シスメックス、通期は為替の影響や原価率の悪化により減益も今後はHISCLを利用した検査にフォーカス

2020年5月13日に行われた、シスメックス株式会社2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:シスメックス株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 家次恒 氏

新型コロナウイルス感染症による影響は限定的

家次恒氏:みなさまおはようございます。シスメックスの家次です。本日はよろしくお願いします。それでは、2020年3月期のシスメックス株式会社の決算説明会をスタートします。

本日の内容ですが、決算総括、業績予想の考え方、それから新型コロナウイルス感染症に対する取り組みについてご説明します。

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まず、決算総括です。スライドにありますように、新型コロナウイルス感染症による影響は、限定的になっています。中国において、機器の売上が若干増加していますが、全体的にはご案内のように、「ロックダウン」という状況があり、とくに慢性患者の受診が減ることで、検査数も減るというような状況が出ています。

中国では1月の中頃から新型コロナウイルス感染症が広まっていますが、とくに欧米中心に3月中旬以降から、さらに今後は新興国も含めて広がっていくという状況です。

決算総括(対前年同期)

決算総括です。売上高は前年同期比2.9パーセント伸びて、3,000億円を少し超えたという状況です。ただ、営業利益は約10パーセントのダウン、純利益に関しても、15パーセント程度ダウンしています。

この理由としては、1つは為替の影響、もう一方では、とくに第4四半期における新型コロナウイルスの影響がありました。成績としてはあまりよくなかったと認識しています。

為替の影響ですが、ここにあるとおり売上でマイナス118億2,000万円、営業利益でマイナス52億8,000万円となっています。為替そのものも、左下のとおりずっと円高基調で進んだというところです。

決算総括(対計画)

こちらは対計画です。去年の第2四半期の終わりに計画を修正したのですが、その中でも、売上が前年の3,100億円に対して今期は3,019億8,000万円と、達成率が97.4パーセントとなり、営業利益についても約8パーセントダウンとなっています。また、純利益が約10パーセントのダウンです。

後ほどそれぞれの地域については説明しますが、全体的に、第4四半期がかなり厳しい状況になってきたところでの未達で、後は販管費も含め、基本的に収益性が少し落ちてきているという状況です。

売上高の増減要因(地域別)

地域別の売上高の増減です。これは現地通貨ベースで見ていただくとありがたいのですが、青い囲みの部分をご覧ください。米州が2.8パーセント増と厳しい伸びです。EMEAが8.4パーセント増、中国が8.4パーセント増、APが11パーセント増、日本が6パーセント増となっています。

中国も、従来はずっと2桁の伸び率でしたが、第4四半期での新型コロナウイルス感染症の関係もあり、10パーセントを割っているという状況です。

事業別・品目別売上高

事業別・品目別売上高は、円ベ―スで見ると、生化学およびFCM事業は全体のポーションとしては非常に小さいのですが、前年割れしています。それ以外については、まだ伸びは低いですが、スライドのような展開になっています。

前年同期のレートでは全体で6.9パーセント増でした。品目別では、機器は2.1パーセント増ですが、試薬は前期レートで約7.3パーセント増と、正直なところ2桁は伸びたかったところですが、そのような展開になっていました。

営業利益の増減要因

営業利益の増減要因は、為替の影響や原価率の悪化によるものです。とくにスライドのとおり、原価率の悪化が占める割合が大きくなっています。4つほど項目を挙げていますが、このあたりは機器の仕入れや、新製品があまり出ていない状況で、これをどう改善していくかということで、現在、急ピッチで新製品開発を行なっており、その値が基本的にはこの原価率を改善する、最もベーシックなやり方と思っています。

当然、地域によってさまざまな事情がありますが、そのような状況です。販管費については、これはある意味前向きの投資も含めて行なっており、増加してきているというところです。とくに今、サービスにはかなり力を入れているため、その部分が少し上がってきているということです。

研究開発費については、ある意味予定どおりで、営業利益も先ほどお伝えしたように為替の影響で52億8,000万円を下ったところです。

連結財政状態計算書の増減要因

連結の財政状態ですが、流動資産そのものが100億円ほど、非流動資産が300億円ほど伸びています。これについてはそれほど大きな問題はないと思っています。

キャッシュフローの推移

キャッシュフローです。こちらは今回IFRS16の適用を受けてリース負債を出したため、少しわかりにくいと思います。詳細については、後ほどまた説明したいと思いますが、結果としては、一番右の現預金の部分が約55億円伸びています。

前々期は、当社のバイオ診断薬拠点への投資がかなり大きかったのですが、前期はそれほどではありませんでした。

トピックス

トピックスです。以前よりお伝えしていますが、去年の4月からインドにおいて、総代理店を通さずに直販を開始し、そちらで複数の大型案件を受注できました。従来の代理店はハイエンドをあまり行なわなかったため、着実にインドは伸びてきています。

