2020年2月5日に行われた、日本水産株式会社2020年3月期第3四半期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。

スピーカー:日本水産株式会社 取締役常務執行役員 山本晋也 氏

2020年3月期 第3四半期決算 サマリー

山本晋也氏:山本でございます。お忙しいなかお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。時間も限られておりますので、本日発表させていただきました第3四半期決算について、決算短信補足資料に基づいてご説明いたします。

第3四半期決算サマリーです。ご覧のとおり、売上については164億円の減収、3パーセントの売上の減で着地いたしました。

営業利益、経常利益、純利益についてもご覧のとおりでございます。昨年の第3四半期と比べますと、各段階損益とも多少の減益というかたちになってございます。その原因はのちほど出てまいりますので、次のスライドをご覧いただければと思います。

2020年3月期 第3四半期決算 セグメント別概況

事業別の売上高、営業利益の表ですが、まず売上についてご覧いただきますと、先ほど申し上げたとおり、全体では164億円の減収でございました。内訳は水産事業で21億円、食品事業で22億円の減収、その他事業で126億円の減収ということで、ここのインパクトが非常に大きくございました。

水産については、為替の影響が非常に大きかったということがあります。食品は第1四半期、第2四半期ずっと申し上げておりますが、チルド事業の取引形態の変更の影響での約73億円が大きくありました。

その他については、エンジニアリング事業の大型受注が、昨年にあったものが今年はないということで、これによる影響が非常に大きいということでございました。

主な営業利益増減要因

営業利益についてはこちらのスライドをご覧ください。ウォーターフォールで書かせていただいておりますが、毎回出てまいります南米の鮭鱒養殖事業の影響が非常に大きく、今期は増産もあって大幅増益でございました。価格に恵まれました、ということでございます。

ウォーターフォールの左から2個目、日本の水産事業でございます。漁業においてはさば・あじの漁獲が非常に苦しかったこと、養殖関係では、のちほど重複して出てまいりますが、ぶりが好調な一方で、第1四半期の国内における銀鮭の生育不良、まぐろの養殖が非常に難しいことと、これに伴う減益などが非常に大きなインパクトとなってしまいました。

その隣が食品を表示しております。チルドを除く食品事業は、業務用冷凍食品をはじめとして好調に推移しましたが、チルド事業は第2四半期の段階から申し上げております天候不順の影響や、前期と比べて新工場の償却負担増もございまして減益となっております。

その隣は先ほど申し上げました、大幅なエンジニアリング事業の受注減による減益がございまして、トータルの営業利益は8億円の減益で着地しております。

正直に申し上げて、まぐろも含めて養殖事業、漁業については、当初見込んでいたよりも減益の幅が大きかったというのが第3四半期でございました。

連結貸借対照表(前期末比)

バランスシートでございます、傾向はあまり変わっておりません。

売上債権在庫が増加して膨らんでおりますが、在庫については第2四半期に膨らんでいた金額で、第3四半期の前期末比で94億円増加していると書いていますが、第2四半期は実は130億円くらい増加しております。その段階から比べると、圧縮は少し進んでいますが、まだまだ在庫が多いのがこの12月末の状況でございます。

連結キャッシュ・フロー(前年同期比)

キャッシュ・フローでございます。ここに書かせていただいているとおり、在庫が膨らんだこともあり、営業キャッシュ・フローがマイナスになっております。

設備投資はタイにおける新工場や、大阪に第2冷蔵庫を作るなど行っておりますが、そういったものによって設備投資資金が昨年に比べて増加しており、結果としてこれが借入金に影響している状況でございます。

水産事業 売上高・営業利益(前年同期比)①

このスライド以降は各事業ごとの説明になります。まず、水産事業の売上高、営業利益でございますが、売上高については21億円の減収、営業利益は6億円の増益でございました。

売上高の減収の主な要因はヨーロッパで、ヨーロッパの為替が非常にアゲンストになってしまったことで、売上高が減収になっております。それに併せてヨーロッパの取り扱いが少し減り、それに伴う減収も大きな影響がございました。

