もお伝えしましたが、事務所統合やJV5社のシナジー効果の創出で利益率の改善を図ります。素敵な変容を頭に入れながら進めていきたいと思います。
2.NTT事業の動向②
主な取り組みについて、12ページでご説明します。左側はマルチスキル化の推進による効率化、業務領域の拡大と記載しています。少子高齢化も底流にありますし、NTT東西の設備投資も成長分野へシフトしていきます。
また、マルチスキル化による効率化、業務範囲の拡大については、ビジネス分野、ネットワーク分野、モバイルなどのマルチスキルがある人材を育てていくことがグループの基本です。ここで技術力をしっかり記録して機動力を高めることによって、生産性を高めていきたいと思います。おかげさまで技術も非常に進展しています。装置類も高性能化、小型化しています。AI、IOT、RPAも非常に進んでいきますので、実現の領域に持っていきます。
スライドの左下はAI、ICTを活用した設備点検業務の高度化、安全性の向上です。1つは、とくに西日本地域で進んでいます「エリアラウンド方式」ということで、保守エリアごとにグルーピングして、定期的に点検をしながら将来コストを減らす活動で事業を積極的に変えていきます。もう1つは点検業務の高度化です。ICT技術やAIを使って瞬間に電柱の角度や故障箇所をリモート診断し、高度化を図ります。
スライドの右上は事務所統合と環境改善です。働き方においても生産性にとっても重要なところです。引き続き取り組んでいき、来年でほぼ目処がつくのではないかと思っています。事務所の統合を継続的に進めていきたいと思います。統合化しましたソルコム、四国通建についても、エリアフリー業務の集約の計画が進んでいます。
スライドの左下はグループ運営の強化です。1つは災害時の支援で、昨年は台風15号による千葉県の災害においてグループの機動力が機能しました。やはりこの機動性はすごいと思いましたが、引き続きその力を強めて統合力を上げていきます。業務の効率化も、システムを含めて改善するものをグループ内に広め、力をつけていくということで着実に進めます。
また、一番大事なところはベンチマークです。各社それぞれ似た業務を行なっているのですが、やはりやり方が異なる面もあります。その点を費用構造の比較や分析を行なうことで、非常に高い効果を得られると思っています。システムの統合も進んでいきますので、健全なNTT事業にしていけるのではないかと思っています。
3.マルチキャリア事業の動向①
13ページと14ページはマルチキャリア事業です。5Gの発展等々の詳しい割当は29ページにあります。あとでご覧ください。マルチキャリア事業の動向だけご説明します。
ご案内のように、2020年度は5Gの本格化を予定していますので、主軸は4Gから5Gに思いっきりシフトし、楽天モバイルがこれから増加していく中で事業を遂行していくことです。ミライトグループは新しいかたちになっていますので、この過程の中で連携強化も含めて利益の改善を進めていけると思います。
売上高を見ていただきますと、固定は若干下がりますがモバイルは堅調に伸びていく分野であると見込んでいます。
3.マルチキャリア事業の動向②
主な取り組みのポイントは14ページに記載しています。2024年に向けての5Gの基地局計画数を各通信会社発表のものでグラフ化していますが、確実に需要量が伸びていきます。今現在、5Gは全国主要都市で主要サービスが始まっていますが、今年度の後半以降、面的な展開が本格的に進んでいくだろうと想定しており、そこに期待しています。
スライド左下、ローカル5Gやそれ以外の5Gもあります。モバイルインフラとソリューションを融合していくところは確実に進んでいきます。周囲のいろいろな企業のみなさまも参画されていますので、我々もエンジニアリング分野に参加していきます。例として、ゴルフソリューションで、ゴルファーとしての面白いシステムになると同時に、ゴルフ場の効率的な運営にも非常に効果があることを実証実験的に行なっています。
ゴルフ場の他にも、5Gがソリューションに結び付くところを持っており、すでに着手しています。ドコモ社のOpen Houseで協業モデルがありますので、それらにも積極的に参加しています。また、ローカル5Gや5Gを構築するアンテナ事業も変化していきます。そのプロセスはアンテナだけではありませんが、室内反射板的な無線の利用技術も進んでいきます。そのあたりも実証実験的に開発に参加しています。
スライド右側は生産性向上についてです。モバイルも生産性が非常に上がっていけると思っており、プロジェクト管理システムを中心に業務改善に取り組んでいます。その中ではロボティクスの処理、あるいは自動化を噛み合わせていくことになりますので、プロジェクト管理システムそのものも合理化されると同時に、周辺業務もかなり簡素化、自動化可能ではないかと思っています。
