2020年4月16日に行われた、株式会社サーバーワークス2020年2月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社サーバーワークス 代表取締役社長 大石良 氏
2020年2月期決算説明会
大石良氏:みなさま、こんにちは。サーバーワークスの大石です。私どもは、この2月末をもって、上場後初めての決算を迎えさせていただきました。今回、初めての決算説明会となるのですが、本来であれば、ぜひみなさまと直接お目にかかって対話させていただきたいという気持ちを持っていました。
しかし、このような状況ですので、オンラインでの対話となることを、ぜひご理解いただければと考えています。どうぞよろしくお願いします。
本日の決算説明の資料は、ホームページからダウンロードいただけるものを準備しているのですが、オンラインということで、初めて私どものことを知っていただくという投資家、株主のみなさまもいらっしゃると思いますので、決算説明資料の内容に加え、私どもの会社概要やAmazonのAWSとは何かという説明も交えながら、定性的な説明も含め、会社のことや、この状況で私たちがどう成長しようとしているのかについても説明させていただければと考えています。
2020年2月期 業績ハイライト
まずは業績ハイライトです。すでにご案内のとおり、売上高68億1,100万円、営業利益4億1,700万円で着地しています。それぞれ前期比で152パーセント、124パーセントということで、おかげさまで先期はきっちりと成長できたのではないかと考えています。こちらの数字の細かい内容については、のちほど説明させていただければと考えています。
大学向け合否案内サービス
あらためて、サーバーワークスという会社についてです。AWSというAmazonのクラウドを専門で取り扱っている会社なのですが、そもそも私どもがなぜAWSを使い始めたのかをご説明します。
また、AWSを使うとどのようなことができるのかというご質問を、投資家や株主の方から非常に多くいただきますので、このアウトラインについて説明させていただければと思います。
サーバーワークスという会社は2000年に創業した会社です。AmazonがAWSを始めたのが2006年ですので、それまでの6年間は少し違う事業を行なっていたのですが、何をしていたのかというと「大学向け合否案内サービス」を展開していました。
昔の合格発表
私ぐらいの年代から上の方になると、大学の合格発表はおそらくこのようなイメージではないかと思います。学内に一覧表が貼られ、みんなが見に行くというスタイルだったと思うのですが、今の大学の合格発表は、もう全部スマホで見られるのです。
ところが、大学はこのようなシステムを1年に1回しか使わないため、自分たちでシステムを作るのではなく、ほかの会社に頼むというニーズがあったわけです。サーバーワークスも、そのようなビジネスを展開していました。
課題
しかし、このサービスのシステムには課題がありました。大学の合格発表へのアクセスは2月の特定の日の朝10時から10時15分に集中するのですが、この15分のためだけに、サーバーと呼ばれるコンピュータが200台ぐらい必要になります。
過去、私たちはそのような投資も行なっていましたが、コストはこの15分のピークに合わせて必要になってきます。つまり、それ以外の部分は私たちにとっては全部ムダだったのです。
2007年 AWSのテスト利用を開始
これはなんとかしなければいけないということで、自分たちで解決策を探していると、「どうもあのAmazonが、仮想のコンピュータを1時間10円でインターネット経由で貸してくれるらしい」ということを聞きつけ、実際に触ってみました。
私も触ってみたのですが、これはすごいと思いました。本当にITの世界がまるっきり変わってしまうということがわかり、その翌年にあることを始めました。
2008年 社内サーバー購入禁止令
それが、「社内サーバー購入禁止令」です。当社はエンジニア比率が70パーセントくらいの会社なのですが、2008年から1台もサーバーを買っておらず、全部AWSを使っています。社内のシステムやサービスをAmazonのクラウドに置いてみて、本当にサービスを継続できるのか、事業を維持できるのか試してみようということで進めてきました。
結論をお伝えすると、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災といった危機を乗り越えて、おかげさまで20期連続の増収を達成できています。この実験は成功だったのではないかと結論付けています。
