2020年5月12日に発表された、株式会社オールアバウト2020年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社オールアバウト 代表取締役社長 江幡哲也 氏

オールアバウトグループの新型コロナウイルスへの対応

江幡哲也氏:オールアバウト代表取締役社長の江幡です。本日は2020年3月期決算説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。資料を使いながら、2020年3月期の決算についてご報告いたしますので、よろしくお願いします。

はじめに、昨今、さまざまな企業が新型コロナウイルス感染症の影響を受けていますが、オールアバウトグループの新型コロナウイルス感染症への対応について、簡単にご紹介します。まず、社員と家族、ならびに関係者の健康を守ることを第一としながら、国、行政からいろいろな要請が出ていますが、一企業として、社会の一員として、社会的責任を果たすという意味で要請に応えることを強く進めています。この2点に重きを置き、体制を整えて進めています。

その結果、2月27日より全グループ社員を対象に、原則リモートワークを推進しています。もともとリモートワークについては、IT企業である我々はそうした体制を持っていましたので、その割合や強制力を強めていくことを推進してきました。私もこの2ヶ月ぐらいほとんどオフィスに出社せずに会社を運営しています。結果として、現時点に至るまで社員および同居しているご家族に感染の報告はありませんのでよかったと思っています。

こうした取り組みの背景を受け、本日の説明会についてもオンラインを軸に実施させていただいていることをご承知おきください。

本資料の前提となる連結対象企業構成

決算の報告に入る前に、本決算の前提となる連結対象企業の構成についてご説明します。こちらの図に各社のサービスのロゴがありますが、このような全体像で連結企業を構成しています。

オールアバウトグループのセグメント

また会計の報告セグメントですが、2つのセグメントとなります。1つは、法人からの収益を主体とするマーケティングソリューションセグメントで、もう1つが、個人からの収益を主体とするコンシューマサービスセグメントです。こちらは今期についても同じセグメントで報告させていただく予定です。

連結売上高の推移(年度)

はじめに、売上高の推移です。グラフは年度ごとですが、おかげさまで当該期においても8期連続の増収を更新しています。関係者のみなさまに御礼申し上げます。

2020年3月期の決算ハイライト①

具体的な数字ですが、2020年3月期は通期で増収増益を達成しています。売上高が156億400万円で、前年比で4.9パーセント増です。営業利益は4億3,000万円で、前年比で268.3パーセント増となり、1年前に比べて大きく改善しています。

2020年3月期の決算ハイライト②

営業利益以下、経常利益と親会社株主に帰属する純利益も記載していますが、全指標にわたり業績が好調な期となりました。

連結売上高の推移(四半期)

四半期ごとの売上高の推移です。セグメントごとに色を分けており、ピンク色のグラフがコンシューマサービスセグメントで、グレーのグラフがマーケティングソリューションセグメントとなります。

売上高の構成比では、コンシューマサービスセグメントのほうが大きいかたちで推移しているという特徴は変わっていません。また当該期においては年度合計で増収ということで、四半期の推移についてはこのような内容でした。

連結営業損益の推移(四半期)

四半期ごとの営業利益の推移です。当該期においては第3四半期、第4四半期に大きく利益を伸ばすことができました。トータルとして大幅な増益を記録できました。

とくに第4四半期は、マーケティングソリューションセグメントのグローバルマーケティングビジネスの伸びや、コンシューマサービスセグメントの「サンプル百貨店」事業の伸びといったことが寄与しています。

以上が、連結全体の数字のハイライトです。

マーケティングソリューションセグメント

ここからは、事業セグメントごとのハイライトについてご説明します。まずは、マーケティングソリューションセグメントです。スライドに記載のロゴの事業群になりますが、主にはデジタルメディアの運営によるマーケティングビジネス、広告ビジネスを中心としたセグメントになります。

2020年3月期の決算ハイライト③

マーケティングソリューションセグメントのハイライトです。全体感では、前年と比べるとコンテンツマーケティングやプログラマティック広告売上が若干減少しましたが、下期については大きく復調しています。

