2020年5月28日に行なわれた、東レ株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:東レ株式会社 代表取締役社長 日覺昭廣 氏

2020年3月期連結損益概要

日覺昭廣氏:日覺です。本日は大変お忙しい中ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。みなさまには日頃から当社の経営ならびに事業活動にご理解をいただき、あらためて御礼申し上げます。これより2020年3月期決算の概要と、2021年3月期業績見通しについてご説明します。

3ページをご覧ください。2020年3月期決算の概要です。2020年3月期の売上高は2兆2,146億円と前期比で7.3パーセントの減収となり、営業利益は1,312億円と7.3パーセントの減益となりました。経常利益は1,034億円と23.2パーセントの減益、当期純利益は557億円と29.8パーセントの減益となりました。年間配当金は1株あたり16円を予定しています。ROEは5パーセントです。ROAは4.8パーセントとなりました。

営業外収支

4ページは営業外収支についてです。当期において、個別決算上、Pacific Textiles Holdings Ltd.の株式の減損処理を実施したことにより、連結決算において、同社に掛かるのれんの一時償却、187億円を計上しました。これを主因に持分法投資損益が前期比で大きく悪化し、営業外収支はマイナス278億円と、前期比で209億円悪化しました。

特別損益

5ページは特別損益です。当期の特別利益は77億円と有形固定資産売却益の減少を主因に147億円悪化しました。特別損失は170億円と減損損失の減少を主因に124億円改善し、ネットの特別損益はマイナス93億円と前期比で22億円悪化しました。

資産・負債・純資産、フリー・キャッシュ・フロー

6ページは資産・負債・純資産等についてです。2020年3月末の資産合計は2兆6,507億円と受取手形および売掛金や投資有価証券の減少を主因に、2019年3月末に比べて、1,377億円減少しました。負債合計は1兆4,711億円と支払手形および買掛金や融資負債の減少を主因に1,033億円減少しました。

純資産合計は1兆1,796億円と為替換算調整勘定の変動などにより344億円減少しました。自己資本は1兆937億円、有利子負債残高は9,389億円となり、D/Eレシオは8600万円でした。なお、フリー・キャッシュ・フローはプラス834億円となりました。

営業利益増減要因分析

7ページのグラフは2020年3月期の連結営業利益が前期に比べて103億円減益となった要因を分析したものです。数量差は繊維セグメントや機能化成品セグメントにおける販売量、生産量の減少を主因にマイナス174億円となり、価格差は原料価格が前期に比べ下落したことから、プラス288億円でした。費用差他は利用拡大に伴う製造固定費の増加などにより、マイナス171億円となりました。

セグメント別売上高・営業利益

8ページはセグメント別売上高と営業利益の実績を示しました。

セグメント別業績(繊維)

9ページ以降はセグメント別の状況をご説明します。最初は繊維です。繊維セグメントの売上高は8,831億円、前期比9.4パーセントの減収、営業利益は607億円、16.7パーセントの減益となりました。原料価格の下落により、価格差はプラスとなりましたが、米中貿易摩擦の長期化と、中国経済の減速および2年続いた暖冬により、各用途で市況低迷の影響を受け、乗用車が大きくマイナスとなりました。

国内では、医療および産業用途ともに総じて荷動きが低調に推移する中、国内ユニフォーム用途や欧米スポーツ用途等で拡販を進めるとともに、事業体質強化に注力しました。海外では、縫製品やテキスタイルなどの衣料用途のほか、産業用途も主力の自動車関連用途の需要が低調に推移する中、事業構造改革、事業体質強化に注力しました。

まだ国内外ともに新型コロナウイルスによる生産活動・消費行動停滞の影響を受けました。

セグメント別業績(機能化成品)

10ページは機能化成品セグメントです。売上高7,708億円前期比11.3パーセントの減収、営業利益は587億円、13.2パーセントの減益となりました。原料価格の下落により、価格差はプラスとなりましたが、中国経済減速や、新型コロナウイルス感染拡大による影響もあり、販売数量は減少しました。それぞれの事業の状況については次のページでご説明します。

機能化成品のサブセグメント別売上高

11ページ、樹脂事業は中国経済の減速および新型コロナウイルスによる生産活動停滞の影響を主因に自動車、家電用途とも低調に推移しました。ケミカル事業は主要原料の市況、下落の影響を受けました。フィルム事業は、リチウムイオン電池向け、バッテリーセパレータフィルムが需要の伸長を背景に売上を拡大しましたが、ポリエステルフィルムでは高額用途や電子部品用途において在庫調整の影響を受けました。

電子情報材料事業は有機EL関連部材や、回路材料が好調に推移しました。

セグメント別業績(炭素繊維複合材料)

12ページは炭素繊維複合材料セグメントです。売上高2,369億円、前期比9.7パーセントの増収、営業利益は210円、81.6パーセントの増益となりました。航空機向け需要や、圧縮天然ガスタンク・風力発電翼といった環境・エネルギー関連向け一般産業用途が好調に推移したほか、スポーツ用途の需要が回復するなど、総じて堅調に推移しました。