2009年 AWS専業インテグレーター に転換
そして、いよいよこれからの新規事業はAWS一本ということで、2009年から専業のクラウドインテグレーターに転換しました。しかし、実は最初は非常に苦労しました。2009年、2010年、2011年あたりは、その時期に「クラウドはいかがですか? AWSはいかがですか?」といっても、見向きもされなかったのです。その事情が一変したのが、次の事例になります。
東日本大震災当時の様子
これは震災直後のTwitterの履歴を拾ってきたものなのですが、日本赤十字社にアクセスできない、接続できないといった、悲鳴にも似たつぶやきが非常にたくさんあったのです。
サイトダウンの理由
何が起きていたのかをご説明します。震災直後、被災された方は「どこに行けば救急医療を受けられるのか」、また被災されていない方は「どこに行けば義援金を払えるのか」「どこでボランティアができるのか」といった情報を求めて、日本赤十字社に一斉にアクセスが集中してしまったのです。これでサイトがダウンしてしまったわけです。
日本赤十字社にAWSのサービスを提供(1)
そこで私たちは、ボランティアでAWSのサービスを提供させていただきました。震災前は普通のサーバーだったのですが、ここにアクセスが集中してダウンしてしまったわけです。
日本赤十字社にAWSのサービスを提供(2)
私たちが震災直後にかけつけて、AWSが提供している仮想サーバーに日本赤十字社のホームページを移しました。また、AWSではコンテンツのコピーを作るキャッシュサーバーと呼ばれるものを全世界に持っているのですが、私たちは、日本赤十字社のホームページの中身が自動的にキャッシュサーバーにコピーされる仕組みを30分で導入しました。
一般のユーザーは日本赤十字社のサイトにアクセスしているように見えるのですが、実際のコンテンツはキャッシュサーバーから返ってきます。これによって、アクセス集中を防いだのです。
このあと、実際にテレビ、ラジオ、インターネットなど、いろいろなところで日本赤十字社のアドレスが掲載されましたが、一度もサイトがダウンすることはありませんでした。
義援金管理システム
この仕組みを30分で構築したこともあり、「そんなことができるんだったら、義援金管理システムも作ってくれないか」とのオーダーがありました。日本赤十字社は、インターネットを使って何千億円というお金を集める仕組みを持っていなかったため、急遽当社に白羽の矢が立ったわけです。
義援金の振込料は本当にすごい量で、当時は銀行のシステムがトラブルを起こしてしまうくらいの取引量があるのはわかっていました。AWSでは仮想マシンのスペックを選べるようになっているのですが、当時最上位のマシンを二十数台用意し、それを束ねるロードバランサーという負荷分散装置や、1日に500万通を送れるメールサーバー、そしてデータベースを準備しました。
万が一でも義援金の振込情報が吹き飛んだら、本当に社会問題になってしまいます。しかしAWSは物理的に20キロメートル以上離れている2拠点間で、AWSの内容を自動的に同期して、自動的にバックアップを行なう仕組みがあり、5分以内であればミスを起こしても元に戻せるデータベースを持っています。
このような仕組みを使って、私たちはこのインフラを2時間で作り、48時間でアプリケーション化して日本赤十字社に届けたのです。
義援金 受付開始まで
3月14日に初めて日本赤十字社に伺ったのですが、15日にはサイトを復旧して、17日には義援金の募集が始まりました。義援金の募集は、震災が起きてから2年半にわたって行なわれていたのですが、その間に義援金の全額3,200億円が、私たちがAWSで作ったシステムで集められ、そして被災された方々に届けられました。
日本赤十字社様事例(日経SYSTEMS様 2011年6月号)
おかげさまで、この事例がメディア等を通じて広く知られるようになり、「AWSは、このような災害時もしっかりと機能するんだ」ということが認知されました。
780社を超えるAWS導入実績(2020年3月末現在)
AWSを使おうと思ったときに、サーバーワークスのような専門のパートナーがいるということが広く知られるようになり、現在は780社を超えるエンタープライズと呼ばれる中堅、大企業のみなさまが、サーバーワークスと一緒にAWSを使っていこうと判断してくださっています。