さらに、グローバルマーケティングの売上が下期に伸びたことから増収増益となっています。売上高が36億2,800万円、営業利益は4億9,000万円で、前年比で8.6パーセントの増加となりました。

マーケティングソリューションの売上・営業損益推移(四半期)

四半期ごとの売上高と営業利益の推移です。当該期ではとくに利益面で第3四半期、第4四半期の伸びが非常に大きく出ています。こちらについては、先ほどお伝えしたグローバルマーケティングの売上の伸びや、第3四半期以降において、中心となる総合情報サイト「All About」の利用量の復調も1つの要因となっています。

マーケティングソリューションの営業費用の明細推移(四半期)

四半期ごとの費用の推移です。下から固定費、中央のグレー部分が管理可能費で、こちらは広告宣伝や販売促進などのコントロールが利く費用です。そして上が変動費となります。当該期においては固定費の圧縮をより強化していくことに取り組み、期末に向けて成果が出てきました。

業務効率アップを中心に、さまざまなシステム化を図った期となり、利益への貢献がありました。固定費については、売上増加に伴って変化しないという構造が作れています。

マーケティングソリューションの主要トピックス

マーケティングソリューションセグメントの定性面でのトピックスを、3点ご紹介します。

マーケティングソリューションの主要トピックス①

中心となるサイト「All About」の月間総利用者数についてです。昨今、競合メディアとの取り合いで、例えば検索エンジンや外部環境によってユーザーの利用量が非常に大きく変化するのが、この分野の特色になっています。

「All About」としては、月間総利用者数が2,000万人程度で堅調に推移しており、ある程度大きなポジションを堅持しているところが、トピックスの1点目です。

マーケティングソリューションの主要トピックス②

2点目です。従前からご報告しているとおり、投資強化をしています、コンテンツマーケティングビジネスにおけるプラットフォームビジネスの進捗です。このプラットフォームビジネスの名称を「All About PrimeAd」と称しています。

構造については後ほどご説明しますが、コンテンツマーケティング市場が今後伸びるという中で、単一メディアではなく、他のメディアのビジネスも含めてコンテンツマーケティング事業をサポート・推進していくための、いわば「SaaS」ポジションを取っていく事業です。

こちらでは、参画いただく優良なコンテンツをお持ちのメディアを増やして、そのメディアの力を集結した上で、各企業広告主のコンテンツマーケティングのお手伝いをしていくポジションになります。その中で当該期では参画いただく提携メディアの数が順調に増え続け約130媒体を突破しました。

特徴的には優良なコンテンツとして、出版社とくに雑誌のデジタルメディアが重視されています。各出版社の広告売上も、紙の広告売上からデジタルメディアの売上へのシフトが進んでおり、ある大手出版社にお聞きしたところ、すでに50パーセント以上がデジタルの広告売上に移行しているという背景もあります。

弊社としては、優良なコンテンツを保持しておられ、広告収益としての重要度が上がっているという視点から、出版社のメディアの参画を促しております。その結果提携メディアの半数以上が出版社系となり、全体数の増加にも寄与しています。

また分野としては、まずは生活系のメディアから充実させていくということで、ある程度日本でのシェアをおさえました。続いてビジネス系のメディアがユーザーのニーズも広告主側のニーズも強く、そうした分野の拡張にも手を付け出した期であり、順調に進んでいます。

マーケティングソリューションの主要トピックス③

トピックスの3点目ですが、当該期に新しい取り組みとして始めたコンテンツコマース「BestOne」というサービスのご紹介です。期初から期末に向けての変化ですが、グラフのとおり売上が前年の10倍弱伸びており、単月でも黒字化できたことです。

この背景としては、利用するユーザー、セッション数の伸びになります。実際の利用者数ですが前年比で6倍弱と大きな伸びを示しています。

「BestOne」では、オールアバウトグループが持つ専門家を含めた優良コンテンツと同様に、例えば「このような商品を購入される場合は、このような選択肢がありますよ」というものをコンテンツとして紹介して、それが買える場所であるECサイトに送客しています。その送客マージンが収益になるという事業ですが、昨今の巣ごもり消費、EC需要の伸びを受けさらに利用が伸びており、この4月もさらに伸びておりまして、今のペースをそのまま1年に換算すると、取扱高で50億円くらいの規模になります。今後も成長が見込まれるため力を入れていきたいと思いますが、そのような礎ができた1年でした。

