2020年5月21日に公開された、株式会社FRONTEO 2020年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社FRONTEO 代表取締役社長 守本正宏 氏\n株式会社FRONTEO 取締役 CFO 上杉知弘 氏

2020年3月期 通期連結業績説明会 トピックス

守本正宏氏(以下、守本):株式会社FRONTEO代表取締役社長の守本です。当社の決算説明動画をご視聴いただきありがとうございます。

今回2020年3月期の決算説明については新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、決算説明を動画で行なわせていただくこととしました。

はじめにCFOの上杉より業績概要、業績予想についてお話しし、その後私から業績概要と2020年3月期通期の振り返り、2021年3月期の通期戦略についてお話しします。ぜひ最後までご視聴いただきますようお願いします。

2020年3月期の通期業績概要、2021年3月期の業績ガイダンス、2020年3月期の通期振り返り、2021年3月期の通期戦略の順にご説明します。

通期連結業績に関するトピックスをご説明します。第4四半期は売上も改善し、さらに上期に実施した米国子会社のコスト削減効果もあって、単四半期の黒字化を達成しました。

リーガルテックAI事業においてはAIを活用したソリューションへの転換に注力してきました。転換には時間を要しましたが、第3四半期後半からAIレビューソリューションである「KIBIT Automator」の市場への浸透が進み、日米両市場で活用が始まりました。来期において「KIBIT Automator」を活用した再成長を目指します。

一方、ライフサイエンスAI事業では、武田薬品工業さまと創薬支援AIシステムのライセンス契約の締結を行なった他、認知症診断支援AIシステムのAI医療機器としての承認と販売に向け、共和薬品工業さまと事業提携について基本合意するなど、着実に将来の成長の基盤を築くことができました。

2020年3月期 通期連結損益計算書

上杉知弘氏(以下、上杉):財務責任者の上杉です。よろしくお願いします。私から連結通期業績について説明します。

まず、売上に関しては、通期で104億7,000万円となり、対前年7パーセント減収、リーガルテックAI事業は91億1,700万円となり、対前年7.3パーセント減収、AIソリューション事業は13億5,300万円で、対前年5パーセント減収となりました。

リーガルテックAI事業に関しては、AI事業へのビジネスモデルの転換が遅れたことを主な原因として減収となっています。

ただし、第4四半期においては「KIBIT Automator」の販売促進などが進み、対前年12パーセント増収で回復基調にあると考えています。

AIソリューション事業に関しては、大口顧客を中心に普及期に入りましたが、本格導入に対して企業の意思決定の遅れなどにより減収となっています。

売上総利益は40億4,200万円となり、売上の減少にともなう減益です。販売費および一般管理費は48億8,700万円、対前年で1億9,700万円増となっています。これは営業部門、研究部門を中心に人的投資、マーケティング投資を進めた結果となっています。

その結果、営業利益に関しては8億4,400万円と大きな営業損失を計上しました。なお、第4四半期は売上の回復および米国のコスト削減により4四半期ぶりに6,200万円の営業黒字を計上しました。

最後に、当期利益は9億2,900万円の当期損失となります。第4四半期は米国において、特別減税の還付金等により1億700万円の当期利益を計上しました。

2020年3月期 連結貸借対照表

連結貸借対照表になります。2019年12月末と比較して大きな変動はありません。現預金の残高は2020年3月末で15億7,200万円となっており、2019年3月末と比べると大きく減少していますが、転換社債の償還によるものであり、現時点で適性な資金繰りを維持しており、問題はないと考えています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響について

業績ガイダンスです。前提条件として、新型コロナウイルス感染症の影響は上期で収束するとし、上期の部分は業績に織り込んでいます。また、当社のビジネスに対しては現時点で大きな影響はないものと考えています。