一方、利益については、南米の鮭鱒養殖事業が大幅増益だ、ということは先ほど申し上げました。

水産事業 売上高・営業利益(前年同期比)②

(スライドの)一番左端が漁業、その次が養殖、その隣が加工・商事と来て、ニッスイの個別国内関係の販売になります。左端の漁業は、ご覧のとおり一部マイナスになっている会社がございます。これは国内の漁業の会社であり、先ほどの繰り返しになりますが、さば・あじなど近海の魚の漁が不調で、非常に苦戦している状況でございます。

養殖ですが、濃いブルーで表示させていただいているのは何度も出てきます南米の鮭鱒養殖です。下に向いている2つの色、薄いブルーとピンクが、国内におけるまぐろと鮭になります。鮭については第1四半期から発生しているものですが、まぐろについては、人工種苗のまぐろを中心に非常にコストが高くなっております。生育不良や斃死などによってコスト高になっており、この評価減を進めたこともございまして大きくマイナスになっております。

ニッスイ個別はご覧のとおり、非常に堅調でございます。昨年非常に少なかった鮭鱒は、南米の鮭鱒を中心にぶりの取扱増もあり、大きく増益でございます。

その右下の棒グラフが、ニッスイ単体の主要業種別の売上高で、前年同期比をご覧いただいています。一番左端が鮭鱒、その隣がすりみ、まぐろ、助子、それから飼料油飼となっていますが、鮭鱒が好調だったのはご覧いただけるかと思います。

その上に市況についての折れ線グラフがあります。我々が非常に多く取り扱っているチリのトラウトが赤の折れ線グラフです。少し価格が上下していますが、あるゾーンの幅を覚えており、大きな変動がなかったとご覧いただければよろしいかと思います。

チリギンについては年末にかけて若干下げ基調でしたが、今の段階で特段大きな影響は出ておりません。

食品事業 売上高・営業利益(前年同期比)①

ここからは食品事業になります。食品事業については、売上高が22億円の減収、営業利益が5億円の減益でございました。これも冒頭申し上げたことの繰り返しになりますが、国内外とも冷凍食品を中心に、販売は非常に堅調であり、チルド事業の減収減益が大きく響いております。

食品事業 売上高・営業利益(前年同期比)②

3つに分かれており、加工、チルド、ニッスイ個別と(スライドの)左から順々に並んでおります。加工は国内の工場に加え、北米、ヨーロッパの事業の会社が乗ったものでございます。全体を足すと概ね昨年と同じ、もしくは若干プラスで稼げているのが海外および国内の工場の状況でございます。

棒グラフの中に入っている折れ線グラフが売上でございますが、大きく減収となったうえに減益でございます。繰り返しになりますが、取引形態の変更による影響で売上高が73億円の減収になっておりますが、それを除いても20億円強の売上減があり、天候不順を中心とした影響が非常に大きかったということでございます。

その隣のニッスイ個別は、売上はともかく、利益については増益というかたちになっております。これはチルドの影響も多少このなかに入っている関係であり、実際のチルドを除いた部分の売上については、右下の「ニッスイ個別 カテゴリー別 売上高」のグラフをご覧いただいたらよろしいかと(思います)。

非常に字が小さくて恐縮ですが、左側が家庭用の調理冷食、その次が業務用の調理冷食、その隣が農産冷食、練りハムソー、常温食品他と並んでおります。最後に申し上げた常温食品他を除いては、すべて増収ということになっており、国内の売上は非常に好調でございました。

先ほど言い忘れていましたが、一番左端にある加工の薄いブルーはヨーロッパ、その下のピンクと濃いブルーがアメリカでございます。アメリカとヨーロッパはいずれも増益となっております。会社別に見ますと多少凸凹ありますが、地域で捉えた場合には、ヨーロッパ、アメリカともに増益で終わったということでございます。

