2020年6月1日に行なわれた、日本電技株式会社2020年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:日本電技株式会社代表取締役社長 島田良介 氏

事業環境と経営成績

当社の第61期である2020年3月期決算と、中期経営計画達成に向けた今年度の取り組みなどについて、ご説明します。

本日の説明会は、決算説明と中期経営計画の取り組みを中心としたお話になるため、当社の会社概要や「計装」についてのご説明や事業環境などに関する情報については、お手元の補足資料をご参照いただければと思います。それでは早速、2020年3月期決算の概要について、ご報告します。

まず、事業環境についてご説明します。空調計装関連事業における新設工事は、東京オリンピック・パラリンピック関連や、首都圏を中心とした再開発案件が堅調に推移しました。既設工事については、機器メーカーなど工場の設備投資を中心に増加しました。

産業計装関連事業については、研究施設における電気工事や、前期に受注済であった地域冷暖房施設の計装工事を中心に増加しました。当社が注力している食品工場においては、ロボット事業が拡大し、このような事業環境のもとで、売上高、営業利益、当期純利益は創業以来の最高額となりました。受注高については、前期より微減となりましたが、引き続き高水準となっています。この結果、売上高および営業利益において、中期経営計画最終年度の業績目標を1年前倒しで達成しました。

業績の概要

先程お伝えしたとおり、第61期決算は増収増益という結果となりました。表示のとおり、売上高は312億円、営業利益は44億2,000万円、経常利益は44億6,000万円、当期純利益は31億8,000万円といずれも当初計画値を上回り、4月22日に公表している修正予想値と変わらぬ着地となり、過去最高益を計上しました。要因などについては、次ページ以降にて、前期との比較を中心にご説明します。

業績の概要 損益計算書要旨

まず、損益計算書の概要についてご説明します。売上高は、前期比10.6パーセント増加の312億円となりました。事業別の内訳については、後ほどご説明しますが、空調計装関連事業、産業計装関連事業ともに増加しています。売上総利益は、前期比16.4パーセント増加の108億7,000万円となり、当該利益率については、前期より増加し34.7パーセントとなりました。販売費および一般管理費については前期比2億8,000万円増加しました。

以上の結果、営業利益は前期比39.4パーセント増加の44億2,000万円、経常利益は前期比38.1パーセント増加の44億6,000万円、当期純利益は前期比42.6パーセント増加の31億8,000万円、1株あたりの当期純利益は397.82円となりました。

事業別売上高

続きまして、事業別の売上高についてご説明します。まず、空調計装関連事業の新設工事については、商業施設および公共施設向け物件並びに工場向け物件等の増加などにより、前期比20.4パーセント増加の83億9,000万円となりました。空調計装関連事業の既設工事については、工場および医療施設向け物件等の増加などにより、前期比3.2パーセント増加の177億9,000万円となりました。

産業計装関連事業の産業計装工事については、電気工事および地域冷暖房関連設備の計装工事等の増加などにより、前期比31.8パーセント増加の、44億6,000万円となりました。 なお、制御機器販売については、売上高に占めるウエイトが小さく、業績への影響が少ないところですが、前期比8.1パーセント減少の6億4,000万円となりました。

事業別受注高・受注残高

続きまして、受注の状況についてご説明します。まず、受注高の合計ですが左側の表(一番下)のとおり、前期比2.4パーセント減少の308億円となりました。事業別に内訳を見ると、空調計装関連事業の新設工事については、工場および商業施設向け物件等の減少などにより、前期比2.1パーセント減少の80億1,000万円となりました。空調計装関連事業の既設工事については、放送施設および事務所向け物件の減少などにより前期比2.3パーセント減少の181億6,000万円となりました。産業計装関連事業の産業計装工事については、地域冷暖房関連設備の計装工事の減少などにより、前期比2.2パーセント減少の40億円となりました。なお、制御機器販売については、売上高のところでご説明したとおり、前期比8.1パーセント減少の6億4,000万円となりました。

次に、右側の表は、期末時点の手持ち工事および受注残高です。ご覧のとおり、空調計装関連事業、産業計装関連事業ともに減少し、合計では前期比2.7パーセントの減少で169億1,000万円となりました。

