2020年2月27日に日本証券アナリスト協会主催で行われた、株式会社船場2019年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料 質疑応答パートはこちら

スピーカー:株式会社船場 代表取締役社長 八嶋大輔 氏
株式会社船場 執行役員 財務経理部長 曽我勝一 氏

2019年12月期決算説明会

八嶋大輔氏(以下、八嶋):みなさま、本日は北風が吹きすさぶ中、わざわざ足をお運びいただきまして、ありがとうございます。船場の八嶋です。

本日の説明は、私から企業概要及び事業概要、それから中期経営計画の取り組み状況を説明します。そののち、財務経理担当の曽我から、当期の決算の状況及び今期の業績見通しを述べさせていただきたいと思います。

企業理念「サクセスパートナー」

まずは企業概要ですが、株式会社船場は大阪出身の店舗内装業で、お店を繁盛させることをミッションとしています。ひと頃は「繁盛請負業」と名乗っていたこともありますが、今は「サクセスパートナー」という呼び方をしています。

この「サクセスパートナー」を、私どもは企業理念としています。人を「飽きさせない」環境を作ること、「アキナイ(商い)」環境を作ることが私どもの仕事です。

業務領域

この「人を飽きさせない」お店を作っていくために、まずは立地調査と分析、企画、コンセプト立案、マスタープラン、設計を行います。そして空間の実現に向けて監理、施工を行い、さらにお店ができ上がったあとは運営の支援までを業務領域としています。一気通貫でお店作りの機能をすべて具備しています。

私どもはそのための「構想力」「デザインワーク」、それから「しっかりと施工していくキャパシティ」を持っています。

展開拠点

日本全国、津々浦々でお店を作っていますので、拠点体制として、北は北海道から南は沖縄まで、ほぼ日本全土をカバーできる体制で仕事をしています。海外事業は歴史が古く、1984年に香港に現地法人を設立しています。以来、台湾、シンガポール、上海、そしてベトナムはハノイとホーチミンに拠点があり、昨年4月にマレーシアの現地法人を開設しています。

当期の事業概況①

2019年12月期の事業概況について、私からはポイントのみお話しします。

おおまかに言いますと、売上高が283億6,000万円、営業利益が12億7,000万円、当期純利益が9億6,000万円となり、前期比をご覧いただくとわかりますが、いずれもほぼ100パーセントになっています。従って、2019年12月期は前期と比べて、ほぼ横ばいという結果です。

当期の特徴としては、海外ビジネスが増えました。売上高は前期比116パーセントで、海外比率も全体の11パーセントまで上がってきました。その反面、横ばいの決算ですので、その分国内が苦戦したということです。

当期の事業概況②

お客さまのクライテリアで分けますと、流通・小売業界以外の仕事が増えています。のちほど説明しますが、私どもが重点領域として深掘りしていこうと取り組んでいる注力分野であるオフィスや教育、ウェルネスの分野が、前期に比べて2割ほど伸びている状況です。

当期の事業概況③

こちらは、当期の業績を上期と下期に分けたものです。私どもは12月決算で、上期が「1-6月」で下期が「7-12月」となりますが、例年、上期と下期でそこまで差がありません。当期は上期で大きく出遅れてしまいましたが、下期において伸長した分野の取り込みもあり、ここまでキャッチアップすることができました。これが当期の1つの特徴になっています。

実績紹介①

写真をいくつか紹介して、当期に私どもが手掛けた仕事をご披露したいと思います。

まずは、ニューヨークにある老舗のステーキハウス、「WOLF GANG’S STEAKHOUSE」(WDI JAPAN様)が昨年、青山に出店しましたが、私どもでデザインをさせていただきました。

実績紹介②

こちらは「Fontworks」という、パソコンなどで使うフォントをデザインしている会社です。フォントワークス様が東京に新しいオフィスを作られるということで、お手伝いをしています。

当期は、IT企業のオフィスを何件か手掛けましたが、どのオフィスも非常にクリエイティブで、その意味では私どもが店舗設計で培ってきたデザインワークが生かされたのではないかと思っています。

実績紹介③

こちらは大阪の近畿大学様の学生食堂です。洗練された学生食堂で、その一画に出店する「UNDER ARMOUR」ブランドを展開するドーム様の「DNS POWER CAFE」を一緒に作らせていただきました。

すべてのメニューをスマホで選んで事前に注文しておき、それから学生たちがここにきて、完全にキャッシュレスで受け取ります。メニューはプロテイン入りのパスタなど健康志向の高いメニューになっており、近畿大学様ならではの近代的なカフェです。

実績紹介④

一見ホテルのスイートルームみたいに見えますが、実は産婦人科の病室です。熊本県にある福田病院様で、非常にリラックスできる室内になっており、妊婦の方が寛ぎながら出産を迎えることができます。

熊本県では人口の半数以上の方が、この病院で出産されている、あるいは希望されるという有名な病院です。

私どもも随分長い付き合いで、今年は新しい病棟を作るときに、病室の企画からデザイン、施工まで一貫して担当させていただきました。

実績紹介⑤

こちらは海外の仕事になります。ホーチミンにできた「一風堂」(Pizza 4P’s様)の新しいお店です。日本のお店よりもファッショナブルで、凝ったデザインになっています。

