日本電子、売上高と営業利益で過去最高を更新 売上数量の増加と原価削減がプラス要因

2020年5月29日に行なわれた、日本電子株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日本電子株式会社 代表取締役会長兼CEO 栗原権右衛門 氏\n日本電子株式会社 代表取締役社長兼COO 大井泉 氏

70年目の転進

栗原権左衛門氏:みなさまこんにちは。日本電子株式会社代表取締役会長兼CEOの栗原でございます。決算説明に先立ちまして、新型コロナウイルスにより亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、罹患された方々に心よりお見舞いを申し上げます。今回の決算説明は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため動画配信にてお伝えします。

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昨年度は、一昨年度に引き続き、連結総売上高と営業利益において、過去最高額を達成することができました。昨年度迎えた会社創立70周年を機に、「70年目の転進」というメッセージを内外に発し、これに沿った事業を推進しているところですが、まずは順調に滑り出していると思います。

「70年目の転進」は、日本電子のDNAである電子顕微鏡やNMRを中心とした理化学機器分析市場で培った技術と人脈を核に、半導体市場、医用機器市場など、桁違いに大きな市場を対象とした機器とサービスの提供により、さらなる事業拡大を図るという戦略です。

70年目の転進 成長への「打ち手」

昨年度に実施した「70年目の転進」に沿った具体的戦略の一部ですが、まずは、日本電子のDNA事業である、電子顕微鏡を中心とした事業の強化策です。昨年度は、70年の歴史で、事実的に初めてのM&Aとなりましたが、アメリカのIDESの株式を取得しました。IDESが持つフェムト秒オーダーでの顕微鏡像の観察を可能にする技術は、今後の電子顕微鏡の技術発展に大きく寄与することが期待され、具体的商談も始まっています。

また、すでに発表しましたリガクとのマイクロEDの共同開発も、電子顕微鏡とX線回折装置を融合した有機化合物の微小単結晶での測定を可能にする画期的なシステムで、大きな期待が寄せられています。

「70年目の転進」では、半導体関連事業の強化策も展開しています。まず、半導体の世界的メーカーがある韓国市場での販売とサービスを強化するため、JEOL KOREAを完全子会社としました。また、近年最も成果を上げているのが、マルチビームマスク描画装置を中心とした事業です。5GやAIなどという言葉が飛び交っていますが、半導体市場は右肩上がりで拡大することが見込まれ、この需要に対応するため、新たに本社の近傍に工場を取得しました。

SDGsを志向する企業が増えている昨今、弊社も創業時からの経営理念である科学技術の発展に貢献する企業として、さらなる業容拡大を目指していきますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

以上、簡単に「70年目の転進」に沿った事業展開についてご説明しました。詳細は社長の大井からご説明します。

2019年度決算実績(P/L)

大井:みなさまこんにちは。日本電子株式会社代表取締役社長兼CEOの大井です。私から決算説明の詳細についてご説明します。まずは、2019年度実績及び2020年度予想についてご説明します。

6ページのスライドをご覧ください。2019年度決算実績のP/Lとなります。実績はほぼ見込みどおりの着地となりました。売上高1,172億円、営業利益70億円は過去最高を更新しました。経常利益は72億円となりました。こちらは2018年度の実績に比べて2億円の悪化となっています。要因はご覧のとおりです。

プラス要因として、売上数量が増えたことと原価が削減したことにより、売上総利益は449億円となり、前年比24億円ほど粗利が改善しました。

一方、昨年度は為替が円高に推移しています。ご承知のとおり、当社は海外の売上比率が高く、昨年度も60パーセント以上が海外の売上となっています。対ドル円の円高に加え、昨年度はユーロも円高が進みましたので、為替差の影響が10億円ほどあります。また、売上増に伴う販売管理費の増加に加え、昨年度は当社が70周年ということで、記念行事等も行ないました。その費用増もあり、販売管理費が増えています。将来の業容拡大に伴う研究開発費は78億円で、こちらも過去最高の金額となっています。

当期純利益については、54億円となっています。こちらは本社の繰越欠損金がなくなり、支払う税金が増えたということがあります。

事業セグメント別連結売上高・営業利益の推移(通期)

8ページのスライドをご覧ください。こちらは事業セグメント別の連結売上高、営業利益の推移を示しています。まずは、当社のDNA事業である理化学・計測機器ですが、残念ながら、若干減収減益となっています。とくに売上については、第4四半期に新型コロナウイルスの影響で納入の延期など、一部期ズレが発生しています。

