そういった意味でも、マナー自体より「周りと同じことができるかどうか」という点を面接官は見ているのかもしれません。面接官がどの人材にしようか迷うときには、よりマナーが身に付いているという観点で選ぶのも致し方なさそうです。

何のためにあるかわからないビジネスマナーも

さらに、入社後にも謎マナーは待っています。日本企業の慣習には高度経済成長期からあまり大きな変化がなく、テクノロジーの進化でビジネスのスピード感が変わっているのに、いまだに「それって無駄じゃない?」という謎のビジネスマナーも数多く残っているのです。

たとえば、稟議書に押印をする場合は「部下が上司にお辞儀をしている」ように「左斜めに傾けて」ハンコを押すという、「お辞儀ハンコ」と呼ばれる習慣が金融機関の一部には残っているといいます。このルールを知らずに新人がハンコの向きを真っ直ぐに押してしまうと作り直しさせられることもあるのだとか。

また、メールの「CC欄」のアドレスの並び順は役職順でなければならないというマナーも。明らかに上下関係がわかればいいものの、細かな役職順や年次が分からない場合は失礼がないように調べなければいけないなど、意味があるとは思えない手間がかかってしまいます。

このように、何のためにやっているかわからない謎マナーに面食らうことも、新人の間は多いかもしれません。非効率で不要なマナーは取り除き、ビジネスマナーをアップデートする必要がありそうですが、長い間の習慣になっているものを変えるのは容易ではなさそうです。

こうした日本企業の風土が、本当は「そんなことどうでもいいのでは…」と面接官も就活生も思っているのに、「無難」とされるマナーを選ばせる一因になっているのかもしれません。

LIMO編集部