以上の3点が、マーケティングソリューションセグメントのトピックスです。

コンシューマサービスセグメント

コンシューマサービスセグメントについてです。スライドに記載のロゴのサービス群のセグメントの説明になります。

2020年3月期の決算ハイライト④

決算のハイライトですが、このセグメントで中心となるサービスは「サンプル百貨店」で、グループ会社のオールアバウトライフマーケティングが行なっている主力事業です。

「サンプル百貨店」は、前年度の事業運営において商品のカテゴリーマネジメント等、いくつか運用上の課題を内包していましたが、それを順調に改善することができ、前年比で大きく増益となりました。

結果として売上高は120億円を超え、前年比で6.2パーセント伸びました。営業利益も2億6,900万円で、前年比480.4パーセント増と大きく伸びています。

市場成長率を上回る「サンプル百貨店」

「サンプル百貨店」が身を置いている市場は、eコマースなど、商取引のコマース市場です。スライドの下段は、経済産業省が発表している国内eコマース市場の伸びの推定です。

年度で8.6パーセントの伸びと言われていますが、昨年度の「サンプル百貨店」の伸び率は対前値15パーセントで、市場平均を大きく超えることができました。こちらの売上高は「サンプル百貨店」事業全体ではなく、その中でも主力の有料サンプリング「ちょっプル」の取扱高です。

4月、5月初旬の週次ベースの数字を見ると、昨今の新型コロナウイルス感染症による巣ごもり消費の影響もあると思いますが、売上の伸びが強くなっています。世の中全体で既存の流通のEC転化率が日本はまだまだ低いところがあり、いろいろな産業でそのような部分が広がっていくと予見しており、ますます力を入れていきたい事業です。

コンシューマサービスの売上・営業損益推移(四半期)

コンシューマサービスセグメントの売上と四半期の営業利益の推移です。利益のところで大幅に改善しており、通期にわたって利益向上をしっかり作れるようになってきています。今期においてもこの部分を堅持しながら、流通総額を増やしていきます。

コンシューマサービスの営業費用の明細推移(四半期)

四半期ごとの費用の推移です。下が固定費になりますが、売上拡大に伴って固定費が伸びず、また当該期の第3四半期、第4四半期に向けて積極的なBPRによるコスト構造改革にも取り組みました。

例えば、eコマースサイトではお客さま対応のコールセンターがありますが、これを有人型からチャットボット型に移行するなどして大幅に人数を削減するといった業務改善により、固定費を一段下げながら売上を伸ばしている状況です。

またここ数年は、業界全体で物流費の値上げが課題になっていますが、当該期においては価格管理、またカテゴリーマネジメント等の改善によって吸収し、変動費率を減少させることができました。

マーケット環境としては伸びますので、適時、販売促進施策の実施によって広告宣伝費や販売促進費を投入しており若干増加しています。このような構造によりトータルで利益構造を伸ばすことができた期だったということです。

コンシューマサービスの主要トピックス

コンシューマサービスセグメントの定性的なトピックスを2点、ご紹介します。

コンシューマサービスの主要トピックス①

1点目ですが、決算ハイライトでもご紹介したとおり、「サンプル百貨店」事業の収益効率の改善を継続できました。前期から大きな課題としてご報告していましたが、3つの取り組みにより構造を強化できました。

まず1つ目です。「サンプル百貨店」の中でも、扱う商品群の種類やチャネル政策によって粗利率が異なるポートフォリオで事業が組まれています。粗利ミックスと記載していますが、とくに粗利率が高い商材の割合を増やす構造によって最適化を行いながら、利益向上に寄与しています。