一方、ハイエンドの透過型電子顕微鏡を中心に受注残は高水準でもっていますので、今後の売上に繋がることを期待しています。また、将来の投資、業容拡大につながる研究開発費を増やしていますし、為替の影響があったことも事実です。実質的には、2018年度、2019年度はほぼ同じような業績だったと見ています。現在進めている施策、投資を着実に業容拡大につなげて、今後も理化学・計測器事業の収益を改善していこうと考えています。

産業機器事業は増収増益となりました。半導体事業は引き続き好調で、とくにマルチビームの受注売上がさらに好調に推移しています。今のところ新型コロナウイルスによる事業影響は非常に軽微であると考えています。一方、最近の米中摩擦による半導体市場全体へのいろいろな影響については、今後も注視していく必要があると考えています。

医用機器事業は若干の減収減益となっています。こちらも新型コロナウイルスの影響で第4四半期に消耗品を含めた出荷延期等があり、一部で売上利益が悪化しています。

主要勘定の推移

9ページのスライドをご覧ください。主要勘定の推移となります。右の表にありますとおり、連結受注高1,207億円、期末受注残高487億円で、ともに過去最高を記録しています。在庫が532億円となっていますが、受注残が多いため在庫も少し増えている状況です。配当は、上期末12円、期末12円、計24円で、前期より3円の増配を計画しています。

2020年度予想

10ページのスライドをご覧ください。2020年度の業績予想ですが、大変恐縮ではありますが未定としています。とくに理化学・計測機器事業の今期の見通しについては、現状、世界各地で我々のユーザーである多くの大学や研究所がクローズしている状況があります。地域差もありますが、徐々に再開しているところも多くなっています。しかし、理化学機器、とくに理化学・計測機器の受注や売上のタイミングが延びる懸念もあります。

一方、全体としては引き続き引き合い案件は堅調に推移しています。新型コロナウイルスの影響によるビジネスの踊り場、この期間と規模をもう少し見極め、速やかに算定が可能となった時点で開示したいと考えています。

理化学・計測機器事業

続いて、各事業の状況について個別にご説明します。12ページのスライドをご覧ください。先ほどもお伝えしましたが、こちらが理化学・計測機器事業の売上、営業利益の推移です。本社費用配賦前の状況で売上高766億円、営業利益27億円となりました。

JEOL KOREA LTD.の株式を取得

13ページのスライドをご覧ください。個別の戦略案件についてご説明します。先ほど会長の栗原も触れましたが、当社はJEOL KOREAの株式を100パーセント取得しました。JEOL KOREAの設立は1994年です。会社の名前自体はJEOL KOREAですが、今までは販売代理店としての位置づけでした。これを当社がすべての株式を取得し、完全子会社化しました。

ご存知のとおり、韓国には半導体産業で重要なお客さまが存在します。今回の完全子会社化を実施することにより、顧客の最新ニーズをタイムリーに的確に把握し、販売、サービスをさらに強化していく所存です。

IDES社の株式を取得

14ページのスライドをご覧ください。当社はIDES社の株式を100パーセント取得し、完全子会社化を実施しました。こちらも先ほど栗原がお伝えしたとおり、当社にとって実質的に初めて海外の会社をM&Aで取得しました。

IDES社は、電子顕微鏡のごく微小領域で、かつナノ秒(10億分の1秒)から、フェムト秒(1,000兆分の1)という領域の超高速の時間分解能の静止画及び動画が記録できる特有の技術を持っています。

ざっくりですが、どういう技術かをご説明します。ゴルフスイングにおいて、プロゴルファーのゴルフスイングを分析しようとした場合、肉眼ではプロゴルファーがスイングをスタートする瞬間とフィニッシュする瞬間はわかりますが、そのゴルフスイングの起動はなかなか肉眼では解析できず、倣おうと思っても良く見えないというところがあります。テレビでも、超スローモーションでゴルフスイングの軌道を見るという技術がよく紹介されていますが、IDESの技術はまさしくこのような技術です。電子顕微鏡をナノメートルの世界で高速の時間分解能で材料のメカニズムが解析できるという特有の技術を持っています。この技術を活用することによって、電子顕微鏡の技術のさらなる発展、新しい応用分野として確立できることを期待しています。

新製品 JEM–ARM300F2 GRAND ARM™️2

15ページのスライドをご覧ください。こちらが「JEM–ARM300F2 GRAND ARM™️2」という新製品です。既存の「JEM–ARM300F」の最新モデルです。これまでの「ARM300F」は、2014年に発表して内外で高い評価を受け、著名な研究機関に多く納入されました。日本経済新聞でも紹介されましたが、「ARM300F」は東京大学と共同で2度の世界最高分解能を更新した装置でもあります。

