2020年6月16日に行われた、株式会社NTTドコモ 第29回 定時株主総会の内容を書き起こしでお伝えします。前半は、公式サイトで発表されている「2020年度事業運営方針」の内容を、後半の「2020年6月16日開催 第29回定時株主総会」からは、事前質問も含め、株主総会当日に実施された質疑応答の内容を掲載しています。

スピーカー:株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘 氏

2020年度事業運営方針

吉澤和弘氏(以下、吉澤):当社は、今年度を2020年代という『新時代の成長に向けたスタートの年』と位置づけ、「3つの柱」と、それらを支える「構造改革」に取り組む一年とします。

魅力的な料金の提供

5Gの商用サービスを開始し、他事業者の本格参入など新たな競争環境となりますが、お客さまの利用ニーズに合わせた料金プランの充実を図ってまいります。

5Gエリアの早期拡大

加えて、競争の源である5Gの早期展開に着実に取り組み、顧客基盤をより強固なものにしてまいります。

お客さま接点の磨き上げ

また、待ち時間・応対時間の短縮を引き続き推進するとともに、お客さまへの基本サポートの徹底や、メルカリ教室のようなパートナーとも連携した高付加価値サポートを展開し、Webチャネルの強化とあわせてお客さま体験の向上に取り組みます。

会員プログラムの魅力度向上

会員基盤については、より日常的にご利用いただきやすいdポイント加盟店の拡大等、会員プログラムのサービスを充実させ、会員基盤の「質」の向上に取り組みます。

お客さま・パートナーをつなぐ強いエコシステムの確立

中期経営戦略の基本方針のひとつである「会員を軸とした事業運営」をさらに深め、お客さまが日々利用するアプリやメディアなど入口となる強い顧客接点を構築し、デジタルマーケティングによる最適アプローチを実現することで、お客さまとサービス/パートナーをつなぐカスタマージャーニーを提供します。

成長分野へのリソース集中と強化

そして、当社のスマートライフ事業は、3つの主力分野へリソースを集中させてまいります。

まず、金融・決済サービスは、加盟店拡大とdカード・d払いの日常利用をさらに促進します。また、映像・エンターテインメントなどを中心にコンテンツサービス強化に取り組み、事業の拡大をめざします。さらに、充実した会員基盤を活用し、マーケティングソリューション事業を確立してまいります。dメニュー・LIVE BOARDなど会員属性に応じた広告事業を拡大すると共に、戦略パートナーとのデータ連携によるCRM強化など、データ活用ビジネスを本格的に進めてまいります。

新たな映像視聴スタイルへ

2020年代の持続的成長に向け、2020年3月にスタートした5G商用サービスを軸に新たな価値創造に取り組んでまいります。

「マイネットワーク構想」の取組みを推進し、様々な周辺機器と連携して、8KVRライブやマルチアングル視聴、ゲームなど、映像を中心とした新しい体感・体験を実現します。

5Gの特徴を活かしたソリューションの提供

また、パートナーとの協創を拡大し、3つの注力領域を中心に、「ドコモオープンイノベーションクラウド」など5Gの強みを活用したソリューションを提供し、新たな市場を創出します。

持続的成長に向けた新たな価値創造

さらに将来を見据え、ヘルスケアやMaaSをはじめ、リモート型社会への構造変化にも貢献する新たな事業の創造にチャレンジします。

3Gマイグレーションの強化

業務の在り方を常に見つめ直し、通信事業・非通信事業双方において競争力を持った事業構造をつくりあげるため、最大限の効率化を実行します。

象徴的な事例として、3Gのマイグレーションを強化します。3G/4G/5Gの3世代の方式を同時に運用する負荷を低減し、5Gに経営資源を集中します。

あらゆる業務プロセスの効率化

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)により、店頭での応対時間短縮やスタッフ稼働の削減、AI活用による故障検知など、あらゆる業務プロセスを効率化し、成長分野へのリソースシフトを進めます。