2つ目が配送費についてですが、地域別の費用も配送費だけではなく、物流全般で工夫し、適切にコントロールすることにより、利益効率の改善を図ることができました。

3つ目です。我々はいろいろな商品を取り扱っていますが、商品の在庫管理や見せ方など、さまざまなオペレーションが発生している中で、価格の決定基準を最適化することが非常に重要であり、その仕組みについてもトライして一定の効果が出ました。

これらによって、課題だった「サンプル百貨店」のオペレーションと収益効率が改善し、前年3月比になりますが、粗利率ベースで41.1パーセント増加できたことが大きな成果でした。

今期も同じようなオペレーションが継続できますので、ますます強化していきます。

コンシューマサービスの主要トピックス②

2点目も「サンプル百貨店」になりますが、オールアバウトグループと日本テレビ放送網との資本業務提携に伴い、テレビとeコマースを組み合わせた事業へのトライを進めています。当該期では、日本テレビのネットワーク局であるテレビ新潟との取り組みで成功事例を作ることができました。

もともとのねらいは、テレビ放送でいろいろなものを紹介する際にどうしてもフローで流れてしまうところを、ECサイト側への会員化を促進することでストックの顧客資源にして、その顧客資源から生み出される収益を放送外収益として継続的に大きくしていくという組み合わせができるのではないかということです。 いろいろなやり方を試した結果、テレビ新潟では「とくとくTeNYサンプル百貨店」というかたちで成果を収めることができました。テレビでの放送の仕方や、「サンプル百貨店」が培ってきたeコマースの運用、システム的なプラットフォームを融合することにより成果が出ています。

これを糧に、4月からは静岡第一テレビでも同じ取り組みを行ない、今後は横展開して全体的なボリュームアップにつなげていきます。

以上、全体的な収益のハイライト、2つのセグメントにおけるハイライトをご紹介しました。

生活者の想い

ここまでの内容を受け、今後どう進めていくのかをお話しします。まず、大きな視点ですが、オールアバウトグループが掲げている世の中の生活者のみなさまに提供していきたい価値、サポートしたいポイントがあります。

それが、スライドの3点です。生活者のみなさまの想いをお聞きすると、「不安なく」「賢く」、そして「自分らしく」生きていきたいといった大きなニーズがあることを把握しており、創業以来、この3点の実現をサポートする事業を進めています。

昨今の新型コロナウイルス感染症の問題で、「不安なく」の部分がより大きくなってきています。生活者個人としても、それを支える社会の仕組みも、今回をきっかけに大きく変わらなくてはいけない時期を迎えています。

東日本大震災の時にお伝えしたことと同じですが、「不安なく」については、その後も非常に大きなニーズが高まったため、今回も重要視している部分です。そのような「不安なく」「賢く」「自分らしく」というものを、生活者のみなさまが自分の人生で実現していくためには、それぞれに対応した力を身に付ける必要があると思っています。

3つの自立力をサポートするビジネス機会

スライド左側の三角形で「人生の不安を取り除くチカラ」と記載していますが、このような構造で基盤となる部分が、不安を取り除くところになります。

我々の事業は、生活者のみなさまのこのようなニーズに対して、お役に立てることが非常に多いと考えています。今まではこの3つの分野において、例えば「All About」という情報サイトでは、信頼できる、真に役立つ情報を提供してきました。またeコマース系であれば、「サンプル百貨店」が人生を賢く生きるための具体的なお手伝いをしています。

このように、いろいろな事業を展開していますが、昨今の状況を受け、さらに今後を考えたときには、一番ベースの部分にある「不安を取り除くチカラ」のところで、例えばお金まわりのこと、健康まわりのこと、自己実現に必要なキャリアまわりのことであったり、また自分のホームポジションとしての人間関係や、家族、コミュニティといっ人生の基盤となる部分が重要視される度合いが高まると考えています。オールアバウトグループでは、この部分を総称して「ライフアセットマネジメント領域」と呼んでいます。

ライフアセットマネジメント領域は、生活者のみなさまのニーズの高まりはもちろん、大きな社会システムの変更が余儀なくされる領域でもあり、IT企業であるオールアバウトグループにとっては社会的なイノベーションに際して大きなビジネスチャンスを得られる部分でもあるため、ビジョンにも合致しており、ビジネスチャンスも大きいと考えております。