2つ目として、米国の大手の検査センターでヘマトロジーの分野の案件を受注できたということです。

それから、ブラジルのロシュに行なっていただいていたのですが、我々のようなヘマトロジー中下位市場は自分たちで展開していくため、新体制での販売を始めることができました。また、尿路感染症のスウェーデンの企業に出資しています。

ライフサイエンスにおいては、がんゲノムプロファイリング検査用システムの測定受託が去年の6月から開始されたものの、立ち上がりに少し時間がかかっており、おそらく今期に本格化すると考えています。

リキッドバイオプシーによる大腸がんのRASの遺伝子変化ですが、これについては製造販売承認を受けています。しかし、まだ保険適用がないため、今年の6月くらいに落ち着くのではないかと思っています。

その一方で、OSNA法による乳がんのリンパ節転移の診断ですが、中国で薬事承認を受け、今期から本格的に実施していきます。現在、COVID-19で現地は少し混乱していますが、中国は非常に人口が多く、なおかつ患者の数も当然ながら多いため、楽しみにしているところです。

それから、BGIと販売代理店契約を締結し、3月に新型コロナウイルス検査キットの承認をいち早く受け、お客さまに提供している状況です。そのような中で、社内的には今、新しい人材マネジメントシステムをスタートしました。

米州(地域別)

地域別の米州については、現地通貨ベースでは2.8パーセントしか伸びていませんが、ここにあるとおり、血液凝固分野や尿の分野、中南米が減収となっています。

ヘマトロジー分野は当然ながら試薬の売上が確実ですが、米国においても、機器の納入について、とくに第4四半期がスローになっています。これは新型コロナウイルス感染症の関係で、輸送できないという話があったり、新しいWAMを提供しようとしても、その部分でいわゆる期ズレを起こしているという状況です。

米国の受注状況はかなり強めでもっている状況です。いずれにしても、米国においては尿のところが少しアプローバルを受けられておらず、今対処をしているところです。

それから先ほどお伝えした大手検査センターにおいてXEから次の世代のXLを導入していきます。

EMEA(地域別)

EMEAです。ヨーロッパ現地通貨ベースで8.4パーセント増です。基本的にはよい展開ができていて、尿分野も直販のところでは伸びていました。ところが第4四半期において、とくに3月に各国で「ロックダウン」があり、ヨーロッパはかなり厳しい状況になったため、このあたりで少しブレーキがかかっています。

第3四半期も通常どおりであれば、かなりよい展開ができていたと思うのですが、いずれにしても当社の浸透力とビジネスモデルからして、ヘマトロジー分野では着実にマーケットシェアが上がってきている中で、いわゆる試薬の消費は着実に行なわれています。今、一時的に新型コロナウイルス感染症の関係で少し抑えられているところがあるということです。

中国(地域別)

中国については、現地通貨ベースでずっと10パーセントほど伸びていましたが、とくにここは第4四半期において、1月の半ばから、「ロックダウン」の影響で厳しい状況にありました。

機器については、急ごしらえの大きな病院ができたことがテレビでも紹介されましたが、ここには機器を導入したものの、このような事態ですので、当然ながら非常に原価率が厳しい状況で導入した部分がありました。

それから、「ロックダウン」で一般の方々の検査が減ったことから、第4四半期は少し厳しく、結果として2桁は伸びなかったという状況です。

ただ、先ほどお伝えしたように、OSNAの乳がんリンパ節のシステムが薬事承認を受けられたということですが、このあたりのマーケットそのものの力はけっこう強いと思われるため、今期はとくに、こちらの展開に力を入れていきたいと思います。

AP(地域別)

アジアパシフィックです。ここについては、全体で円ベースで7.6パーセント増ということで、全体では11パーセント増と2桁の伸びを示しています。地域によってそれぞれ特徴があり、インドネシアは皆保険制度の財源不足があったり、一方でデング熱が流行ったということで、ヘマトロジーの試薬はかなり伸びたということです。

ここについてはCOVID-19がこれからというようなことかもしれませんが、インドなどの「ロックダウン」で、一部、試薬の生産ができない状況もありました。しかし、今はもう改善していると聞いています。いずれにしても、ここはこれからのマーケットということです。

日本(地域別)

日本については、円ベースで6パーセント増です。従来はかなり厳しい状況でしたが、前期についてはオリンピックに向けて大きな病院が新たにできたり、建て直したり、それから新たなシステムを入れてもらうということで、機器の売上は堅調に推移し、久々に2桁の伸びになっています。

日本についてもこれからCOVID-19の影響がどうなってくるか、どこまで伸びるかということがありますが、ここでもやはり慢性疾患の方々の検査数が減ってきています。また輸入品ですが、PCRキットの発売を開始しました。

予想配当額 18期連続の増配(案)

