オーディオブックは娯楽用には便利だが

便利なオーディオブックですが、読んだ時と聴いた時では内容の理解度は同じなのか、という疑問も当然出てきます。

それについて英TIME誌のある記事(※3)では、ブルームズバーグ大学のベス・ロゴスキー教育学准教授の研究から、電子書籍で読む時と、オーディオブックで聴くのでは内容理解度にほぼ差はない事がわかったと引用しています。

しかし過去の研究では、スクリーン上で読むことは印刷書籍で読むことよりも理解度が劣るとの結果がでていることから、もしこの研究が印刷書籍で読んだ場合と比べていたら、オーディオブックは印刷書籍よりも理解度は劣っていたのでは?と同誌は指摘しています。

なぜ印刷書籍は電子書籍よりも理解度が上がるのか、同記事では以下のように述べています。

・今読んでいる場所が、本全体のどこなのかを知ることはストーリーラインを理解しやすくする(バージニア大学、ダニエル・ウィリンガム心理学教授)
・印刷書籍では文章がページ上で場所が固定されているので、電子書籍のスクリーン上の文章よりも忘れにくいことも他の研究で分かっている

電子書籍やオーディオブックでは、印刷書籍が持つこのような「空間的認知の特性がない」という点でも理解度が劣ってしまっている可能性が高いようです。

他にも、ジェームズマディソン大学のデビッド・ダニエル心理学教授と彼の研究グループによる研究では、内容理解度のテストを行った結果、紙面を読んだ学生よりも同じ内容をポッドキャストで聴いた学生は、平均28%もスコアが低くかったということです。

ダニエル教授は、「人によっては、または上手く聞くことを練習することで、読むことと同様レベルに理解出来るかもしれない」とも話しています。

なによりも、オーディオブックをマルチタスクしながら利用しがちであることが、理解度や記憶に違いがでてしまう要素の1つとなっているようです。何かをしながら勉強用の本を聴くというよりも、時間を有効に使いながら娯楽用に利用することが向いているようだと、同誌はまとめています。

寝る前に目をつぶりながら静かにオーディオブックで小説を聴き、声優の声のトーンから場面を想像してみるのも、画像とは違う楽しみがあるかもしれません。ぜひオーディオブックを上手に生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

【参考】
(※1)「オーディオブック市場2024年に260億円規模に」日本能率協会総合研究所
(※2)『公共図書館システム「ELCIELO」が「audiobook.jp」と連携し、本を耳で聴く「オーディオブック配信サービス」を提供開始へ』京セラコミュニケーションシステム
(※3)“Are Audiobooks As Good For You As Reading? Here’s What Experts Say”TIME

美紀 ブライト