また、我々が持ついろいろな経営資源が役に立ち、勝ち筋があるという点も重要視するポイントとして付け加えていきます。

今後の事業展開イメージ

デジタルメディア領域、コマース領域という今の2本柱の部分は「コア」と記載していますが、既存のコア事業の2本柱に加え、今後はライフアセットマネジメント領域、具体的にはヘルスケア、マネー、キャリア、恋愛・結婚、そしてすでにオールアバウトライフワークスというグループ会社でトライしている生涯学習があります。このような分野において、新しい事業の開発やチャレンジをしていきます。

もう1つの視点として、国内市場の限界に対してグローバル展開も見ていきますので、我々が持っている強みの重なりの部分でグローバルの需要を取り込んでいくことを進めていきます。

コンテンツマーケティングの市場規模

全体感としては、さきほど述べたような中期の方向性を掲げており、その中でいくつか具体的な部分をご紹介します。マーケティングソリューションセグメントの分野で1点、コンシューマサービスセグメントの分野で1点、それぞれご報告します。

まずはマーケティングソリューションセグメントの分野ですが、前段のハイライトでもご説明したとおり、従前からご報告しているコンテンツマーケティングの市場における事業強化です。

コンテンツマーケティングは、名前のとおりデジタル上でコンテンツを生成して、そのコンテンツの力でマーケティング効果を高めていくビジネス市場になりますが、これが日本でも大きな市場に育っています。またアメリカでも、今、一番注力すべきマーケティングの分野と言われており、伸びが期待されています。

例えば、コンテンツマーケティングの代表例であるデジタルメディア上でのタイアップ型広告はオールアバウトグループでももっとも歴史があり、得意としている部分で、我々の独自推計ですが、既存の市場だけでも1,000億円の市場です。また、そのようなコンテンツマーケティングに取り組んでいるメディアのアドテクノロジーによるネイティブアドネットワーク市場も2,000億円です。

そして、各企業が自社でサイトを立ち上げ、オウンドメディアというかたちで顧客との接点を強化していくところもマーケティング効果を高めていく市場ですが、このコンテンツ制作支援市場も3,000億円程度はあると言われており、既存でも合計6,000億円の市場規模となっています。

我々の一番の強みが発揮できるマーケットであるわけですが、ここに対して、単一メディアだけではなく、違う方法でもっと大きく取っていけないか、というところが1つのトライになります。

マーケティングソリューション事業の拡大戦略

具体的に推進しているのが、コンテンツマーケティングプラットフォームビジネス「PrimeAd」です。スライドのとおり、「All About」を中心とした自社メディアにおけるビジネスは引き続き強化していきますが、それにアドオンするかたちで、自社メディアとはまったく異なるプラットフォームポジションでビジネスを展開していきます。

当該期においても準備が進んでおり、先ほどご報告のとおり、参画メディアが強化されてきています。こちらでお客さまになるのは、広告主、広告代理店のみなさまです。また、メディア企業自身もお客さまになるため、各ステークホルダーのみなさまがコンテンツマーケティングをビジネスとして推進するのに必要な共通のビジネスマッチングプラットフォームへの進化に向けて、この夏に正式なリリースを予定しています。

ビジネスマッチングプラットフォームへの進化

概念図ですが、左側が買い手、右側が売り手です。この場合、売り手はメディア企業になり、いろいろなソリューションを提供します。一方で、買い手としては広告主や広告代理店のみなさま、またメディア企業自身が買い手になるケースもあります。

まず、「このようなプロモーションをやりたい」というオファーを我々のビジネスマッチングプラットフォームのダッシュボード上で意思表明していただくと、そのダッシュボードを通じて各メディア企業からいろいろな提案が届きます。そこでマッチングした結果、事業が推進されやすくなるというかたちです。

具体的なソリューションとしては、先ほどの市場の説明のとおりですが、デジタルメディア上でのタイアップ広告というのが1つのソリューションになります。これを、複数の媒体にまたがって一度にコントロールできるということです。