「JEM–ARM300F2」は後継機で、新しい対物レンズを開発、搭載しています。これにより、空間分解能およびごく微小領域の元素分析の能力がさらにレベルアップしています。今後の最先端の材料開発等により役立つ装置として評価を受けるものとして期待しています。

新製品 JSM–IT800 の紹介

16ページのスライドをご覧ください。こちらはSEM走査型電子顕微鏡の新製品です。5月25日に発表したばかりの新製品で光学像、高分解能の電子顕微鏡と元素分析が一体となった最新モデルです。新しい検出器も追加搭載されており、多様な検出器のラインアップにより、さまざまな材料の微細構造観察と分析に最適なソリューション、そしてより速いスループットを実現している装置です。こちらも内外の研究機関、あるいは民間の材料の管理、生産技術の部門等にお役に立てる装置であると期待しています。

マイクロED 株式会社リガクとの共同開発を発表

17ページのスライドをご覧ください。5月27日にリガクと当社は「マイクロED」の共同開発についてニュースリリースを行ないました。「マイクロED」とは、新しい回析手法であり、電子顕微鏡の電子線回折手法を用いた、より微小領域の結晶の構造解析が可能となる手法です。最近、化学の分野あるいはバイオの分野で非常に注目されています。

日本電子は、「マイクロED」に適した透過型電子顕微鏡を持っています。リガクはこの構造解析に必要な分析のソフト、そして検出器の技術を持っており、これらの技術をマッチングすることで、新しい研究分野での最適なソリューションを両者で提案、供給しようという試みです。

スライド右下のにあります、当社の「YOKOGUSHI」戦略をさらに進化させた内容であり、リガクが持っているX線回析の技術、当社が持っているTEMの技術を融合させ、かつ当社が持っているNMRのアプリケーションをこの解析に活用することで、新しい「マイクロED」の研究に最適なソリューションを供給しようという考え方です。こちらの「マイクロED」についても、当社の理化学・計測事業へのさらなる業容発展への一助になると期待しています。

新型コロナウイルスの研究に貢献

18ページのスライドをご覧ください。現在世界、そして日本で、新型コロナウイルスの感染拡大は大変大きな社会的、経済的な問題になっています。新型コロナウイルスの問題が解決され、みなさまが安心して生活を送るためには、最終的に新型コロナウイルスを退治するワクチン、薬の開発が必須だと考えています。そのためには、新型コロナウイルスそのものの構造をしっかり解析し、それに見合う薬、ワクチンの開発が必要になります。このスライドは、新型コロナウイルスの研究に、いかに当社が持っている理化学・計測機器が貢献しているかというものを示しているものです。

一番左の写真は生体細胞の生体組織のどの細胞にコロナウイルスが付着しているかを走査型電子顕微鏡で観察しているものです。真ん中の写真は汎用形の透過型電子顕微鏡で、コロナウイルス1株の形態を観察しているものです。左から3番目の絵はコロナウイルスの突起にある細胞の結合部位で、そのコロナウイルスとヒトの細胞が結合する部分を「スパイクタンパク」と呼びますが、こちらの構造をクライオ電子顕微鏡で構造解析しているものです。最終的にコロナウイルスを退治できる薬剤が開発されると思いますが、そのコロナウイルスと闘う薬剤の分子構造については、NMRでその分子構造を決定させる必要があります。

当社が持っている主力装置である走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、クライオ電子顕微鏡、そしてNMRと、コロナウイルスの研究の多くのステップで日本電子の製品が貢献しています。今、SDGsが声高に叫ばれていますが、当社は創業以来、科学技術の発展に貢献する企業として、70年事業を継続し、発展させました。このコロナウイルスの研究に貢献するという事実こそ、当社の事業そのものがSDGsに貢献していると言っても過言ではないかと思っています。

世界トップクラスの研究成果を輩出

19ページのスライドをご覧ください。このスライドは当社のいわゆるサイエンス力について紹介しています。科学雑誌で有名な『Nature』ですが、毎年インデックスを公表しています。このインデックスは、世界のトップのサイエンスジャーナル誌の約80誌にどれほどの論文が掲載されたかを示すランキングです。