貸借対照表 要旨 資産

続きまして、貸借対照表の要旨についてご説明します。まずは、資産の部ですが流動資産は前期比21億8,000万円増加し、276億6,000万円となりました。未成工事支出金の増加が主な要因となっています。

また、固定資産は前期比24億3,000万円増加し、108億8,000万円となりました。投資有価証券の増加が主な要因となっています。資産合計では、前期比46億2,000万円増加し385億4,000万円となりました。

貸借対照表 要旨 負債・純資産

次に、負債と純資産についてご説明します。負債の部では、流動負債が、前期比22億8,000万円増加し、136億5,000万円となりました。これは、未成工事受入金等の増加が主な要因です。また、固定負債は前期比2,000万円減少し、9億8,000万円となりました。負債合計では、前期比22億円増加し、146億3,000万円となりました。純資産合計については、前期比23億6,000万増加し、239億円となりました。こちらは主に当期の純利益による利益剰余金の増加によるものです。

キャッシュ・フロー計算書要旨

キャッシュ・フローの実績についてご説明します。まず、営業活動によるキャッシュ・フローについては、営業活動の結果として得られた資金が前期比11億7,000万円増加し、41億6,000万円となりました。これは、税引前当期純利益の計上44億6,000万円および未成工事受入金の増加の18億8,000万円が主な要因となっています。

投資活動の結果、使用した資金は前期比30億6,000万円増加し46億2,000万円となりました。投資有価証券の取得による支出である27億1,000万およびその他の21億6,000万円が主な要因となっています。財務活動によるキャッシュ・フローについては、財務活動の結果、使用した資金は前期比1億4,000万円増加し、7億9,000万円となりました。これは、配当金の支払い7億5,000万円が主な要因となっています。この結果、当61期末の現金および現金同等物の残高は、前期比12億5,000万円減少し85億3,000万円となりました。

以上をもちまして、2020年3月期の決算概要のご報告を終わらせていただきます。

2021年3月期業績予想

続きまして「2021年3月期 業績予想」をご説明します。2021年3月期業績については、ご覧のとおり売上高は増加、利益は減少の予想としています。要因については、次ページの事業別業績予想にてご説明します。

なお、今年度についても、当社における工事進行基準の計上は、対象物件が少ないため軽微にとどまる見込みです。

事業別受注高・売上高予想

今期の事業別業績見通しについてご説明します。こちらにあるとおり、受注高は前期比1.0パーセントの減少、売上高は前期比 2.2パーセントの増加予想となっています。

まず受注高ですが、空調計装関連事業における新設工事は、首都圏の再開発などを中心に増加が予想されます。既設工事においては、コロナ禍による景気悪化に伴う設備投資の減少が想定され、小型の既設工事の減少が見込まれることなど、総合的に鑑みて、前期比2.1パーセント減少の259億円となっています。内訳として、新設工事は前期比12.4パーセント増加の90億円、既設工事は、前期比8.6パーセント減少の166億円と見込んでいます。産業計装関連事業においては、地域冷暖房を中心とした大型案件の受注が見込まれるため、前期比5.2パーセント増加の46億円を見込んでいます。

一方、売上高は空調計装関連事業において受注済案件の着実な完成計上が見込まれるため、前期比4.3パーセント増加の276億円を予想しています。また、産業計装関連事業では、主な施工現場である工場において、コロナ禍の影響による設備投資減少が見込まれ、前期比8.9パーセント減少の44億円を予想しています。

配当ポリシー

 

続きまして、当社の配当政策についてご説明します。こちらには、配当性向の推移を紹介しています。ご覧のとおり、当社は配当性向一定・業績連動型配当をポリシーとしています。

2020年3月期の決算では、増収、増益となったことから、期末普通配当予想を、1株あたり92円から109円に修正しています。なお、第2四半期配当1株当たり10円を実施しており2020年3月期の年間配当は1株当たり計119円となる予定です。

2021年3月期の予想については、業績予想および先ほどご説明した配当に関する方針に基づき、第2四半期配当1株当たり10円、期末配当が82円の年間計92円の予想としています。もちろん、業績予想を少しでも上回るよう、経営努力を進めていく所存です。ご理解賜りますよう、よろしくお願いします。