もう1つが、多くのメディアが多くのユーザーと接点を持っていますので、その接点を活用した安心できるアドネットワーク、つまり良質なコンテンツのアドネットワークです。

また、広告主のみなさまが作るオウンドメディアにおけるコンテンツ制作支援をメディア企業などが行なうといった制作市場のマッチングということで、この3つから始める予定です。

PrimeAdでのビジネスマッチングイメージ

こちらがフローになります。左上から、広告主のみなさまがダッシュボードを通じてオファーを入れると、各メディア企業から具体的なクリエイティブ案やコミュニケーションプランの提案が届きます。そこで選択して実行します。

その後、今までは結果が会社ごとにバラバラでレポーティングされていたものを1つの統一指標で、トータルでレポーティングされるという流れになります。広告主側のメリットとしては、なにより質を担保した豊富なクリエイティブを、非常に多様化したかたちで手に入れられるということです。また、バラバラだったものを統一化したオペレーション、広告指標にすることで効率化を図れます。

メディア企業のメリットですが、このビジネスマッチングプラットフォームから新しい収益機会を得られますので、そこが収益向上に直結します。このような仕組みを自社で全部用意すると、システム開発費や運用する人材がかなり必要ですが、そうした固定費を削減でき、また最新のアドテクノロジーの動向にも準拠できるメリットもあります。非常に大きな市場のため、これを強化していきます。

予定では、この夏の正式リリースを考えています。この1年から2年は、ここに向けたPoCを進めており、ステークホルダーのみなさまから非常に高い評価を得ているため、アクセルを踏みたいと考えています。

NTTドコモとの共同事業について

コンシューマサービスセグメントの次の打ち手をご紹介します。まずは、先ほどからお伝えしているとおり、環境的にeコマース市場が伸びますので、オールアバウトグループとしても非常に強化していきたいと考えています。

具体的な強化策ですが、既存の「サンプル百貨店」事業をそのまま伸ばし続けながら、アドオンで大きなことが決定しています。NTTドコモが運営されている総合通販サイト「dショッピング」の事業全体について、7月からオールアバウトライフマーケティングが共同で企画運営する取り組みが決定しています。これは決定したタイミングですでに開示しています。

オールアバウトライフマーケティングは、「サンプル百貨店」を中心に独自のサンプリングサイトの運営ノウハウやシステムを持ち、またさまざまな商品をナショナルブランド、もしくは通販専業メーカーなど、いろいろなところから調達してくる力を持っています。

NTTドコモの強みとしては、ご存知のとおり国内最大級の通信キャリアとしての顧客基盤を持っており、dポイントを活用したビジネスのノウハウも持っています。

この両者の強みを生かしながら、オールアバウトライフマーケティングが運営主体として「dショッピング」の全てを担わせていただくということで、こちらの収益が今までの「サンプル百貨店」の収益に上乗せされていくというのが、中期的な取り組みになります。

これにより、我々は自社サイトのみならず、NTTドコモの基盤を活用した新たな顧客層に向けたコマース事業も収益として立てられるため、相乗効果も含めて非常に楽しみな取り組みが待っています。現在はそこに向けたシステム開発が進んでおり、この夏にスタートします。

以上が、当該期の決算のハイライト、セグメントのハイライト、ならびに直近の未来の方向性についてのご説明になります。

新型コロナウイルスによる事業環境の変化

今期の業績見通しの方針についてご紹介します。まず大前提として、我々のようなデジタル系の事業を取り巻く社会全体の環境が、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けています。

短期的には外出自粛で、その後もおそらく抑制されますので、デジタルメディアやeコマースの生活者のみなさまの利用については継続的に増加していくと考えています。また法人側でも、各企業の広告出稿、デジタルマーケティングの需要は、短期的には少し抑える方向に行くと見ています。一部、増加する業種もあると思いますが、全体感としては非常に不透明な部分があります。

中期的で見ると、今回の出来事を契機に、多くの業種、業態、企業のデジタルトランスフォーメーション、いわゆる「DX」が大きく進んでいくと考えています。それによって、業種を問わずオンラインサービスの需要の拡大が見込まれます。そのなかでもeコマース市場は、このような生活様式の変化に直結する部分があるため増えていきます。その部分も含めての「ポストコロナ」「ウィズコロナ」だと考えています。