実は、最初は日本赤十字社の事例をみなさまに話していませんでした。するとある日、日本赤十字社に「大石さん、なぜあの事例を話さないのか」と問われました。そこで「ボランティアでやったことを自慢することもないじゃないですか」と伝えたところ、「事例を話して儲けて、義援金を納めてください」と言われ、スライドにあるようなお客さまからいただいた売上の一部を、義援金として寄付させていただきました。
日本赤十字社の考えとしては、震災や災害は必ずまた起きるため、それが起きたときにすぐ活動できるよう、日本赤十字社の活動にぜひ寄付してほしいということで、当社の利益の一部を日本赤十字社の活動資金として、毎年寄付し続けています。
市場環境:パブリッククラウドについて
肝心のAWSについてですが、なんとなくAmazonという会社をご存知でも、AWSについてはあまり詳しくない方もいらっしゃると思いますので、あらためてAWSについておさらいをさせてください。
AWSは一言でいうと、パブリッククラウドです。パブリッククラウドの反対は、オンプレミスです。これまで企業は、自分たちでコンピュータを買って、自分たちの設備として会社やデータセンターにそれを置いて運用していましたが、それをオンプレミスと言います。
それに対してパブリッククラウドは、他社の資産をサービスとして利用する形式で、使ったら使った分だけ支払うというものです。
市場環境:パブリッククラウドの分類
このパブリッククラウドのなかにもいくつか分類があるのですが、大きなところでは「SaaS」もしくは「IaaS」になります。「SaaS」はソフトウェアをサービスとして提供するもので、海外の例としてはSalesforce、日本ではHENNGE、Sansan、カオナビ、チームスピリットが代表格だと思います。
当社が取り扱っているAWSは「IaaS」と呼ばれる領域で、インフラをサービスとして提供するものです。
「SaaS」はいろいろな業務に応じたいろいろなサービスがあり、たくさんの種類があります。しかしインフラは規模の経済が働く領域ですので、事業者の数も非常に少なくなっています。業界トップシェアがAmazonのAWSで、2番手がMicrosoftのAzure、3番手がGoogleや、統計によってはAlibabaなども出てきます。主要なプレイヤーは世界でも4社から5社と認識されている領域です。
市場環境:AWSの優位性
AWSの優位性についてです。市場調査やマーケットシェアの調査はいろいろなものがありますが、AWSは8年から9年連続でトップだという情報が示されています。
市場環境:Amazon全体におけるAWSの成長性・収益性
AWSがAmazonのなかでどういった地位を占めているのかをお話しします。上のグラフが売上高、下のグラフが利益です。黄色い部分がAWSの領域で、売上高で見ると、やはりAmazonは小売のため、AWSの売上が占める割合は全体の10パーセントくらいです。
ところが利益で見ると、50パーセントを超える状況になっています。つまり、みなさまもご存知のAmazonは、利益の過半をAWS、企業向けのクラウドサービスが叩き出しているということで、非常に大きなポーションを占めています。Amazonにとっても非常に重要なビジネスであることが、このチャートからおわかりいただけると思います。
ビジネスモデル
このAWS領域に対して、サーバーワークスという会社が何を行なっているのかについてお話しします。
図の下の部分が、当社が展開しているサービスです。クラウドインテグレーションという名称で、お客さまが「AWSを使ってみたい」「AWSを使って自分たちのビジネスをよくしたい」というときに、いわゆるインテグレーション導入のお手伝いをして、その後、リセールやMSPと呼ばれる販売代理、MSPの運用代行といったストックビジネスにつなげていくモデルです。
主要サービス概要
もう少し細かく説明した資料になります。クラウドインテグレーションは、いわゆるシステムインテグレーションに近い領域です。お客さまがAWSを使いたいとなったときに、当社のプロフェッショナルのエンジニアが専門的な知見をもって、導入のお手伝いをさせていただく領域です。
リセールについてですが、実はお客さまはAWSを直接Amazonから買うこともできます。ただしその場合、例えば法人用のクレジットカードを用意して、ドルで決済しなければいけないなど、いろいろなハードルがあります。しかし、当社を経由いただくと日本円で、かつ請求書で支払えます。
