2020年5月21日に行われた、株式会社ゆうちょ銀行2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社ゆうちょ銀行 代表執行役社長 池田憲人 氏

決算の総括①

池田憲人氏:ゆうちょ銀行の池田です。これから2019年度の決算の実績と、2020年度の予想についてご説明します。

それでは3ページをご覧ください。決算の総括です。まず、左側をご覧ください。総括としては、親会社株主純利益は2,734億円となりました。経常利益が3,791億円です。単体については、当期純利益は2,730億円、経常利益が3,790億円と、当期利益はそれぞれ、前年比プラス2.5パーセント、プラス1.2パーセントという結果になりました。

その内訳については、下側に記載していますが、資金利益、役務取引等利益、その他業務利益、経費のトータルがそこに書いてあります。資金利益のマイナス部分を役務取引等利益および経費でカバーした結果、プラスとなったということです。

1株あたりの配当金は50円、配当性向68.5パーセントとしました。資金利益のマイナスを役務取引でカバーしたことはこれまでと同様であり、だいたい予定どおりです。

下に評価損益が記載してあります。マイナス1,020億円で、対前年比マイナス3兆5,294億円。こちらが今回のコロナに関わる大きな影響であり、今回の決算の一番大きなポイントでした。しかし、その結果としても、自己資本比率は15.58パーセントで、まだまだ十分あるところです。

決算の総括②

次に、4ページをご覧ください。右側がバランスシートの状況です。2020年3月末トータルで資産は合計は210兆円です。

内訳はそれぞれ記載していますが、前年比の増減としては、資産が1兆9,346億円増加しました。現金預け金は9,653億円増加し、有価証券は1兆9,368億円減少しています。

負債は201兆9,175億円で、前年比4兆2,978億円の増加になりました。そのうち貯金については、2兆55億円の増加です。

結果として、純資産については8兆9,876億円と前年比で2兆3,631億円減少しました。その内訳は、先ほどの有価証券が基本ですが、評価・換算差額等合計でマイナス710億円になりました。前年比2兆4,487億円の減少です。

損益の状況② -資金利益・利鞘-

次に8ページをご覧ください。資金利益・利鞘について記載しています。左側に2016年3月期から2020年3月期の棒グラフがありますが、国際業務部門がだいたい横ばいになり、資金利益、国内部門が減ってきています。

このような状況は、前からもご説明していますが、パラダイムシフトといえます。国債への依存からリスク性資産への依存に転換してきています。

その結果、右側の表のとおり、国内業務部門の資金利益は一番右端の前年比が881億円のマイナスですが、国際業務部門の資金利益は前年比プラス488億円で、すべてではありませんが、国際業務部門で資金利益の減少をカバーしています。

資産運用の状況① -運用資産残高-

次に、9ページをご覧ください。運用資産の状況をご説明します。

右側に運用資産のそれぞれの科目が書いてありますが、一番右端の増減額をご覧ください。先ほどお伝えしたとおり、国債が4兆7,204億円減少したことが大きなポイントです。それに対して、外国証券等は3兆1,579億円増加したほか、預け金・短期運用資産等で増加しており、運用資産合計は1兆5,443億円増加しました。

左側をご覧ください。その結果、大きく分けて運用資産は国債が53兆6,361億円、外国証券等が65兆6,575億円、預け金が51兆4,854億円とだいたい3分の1ずつというバランスにあります。

資産運用の状況② -リスク性資産残高・戦略投資領域残高-

次に、10ページをご覧ください。リスク性資産について、パラダイムシフトのなかでとりわけ重点的かつ戦略的に投資をしてきたところの状況をご説明します。

国債等の利息収入の減少に対応するため、運用の高度化・多様化を継続しています。2020年3月期のリスク性資産は、残高が84兆9,000億円で、そのうち戦略投資領域は3兆3,000億円となっています。

下の左側の棒グラフをご覧ください。しだいに伸びて2020年3月期に84兆9,000億円となっています。リスク性資産への資金支出を進めていましたが、2020年3月期、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う市場混乱により、クレジットスプレッドが急拡大し、時価が減少しています。少し積み上げが緩やかに見えるのですが、実は時価が減少した部分で緩やかに見えているかたちです。