新しい生活様式や企業の活動様式に沿っていろいろなイノベーションが進みますので、我々のようなプレイヤーは大きなチャンスです。短期的にはいろいろな影響を受けますが、中期的には大きなチャンスが待っているという前提での我々の事業についての見立てですが、次のスライドに直近の影響ということでまとめています。

2020年度 新型コロナウイルスの業績影響と対応①

マーケティングソリューションセグメントにおける直近の影響としては、先ほどお伝えしたように、企業全体の広告需要は短期的には不透明感があるため、オフライン系は大きな影響を受けていますが、オンラインについても同様に影響を受ける部分があります。

これに対して、我々はやはりオンラインでのマーケティングニーズが高いお客さまによりシフト、フォーカスして営業を強化したり、またオンラインで完結するようなワークフローの確立等で効率化を図っていくなどして、商談機会を逃さないようにしていきます。

また、生活者側はインターネット利用が増えますが、広告需要は相対的に不透明な部分があります。プログラマティック広告と言われている業界全体で流れている広告量や単価の推移は不透明感があります。我々としては、この環境下でも生活者のみなさまに役立つコンテンツの配信を、手綱を緩めず進めていきます。

収益側では、中長期的に伸びるであろうコンテンツマーケティングビジネスの準備を中心に粛々と進めていくかたちになります。eコマースについては、市場環境的には伸びる部分もあります。コンシューマサービスセグメントの「サンプル百貨店」もそうですが、マーケティングソリューションセグメントでトライしているコンテンツコマース「BestOne」にとってもフォローウインドですので、さらに強化していきます。

インバウンドを中心とした海外向けの事業であるグローバルマーケティング事業ですが、インバウンドは人の移動が制限されるため、そこの需要は難しいです。しかし、「日本のコンテンツを楽しみたい」「日本に行ってみたい」と考える外国人はたくさんいます。インバウンド直結ではない部分がありますが、日本食のレシピや日本文化、またいずれ来る訪日の機会においてコンテンツの需要は高いため、引き続きそのあたりの強化を進めていきます。

2020年度 新型コロナウイルスの業績影響と対応②

コンシューマサービスセグメントにおいては、基本的には巣ごもりの環境で需要が増えますので、しっかりとオペレーションしながら、我々の一番の強みである有料サンプリングの拡充において、商品の流通を支援する姿勢をより強めていきます。また、一般流通の中で未利用で廃棄せざるを得ない食品の在庫も増えていますので、その流通のサポートを強化していきます。

コンシューマサービスセグメントの「サンプル百貨店」では、年4回、ユーザーを集めて、メーカーとマッチングする非常に大規模なリアルイベント「RSP(リアル・サンプリング・プロモーション)」を展開しています。昨今の事情でリアルイベントは開催できないため、収益に影響が出ます。

これに際して、2月末ぐらいからオンラインイベントへ移行できないかということで動いています。まず、今年の1回目、2回目はオンラインで実施する準備を進めており、企業や参加者からも好評をいただいていますので、それを実現していきます。ただし、リアルイベントに比べて収益性は落ちるため、若干の影響は受けます。

また、当該セグメントのオールアバウトライフワークスが展開している生涯学習事業のプラットフォーム「楽習フォーラム」についてです。これは自宅に教室を作って、ライセンスを取った先生方が教室ビジネスを行なう基盤になっており、全国で非常に多くの方にご利用いただいていますが、やはりリアルでの教室はいったん休止しなければならないため、大きな影響を受ける事業です。

これをいい機会としてオンラインレッスンへチャレンジするということで、オンラインレッスンプラットフォームになれるよう事業変革を進めていきますが、収益への影響は出てきます。

【業績予想】2021年3月期 業績予想/配当方針

以上を整理すると、オールアバウトグループの事業の状況としては「サンプル百貨店」を中心としたeコマース系事業は、さらに成長すると考えており、7月からはそこにアドオンするかたちで「dショッピング」事業全体の共同運営も始まります。