中期業績目標 概要

続きまして、中期経営計画の進捗と今年度の取り組みについてご説明します。当社は、第60期から3ヶ年の中期経営計画に取り組んでおり、今年度は最終年度となります。表示のとおり、最終年度の業績目標数値としては、受注高の310億円、売上高の300億円、営業利益の35億円を変更することなく取り組んでいく所存です。

なお、5月20日に公表した2021年3月期の通期業績予想は、売上高が320億円、営業利益は35億5,000万円と予想しています。

中期重点戦略の取り組み 進捗①

中期経営計画達成に向けた重点戦略の進捗状況についてご説明します。まず1つ目の「効率重視の事業展開」に関する取り組みの進捗です。空調計装関連事業においては、本支店を東日本、中部、西日本の3つの地域ブロックに分け、ブロック単位での事業展開を行なっています。

従来は、支店単位で受注判断を行なっていましたが、限られた経営資源を、よりよい条件の案件に割り当てるため、ブロック単位で最適な受注判断を行ない、適正な利益確保を図っています。

特に、新設工事の大型案件においては、ブロック単位での受注判断を徹底してきました。また、施工担当者においてもブロック内での最適受注に準拠した人員配置の検討に取り組んだ結果、利益率の向上に寄与することができました。

産業計装関連事業は、コア事業をプラントメーカーを経由した間接受注を主体とするPM(プラントメーカー)、エンドユーザーからの直接受注を主体とするEU(エンドユーザー)、食品工事における産業用ロボットビジネスを主体とするFA(ファクトリーオートメーション)、地域冷暖房関連設備の計装工事を主体とするDHC(地域冷暖房)の4つのユニットに分類し、ユニット別の事業戦略を明確化し、事業展開してきた結果、PM、EU、FAで受注が拡大しました。

中期重点戦略の取り組み 進捗②

次に、2つ目の「顧客との関係強化の推進」に関する取り組みの進捗です。当社の価値を理解していただけるような顧客との関係を構築するため、空調計装関連事業においては、元請比率が高い既設工事において、ニーズが豊富な「省エネ」を主体に、客先が抱えている課題を適切に解決する課題解決型ビジネスへの進化を図っています。こうした取り組みのなかで、ファシリティマネジメント事業者とのパートナー連携をさらに強化し、協業深耕してきたことで、省エネルギービジネスの受注が拡大しました。

産業計装関連事業についても、エンドユーザー向けに「省エネ」「省人化」を通じた顧客満足度向上を目的に工場における使用エネルギーを見える化し、省エネ化運用を図るため、これまでビルを対象とした当社独自のデータ分析ツールを工場向けに機能を拡張いたしました。また、計装技術によって生産ラインを自動化することで、品質向上や人材不足の解消、安心安全を提供した結果、売上高の向上やリピート受注に寄与することができました。

中期重点戦略の取り組み 進捗③

次に、3つ目の「戦略的受注の徹底」に関する取り組みの進捗です。空調計装関連事業の新設工事においては、定例会議により本社、地域ブロック、各店における案件情報を早期共有化し、地域ブロックでの最適受注を考慮し、適正な利益確保のもとで各店が受注すべき案件を早期に選定してきました。その結果、前期並みの受注額確保および利益率の向上に寄与しました。産業計装関連事業においては、各ユニットの事業戦略のもとで営業促進した結果、PM、EU、FAで受注が拡大しました。

中期重点戦略の取り組み 進捗④−1

続きまして、4つ目の「ニーズに応える技術力強化と領域拡大」に関する取り組みの進捗です。空調計装関連事業においては、建築業界で普及が進むとされているBIMへ対応するため、特定現場においてBIMの運用状況を確認し、当社エンジニアリング面における差別化要素の洗い出しを行なってきました。

既設市場において、改修工事やメンテナンス等の既存ビジネスに加え、新たな収益源となる新規ビジネスモデルを確立するために本社主導による省エネビジネスを拡大してきました。

また、都市部における物件の大型化、中央監視装置の高機能化に対応するため、2020年4月に自動制御工事の設計会社を子会社化し、グループとしての業務効率化や技術基盤強化体制の整備を図り、新技術への対応促進と事業領域を拡大してきました。