右側が戦略投資領域です。2017年3月から2020年3月にかけて、これもまた大きな伸びはないように見えますが、実はご覧のとおり、ヘッジファンドを昨年の下期から縮小してきました。その結果、ヘッジファンドがもともと1兆円を超えるレベルだったのが、現在は2,000億円を下回るところまで来ています。

このように、戦略的投資領域は、予定どおり進めているところですが、不動産ファンド、プライベート・エクイティ・ファンドは引き続き慎重に、しかし積極的に進めていきたいと思っています。

資産運用の状況③ -格付別エクスポージャー残高-

次に、資産の中身をご説明します。11ページをご覧ください。

左側の円グラフが、格付別のエクスポージャーの状況です。4分の3がA格以上です。うち、A格以上で資源・エネルギーが0.69パーセントで、薄緑で描いてあります。資源・エネルギーについては、ほとんど少ないということです。それからBB格、BBB格以下と、それぞれエネルギー部分を記載しています。

中央はセクター別のエクスポージャーですが、大部分がソブリンです。それから、金融が11.95パーセントという状況です。

右側が、地域別のエクスポージャーです。もちろん日本国債もあります。日本が66.98パーセント、約3分の2で、残りの部分のほとんどは北米と欧州です。

役務取引等利益の状況①

以上が運用ですが、14ページをご覧ください。役務取引等の状況です。

左側の表をご覧ください。役務取引は2020年3月期で1,288億円であり、昨年度は1,000億円を超え、さらに増加しています。記載のとおり、大きく増減は、横に全体で221億円増加のうち、為替・決済関連手数料が182億円、ATM関連手数料が45億円ということで、この2つが大きく寄与しています。

送金決済サービスは、見直しをしてきました。既存サービスの料金の改定をし、増加を進めていると同時に、法人向けサービスの充実・機能向上に向けて、法人向けインターネットバンキングを進めてきています。そうした結果が、ここでプラスになってきています。

その次に、ATM関連手数料ですが、下に記載しています。全国のファミリーマート店舗に、2017年1月以降、小型ATMの設置を拡大しています。その次に、当行のATMネットワークの地域金融機関とのプラットフォーム化も、進めているところです。こうしたものが寄与しています。

参考までに、当行のATMは3万2,000台ありますが、ファミリーマート向けのものは現時点で約5,000台です。

役務取引等利益の状況② -投資信託の販売状況等-

15ページをご覧ください。役務取引等の状況で、投資信託の販売状況です。これまでと同様に引き続き注力していきますが、残念ながら残高が減少しています。

この原因は、すでにみなさまもご承知と思いますが、直営店あるいは郵便局、それぞれ内部管理体制の強化と、もう一度お客さま本位の業務運営に立ち戻ろうということで、下期に足踏みとなっています。

今後は右上に記載してあるとおり、コンサルティング営業を高度化し、さらにビジネスを進めていこうと思っています。マイナスにはなりましたが、現在は足元を見直す期間ということで、この下期は進めてきたわけですが、今後はこれも大きなビジネスツールとして進めていきたいと思います。

営業経費の状況①

 

それから、次に17ページをご覧ください。営業経費の状況です。営業経費はご覧のとおり、2016年3月に1兆円を超えて1兆640億円になりましたが、現在は1兆183億円になっています。また、右側に内訳を記載しています。基本的に大きな問題は、日本郵便への委託手数料ですが、これは前回から交付金となっており、物件費の日本郵便への委託手数料と、その下、郵政管理・支援機構への拠出金を合わせています、そしてもう1つ、税金のところで消費税があります。この合計をご覧ください。

ローコスト・オペレーションは元より当行の一番のポイントのため、決して軽視はせず、引き続きローコストを進めていきたいと思います。

営業経費の状況② -業務効率化等による人員削減-

そのうちの大きなポイントとして、この下にございますように、人員の削減を進めています。総人員数1万8,878名が2015年4月1日でございましたが、現在は1万6,635人と、2,000人減少しています。引き続き効率化を進めると同時に、新入社員の採用のコントロール、業務の適正な配置を進めていきたいと思います。