実績紹介⑥

同じく海外ですが、シンガポールで、東日本旅客鉄道(JR東日本)様が作られたコワーキングスペースです。メトロポリスであるシンガポールにふさわしい、非常に洗練されたデザインになっています。

私どもの海外の仕事は、従前はショッピングモールの仕事がメインだったのですが、当期からは、さまざまな案件を手掛けさせていただいている状況です。

中期経営計画(2019年~2021年)

当期、及び今期の状況を中期経営計画に照らして、簡単に触れさせていただきたいと思います。

中期経営計画は当期より始まっており、今期で2年目を迎えています。スローガンは「Brand-new SEMBA」です。

収益構造改革を推進する方針を打ち出しています。1つ目は注力分野として6つの事業領域を定め、ここを深掘りして船場の得意技にしていきます。

2つ目は、海外事業をもっとレバレッジを効かせて海外戦略を拡大するというもの。3つ目は生産性を向上させていく取り組みです。

中期経営計画の取組状況①

中計の1つ目の骨子、新しい領域となる注力分野ですが、スライドに6つ掲げています。まずは「Food&Wellness」。「Wellness」は「Illness」ではない状態、つまり健康です。健康のために、健康を意識した食文化の在り方などを意識した施設を作っていくという考え方です。

次に「Culture」。教育機関や図書館、ミュージアムに代表されるようなものを、もっとデザインしていくお仕事を手掛けていきたいと考えております。

次の「PPP」ですが、官民が一緒になってさまざまな仕事を行っていく中で、特に私どもが力を入れているのが「Park-PFI」です。全国にある、自治体が維持、管理している公園を活性化していく取り組みで、公園をリデザインして、その中にカフェを作るなど、市民のみなさまがもっとくつろげる環境を作っていくといったお仕事に着手しているところです。

そして「Work Space」はオフィスです。先ほどお見せしたようなデザインされたオフィス、あるいは、従業員のみなさまがもっとコミュニケーションを取りやすくなるオフィスといったものを、当期もたくさんデザインさせていただきました。

それから「Event」についてですが、今年はオリンピックの仕事などいろいろなイベントがありますので、このようなものも深堀りしていこうという方針です。

スライドの一番右が「Global」で、海外戦略です。もっとグローバルに仕事をしていこうということで、ビジネス領域を拡大して深堀りしていきます。

中期経営計画の取組状況②

2つ目の骨子は、海外戦略についてです。昨年、マレーシアのクアラルンプールに新しいオフィスを開設したことは申し述べましたが、昨今の経済成長率に鑑みて、「グレーターチャイナ」よりはアセアンを成長ドライバーとして見ていこうとしています。

その中でベトナムが非常に大事な国になっていきます。今はベトナムのホーチミンとハノイにオフィスがあります。スライドはホーチミンのオフィスの写真ですが、当期により大きなオフィスに移転増床しました。

また1月から、私どもの取締役の1人をホーチミンに常駐させています。人財も強化して、海外事業にますます力を入れていきたいと考えています。

中期経営計画の取組状況③

そして、3つ目の骨子、生産性の向上です。私どもの内装業はまだ古い業界で、社内の伝票や書類がすべて紙という世界です。昨年から徐々に電子化しており、ITの力を使って効率を上げていこうと考えています。

スライドに「BIM」と記載していますが、これは実際にご覧いただいたほうがわかりやすいと思いますので、ショートムービーをご用意しました。

(映像が流れる)

「BIM」は「Building Information Modeling」の略です。BIMツールによって、空間の設計施工・維持管理のあらゆる工程で必要となる情報を3次元データとして一元的に管理し活用することができます。

設計した空間を3Dパースとして容易に再現することが可能です。プレゼンテーション手法の一つとして、クライアントのみなさまと一緒に、「仮想現実(VR)」の空間に立ち、どの立ち位置からでも空間を眺めることができます。そして、クライアントのみなさまが「ここを修正したい」というときは、それを図面に戻さずにそのまま修正できるというメリットもあります。このような手法の導入によって、生産性が大きく上がります。

映像でヘッドマウントディスプレイを付けて見ている風景がありました。このような装置も組み合わせることで、お店になる予定の空間に「拡張現実(AR)」で、設置を予定する什器や商品が置かれたところを確認することができるのです。

お客さまは、お店のできあがりの状態をVRやARで確認でき、その中で「お店をどうしよう、こうしよう」という打ち合わせにも活用できます。生産性の向上と付加価値の創出につながります。

日本国内の内装業では、このBIMはまだあまり取り入れられていないのですが、当社は先駆けて本格的に導入を進めています。

業績目標

中計で掲げている業績目標です。今期は売上高を315億円まで伸ばして、営業利益は16億円を確保していこうという計画になっています。そして、来期が中計の3年目、最終年度になりますが、売上高340億円、営業利益20億円を定量目標として進めていきたいと考えています。また、ROEは10パーセント以上を目指します。