2020年度 業績予想などについて

2020年度の業績予想については、新型コロナウイルスの影響により業績予想の合理的な算定が困難であることから、現段階(2020年6月)では非公表とさせていただきます。今後の業績への影響を慎重に見極め、合理的な算定が可能となった時点において、速やかに開示を実施させていただきます。

新型コロナウイルス後の新たな社会に向けて

当社は、通信事業者としての使命である通信サービスの安定運用に努めるとともに、当社が果たすべき役割、当社だからこそ出来ることを考え、新型コロナウイルスの感染拡大の防止、そして今後ますますリモート型へとシフトする社会構造の変化に対応し、新たな価値創造や社会課題の解決に全力で取り組んでいく所存です。

2020年6月16日開催 第29回定時株主総会

吉澤:社長の吉澤でございます。私が議長を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。本総会は、新型コロナウイルス感染防止のため短時間化に努めることとし、30分程度の開催とします。

ご来場の株主のみなさまにはマスクの着用をお願い申し上げます。私たちもマスクを着用させていただきます。また、本総会はご来場をご遠慮いただいた株主さまに向けてライブ配信しています。ご来場の株主さまのプライバシーに配慮し、議長席の役員席付近のみ撮影しています。

それでは定刻となりましたので、当社第29回定時株主総会を開会します。本日の目的事項は、お手元の招集ご通知に記載のとおりです。ご発言については、報告事項の報告、および決議事項の事案の説明が終了した後にお受けすることとします。

また、本総会は定足数に定めのある各議案を審議するのに必要な定足数を満たしています。次に、第29期事業報告連結計算書類、および計算書類につきましてはお手元の招集ご通知、ならびに当社Webサイトに掲載のとおりであることをご報告します。また、会計監査人および監査役会の連結計算書類監査結果について、財産および損益の状況を正しく示している旨の監査報告書を受領していることをご報告します。

本総会の決議事項は、お手元の招集ご通知の8ページから32ページに記載のとおりです。第1号議案は、当期末における配当金、第2号議案から第6号議案は監査等委員会設置会社への移行に関連するものです。

ここで、ご質問の受付に先立ち、事前に承ったご質問の中から株主のみなさまの関心の高い事項についてご回答します。

※株主さまのご質問については、株式会社NTTドコモで確認できていない内容も一部含まれます。

<事前質問>

事前質問1 株主還元について

Q:株主還元についてどのように考えているのか。

A:当社は事業の成長・拡大により企業価値を高めつつ、株主さまへ利益還元をしていくことを経営の重要課題の1つと位置付けています。

新型コロナウイルス感染症の影響に備えるため、企業の内部留保が再評価されている状況だと認識していますが、当社は強固な財務基盤を有しており、中期的にも安定してフリーキャッシュフローの創出を見込んでいることから、従来どおりの方針で株主還元を実施したいと考えています。

つまり、配当については連結ベースの業績、財務状況および配当性向に配意しながら安定性、継続性を考慮して行っていきます。また自己株式の取得についても、1株当たり当期利益等の経営指標が改善され、1株当たりの価値向上が期待できることから、引き続き弾力的な実施を検討していきます。

本方針に基づき、今回の株主総会にて、当期末における配当金を1株につき60円、年間で120円とすることをお諮りしています。

2020年度については、新型コロナウイルス感染症の影響により、経済、業績の先行きが不透明ではあるものの、配当については安定性、継続性を考慮し、配当予想を2019年度と同水準である1株当たり120円としました。引き続き、株主還元の強化に努めていきますので、ご理解のほど、よろしくお願いします。

事前質問2 株主優待での「dポイント」の付与について

Q:株主優待としてNTTのように「dポイント」を付ける考えがあるか。

A:現時点で、当社は株主優待を実施する予定はありません。すべての株主さまに平等にご満足いただくため、株主優待よりも現金での配当というかたちでお答えしています。

NTTが「dポイント」を使った株主さま向けの施策を実施していますが、当社の株主さま向けの施策については当社で検討して決定しています。ご理解のほど、よろしくお願いします。