なお、スライド下部に当社のソリューションを記載しています。当社のソリューションは、現在の状況においてさらに貢献できる範囲や度合いが増していくと考えています。

2021年3月期 業績ガイダンス

具体的なガイドラインの数値について説明します。売上に関しては110億円で、対前年5パーセント増収を計画しています。リーガルテックAI事業においては91億5,000万円と、ほぼ横ばいとしました。これは、AI事業へのビジネスモデルの転換をさらに加速させる一方で、AIビジネスに関係しない売上については自然減する結果として横ばいとしています。ただ、売上構成については大きく変わると考えています。

AIソリューション事業は18億5,000万円、対前年37パーセント増収と考えています。こちらはビジネスパイプラインの増加および責任者、スタッフの採用促進を含めてビジネスを拡大していきます。

採用に関しては現在ほぼ目処がついており、18億5,000万円をしっかりと推進していきたいと考えています。営業利益に関しては2億円と、前年比約10億円以上の増加を見込んでいます。こちらには3つポイントがあります。

1点目は、米国のコストダウンが1年間フルに効いてくることです。また、NASDAQの取り下げ効果で、第2四半期以降を中心に大きくコスト削減がなされ、合計で対前年10億円規模のコスト削減を期待しています。

2点目に関しては、売上の増加に伴い利益が増加することです。

3点目はコストの計上についてですが、引き続き営業部門、研究部門を中心に人的投資、マーケティング投資を進めていきます。

以上のように営業利益2億円をしっかり達成し、経常利益9,700万円、当期利益1,000万円とすべての利益において黒字化していくことを目指していきます。

連結売上の推移とAI売上の推移

守本:続きまして、連結売上の推移です。リーガルテックAI事業においてもAIの活用を進めた結果、グループ全体でAIサービス売上高が25億円に達し、グループ全体の売上におけるAIの売上高、売上比率はともに拡大しています。AI活用のソリューションへの転換が着実に進んでいると言えます。

連結売上高の推移 サービスタイプ別

次に、サービスタイプ別売上の推移です。Hostingの売上が下がっています。これは、Processの売上とも連動しており、新規Processで作業したデータがHostingに回るという構造ですので、Processの売上が前四半期まで落ち込んでいたことによりHosting売上の減少傾向が続いていました。

今後は「KIBIT Automator」の提供によってProcess案件をより多く獲得できると考えているため、来期からは上昇傾向になると考えています。

全体としては未だステージ3のレンジ内にいるため、四半期売上高75億円のステージ4を早期に実現すべく進めていきます。

リーガルテックAI事業 売上高・営業利益の推移

次に、リーガルテックAI事業の四半期売上推移です。AIレビュー製品「KIBIT Automator」の提案活動によって売上は徐々に回復しています。さらに、米国でのコスト削減もあり、単四半期では営業黒字となりました。

リーガルテックAI事業 顧客ホームカントリー別売上高の推移

顧客ホームカントリー別売上高についてです。アジアの案件は横ばいですが、米国ITプラットフォーマー企業に対する当局の調査が活発化し、米国での売上は伸びています。今後は「KIBIT Automator」を活用し、日本・米国・アジアすべての地域で売上拡大を進めていきます。

リーガルテックAI事業 大型案件顧客の推移

次に、大型案件顧客の推移についてです。大型案件の受注は5件ありましたが、今後はさらなる成長を実現していきます。

AIソリューション事業 分野別 売上高の推移(海外AIを除く)

AIソリューション事業の売上高の推移です。一部のラージアカウントで本格導入に入りつつあります。実証実験開始時より慎重に導入が進められるため、時間を要した結果このような推移になりましたが、長期的な見通しには影響はないものと考えています。

AIソリューション事業 導入企業数の推移

次に、AIソリューション事業導入企業数の推移です。2020年3月末現在、AIソリューションの導入企業数は218社で、前年比1.2倍となっています。

リーガルテックAI FY2019 活動成果①

それではここより、各事業ごとのアップデートについて説明します。

リーガルテックAI事業においては、AI活用事業転換の目玉であるAIレビュー製品「KIBIT Automator」を日米市場で投入しました。

「KIBIT Automator」の性能が予想をはるかに超えて優れていたことや、社内で人員を選抜しグローバルタスクフォースを結成して直接プロモーション活動を日米で行なったことに加え、米国大手法律事務所から高評価を得ることができたことが、日本のみならず米国での販売実績が急速に出てきた理由だと考えています。

