㈱ジャパンディスプレイ(JDI)は、液晶技術を活用した「研究開発型企業」へ転換する方針を打ち出した。非接触技術や生体センサー技術を生かしてヘルスケア分野に参入するほか、ヒトゲノム解析事業への参入も検討。先細りが見込まれるスマートフォン用液晶に頼る構造から脱却し、新たな収益源として新事業の確立を急ぐ。

ヘルスケアやゲノム解析に参入

 強みを持つLTPS(低温ポリシリコン)バックプレーン(背面駆動基板)技術をコアとして、液晶、有機EL、センサーなどの多様なフロントプレーンを組み合わせて多様な価値を創造する。透明ディスプレーやマイクロLEDなどの次世代ディスプレー技術を進化させるのと並行して、シート基板やストレッチャブル(伸び縮みする)基板を用いた大画面認証センサーやタッチレス非接触センサー、生体センサーなどを事業化し、ヘルスケア市場を開拓していく。

 ゲノム解析に関しては、ヒト全ゲノム解析以外に、そのゲノム解析情報と生体センシングデータを組み合わせたリアルタイム健康管理など、新サービスの展開を視野に入れる。同社では2030年にヘルスケア市場が500兆円超、このうち情報・デバイス市場は10兆円市場を形成すると想定し、高度医療分野を新たな収益源にするべく育成・強化を図っていく。

19年度は1014億円の最終赤字

 ただし、足元の業績は厳しい。このほど発表した19年度(20年3月期)の通期業績は、売上高が前年度比21%減の5040億円、営業損益は385億円の赤字(18年度は272億円の赤字)、純利益は1014億円の赤字(同1066億円の赤字)に終わった。

 JOLEDの株式譲渡、いちごトラストからの資金調達、INCJからのリファイナンスによって20年1~3月期は94億円の最終黒字を確保したものの、それまでの赤字が大きすぎた。19年10~12月期はアップルの「iPhone SE2」向けなどが好調で25億円の営業黒字を確保できたが、20年1~3月期は新型コロナウイルスでスマホ需要が低迷したこともあり、再び59億円の営業赤字となった。

 通期ベースで、モバイル分野は大口売り上げの剥落や不採算製品からの撤退で前年度比25%の減収。主力として期待していた車載分野も、新型コロナによる生産低迷で売上高は同8%減の約1000億円にとどまった。ウエアラブルやVR用は堅調だった。

20年度も15~20%の減収を想定

 20年4~6月期の業績見通しは、売上高が850億~890億円、営業損益が70億~90億円の赤字を見込む。20年度通期についてはスマホ&車載用の需要減で15~20%の減収になると想定しており、4000億円程度にとどまりそうだ。固定費が約200億円下がる見込みで、変動費の削減などによって収益のさらなる改善を図る。

 一方、3月末までにアップルとみられる主要顧客に約215億円で譲渡する予定だった白山工場(石川県白山市)の製造装置、土地・建物が7~9月期にずれ込む見通しであることも明らかにした。白山工場は19年7月から稼働を停止していたが、譲渡を前提に再立ち上げを開始しているという。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