事前質問3 新型コロナウイルス感染症による収支影響について

Q:新型コロナウイルス感染症による収支影響を教えてほしい。

A:2020年度の収支影響は、新型コロナウイルス感染症の今後の拡大状況や収束時期等により不透明と考えています。

国際ローミング収入や金融決済取扱高の減少等による減収影響がありますが、販売関連の費用や建設工程の遅延によるネットワーク関連費用等の費用減の影響もあると想定しています。

新型コロナウイルス感染症の事業影響や変化の予兆を捉えつつ、前年同水準以上の利益を目指しています。

事前質問4  5Gの利益貢献について

Q:5Gの利益貢献はどのように見込んでいるのか。

A:当社は5Gの特徴を生かし、社会や企業のデジタルトランスフォーメーションを加速するなど、新しい価値を提供していくことで利益貢献、企業価値向上を実現していきます。

高速大容量、低遅延に加え、AIやIoTなどの技術と融合してデジタルトランスフォーメーションを進めることで、新たな価値創造と社会課題の解決が実現できると考えています。また、5Gエリア拡大などの設備構築のためコストが先行して発生します。設備投資については、2023年まで総額1兆円とするなど、コントロールしながら事業を運営していきます。

サービス開始後3年を目安に単年度黒字化、早期に累積解消できるように取り組んでいきます。以上となります。

<株主総会当日の質疑応答>

質問者1 ワンセグ付き携帯電話とNHK受信料について

Q:NHKの受信料に関してです。ワンセグ付きの携帯電話、スマートフォンですが、最初はNHKの受信料が必要かどうかという説明がなされないまま販売されてしまいました。そして最近のカタログには、「受信契約が必要になる場合がございます」と記載されています。それまでは、まったく説明がありませんでした。

家電量販店に「そのような説明をしたのか」と聞くと、「説明してない」と言われました。これは、みなさんがワンセグ関係、あるいはカーナビについて(受信契約が発生すると)知らなかったという状況です。

仕方がない部分もあるとは思いますが、今後、NHKでストリーミング放送が始まった場合、受信契約を求めるときにインターネットの接続環境だけで「受信契約が必要です」というような訪問員が出てくると思っています。実際に現在も、テレビがなくても受信契約が必要だと言われます。それに対して、ドコモとしてはどのような対策をされるのでしょうか。

例えば「NHKは受信していません」ということがわかるようなQRコードのシールを貼ることができれば、トラブルが少なくなると思います。あるいはお客さまにも「このようなかたちでは受信契約は不要です」といったことを、ドコモとの契約の際に周知するといったフォローをしなければ同じようなトラブルが起きてしまいます。

このワンセグ問題での「ご迷惑をおかけてしてしまった」という反省を生かして、NHKのストリーミング放送の契約のときには、「このような条件であれば、単にドコモの携帯電話、あるいはスマートフォンを持っているだけでは受信契約は不要です」ということが訪問員にもわかるようなシステムを考えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

A:ワンセグの支払い義務についてのご質問ですが、現在、最高裁の判決では、ワンセグ機能搭載端末でも受信料の支払い義務があるとの判決が出ています。

NHKの受信料の扱いについては、あくまでもお客さまとNHKとの間のお話になると認識しています。当社からの直接のコメントは難しいわけですが、店頭でお客さまから、ワンセグ対応の端末購入の際に受信料の支払い義務が生じるかどうかと問われた場合には、基本的にはNHKの支払い窓口をご案内するようにしています。

また、ネット配信に関する受信料の徴収については、現時点では具体的な制度が整備されていないため、パソコンやスマートフォン等を持っていることで受信料の支払い義務が生じるかは、現時点では不明です。いずれにしても、ドコモとしてはコメントが難しいため、ご容赦をお願いしたいと思います。