リーガルテックAI FY2019 活動成果②

現在、AIだけでのレビューも含めると1時間あたりのレビュー速度は1人あたり430ドキュメントを達成し、当初想定していた150ドキュメントをはるかに超える結果を出すことができました。

通常人が行なうと40ドキュメントから60ドキュメント、早くても80ドキュメントという世界の標準と比較しても、圧倒的な差別化を実現しました。今後は、数年かけて1,000ドキュメント達成を目指していきます。いわゆるシンギュラリティの実現です。

リーガルテックAI FY2019 活動成果③ KIBIT Automator実績

「KIBIT Automator」の強力な武器は、AIだけでレビューすることができるAOR(AI Only Review)の機能を実現したことです。通常はAIを活用してもAIそのものの信頼性の問題から人のレビューは並行して行なわれます。しかし「KIBIT Automator」では優れたAIの性能からAIだけでレビューすることが米国でも認められ、人がレビューすべきドキュメントの20パーセントから最大90パーセントをAIだけでレビューすることが可能となりました。

これによる他社との圧倒的な差別化は当然ですが、顧客企業にとっても経済的・訴訟戦略的に圧倒的なベネフィットをもたらします。レビューはディスカバリー費用の70パーセントから80パーセントを占める、コスト高・労力・時間が多くかかる負担の多い作業です。レビューは人が行なうため、人の作業速度に依存し、1人あたりの人件費を下げるにしても限界があります。

しかし、AIに限界はありません。疲れもせず、性能も落ちません。人がAIに勝つことは物理的に不可能です。コストを大幅に削減できるだけでなく、時間短縮も大幅に実現するため、訴訟戦略上もはるかに優位になります。

「KIBIT Automator」を活用するためには当社のプロセスを活用する必要がありますが、これらの理由は他社企業から当社に切り替える十分な理由になります。

さらに、我々は「KIBIT Automator」の費用もいただいているため、仮に案件ごとのレビュー売上が下がったとしてもグロスマージンは大幅に向上し、案件獲得数も増えるので全体の売上も上がります。

リーガルテックAI FY2019 活動成果④

さらに、技術的優位性はもとより複数の米国大手法律事務所からエンドースメントをもらえたことも大きな後押しになったと考えています。

リーガルテックAI FY2020 通期戦略

今後は「KIBIT Automator」を中心とした営業プロモーションに集中し、日米ともに企業顧客の増加を進めていきます。当社はその実現に強い確信を持っています。それはすでにご説明した技術的優位性、顧客にとって経済的合理性、さらに、先進的で最も厳しい米国市場での実績・信頼性によります。

リーガルテックAI FY2019 AIサービス売上高

「KIBIT Automator」の導入が進んだこともあり、グループ全体でAI活用の売上が25億円に達し、グループ全体の売上におけるAIの売上高、売上比率をともに拡大することができました。

リーガルテックAI FY2020 見通し

リーガルテックAI事業の2020年度の見通しです。売上高はほぼ横ばいですが、昨年実施した米国でのコスト削減効果に加え、AIの売上比率を10パーセント以上に増加させ、黒字化を目指していきます。

AIソリューションビジネスインテリジェンス FY2019 活動成果

ビジネスインテリジェンス事業に関して2019年の活動成果をご説明します。昨年度は複数のメガバンクにKIBIT製品を導入することに成功しました。

昭和電工さま、横浜銀行さまなどのお客さま自身のシステムと連携する「KIBIT – Connect」の導入も進めることができました。

また、広告審査対応、薬事ガイドライン対応などの規制対応ソリューションも追加し、販売導入を進めています。

さらに、深刻な児童虐待の見逃し防止のためのAI活用プロジェクトを自治体と開始することもできました。

AIソリューションビジネスインテリジェンス FY2020 通期戦略①

2020年度のAIソリューションビジネスインテリジェンス事業の通期戦略をご説明します。大企業における複数の社内システムと連携し、データの分析を行い、業務の効率化、コード化に対応できる「KIBIT – Connect」の導入をさらに加速させていきます。