もちろん、これによってデジタル化を進めていくつもりです。デジタル化によって、いかに人員の効率化を進めていくかが、大きなポイントです。

貯金残高の状況

その次に、19ページをご覧ください。貯金残高です。貯金残高は、合計約2兆円増加をしました。

評価損益の状況①

次に20ページの評価損益の状況です。ここが今回の一番大きな出来事です。ご覧のとおり、投資信託の状況が記載してありますが、2019年3月と2020年3月の評価損益は約2兆404億円マイナスになっています。

評価損益の状況② -クレジットスプレッド急拡大の影響-

21ページをご覧ください。ご案内のとおり、クレジットスプレッドの急拡大が、影響がここに出ています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う市場混乱により、2020年2月から3月下旬にかけて、クレジットスプレッドが急拡大しています。

これに伴い、2020年3月末のその他目的有価証券の評価損益も、大きく悪化しました。2019年12月末比で3兆6,000億円減少しています。一方、3月下旬以降、クレジットスプレッドは徐々に縮小しており、4月末の評価損益は約1兆3,000億円に改善しています。

左の表をご覧ください。ご覧のとおり、2008年の3月から2009年の3月にかけてのリーマンショックのHigh Yield社債のスプレッドが、このときで1,800べーシスポイントを超えるところに来ています。それから、IG(Investment Grade)が600べーシスポイントレベルまで来ました。

今回は、2020年3月をご覧いただくと、リーマンショックまではいかないものの、この10年で一番厳しいショックがありました。1,000べーシスポイントを超えています。High Yield、それから、Investment Gradeが400べーシスポイント近くということで、近代にない大きなできごとでした。

しかし、そこで少し細かいのが、その次の表です。3月末に線を引いてあるのですが、3月末から4月については、このスプレッド幅が縮小してきています。中期経営計画の前提の中で、いかに今年度の計画を作るかということで、3月末をベースにして今年度の計画を作りました。

その結果が、先ほどお伝えしたとおりのヘッジ考慮後で、その他目的有価証券、2020年3月末でマイナス1,020億円、それから2020年4月末、約1兆3,000億円というその他目的有価証券、4月末のベースはそのようなかたちになっています。

業績予想の前提条件

先ほど少し、計画のスタンダードなベースの根拠をお伝えしましたが、その前提条件をスライドに記載しています。2020年3月のインプライド・フォワード・レートに沿って、今年度の計画を作っています。

上半期の間は高止まりの状況で継続し、その後、新型コロナウイルスの影響が徐々に収束に向かうのに伴い、海外のクレジットスプレッドも徐々に縮小すると判断をしました。

ご覧のとおり、この表をご覧いただくと、それぞれ上半期は大変きつく、だんだん緩んでくる。このような考え方で進めてきています。

運用計画

35ページは運用計画です。リスク性資産の残高については引き続き90兆円程度まで引き上げていこうという考え方です。右側の戦略投資領域は4兆円から5兆円程度という方針は変わっていませんが、コロナの状況があるので、慎重に見極めながら、場合によっては二番底、三番底もあることを頭に置きながら進めていきたいと思います。

役務・経費計画

次に役務の計画はご覧のとおりです。2021年3月期をはるかに超えるところに進めていきたいと思いますし、経費についても大きく下回るように考えていきたいと思います。

業績予想及び配当予想

2021年度の資金収益および利益は最終的に2,000億円とし、配当を未定としています。今までお伝えしたとおり、このような状況のために未定としていますが、右下の「(参考)株主還元基本方針(2021年3月期まで)」にあるとおり、1株あたりの配当金50円の確保を目指し、安定的な1株あたり配当を目指す。今後の規制動向、利益成長や内部留保の充実等の状況により、追加的な株主還元政策も実施していくことも検討しようという基本方針は、変わっていません。

業績予想における経常利益の増減イメージ

業績予想についての増減イメージです。滝図がありますが、左端に2020年の実績、右端に2021年3月期の中計を記載しています。一番大きなところは特別分配金による増減です。市場に依存している部分がありますが、双方で揺れるということと、その横にある資金収支において調達コストの影響を大きく想定しています。

今はまだ先が見えない状況のため、先を見極めながら進めていきたいと思います。合わせて役務取引等も、中計を大きく超えるように進めていきたいと思っています。その意味で、先ほどからお伝えしているとおり、中期経営計画を進めていくことには何ら変わりはないのですが、この時点でコロナの問題があったということで、少し様子を見る状況です。以上、ご説明申し上げました。

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