この『Nature』インデックスに、当社は国内の民間企業で4位、全世界の企業、研究機関の順位として38位にランキングされました。このことは、当社が科学技術のトップフロンティアに存在し、トップサイエンティストと一緒になってリサーチを行ない、当社の最先端の分析装置、電子顕微鏡やNMRを活用して、当社のエンジニアが世界のトップサイエンティストと一緒に研究をしている、当社のオープンイノベーション力の現れとも言えるかと思います。

産業機器事業

産業機器事業についてご紹介します。21ページのスライドをご覧ください。産業機器事業については、昨年度、売上238億円、営業利益74億円で増収増益となりました。順調に推移している事業です。

マスク描画装置市場の動向

産業機器事業の業容拡大の大きなトリガーとなっているのが、マスク描画装置の受注売上の拡大です。とくに、IMSとJEOLで共同で製造販売していますマルチビームのマスク描画装置の受注売上の拡大が順調に進捗しています。このマルチビームの市場については、 EUVリソグラフィの技術の採用プロセス、採用企業の増加とともに、マルチビームの描画装置の市場の拡大も続くと考えています。

EUVの露光装置の台数予測については、今までEUVの露光装置の台数のおよそ3分の1が、マルチビームの市場として順調に伸びてきています。またロジックだけではなく、メモリー市場でもEUVの技術の適用が本格化しており、EUVの露光装置の拡大に伴い、マスク描画装置、とくにマルチビームの描画装置の台数が増加していくと考えられています。我々はその市場の要求に応えていく必要があります。

新工場を取得

23ページのスライドをご覧ください。当社は、今年3月に新しい工場の取得を発表しました。こちらは、東京都武蔵村山市にある工場で、本社東京の昭島の事業所から車で10分~15分くらいの距離にある工場です。需要が拡大している電子ビーム描画装置をはじめとした生産能力増強のため、こちらの工場を取得しました。

次世代型産業用3Dプリンタ

24ページのスライドをご覧ください。こちらは次世代型産業用3Dプリンタです。今年度中の販売開始に向けて鋭意対応中です。スライドの右下にあります全長40センチの「Ti64」のタービンブレードは全部で10本ありますが、10本のタービンブレードの造形が現在同時に実現しており、非常に品質の良い造形ができています。開発は順調に推移しており、今年度中の販売に向けて現在対応中です。

医用機器事業

続いて医用機器事業です。26ページのスライドをご覧ください。昨年度の医用機器事業の実績は、売上186億円、営業利益14億円となりました。第4四半期で新型コロナウイルスの影響による消耗品をはじめとした売上の期ズレが発生しています。医用機器事業については、とくに海外の新しい販売ルート、ネットワーク確立がテーマとなっていますが、現在新しい海外のネットワークが確立しつつあり、これからこの海外のネットワークによる売上の寄与を期待しています。

一方、シーメンスとのビジネスですが、決してすべてなくなったというわけではありませんので、引き続きシーメンスとのビジネスも継続している状況です。

IoT対応装置のラインアップを拡充

27ページのスライドをご覧ください。こちらは、前回の決算説明会でもご紹介しましたが、リモートで装置の稼働状況を把握し、サービス対応ができるIoT対応装置のラインアップを拡充しています。前回ご説明させていただいた新製品「6070G」に加え、3機種がIoTの対応装置として現在試験サービスを開始しています。

このIoTサービス対応により、お客さまに訪問することなしに装置の稼働状況がインタイムで把握できますので、ダウンタイムの低減、より効率的、効果的なサービス対応が可能になると考えています。

JEOLホームページ『JEOLからの在宅勤務支援サービス』の概要

サービス・ソリューション事業についてです。29ページをご覧ください。現在、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務をされている方が非常に多くなっています。当社は、今までもNMRや電子顕微鏡などで装置のシェアリングサービス、インターネットを介したリモートコントロール等を実施してきましたが、今まで培ってきたITインフラと経験を活用し、新型コロナウイルスと共存し、感染予防策を講じながら仕事を進める新しい生活様式に対応できるような在宅勤務支援サービスを開始しています。今まで、Webセミナーも数多く実施しましたが、大変好評をいただいており、当社の想定以上のセミナー応募者、セミナー受講者が出てきている状況です。

冒頭、栗原よりご説明しましたが、当社は会社創立70周年を機に「70年目の転進」というメッセージを内外に発信し、これに沿った事業を推進しています。先ほど、新型コロナウイルスの研究のスライドについてもご説明しましたが、日本電子株式会社は創業時の経営理念である科学技術の発展に貢献する企業として、さらに業容の拡大を目指し、取り組んでいきますので、今後ともご支援のほどをどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

記事提供:ログミーファイナンス

参考記事

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