質問者2 「NB-IoT」のサービス終了について

Q:「NB-IoT」について教えてください。3月30日にサービス終了をアナウンスして、3月31日にサービス終了になったと思いますが、つまり、1ユーザーも利用者がいなかったことになるかと思います。

コストをかけて開発を行ったものの、1ユーザーも利用者がいなかったということは、非常に無駄だったのではないかと思っていますが、開発に関する意思決定が、いつ、どのようになされたかを教えてください。

A:「NB-IoT」も含めたIoTの世界は、これから非常に大きく拡大していくと考えられます。その中で、いくつかの通信方式、もしくは省電力化を図るような技術が並行して出てきたところです。

私どもは、今後どのような方式が主要になるかも踏まえながら、さまざまな可能性を追求してきました。しかし、今お話をいただいたような「NB-IoT」という技術については、市場のみなさまのご利用状況、お客さまからの反応も含めて少ないご利用だったということもあり、残念ながらサービスを終了させていただきました。

ただし、他の方式のものは続けており、またしっかりとサービスを提供させていただきますので、引き続きIoTサービスをご利用いただければと思います。

質問者3 ビジネスパートナーが他社ではなくNTTドコモを選ぶポイントについて

Q:5Gサービスが開始されましたが、5Gサービスの利用形態は、「B2C」「B2B2X」「M2M」も含めると、利用の一端に必ずビジネスパートナーといいますか、法人がいらっしゃると思います。

サービスとしては各キャリアがだんだん同じようになると思うのですが、ビジネスパートナー、法人がソフトバンクでもなくauでもなく、御社を選ぶポイントとしては、どういうところにあるのでしょうか。

A:法人のお客さまが当社を選ぶポイントとしては3つあると思っています。

まずは営業体制です。代理店3,000名を含め、全国に約8,000名の営業体制、コールセンター等を整備しています。対面チャネルだけでなく、非対面チャネルにおいてもお客さま対応を万全にできる営業体制を整えています。

2点目は技術力です。当社のR&D部門と連携し、5G、IoT、AIといった先進技術を活用したソリューションを提供できます。

3点目はパートナーの方々です。すでに5Gオープンパートナープログラムということで、2019年度末時点で3,400社のパートナーに参加いただいていますが、そのようなパートナーとの連携、そして地方においては地方創生セミナーといったことを通じて、全国の自治体や企業との繋がりを生かした協業ができます。これらが強みだと思います。

質問者4  NTTドコモの社債について

Q:質問事項は、ドコモの社債についてです。今年の4月3日、ムーディーズおよび日本格付研究所から、ドコモの社債の国内発行枠に格付が付与されていますが、これはドコモが新規に依頼したものでしょうか。それとも、格付機関の定期的な見直しでしょうか。

また、この発行枠が1兆円と大きいことも気になります。現在、ドコモの社債発行額は500億円ですが、発行枠は1兆円となっています。今後、大きなM&A案件などの予定があるため1兆円の発行枠を維持しているのでしょうか。会社の考え、見解等をうかがいたいと思います。

A:ムーディーズ、日本格付研究所からの当社への格付けの付与ですが、こちらは新しく実施したものではなく、2年ごとに、定期的に国内の普通社債の発行登録申請を行っており、その更新ということです。

枠は大きめに1兆円を取っていますが、実際に大きな資金需要があるかといいますと、今はそのようなものが具体的に見えているものではありません。あくまでも余裕を見ての枠取りとお考えいただければと思います。

質問者5 移動基地局車について

Q:数年前に来場した際にミニカーを2つほどいただきましたが、中継車のようなものでした。その後、広島では崖崩れがありましたが、その中では中継車は行けないと思います。またつい最近では、千葉県などで台風などもあり、中継車が行けないような状況でした。歩けば行けるものの、東北では洪水になったりして、その中で中継車は意味があるのでしょうか。

A:ご質問の移動基地局車のようなものは、全国で約100台強、準備しています。大きな災害があったときには、全国各地に配備している車を被災された地域に持って行き、通信の確保を実施しています。