支払いの手続きが非常に簡便になるだけではなく、当社では「Cloud Automator」という自社開発のSaaSをバンドルして提供しています。これを使うことによって、お客さまが自分たちで「生の状態」でAWSを使うよりも、さらにコストを削減できたり、運用コストを削減できたりといったメリットがあるわけです。
お客さまには原則として、当社経由でAWSを仕入れていただき、使っていただくリセールビジネスが成立しています。
MSPについてです。「Managed Service Provider」の略なのですが、いわゆる保守運用業務です。先ほどお話ししたとおり、AWSというサービスはインフラに非常に近い領域のため、保守運用という業務も発生しています。
このようなクラウド特有の保守運用サービスもセットで提供することにより、お客さまは安心してサーバーワークスに全部任せることができます。私たちのサービスは、このような状況を作っています。
2020年2月期 実績
ここまでは、当社が実際にどのようなことを行なっているのか、定性的なお話をさせていただきました。本日は決算説明会ですので、あらためて先期の決算状況についてご説明したいと思います。
数字のアウトラインは冒頭でお話ししたとおりです。売上高は68億1,100万円で、前期比で152.1パーセントと伸びています。経常利益も4億2,100万円で、前期比で125.5パーセントと伸びました。
注意点としては、当期純利益が減少しているという点です。実は2019年2月期に、当社の持株を一部売却しており、この利益が2019年2月期に入っています。2020年2月期も一部は売却しているのですが、売却金額が先期よりも少なかったという状況です。よって、経常利益は成長している一方、当期純利益が落ちているように見えるのですが、株式売却に伴って利益が減少していることがその理由です。
上場株の売却は、タイミングや資金調達の都合等もありますので、あくまで目線としては営業利益、経常利益をしっかり伸ばしていくといったところです。
業績推移:売上高
こちらが、売上高がどのくらいの割合で伸びているのかを示したチャートです。ご覧いただいたとおり、順調に伸びていることがおわかりいただけると思います。
業績推移:四半期ごと売上高
売上高を四半期ごとに分解した図がこちらです。当社は、過去何年か、第4四半期が非常に大きく伸びる傾向があります。ご覧いただいておわかりのとおり、第4四半期にリセールが伸びやすいという状況です。
お客さまがAWSを調達するとき、年間で前払いすると翌年少し安く買えるオプション(※注)があるのですが、それをお客さまが12月に好んで購入する傾向にあるということで、リセールが第4四半期に伸びやすいという状況です。
※注:リザーブドインスタンス及び、Savings Plansのこと。定額の予約金を支払い、一定期間の利用を確約することにより、利用料金の大幅な割引を受けることが可能となるAmazon Web Services, Inc.のサービス。当該取引においては、売上高を利用期間にわたって按分するのではなく、顧客企業の予約金支払時点で、当該利用期間分の予約金を売上高として計上しているため、リザーブドインスタンス及び、Savings Plansの購入が発生した場合には、当該タイミングにて業績が一時的に変動する可能性があります。
原則として、ストックが非常に大きな割合を占めていますので、ほとんどのケースで第1四半期から第4四半期にかけて右肩上がりになるのですが、第4四半期から第1四半期に少し減る可能性があることが、このチャートでご理解いただけると思います。
2020年2月期 製品・サービス区分別売上高
先期の売上高を区分別に表示したのがこちらのチャートです。クラウドインテグレーション、リセール、MSPで分解していますが、クラウドインテグレーションが前期比94.6パーセントということで、成長が落ちているように見えます。こちらについて、詳しく説明したいと思います。
業績推移:クラウドインテグレーション
クラウドインテグレーション全体の売上高が落ちているように見えるのは、主に2つの要因があります。1つがプロジェクトの大型化です。紫のバーがプロジェクト単価なのですが、2019年2月期くらいから大きく伸び始め、2020年も伸びています。このプロジェクト単価のアップに伴い、どういうことが起きているのかが2つ目の要因になります。
ITの世界で「DevOps」と呼ばれる非常に大きなムーブメントが起きています。これは、開発に携わったメンバー、もしくはチームがそのまま運用に入ったほうがサービスの可用性や品質を継続的に向上できるのではないかという仮説になります。