ファインケミカル事業 売上高・営業利益(前年同期比)

ファインケミカル事業でございます。ファインケミカル事業は、機能性原料が引き続き堅調で増収になりました。一方で、グループで減益の会社があり、相打ちになって差し引きは前年並みというのがファインケミカル事業でございました。

物流事業 売上高・営業利益(前年同期比)

物流事業の売上は、ほとんど前年並みでございます。営業利益も結果として前年並みですが、第1四半期に退職給付費用の算定方法の変更があり、一時的に2億6,000万円程度のコストが膨らんだ、とお話ししております。

(スライドの)右下の営業利益のグラフをご覧いただくと非常にわかりやすいですが、第1四半期は前年同期比でドンと落ちておりまして、それが今申し上げたことでございます。それ以降は対前年同期をクリアし、全体としては概ねカバーできているかなという状況でございます。

その他事業 売上高・営業利益(前年同期比)

その他事業についてです。繰り返しになりますが、エンジニアリング事業が減収減益になったのが大きなインパクトでございまして、連結全体に与える影響も決して小さくなかったということでございます。ここまでが第3四半期までの結果でございます。

2020年3月期 通期見通し

(スライドを指して)これが通期の見通しでございます。書いてあるとおりでございますが、第3四半期までは、年間計画に対して大きな返りはないと考えておりました。最初に申し上げておりませんが、年間計画に対する進捗率は概ね順調かなと考えております。

ただ、この先にはいろいろ要素がございまして、順調かというと決してそうでもない要素も多少あります。ここに書いてあるとおり、新型コロナウィルスの影響が読みきれないこと、第3四半期も悪かった近海の水産物の水揚げの影響、市況もどう影響してくるのかも不安材料でございまして、決してハードルは低くない、というのが現状でございます。

いずれにしても、今回の課題でありました国内養殖については、しっかりと手を打って、とくにまぐろの原価高についての対応も急ぎたいなと考えております。

今後の取組み:水産事業 養殖①

水産事業関係に2枚スライドを割いております。養殖関係ではぶりがありますが、これは課題というよりは、今後どう拡大していくかでございます。

まずは「周年供給に向けた取組」で、今でも周年ですが、より品質がよく価格の取れるものを年間を通じて出していくために、多回採卵を開始して、飼育期間を平準化しようという取り組みを開始しております。これに伴って種苗が足りなくなっていますので、センターの設備の増強を準備して取り組んでいる最中でございます。

また、効率化をもう少ししていこうということで、ポンチ絵みたいなものを(スライドの)右側に書いております。現在は10メートル間隔の生簀が大量に並んでいるという形態ですが、これを大型化するとともに、自動給餌機も組み合わせてより効率を上げていこうと考えております。

人工種苗の比率をどんどん上げて、より育成期間が短くてリスクも少なく、コストも少なくでき、体重がアップできるという取り組みを進めていきたい、というのがぶりでございます。

さばは写真のとおり施設を作っているところで、今年の5月に竣工いたしますので水揚げは先になります。アニサキスフリーのマサバを生食マーケットに拡大することで、しっかり利益を取っていくような事業にしていきたいと考えております。これは陸上養殖ですので、循環式陸上養殖をしっかり産業化して、環境負荷の低減をしながら利益を取りつめる体制づくりをしていきたい、というのがさばでございます。

今後の取組み:水産事業 養殖②

国内の鮭鱒は、昨年非常に苦戦しまして、結果としてはだいぶ損失を拡大することになりましたが、今年は今のところ順調と聞いています。まだ水揚げまでには1ヶ月以上ありますので予断を許さない状況ですが、今の段階では非常に順調と聞いてございます。

それだけでは不十分でございます。種苗の質の向上ということで、自社での親魚を養成し、採卵・受精・孵化をしっかり行います。ぶりと同じような早期採卵、選抜育種による水揚げ、体重のアップを図っていきたいと考えており、今進めている最中でございます。