配当については予定どおり、期末も36円ということで72円です。今回はボトムが少し悪かったのですが、配当性向が43.1パーセントとずっと18期連続で増配しており、これを続けていきたいという経営的な意思を持っています。

連結 通期業績予想

通期の業績予想です。他社でもこのような状況になっていますが、グローバルな感染拡大がどうなるかというところで、とくに足元では、グローバルで一般の患者の検査の数が減るという状況が出てきています。

そのため、業績は少しマイナスになると思われますが、これがどの程度であるのかはまだ推し量りにくいところです。「ロックダウン」を解除するという動きもヨーロッパや米国で出てきていますが、このあたりがどうか、また新型コロナウイルス感染症のセカンドウェーブが来るかどうかということもあります。

このようなことも含めると、まだ今は状況が読みにくいため、できれば我々は第1四半期が終わった段階でなんらかの予測を出していきたいと考えています。

新型コロナウイルス感染症の影響(上半期業績見通し)

新型コロナウイルス感染症の影響です。現在までの情報をもとに、地域ごとに作成しています。中国がもともとのスタートで、米国、ヨーロッパについては、3月の中旬、下旬から出てきており、日本もそれで一部、影響が出てきているということです。

スライドにあるとおり、第1四半期ではとくに米州、それからヨーロッパ、中国において、全体の15パーセントほどは影響があるのではないかと考えています。第2四半期はある意味では少し回復してくるという読みを行なっており、全体から言うと、第1四半期は約10パーセントから15パーセントの減収になっています。

第2四半期については、中国はだいぶ回復してきていることも事実であり、前年同期に対して微減程度になるのではないかという見通しです。まだ、セカンドウェーブが来るかもはっきりとはわかりませんが、このあたりが読めた段階で、先ほどお伝えした業績の見込みを出していきたいと思っています。

新型コロナウイルス感染症に対する取り組み

我々の新型コロナウイルス感染症に対する取り組みです。今回のCOVID-19に対しては、グローバルにプロジェクトを展開していました。当然ながら、ヘマトロジーは基本的な検査のため、COVID-19の患者も含め、必ず検査する状況のため、製品の安定した供給をどう継続できるかがなによりも大事でした。おかげさまで、機器の工場は日本ですが、海外の試薬工場も今はきちんとしたかたちで動いて、展開できる状況になってきているというところです。

そして、なによりも大事なサービスアンドサポートについては、オンラインのサポートを充実させました。また、当然ながらサービスのメンバーも今、病院に対してチャレンジしているという部分もあります。

一方で、従業員に対しては、当然ながら雇用の維持と、どういう環境を作るか、とくにテレワーク等も推進しているため、サービスの人たちについては、アベイラブルプロテクトの展開の徹底をお願いしているところです。また、財政基盤等はとくに問題はありません。

新型コロナウイルス感染症への取り組み(初診時)

我々の本業である感染症への取り組みです。シスメックスは、初診時にはまず、抗原検査および抗体検査を最初に行ない、続いてPCRに必要な検査を行なうフローを考えています。

我々の取り組みの1つは抗原検査で、これは鼻咽頭ぬぐいのものを、特別な液に浸し、HISCLで検査するもの(アッセイ系)を確立できている状況です。抗体検査については、得意分野の血液を用いるものですが、これも一応アッセイ系ができました。これから臨床評価を行ないます。

最近、この手のものは薬事の承認が早くなっていますが、基本的にはHISCLで行なうかたちになります。HISCLは、現状のイムノ・プローブよりもかなり感度が高くできるため、PCRと変わらない定量測定ができるのではないかと考えており、開発を進めています。

イムノ・プローブについては、陰性の場合はPCRで行なわなければならないのですが、これはかなり陰性の方が多いため、少し厳しい状況なのではないかと思っています。

PCRキットについては、BGI製ですが、いち早く受注をいただいているところです。

新型コロナウイルス感染症への取り組み(治療時)

治療時の取り組みですが、私は非常に大事だと考えています。治療の初期に重症度の予測をすることがなによりも大事だからです。

また、治療モニタリング検査ですが、今回のコロナウイルスに関しては、サイトカインストームという、急に病状が悪化して死に至るという症例も出ています。そのような場合のプロセス管理をどうするかが大事になってきます。

我々は、ヘマトロジーと血液のDダイマーを使用することで、血栓の状況を把握し、それ以外に免疫の検査や抗体検査とサイトカインパネルをモニタリングしていくことによって、できるだけ重症化を防げると考えています。

開発は完了しており、今後またアプローバル等もありますが、この検査は非常に大事だと考えており、そこにフォーカスしていきます。

HISCLについては、現在、日本およびアジア地域を中心に展開しており、欧米にはまだ広がっていないという問題がありますが、今後はこのあたりも展開していきたいと考えています。

以上で私のプレゼンテーションは終わります。ご清聴ありがとうございました。

記事提供:ログミーファイナンス

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