実は、大学で講師から嫌がらせを受けた時に助け舟を出してくれたのは、黒人の男子学生でした。彼は「あんな奴(講師)のためにビビるな。分からなければ『分からない』と堂々と言えればいい」と言いました。筆者が緊張するのを見て面白がっているのだから、緊張したような態度をとるな、ということです。

子供のころからアメリカ社会で様々な差別経験を受けてきたマイノリティの友人たちから学んだことは、「差別だ」と怒っても泣いても世間は助けてはくれない、差別主義者よりも一枚上手になればいい、ということだったように思います。

未だに、アメリカ生活では差別を受けることはありますが、あまり気にならないようになりました。慣れてきたのでしょうか。

もちろん、暴力的な命に関わるヘイトクライムに関しては、筆者が経験したような嫌がらせ程度のこととは危険度がまったく違います。「一枚上手」になったくらいで済む問題ではありません。

日本でも性別、年齢、職業、外見、障害、国籍、収入など多くの差別が存在します。暴力的な攻撃を受けることはなくても、日本社会独特の差別システムで人生を狂わせてしまった人も大勢います。

加害者は覚えてなくても、被害者は忘れません。根強い社会的な差別システムを変えるのは時間がかかることですが、個人レベルでは意識して気をつけていきたいものです。

美紀 ブライト