当社でも、その仮説に対してお客さまと一緒に検証に入っています。今まではどちらかというと、導入したらそのまま運用に引き渡すという流れでした。しかし今は、開発、それからAWSの利用開始に携わったメンバーがそのまま運用に携わっていくケースが非常に増えています。
このようなビジネスは「SRE(Site Reliability Engineering)」と呼ばれ、当社でも「SRE」と称して分類しています。SREはMSPに入っていますので、そのような事情があり、昨年は売上としてはこの保守サービスに分類しています。当初予定していたよりもMSPが伸びてクラウドインテグレーションが小さくなっているように見えるのには、そのような理由があります。
実態としてはどちらも成長しているため、健全な成長が続いていると理解しています。投資家や株主のみなさまも、ぜひそのようにご理解いただければと考えています。
新規採用増加数
採用についてです。先期は32名の採用計画でしたが、おかげさまで34名の採用をきっちりとやりきることができました。32名の採用計画を出したときに、たくさんの投資家や株主のみなさまから「これだけ採用難の時代に、本当に採用しきれるのか」というお声をたくさんいただきました。
当社では「全社採用」を掲げ、エンジニア、営業、マーケティングといったいろいろなメンバーが、いろいろなかたちで採用活動に携わることによって、非常に優秀なエンジニアやバックオフィスのメンバーを集めることができ、予定を上回る34名の採用計画を達成することができています。
みなさまもご存知のとおり、今はこのような状況ですので、今期の採用計画は少しなだらかに考えてはいるのですが、それでも20名強の採用を計画しています。
人員数推移
先ほどの採用計画に従って人員がどのように推移したのかを示したチャートです。今期もしっかり採用して、成長も継続していきたいと考えています。
業績推移:AWSリセール
先ほどもお伝えしたとおり、先期もリセールが非常に好調でした。実際に、アカウント、また単価を表すARPUがどのように伸びているかという図になります。契約個数も増えており、単価も増えているということで、非常にポジティブな数字ではないかと考えています。
業績推移:ストックビジネス
リセールと保守サービスの2つをあわせてストックビジネスと見なしていますが、ストックビジネスの比率がどうなっているのかを示したチャートです。ストックの割合が年々非常に高くなってきており、先期のトータルで見ると90パーセント近くになっています。
この後にご説明しますが、今後も非常に安定的に成長を続けられるのではないかと考えています。
業績推移:ライフタイムバリュー
実際にストックビジネスが収益にどのように貢献しているのかを示したチャートです。チャートの見方ですが、ライフタイムバリューというかたちで、一番下の黒い部分が2011年以前から当社と契約しているお客さまです。2011年、2012年、2013年と、どのくらいお支払いいただいたかを示しています。
茶色い部分が2012年、2013年ということで、それぞれの年度に契約いただいたお客さまにどのくらいお支払いいただいたかを示していますが、どの年次でも少しずつ当社への支払いを増やしてくださっています。
もちろんAWSの商品力もありますが、当社が提供している付加価値もあるため、このようなかたちで積み重なることで、毎年この「地層」が大きくなります。1つ1つは非常に薄いのですが、これが当社が力強く成長できる源泉ではないかと理解しています。
流動比率
現在がこのような状況ですので、当然、流動比率等について質問されることもあります。ご覧いただいたとおり流動比率は262パーセントということで、非常に健全な流動性を確保しており、事業の継続性についてはなんら問題ないと考えています。
2021/2月期業績予想
今期のガイダンスですが、業績予想としては、売上高80億300万円、経常利益4億2,600万円という予想です。注意書きにも記載していますが、新型コロナウイルス感染症の影響が第3四半期くらいまで続くと想定したうえで、保守的に策定しています。
このような状況ですので、通期のガイダンスを出すことについての是非もあると思います。しかし、今日の説明でみなさまにもご理解いただいたと思いますが、非常にストックビジネスが熱い状況だからこそ、「クラウドを使っていきたい」という方はまだまだ増えるだろうと思っています。
経常利益は非常に保守的に見させていただいていますが、ストックビジネスがしっかり伸び、またこれからリモートワーク需要のような新しいマーケットも出てくるだろうと考えて、売上としてはしっかりとした成長を目指していきたいと考えています。