AIソリューションビジネスインテリジェンス FY2020 通期戦略②

金融庁が掲げるフィデューシャリーデューティー対応、厚労省の薬事ガイドライン対応、その他景品表示法などに対応するためには多くの人が多くの文章を読む必要があります。

しかし、昨今の状況から人が集まって文章をチェックすることがウイルス対策として困難なことに加えて、直接売上に結びつかない業務に人手、そして投資をすることも困難な状況です。

一方、当局からの規制対応は消費者保護のためにも効率化、コード化しなければなりません。当社のKIBIT製品を、そのような課題を解決する、ベストで実績のあるソリューションとして、導入・展開をさらに進めていきます。

AIソリューションビジネスインテリジェンス FY2020 通期戦略③

人手不足、働き方改革の推進や、直近の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、企業でのテレワークも急速に進んでいるなか、コンプライアンス対応として、通話のモニタリングはますます重要になってきています。

当社のKIBITは携帯電話の通話やチャットツールにも対応しており、効果的で高度なモニタリングを実現できるため、その導入を進めていきます。

AIソリューション ライフサイエンスAI FY2019 活動成果

次に、ライフサイエンスAI事業の2019年度活動状況についてご説明します。転倒転落予測AIシステム「Coroban®」の販売を開始し、認知症診断支援AIシステムの薬事認定に向け本格始動しました。さらに、創薬支援AIシステムも製薬大手に導入されました。

AI ソリューション ライフサイエンスAI FY2020 通期戦略①

ライフサイエンスAI事業の今年度の目標としては、AI医療機器メーカーとしての許認可獲得とライセンス事業の確立を目指し、AIを活用したデジタルヘルス領域の事業拡大の礎を築いていきます。

AI ソリューション ライフサイエンスAI FY2020 通期戦略②

昨年は転倒転落予測システムの「Coroban®」を販売開始し、複数の大病院への導入も実現しました。今後は認知症診断支援AIシステムの早期商品化へ向けて(開発を)加速させていきます。

AI ソリューション ライフサイエンスAI FY2020 通期戦略③

創薬は成功確率が極めて低いため、その成功確率を向上し、たゆまない創薬ターゲットを出し続ける必要があり、当社のAIドラッグディスカバリシステムはそのニーズに応えます。製薬メーカーの創薬支援のために導入を進めていきます。

AI ソリューション ライフサイエンスAI FY2020 通期戦略④

また、新型コロナウイルス感染症に対しても、治療薬を既存薬から再開発するため、既存薬を効率的に網羅し、サスティナブルに(創薬を)実施する必要があります。そのために、当社はコロナウイルスに関連する遺伝子パスウェイマップを作成し、450種類もの治療薬候補を既存薬からリストアップすることに成功しました。

国家的緊急時であるウイルスパンデミック発生時において、少しでも早く網羅的に治療薬候補をサスティナブルに創出していくシステムは今後必須であると考えています。

AIソリューション ライフサイエンスAI 開発パイプラインと実績

ライフサイエンスAI事業には複数の開発パイプラインがあり、早期に順次販売ができるよう進めていきます。

AIソリューション ビジネスインテリジェンス ヘルスケア FY2020 見通し

以上により、ビジネスインテリジェンスおよびライフサイエンスAI事業からなるAIソリューション事業は売上18.5億円、営業利益5,000万円を目指していきます。

Next Levelへの成長イメージ

AIソリューション企業として、2021年3月期を本格的に飛躍するための基盤づくりと位置付け、早期にステージ4である年間売上高300億円を達成できるよう全社一丸となって進めていきます。

以上でご説明を終了します。ご視聴ありがとうございました。

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