一番大事なところは現場です。いわゆるモバイルは工事現場が散っていき、各所にあります。1つの無線ですので、その現場をどう支援していくかが急速な5Gの拡大を効率的に進めるためのポイントです。ここも大幅に改善を進めていきたいと思います。
またスライド14ページの右下に、先ほどの固定推進事業と同じようにシナジー効果をグループ間で効かせていきます。お客さまは固定の場合はNTT中心で、キャリアはドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天と各事業者それぞれ仕事の仕方やシステムが少し違います。そのようなお客さまごとに全国をどうマネージして工事していくかや、モノを統合会社間で共有化して進めることが大切になっています。そのような意味で、シナジー効果の実現に向けて、リソース共有・連携や現場業務の効率化、共通業務の連携、人材育成は大事なところです。モバイルと固定、モバイルとネットを進めていくことが重要です。
4.環境・社会イノベーション事業の動向①
15ページの環境・社会イノベーション事業の動向です。売上高は若干下がっていますが、大型の太陽光、メガソーラーから自家消費型の太陽光あるいはO&M事業、いわゆる保守・監視の事業にシフトしており、若干堅めに見ています。
環境商材であるEV充電器、蓄電池、太陽光などのスマートコミュニティ構築に事業の幅があるかなと思います。また、少し分野が違うように思われるかもしれないのですが、上下水道工事は東海工営とM&Aも進めており、その領域も広がるかなと思います。
そのような意味では、スライドの下のグラフで太陽光が2021年3月期に縮小しているように見えますが、その代わりに電気・空調、あるいは土木が堅調に伸びると見ています。
4.環境・社会イノベーション事業の動向②
環境・社会イノベーション事業における主な取り組みについてのご説明を記載しています。太陽光関連はほぼお伝えしました。自家消費型太陽光、太陽光のO&Mと、スマートコミュニティの取り組みに参画していくのが大きなところです。
上下水道は老朽化を避けては通れないところです。ここも非常に需要の大きいところですので、体制を整えながら取り組んでいきます。上の写真は無電柱化の取り組みで、従来何度もお伝えしていますが、京都の先斗町などに工事を行なってきました。京都三条通も工事が進んでいます。神奈川の国道1号線も着実に進んでいますので、これまでのノウハウを生かして取り組みたいと思っています。また、外資系キャリアのネットワーク構築事業にも取り組んでいきます。
5.ICTソリューション事業の動向①
次は17ページのICTソリューション事業の動向です。この分野は非常に伸びると思っていますが、若干の増で堅めに見ています。LAN・PBXなどの堅調なものが伸びていくと思っていますので、そのようなところの需要をしっかり掴んでいきたいと思います。
5.ICTソリューション事業の動向②
18ページにポイントを記載しています。グローバル事業はシンガポール、フィリピン、オーストラリア、スリランカとありますが、新型コロナウイルスの影響は不透明です。アジアの状況をよくウォッチングしながら見ていきたいと思います。
ラントロビジョンにおいても、新型コロナウイルス感染拡大の状況の中でもデータセンターは非常に大切なインフラであり、海外でも仕事を止めることはありません。このあたりは動かしていかないと社会が止まりますので、重要な分野ですが、その伸び方がわかりません。利益率は非常に低くなっていく可能性もあります。電気設備工のM&Aの関係もありますし、ラントロビジョンの事業の隣接区域への拡大を進めることを考えていきたいと思います。基本はグローバル事業のところは環境状況の変化をよく見ていくことが重要です。足元では極端な影響ではないと思っています。
「動くセンサー」であるドローン事業の取り組みですが、非常に堅調に世の中が進んでいくと同時に、この2年から3年の努力もかたちになってきています。人材・拠点を広げるため、ドローンスクールを運営して、基盤を広げていくところに事業活動を見ています。あるいは、システムとしての各種ドローンのサービスが進んできています。アライアンスではNTTグループ、ファームアイ、神戸市の水道局と具体的なものが出てきているのが1つの状況であり、期待のもてる分野です。
右側のデータセンターは、これまでご説明しました第1データセンターをフル稼働していき、次の段階のネットワーク型のデータセンターも順次着手していくことになると思います。
SD–WANの取り組みは、ネットワークがソフトウェア化すると非常にわかりにくい分野かもしれません。次世代はこれが企業の通信、あるいはクラウドにとって大事なところになりますので、当社の基盤としてもがんばっていきたいと思っています。私からの説明は以上です。ありがとうございました。