中期重点戦略の取り組み 進捗④‐2

産業計装関連事業においては、TIS(Total Industrial Solution)をテーマに、事業領域を拡大するため、連結子会社であるジュピターアドバンスシステムズ株式会社を設立し、2020年4月に食品工場向け生産管理システムのソフトウェア開発会社より全事業を譲り受けました。食品工場において、従来の各種生産設備の自動制御技術との融合により、フィールド領域から生産管理領域までワンストップで対応することが可能となりました。 

また、AI、IoT技術を活用したIndustrial IoTに関わる実証試験や現場への適用を行い、事業基盤の強化に着手したことで、産業計装関連事業全体のボリューム増に寄与しました。

中期重点戦略の取り組み 進捗⑤

5つ目の「働き方改革への対応」に関する取り組みの進捗です。コンプライアンスとして重要な働き方改革関連法への対応や重要な経営資源である人材の確保、流失防止のため人事関連制度の見直しに取り組んできました。また、健康増進体制を整備し、労務および健康管理の徹底や産業医の活用促進、ワークライフバランスなど健康経営に取り組んできました。その結果、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2020」(大規模法人部門)に初認定されました。

現場支援としては、スマートグラスやタブレット端末を利用した遠隔作業支援システムの実証試験の実施や採用方法の多様化などによる人材確保、さらに情報端末を配備し、ITを活用した施策を実施しました。

2021年3月期の取り組み①

中期経営計画達成に向けた、2021年3月期の取り組みについてご説明します。空調計装関連事業の新設工事については、引き続き、計画的・戦略的な受注活動の徹底のもと、地域ブロック制の運用を継続し、早期情報収集に基づく計画的な受注を行なっていきます。今年度から大型案件に関しては、本社主導による早期選定と体制構築の仕組みを導入し、プロジェクトを遂行します。

既設工事については、既存ビジネスにおいて、顧客現場の課題を把握することで、継続契約維持率の向上と提案活動による受注拡大を図ります。また、協力会社動員力強化のため協力会社制度構築プロジェクトを始動し、安定的な収益確保と事業体制の強化に取り組んでいきます。さらに、ESCO事業やファシリティマネジメント事業など各種エネルギー・サービス事業への取り組みを加速させ、省エネルギービジネスの拡大に取り組んでいきます。

2021年3月期の取り組み②

産業計装関連事業の産業計装工事については、ユニット制を開始してから2年目になりますが、効果を最大限に発揮させるため、各ユニットの事業戦略をより全社浸透させ、地域ブロック主導で事業推進していきます。また、各地域ブロックにターゲット業種を定め、営業効率を図ることで量的拡大すなわち事業成長に取り組んでいきます。

産業システム関連については、本社主導でTIS提案の手法を定め全社展開します。また、子会社のジュピターアドバンスシステムズとの協業により、人手不足や自動化が進まない中堅・中小の食品工場のスマート化を支援することで、事業領域の拡大を図ります。さらに、AI、IoT技術を活用したIndustrial IoTの研究開発を進め、新技術へ取り組んでいきます。

企業価値向上に向けた取り組み

 

企業価値向上に向けた取り組みについてご説明します。1つ目は、経営の監督と執行の実効性確保です。取締役会と業務執行の分離を図り、客観的な経営の監督の実効性を確保するため役付取締役を廃止し、執行役員制度を整備いたしました。

2つ目は、取締役会の責務の強化です。当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、役員報酬制度の見直しを行ないました。具体的には、役員退職慰労金を廃止し、インセンティブを加えるとともに新たに譲渡制限付株式報酬を導入します。

3つ目は、投資家との積極的な対話です。中長期的な企業価値の訴求を図るため、従来よりも機関投資家とのIR面談の実施回数の増加を行ない、また、外国人株主へ情報開示充実化を図るため、英語版のIRレポートの配信を開始しました。

今後も引き続き、企業価値向上へ取り組んでいく所存ですので、ご理解賜りますよう、よろしくお願いします。以上で、説明を終了します。最後まで、ありがとうございました。

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