新型コロナウイルス感染症に関連して、耳慣れなかった用語がよく用いられるようになりました。たとえば「ロックダウン」「オーバーシュート」「クラスター」など。それぞれ「都市封鎖」「感染爆発」「集団感染」といった意味だとされます。

これらの言葉は連日の会見や報道でしきりと使われていますが、当初「どういう意味なんだろう?」と思った方も多いのではないでしょうか。ここでは、なぜこうしたカタカナ語が使われるのか、ビジネスなどでもどうカタカナ語と付き合っていくべきなのか、ネット上の意見なども紹介しつつ見ていきたいと思います。

河野防衛相のツイートで波紋

この件に関して、たとえば河野防衛相は先日、ツイッターに次のようなツイートを投稿し、話題を呼びました。

「クラスター 集団感染
オーバーシュート 感染爆発
ロックダウン 都市封鎖
ではダメなのか。なんでカタカナ?」

6.8万リツイート(RT)のうえ24.8万件の「いいね」が押されるなど大きな反響を呼び、さまざまな意見が飛び交っています。このツイートに賛同する声には、このようなものがありました。

「カタカナよりも漢字のほうがわかりやすい!」
「日本語で言うことができるのになぜカタカナでいうのかわからない」
「意識高い人はカタカナ使いたがりだからなあ」

一方で、カタカナが使われていることに理解を示したり、その理由について考察したりする人も多く見られました。

「『クラスター』と『集団感染』、『ロックダウン』と『都市封鎖』では微妙に意味が異なる」
「耳慣れないカタカナ語を用いることで注目されて普段の言葉から差別化されるからではないか」
「カタカナだとよくわかんないから、変に不安を煽らないからなのかな」

新型コロナウイルスに関するこれらの言葉が、どんな意図でカタカナ語であるのか、正確なことはわかりませんが、確かに文字を見ただけでは意味をイメージしにくいかもしれません。

このように、普段われわれが生活していても意味がわかりそうでわからないカタカナ語は多くあるのではないでしょうか。

説明できる? よく見かけるカタカナ語

よく見かけるけれど、説明できないかも、というカタカナ語を集めてみました。

<よく見るのによくわからない言葉>

「リテラシー」……特定の分野に関する知見や活用、判断する能力
「リベラル」……自由な、自由主義
「イデオロギー」……社会集団などにおいて思想や行動の仕方を制約する意識の体系
「トレンド」……傾向、流行
「オンデマンド」……注文に応じて、商品やサービスを提供すること

ビジネス語もカタカナ語が多く、その賛否もよく話題になっています。わかったふりはしていませんか?

<ビジネス語>

「コンセンサス」……複数の人の合意、意見の一致
「リソース」……経営資源、経営資産
「ベネフィット」……利益、恩恵
「アジェンダ」……議題、行動計画
「ボトルネック」……制約、物事のうまくいかない部分

いかがでしょうか。これらは、よく使われるカタカナ語の中のほんの一部です。

なぜカタカナ語を使うのか

それにしても、どうしてわざわざ日本語で言えることをカタカナ語で言うのでしょうか。コンセンサスが合意のことであるなら、「合意」と言えばいいような気がしますよね。冒頭の河野防衛相のツイートに対する反応でも、なぜカタカナ語を使うのかについて言及したツイートは多くみられました。

「カタカナ語を使うのは格好つけたいだけでしょ」
「日本語で説明できるようでも実はニュアンスは異なる」
「カタカナ語は方言みたいなもの」

カタカナ語を使うと、やはり「賢そう」な印象があるのでしょうか。それに加えて、「実は日本語には置き換えにくい」という言葉もあります。会話をしている両者がその意味をきちんとわかっているのであれば、カタカナ語を使うのも問題ないのかもしれません。

賢いカタカナ語の使い方

実際に、「イメージする」「スマートですね」など、一般的に馴染んでいて誰でもわかるようなカタカナ語も多くあります。まずは相手に伝わるのかどうかを大切にして、言葉を選ぶことが重要なのは言うまでもありません。

医療や政策の話を広く一般に伝えるという場面はもちろんですが、ビジネスなどの場面でも、誤解を避けるために、「なんとなく」でカタカナ語を使うのはやめたほうがいいのかもしれません。よく言われていることでもありますが、「やさしい言葉で伝えられる人」こそ賢い人だという意見もあるのですから。

もちろん、聞き手としても、なるべく多くの言葉の知識を得ていこうとする姿勢も大切なのは言うまでもありません。

クロスメディア・パブリッシング