当社の特徴と強み① AWSに認定された最上位パートナー
当社の強みについてです。今まで、当社がどのようにしてマーケットで戦ってきたのかを、かいつまんで説明させていただきたいと思います。1つ目が、Amazonの最上位パートナーだということです。
現在、AWSのマーケットには世界中から2万社以上の会社が「自分たちもパートナーになりたい」と名乗りをあげています。それをAmazonが4段階に格付けしており、その最上位がプレミアコンサルティングパートナーという枠です。これは年度更新で、格付けが落ちる会社もある非常に厳しい認定なのですが、おかげさまでサーバーワークスは2014年から6年連続でプレミアコンサルティングパートナーに認定されており、知名度獲得に貢献しています。
当社の特徴と強み② 高い技術力(1)
2つ目は、エンジニアです。きっちりとしたデリバリーができて、初めてリセールやMSPといったストックビジネスにつながっていきますので、導入のときにしっかりしたエンジニアがいることが非常に重要になっています。当社ではスライドのとおり、たくさんのエンジニアがこのような資格を持って対応させていただいています。
当社の特徴と強み② 高い技術力(2)
こちらは、会社が取得している技術関連の認定です。
当社の特徴と強み③ 豊富な導入実績
3つ目は、導入実績です。日本の企業は、「同業他社が導入しているのか」「本当にAWSというクラウドを使って失敗していないのか」ということに大変注目しています。その点で、当社は日本で一番最初にAWS導入のサービスを始めた会社として知られており、非常にたくさんの事例があります。これがまた次の事例を呼ぶという、よいサイクルになっています。
当社の特徴と強み④ 先行優位性
4つ目は、先行優位性です。「これからAWSを導入しよう」という企業は、現状は増えていますが、AWSビジネスの肝はやはりストックビジネスの部分です。このストックビジネスを積み上げるには時間が必要ですので、極端な話、「早いもの勝ち」という状況です。日本で一番最初に始めた当社が非常に優位なポジションを築いているということです。
当社の特徴と強み⑤ 自社サービス Cloud Automator
5つ目は、自社サービスの存在です。リセールのお話の際に「オプションも用意しています」とお伝えしたのが、この「Cloud Automator」というサービスです。前身のサービスから見ると、2009年からずっと自社で開発して提供しているのですが、これを使うと運用を自動化したりできるのです。
当社の特徴と強み⑤ 自社サービス Cloud Automator お客様事例
実際のお客さまの事例です。例えば総合商社の丸紅では、グループ内の2,000台のサーバーを、全部Amazonのクラウドに持っていこうという取り組みを一緒に進めています。総合商社の丸紅は、土日や深夜に使わないサーバーなどもけっこうあるのですが、冒頭にお伝えしたとおり、クラウドは「使ったら使った分だけ支払う」というモデルのため、電気代と同じく、使わないときにオフにすれば、その分コストも落ちるわけです。
丸紅では、使わないときは電源をオフに、使うときは自動的にオンにするといったオペレーションを「Cloud Automator」を使って自動化しています。これによって、AWSに支払うコストが5年間で2億7,000万円削減できるといった見込みがあるため、当社からAWSを調達するというご判断をしてくださいました。
このような5つの強みを組み合わせることで、このマーケットで非常に優位に戦えているという状況です。
成長戦略:大規模マイグレーション(移行)プロジェクトの獲得
最後に、みなさまも非常に気にされている部分かと思いますが、成長戦略についてです。投資家や株主のみなさまは、「このような状況で本当に成長しきれるのか」「そのビジョンはどこにあるのか」とお考えだと思いますし、もちろん私も社員もその部分を気にしています。
結論をお伝えすると、このような状況だからこそ当社は成長できるのではないかという確信を持っています。その成長戦略の柱が2つあります。
1つ目が、大規模マイグレーションです。お客さまの観点からすると、「BCP」、つまり事業継続対策です。事業継続のため、社内で抱えてるコンピュータをクラウドに持っていこうという動きが加速すると考えています。