また、需給バランスの改善を背景に汎用品の値上げが着実に進んだことに加え、原料価格も下落し、価格差はプラスとなりました。費用面では、事業拡大に伴う製造固定費や営業費の増加がありました。

炭素繊維複合材料のサブセグメント別売上高

用途別の状況については次のページをご説明します。航空宇宙事業は堅調に推移したことに加え、Toray Advanced Compositesと、旧TenCateの連結化の効果がありました。スポーツ用途は、第4四半期に新型コロナウイルス感染・拡大の影響による販売減があったものの、各用途で高付加価値品の採用が進みました。

一般産業用途のうちレギュラートウは圧縮・天然ガスタンク用途を始めとする環境・エネルギー関連向けや、欧州超高級自動車用途が堅調に推移し、ラージトウは、風力発電力向けの出荷は引き続き拡大をしました。コンポジット事業は燃料電池車や定置型燃料電池に使用される電極機材向けが引き続き堅調に推移しました。

セグメント別業績(環境・エンジニアリング)

14ページの環境・エンジニアリングセグメントは売上高2,523億円、前期比2.1パーセントの減収、営業利益が112億円、8.1パーセントの減益となりました。水処理事業は、国内外で逆浸透膜などの需要がおおむね堅調に推移しました。国内子会社では、建設子会社が高収益案件の受注減少の影響を受けたほか、エンジニアリング子会社でエレクトロニクス関連装置の出荷が減少しました。

セグメント別業績(ライフサイエンス)

15ページはライフサイエンスセグメントです。売上高533億円、前期比0.8パーセントの減収、営業利益は16億円、24.9パーセントの増益となりました。医薬事業は、「ドルナー®」が、後発医薬品発売の影響を受けました「レミッチ®」は後発医薬品発売の影響を受けましたが、市場全体の伸びもあり、堅調な出荷となりました。

医療機器経事業はダイアライザーが国内外で堅調な出荷となりました。また営業費などの、コスト削減にも取り組みました。

主要子会社・地域の収益状況

16ページでは、主要子会社、地域の収益状況を示しています。東レインターナショナルは、繊維、樹脂、フィルム、ケミカルの販売が堅調に推移しました。東レエンジニアリングはエレクトロニクス関連装置の出荷が減少しました。東レ建設は高収益案件の受注減少の影響を受けました。

東南アジアの子会社では繊維事業は一部の子会社が市況低迷や販売量の減少の影響を受け、低調に推移しました。機能化成品事業では、ポリエステルフィルムの販売量が減少し、ABS樹脂も販売量の減少と価格下落の影響を受けました。

中国の子会社では繊維事業が縫製品や医療用テキスタイルで中国国内の市況低迷の影響があったほか、前期に出荷が好調に推移した反動を受けました。また、産業用途でも市況低迷の影響を受けました。

韓国子会社では、繊維事業はポリエステル繊維のスプレッドは改善しました。機能化成事業はポリエステルフィルムのスプレッドが改善し、リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレータフィルムや回路材料が堅調に推移しました。その他の事業では、RO膜の販売が堅調に推移しました。

セグメント別営業利益3Q vs 4Q比較

17ページでは、第3四半期と第4四半期の営業利益を比較しています。連結営業利益は328億円から267億円と61億円の減益となりました。この減少幅61億円をセグメント別にブレイクダウンし、増減益要因を表の右側に示しています。

2021年3月期連結業績見通し

次に、2021年3月期連結業績見通しについてご説明します。19ページをご覧ください。当社は2021年3月期第1四半期から、従来の日本基準に変えて、ティファースに適用するため、連結業績予想はティファースに基づき算定しており、営業的な事業収益を示す業績管理市場として事業利益を開示します。

2021年3月期の業績見通しについては、新型コロナウイルスの感染拡大や第2四半期にピークアウトし、第3四半期以降年度末にかけて、国内外の経済は回復基調をたどる前提で見通しを作成しています。連結売上収益は1兆9,200億円、事業利益は700億円、当期利益については400億円の見通しとします。年間配当金については1株あたり9円を予定しています。配当性向は36パーセントの見通しです。

セグメント別連結業績見通し

20ページでは2021年3月期の連結業績見通しをセグメント別に示しました。

セグメント別事業利益20年3月期 vs 21年3月期比較

21ページでは、事業利益の20年3月期の実績概算期の21年3月期見通しの差異をセグメント別にブレイクダウンし、その要因をその右側に示しています。

設備投資額・減価償却費・研究開発費の推移

22ページでは設備投資額・減価償却費と研究開発費の推移を示しています。21年3月期の設備投資額は1,630億円、減価償却費は1,200億円、研究開発費は680億円の見通しです。設備投資と研究開発費については案件を厳選したうえで、徹底的な費用削減、効率化に取り組んでいます。ただし、新型コロナウイルス感染拡大終息後の市場をしっかりと見通したうえで必要な設備投資・研究開発は実施し、持続的な成長を目指します。

以上で2020年3月期決算概要と、2021年3月期見通しの説明は終わります。どうもありがとうございました。

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