昨年の千葉県ならびにいろいろな地域で被害のあった台風のときにも、各地域から出動してエリアを確保しています。また、万が一中継車が行けないような場合には、ドローンを使用したエリアの確保など、どれくらいの被災状況なのかも把握するような仕組みも取り入れています。

引き続き、当社の災害対策についてご理解いただきたいと思います。

質問者6 今期以降の増配の継続について

Q:ぜひ、今期以降も増配を継続していただきたいと思います。せっかく今まで毎年増配してきて、ここで据え置きとなると株主の失望は非常に大きいと思っています。増配継続と据え置きとでは、投資家の評価は「天と地」ほどの差があります。ぜひ増配を継続していただきたいと思っています。

10円の増配に必要な資金は、わずか100億円です。中間と期末で10円ずつ、合計20円増配してもわずか200億円です。すでに年間売上に匹敵する4兆4,000億円の利益剰余金、内部留保があり、資金は十分にあると思います。ドコモは業績がよく、それは吉澤社長の経営手腕のたまものです。しかも、この4兆4,000億円のうち、1年で2,500億円も増えているわけですから、これ以上の積み上げは不要ではないでしょうか。

そして、前期に3,000億円の自社株買いを行っていますが、今後は自社株買いは行わないでいただきたいと思っています。自社株買いは株主還元にはなりません。株主の利益は株価と配当ですが、自社株買いは株価にも配当にも貢献することはありません。

自社株買いは1株当たりの価値を高め、株価に好影響があるとされていますが、多くの場合、株価上昇は一時的で、その後株価は低迷することがほとんどです。最近、自社株買いを行った企業を10社ほど調べたところ、ほとんどの会社の株価が日経平均を下回り、株価は下落しています。

自社株買いの資金は、本来は配当可能な剰余金です。ところが自社株買いをすることによって、この配当原資は永遠に失われてしまうのです。自社株買いと配当とは「対立」するものです。

もともと自社株買いは、アメリカの企業経営者による、数十億円、数百億円といった巨額な株式放棄のためのものです。そして、短期の株価上昇を目的とするアクティビストの利益を図ったものです。長期の株式保有を目的とする個人投資家や機関投資家には、株主還元となるものではありません。配当だけが唯一の確実な株主還元です。配当は確実に株主の手元に届き、消費に使われ、日本経済に好影響となります。株価は配当にも直接反映され、配当が高くなれば株価も高くなります。

連続増配企業は、例外なく高株価です。これに対し、自社株買いは何も生み出さず、巨額な会社資金が消失するだけです。ROE等の指標を無批判に受け入れるのではなく、果たして自社株買いが事実として株主還元になるのかを慎重に検討いただきたいと思います。

自社株買いが資本流出、過少資本という弊害を生じさせている現実にも、ぜひ目を向けていただきたいと思っています。自社株買いは株主還元にならないことは明らかですので、金額を縮小するか実施を中止するなどして、その分をぜひ増配に振り向けていただきたいと思います。

A:まず配当についてですが、今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、経済、業績の先行きが不透明であるということで、2020年度の業績予想の発表については2019年度第4四半期決算の段階では見送らせていただいています。

そのようなことを踏まえ、2020年度の配当については増配ではなく、2019年度と同じ水準で1株当たり120円とさせていただいています。ただし、継続的、安定的な配当という方針は変わりませんので、今後も当社の財務状況等を見ながら、機会があれば増配を行っていきたいと思います。

自己株買いにつきましては、配当が直接的な還元であるのに対して、自己株買いに応じない株主さまから見ると、その効果が一見わかりにくいと思いますが、自己株買いによって株式の数を減らし、それによって1株当たりの利益などを向上させ、ひいてはそれが1株当たりの企業価値の向上につながると考えています。