一方、「All About」を中心としたデジタルメディア系事業の収益については、先ほどからお伝えしているとおり、広告市場の不透明感があるため、中期的にはコンテンツマーケティングプラットフォームビジネスでの成長にチャレンジします。そこへの投資は継続して緩めないという前提です。

このような状況から、グループ全体で増収が見込めると考えています。戦略を大きく変更することなく、この変化に対応して、強めるところはより強めながら進んでいきます。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響がいつ終わるのか、どうなるのかは誰にもわかりません。当然、経済面でもその不透明さは影響を受けている部分が多いため、こうした状況を踏まえ、現時点では業績予測について合理的な算定が難しいと判断して、業績予測は未定とします。

配当についてですが、我々は成長ステージにある会社のため、安定配当という施策をとっていません。毎期、状況に応じて配当を決定していますが、今期も同じ状況ですので、現時点では未定とします。いずれにせよ、算定可能となった段階で速やかに公表します。

まずは何より、新型コロナウイルス感染症の影響が、生活者のみなさま、また企業活動、国、世界中の人々にとって、1日でも早くよい方向に変化することを祈っています。そのなかで、オールアバウトグループも役に立てる部分はがんばっていきますので、ぜひ株主のみなさま、投資家のみなさまにおかれましては、引き続きのご支援をお願いして今回の発表の締めといたします。ご拝聴いただきまして、誠にありがとうございました。

以上、2019年度のオールアバウトグループの決算についてご報告いたしました。

質疑応答:マーケティングソリューション部門の今期の見通し

質問1:マーケティングソリューション部門の今期見通しについてお聞かせください。一時的に広告出稿は抑制されるものの、利用量の復調の流れで増収を見込むといったところでしょうか。

回答1:当社運営メディアの利用については足元では増加傾向が見られるものの、広告出稿の需要には減退感があり、プラス・マイナスの両要素がありますが、あわせて考えると、現時点では、全般的には今期はマイナス影響があると考えています。

質疑応答:巣ごもり消費がもたらすコンシューマサービス部門への影響

質問2:コンシューマサービス部門は、巣ごもり消費の拡大を追い風に増収が期待できるといったところでしょうか。また、年4回のリアルイベントはオンライン化である程度はカバー可能ということでしょうか。

回答2:「サンプル百貨店」について、足元では巣ごもり消費や未利用食品のソリューションとしての利用増加があり、このような状況が続く場合には継続的な利用拡大があると見ています。リアルイベントの中止はオンラインイベントによってある程度のカバーができています。

質疑応答:「サンプル百貨店」の粗利改善効果

質問3:「サンプル百貨店」は粗利率改善が効き、前期は営業益を押し上げました。今期もこの改善効果が続き、増益歩調ではないかと思いますが、いかがでしょうか。コールセンターの人員減など固定費削減も寄与するかと思います。

回答3:粗利率や固定費コントロールについては、前期の終わりにかけて改善効果が顕著に出てきており、今期は前期以上の利益効率を上げられると期待しています。

質疑応答:「dショッピング」の開始時期

質問4:「dショッピング」は予定どおり7月開始でしょうか。収益面での寄与度はどの程度を見込んでいるのでしょうか。

回答4:現在のところ、予定どおり、7月からの開始に向けて準備を進めているところです。本プロジェクトは開始当初より当社グループに売上・利益の上乗せを見込めるものではありますが、今期については年度途中からの追加ということもあり、当社グループ全体の連結業績に与える影響はそこまで大きくないと見ています。重要な進捗がありましたら、あらためてご報告します。

質疑応答:今期の「PrimeAd」の収益寄与度

質問5:「PrimeAd」の今期における収益寄与度はどの程度を見込んでいるのでしょうか。

回答5:今期は啓蒙期として位置づけており、当社グループ全体における売上への貢献度は軽微であり、本プロジェクト単体としては赤字計画を組んでいます。

※質疑応答部分は、本記事の配信後に投資家から寄せられた質問とその回答を、企業から提供を受けて掲載しています。

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