不振が続く自動車株に英EU離脱ショックが追い打ち

歴史的な急落となった6月24日の“英EU離脱ショック”から2週間が経ちました。直前に106円/ドルと120円/ユーロだった為替相場は、それぞれ100円/ドルと110円/ユーロへと円高が進行し、それに伴う形で、代表的な輸出関連株である自動車株も大幅に下落しています。

もともと、2016年に入ってからの自動車株は円高進行で不振が続いていましたが、今回の英EU離脱ショックが追い打ちをかけた形になっています。

マツダ株は昨年末から既に半値以下に下落

その自動車株の中で、不振がいっそう際立っているのがマツダ(7261)です。年初からの下落率(2015年末終値と7月8日の終値との比較、以下同)を見ると、マツダは▲52%に達しています。

これを上回る下落は、一連の燃費不正問題で窮地に立つ三菱自動車(7211)の▲57%だけです。三菱自動車の下落が“特殊要因”ということを勘案すると、マツダ株の低迷は深刻と考えていいでしょう。ちなみに、TOPIXは▲22%、日産自動車(7201)が▲28%、トヨタ自動車(7203)が▲32%、ホンダ(7267)が▲37%、富士重工(7270)が▲35%、スズキ(7269)が▲27%となっています。

英EU離脱ショック以降の下落率は突出して大きい

さらに、マツダの場合は、英EU離脱ショック以降の下落が顕著です。直前の6月23日終値と7月8日終値の比較を見てみると、マツダの下落率は▲32%となっており、自動車株の中では圧倒的に大きな数字となっています。なお、この同じ2週間では、TOPIXは▲7%、日産が▲11%、トヨタが▲12%、ホンダが▲10%、富士重工が▲16%、スズキが▲8%の下落となりました。

円高で収益悪化が不可避な自動車株の中で、マツダの株価パフォーマンスが著しく悪い理由があるのでしょうか。

早ければQ1決算時に大幅な下方修正発表も

まず、マツダの業績動向を見てみます。過去最高益(注:当期純利益を除く)を更新した2016年3月期から一転、2017年3月期の営業利益(会社予想)は対前期比▲25%減となる見込みです。しかし、会社側の前提レートが110円/ドルと125円/ユーロであるため、足元の為替水準を勘案すると、大幅減益であるこの計画達成も至難の業と言わざるを得ません。

もちろん、為替レートだけで決まるわけではありませんが、マツダの輸出比率は非常に高いため、為替の影響は他社以上に大きいのが実情です。販売台数が極端に上ブレしていないため、早ければQ1決算発表時には下方修正があると考えられます。株式市場も、その下方修正を待っている可能性が高いと思われます。

表面上の数字以上に高い欧州事業への依存度

もう1つ気になる点は、マツダの欧州事業への依存度です。マツダの全売上に占める欧州地域の比率は約20%(2016年3月期実績)となっており、自動車メーカーの中では三菱自動車の23%に次ぐ高さです。

また、具体的な数値としては示し難いのですが、欧州ではマツダ車への評価が非常に高いことが挙げられましょう。これは、マツダ車のデザインが欧州市場で人気があることに加え、燃費性能に優れたディーゼルエンジンが高く評価されていることが背景にあります。

欧州市場では大苦戦が続く日本車メーカーの中で、マツダは相応の利益を上げていると考えられ、ある意味では異質とも言えるのです。

英EU離脱ショック以降のマツダ株の下落率が突出して大きいのは、こうした欧州事業の重要性を懸念したものと推測されます。この点においては、株式市場は欧州市場の減速を強く懸念していると考えられます。マツダが今後の欧州事業にどのような策を講じていくのか、多くの投資家が注目していると見ていいのではないでしょうか。

真価が問われるこれからのマツダ株

現在のマツダの株価は、アベノミクスが始まった2013年1月初とほぼ同じ水準にあります(2014年8月に実施した株式統合を考慮後)。円安を背景にした株価上昇が終わった今からが、マツダ株の真価が問われる局面と言えます。

 

LIMO編集部