これまで企業は「当然、オーダーすれば社員はいつでも指定のところに移動して来てくれて、きちんと仕事してくれる」という前提がありました。ですので、極端な話、サーバーが自社にあろうがクラウドにあろうが、社員にオーダーすればよしなに対応してくれるという世界観だったと思います。
しかし、新型コロナウイルスの影響があるような状況では、会社は社員に対して「出社してサーバーの保守をしなさい」「サーバーが故障したから、すぐに増強しなさい」といったオーダーができないわけです。
そこで、自分たちのIT基盤をクラウドに移して、社員が出社しなくてもリモートでサーバーの緊急メンテナンスを行なったり、必要な分だけ自動的に増強したりといったことを、事業継続の観点から進めていかなければいけない企業が増えると確信しています。今後は、このような市場をしっかりと押さえていきたいと考えています。
成長戦略:デスクトップ市場も獲得
2つ目が、デスクトップの市場で、いわゆるテレワーク市場といわれるものです。これまでの当社のビジネスは、どちらかというと、企業がお持ちのサーバーをクラウドに持っていこうといった流れが強かったのですが、今後、テレワークやリモートワークができなければいけないとなると、デスクトップパソコンをどうするのかといったことになるわけです。
何も考えずに「パソコンを持ち帰っていいですよ」となると、セキュリティを担保できないわけです。テレワークとセキュリティを両立するためにはどうするかということで、Amazonのクラウドを使えばよいわけです。
例えば、みなさまがお持ちのパソコンにデータがあると漏洩のリスクが出てしまうわけですが、データもアプリケーションもAmazonのクラウドに置いて、クラウド側で作られた画面の情報だけをパソコンに転送するということができるのです。使い勝手は普通のパソコンと変わらないのですが、データの実体は手元のパソコンにはないため、情報漏洩は非常に起こりにくいわけです。このような環境を簡単に作ることができます。
Amazonでのサービス名は「WorkSpaces」ですが、業界的には仮想デスクトップやシンクライアントと呼ばれています。このマーケットが、今後非常に大きくなると予想しています。
実際に、新型コロナウイルス禍が起きてから、当社への問い合わせも非常に増えています。今は緊急事態という状況ですが、これが一段落して、みなさまが「働き方を変えていかなければいけない」「出社しなくても、ソーシャルディスタンスを保ったまま生産活動を続けていかなければならない」という意識になったとき、必ず仮想デスクトップ、シンクライアントの話が出てきます。この需要をしっかりと捉えることによって、次の成長を目指していきたいと考えています。
Great Place to Work
当社では、2012年あたりから働き方改革、テレワーク、リモートワークに取り組んできました。実際に、私たち自身がテレワークやリモートワークを行なってみなければ、お客さまに提案しても説得力がないわけです。私たち自身が本気で働き方改革を推進して、どのような状況であれば社員が本当に働きやすく、生産性高く活動できるのかを追求してきました。
おかげさまで、働きがいのある会社を選ぶ「Great Place to Work」という第三者評価において、3年連続でランクインさせていただきました。
当社が唱えている働き方改革は、付け焼刃のものではありません。過去9年近く、そこに向けて投資してきており、トライ・アンド・エラーを経て実績を出してきました。このような状況だからこそ、私たち自身が体験しているクラウドを使った働き方改革を、実体験をもってお客さまに提案することで、しっかりと聞いていただけるのではないかと期待しています。
クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく
サーバーワークスという会社は、「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンを掲げています。このビジョンに従って、社員の働きやすさや働きがいはもちろんですが、当社のようなベンチャー企業が先んじていろいろな社会実験を行なうことによって、その成果をどんどん社会に還元していくということが、私たちの使命だと理解しています。
「クラウドを使うことによって、このような状況でも働きやすさを作り出せる」「生産活動は持続できる」ということを証明していきたいと考えています。投資家や株主のみなさまには、ぜひ投資活動を通じて、当社のような思いを持った会社を応援いただきたいと考えています。ご清聴、どうもありがとうございました。