このように、当社は配当と自己株買いの2本立てで株主還元を行っており、この方針はとくに当社の株式を長期保有目的でお持ちいただいている株主さまから多くのご支持をいただいていると思っていますので、今後もこの方針は引き続き実行していきたいと思っています。ぜひ、ご理解を賜りたいと思います。

質問者7 料金体系やお客さまのサポートについて

Q:料金体系に関して、以前から不思議だと思っていることがあり、お聞かせいただきたいと思います。たまに、監督官庁から料金に関して不公平があるといった報道が出ると思います。以前の携帯料金が高いころは、機種変更の際に端末をもらえたりもしました。

最近では料金が下がってきたこともあり、ポイントを持っている人はポイントで購入したり、通話料金が少ない人は普通に買ってもらうといった施策だとは思うのですが、そのあたりに関して、携帯会社を変える人の方がまだ有利といった方法だと思います。

株主としては、お客さまをどんどん取ってほしいという気もするのですが、そのあたりの今後の方針について教えてください。

また、個人的なお話になるのですが、私は「FOMA」ユーザーですが、「FOMA」が使えなくなります。そこで「そろそろ変えようかな」と思っても、結局、フォローのようなものがまだできていないようで、問い合わせをしてみたものの「有料になる」とのことでした。

通信方式が変わることで、今使っている端末が使えなくなるのであれば、もっと早めにサポートするような施策をとらなければいけないと思います。基本的には、今の利用者を囲っておくことが一番大事なことで、基本だと思います。携帯会社を変える人は変えてしまいますが、そのあたりをいかに固めるかという施策に関してもお聞かせいただければと思います。

A:まず、ドコモの回線、端末を長くお使いいただいていることについて、御礼を申し上げたいと思います。

株主さまのご指摘のとおり、やはり長く当社のサービスをご利用いただいている方に、これからも引き続きご愛顧いただくことが非常に大事だと思います。その上で、お客さまのご利用実態なども変わっていきますので、私どもとしても、料金プランを変えたり、あるいはその料金プランに付帯するいろいろなサービスを充実させたりといったことを行い、お客さまのニーズに合わせて提供させていただいています。これは、今後も引き続き取り組んでいきたいと思っています。

そして、「FOMA」、いわゆる第3世代の携帯をご利用いただいているとのことですが、現在は第5世代が始まっており、第4世代、第5世代というかたちで世代の新しい回線に移っていただきたいと思います。これは、私どもにとっては大変大事な経営課題であり、例えばスマートフォンを購入いただく場合には、「はじめてスマホ購入サポート」といったかたちで、お手ごろな価格でお取り替えいただくといった施策も進めています。

また、新しいサービスをお使いになると、「なかなか使い方がわからない」というお声もいただきますので、「ドコモスマホ教室」など、全国でいろいろなサポートを行っており、そのようなスマートフォンへの移行における不安を払拭するような取り組みも継続していきたいと考えています。

質問者8  MVNO事業者向けの接続料について

Q:MVNO向けの接続料について、将来原価方式が導入され、今までドコモが一番安かったものが、2020年から3年間は逆にドコモが一番高いレベルになっているのはご承知かと思います。そこでお尋ねします。

MVNOにおいて、今までドコモのものを使っていた方が他社に移ってしまう可能性や、また逆に接続料が高いということは、ドコモが一番原価が高い、つまり設備投資の効率が最もよくないということを示しているかと思いますので、このあたりのお考えや見通しをお聞かせください。

A:他社接続料の関係ですが、MVNO事業者に向けては、ネットワークの広さと品質に加え、サポート体制の充実にも取り組んでおり、その上で接続料の設定を行っている状況です。MVNO事業者の方々には、総合的に評価いただいた上で判断いただき、継続して利用いただいているものだと考えています。

また効率性に関しては、引き続きネットワークの品質維持向上にあたり、効率化の取り組みに努めているところです。

他社MVNOの接続料の算定に関しては詳細がわからないためコメントは差し控えますが、いずれにしても、当社としてしっかり対応していきたいと思います。

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