問題のまぐろについては、非常に収益にインパクトがあります。赤潮や台風による死亡、人工種苗の影響も非常に大きく、天然物・人工種苗に関わらず、対策をしっかり打っていかなければいけません。養殖場も水温の問題や赤潮の問題がありますので、再配置をしっかりと、もう一段実施しなければと考えております。産地加工を拡大して、付加価値を向上した上で販売するというものも、より深めていきたいと考えておりました。

今後の取組み:食品事業 海外①

スライドの17と18は、主として海外の食品の話でございます。アジアにおいては、先ほどチラッと申し上げましたが、クイックサービスレストラン、CVSマーケット向けの展開ということで、タイで冷凍食品工場を建設中であり、これも5月に竣工予定でございます。

これを起爆剤にして、アジアでの販売をしっかりと拡大していきたいと考えておりますし、ベトナム、タイ、中国を候補エリアとして、瓶詰やチーズかまぼこなどを、パートナー企業とともに各国の文化・習慣に対応しながら拡大することで、進めてまいろうと思っております。

今後の取組み:食品事業 海外②

ヨーロッパ関係では、11月にイギリスの魚を取り扱う会社であるCaistor社とFlatfish社の水産加工事業、鮮魚の一次加工ビジネスを、一度再構築した状況でございます。少しずつ状況がよくなっていくんではないかなと期待しております。

併せて食品事業は、イギリス・フランスを基点として、東側に少しずつ冷凍食品、非常に伸びている植物由来のタンパク質の食品などを拡大していきたいと考えております。

今後の取組み:ファインケミカル事業

ファインケミカル事業でございます。高純度EPAの話と機能性原料の話の両方ありますが、海外展開をしっかり進めていかなきゃいけないと考えております。

高純度EPAについては書いてあるとおりですが、販売先との交渉は順調に推移しております。生産体制のcGMPの認定取得を進めるのも従来書いていることですが、製造設備で検証試験生産を開始いたしました。これをしっかり検証していくことで、出荷の準備を粛々と進めております。

スケソウダラの速筋タンパクの研究結果

少し話は飛びますが、スケソウダラの速筋タンパクの研究結果が出ました。

ご覧のとおり、最初はラット試験の中で筋肉が増え、とくに速筋という筋肉が、食べることで増えたという結果が出ました。人でも検証してみた結果、65歳以上のシニアでも、スケソウダラを食べて運動していませんが、3ヶ月で食べただけで増えたという結果が出まして、非常にいい結果だなと考えております。昨日、セミナーも開催しており、ご参加いただいた方もいらっしゃるのかと思います。

2020年春夏新商品

数日前に、国内の商品の新商品発表会を開催しております。社会課題に対応したもの、お客さまのニーズに対応して、ニッスイの強みを出せるような、ライフスタイルに対応した価値のあるものをご提供しようということで、スライドにいっぱい特徴的な商品を表示しております。

おにぎりについてはお子様の健康向けということで、朝から食べていただけるような、お子様の健康にいいようなものを出させていただいております。服部栄養専門学校監修の和食キットは、野菜を中心とした「鶏団子と野菜の甘酢あん」で、具とソースがバラバラになって冷凍食品になっており、乗せたあとにチンとするとそのままできてしまう商品でございます。

(スライドの)右上は、健康配慮に非常に役立つ「おさかなミンチ」でございます。このままいろんな料理ができるというもので、これは麻婆豆腐とセットになった商品です。その下は、速筋タンパクを食べることで健康になりましょうという商品です。「毎日食べよう速筋タンパク」ということで、ソーセージやかまぼこを、速筋タンパクのロゴを付けての販売を開始いたします。

CSR活動 養殖生簀でのプラスチック使用削減

いろいろと進めているCSR活動のなかで1つ特徴的なものとして、生簀にはフロートを使っていますが、そのなかのフロートが流れて海を汚すことのないように、2025年までに全廃をしようと取り組んでおります。少し長くなりましたが以上でございます。

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