それから、先ほど申し上げました6つの注力分野の売上を1割以上確保したいと考えています。海外については、当期が31億円強ですが、40億円規模まで伸ばしてまいります。

今後の事業見通し

今後の事業見通しになります。当期の同時期に比べて、今期は案件が非常にたくさん見込めている状況です。

この2週間から3週間は新型コロナウイルスの影響が徐々に出てきているため予断は許しませんが、スタートとしては、非常にいいスタートが切れている年ではないかと考えています。

それでは、当期決算の概況について、財務経理担当の曽我からの説明に移ります。

当期連結決算の状況(連結損益計算書)

曽我勝一氏(以下、曽我):みなさま、こんにちは。株式会社船場の財務経理担当の曽我でございます。私から、当期の決算の状況及び今期の業績見通しについて説明申し上げます。

まず、当期の決算の状況です。当期は売上高が283億6,300万円、営業利益が12億7,100万円、当期利益が9億6,400万円と、減収増益といった結果になりました。

当期連結決算の状況(連結売上高:地域別)

その要因は2つあります。1つ目が海外の伸長です。こちらのグラフにあるとおり、前期は連結売上高に占める海外の売上高の割合が9.7パーセントでしたが、当期は31億8,600万円となり、連結売上高に占める割合が11.2パーセントまで増加しています。

当期連結決算の状況(売上高:海外連結子会社)

大きな要因として、案件の受注獲得に成功したシンガポールの売上増加が大きく貢献しています。

当期連結決算の状況(連結売上高:市場分野別)

減収増益の2つ目の要因についてです。残念ながら、国内の流通、商業施設の売上は落ち込みましたが、流通、小売以外のオフィス、病院、教育機関といった新規に取り組んだ分野の売上が、前期に比べて20.4パーセント増加していることによるものです。

当期連結決算の状況(販管費)

また、経費削減にも着手しました。働き方改革の一環でIT投資も積極的に実施しましたが、それ以上に経費の削減に努め、その結果、販管費は前期の30億2,300万円から当期は29億6,100万円となりました。

そして、売上高販管費比率は10.6パーセントから10.4パーセントへと低減に成功しました。

当期連結決算の状況(連結貸借対照表)①

貸借対照表の概要をご説明します。流動資産は164億300万円、固定資産は22億5,800万円、総資産は186億6,100万円となっています。この中で大きく動いているのが、その他流動資産です。

こちらは前期に余資運用の一環として取得した有価証券11億円を償還したことによるものです。

当期連結決算の状況(連結貸借対照表)②

負債資本の部を簡単にご説明します。流動負債は70億6,700万円、固定負債は10億500万円、純資産は105億8,800万円で、自己資本比率が56.7パーセントと、前期に引き続き健全経営を維持しています。

当期連結決算の状況(連結キャッシュフロー)

営業キャッシュフローは6億3,400万円の流入で、投資キャッシュフローも5億8,700万円の流入となり、財務キャッシュフローは3億3,800万円の支出です。

投資キャッシュフローの5億8,700万円の流入の要因は、先ほど申し上げた余資運用の有価証券の償還によるものです。また、財務キャッシュフローの3億3,800万円の支出は、株主のみなさまへの配当の還元によるものです。

当期連結決算の状況(受注残高)

足元の受注残高は、当期末で50億6,200万円と、前期の同時期に比べて17.8パーセント増加している状況です。

来期の見通し

業績見通しをご説明します。直近では、やはり新型コロナウイルスの拡散が危惧されますが、一方で海外の大型商業施設の出店計画、そして先ほど八嶋から申し上げました新規の注力分野、特に東京都での再開発計画案件の獲得を見込んでおります。

見通しとしては、売上高が315億円、営業利益が16億円、経常利益が16億4,000万円、当期純利益が11億円、一株当たり当期利益は108円6銭を見込んでいます。

配当計画

配当計画は、健全経営を維持するための適切な内部留保と、株主のみなさまへの還元の2つを鑑みて、配当性向は当期と同じく46.3パーセント、一株当たりの配当は当期に比べて5円増配の50円を予定しています。

中期経営計画スローガン

中期経営計画のスローガン「Brand-new SEMBA」。

企業理念

そして、企業理念「サクセスパートナー」、この2つを胸に、事業を推進してまいります。これからもよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございます。

質疑応答:シンガポールの伸長や大型複合商業施設の粗利率について

質問者1:質問を3つほどお願いします。1点目は、前期のシンガポールの伸びについてです。御社はもともと歴史的にイオンとの関係が深いですが、このあたりはイオン以外ではないかと思います。もう終わっている部分ですので、できれば具体的な名前などをおうかがいしたいと思うのですが、いかがでしょうか?

2点目は、受注残高のところです。専門店の伸びが高くなっていますが、この背景として、専門店は当期、消費税対応していたということなのでしょうか? それとも、たまたまなのかというところです。

3点目は、海外、そして中期的に流通や小売以外を伸ばされていくという目標ですが、大型複合商業施設に比べて利益率はどの程度なのか、将来のところも含めてお願いします。

八嶋:まずは海外についてですが、先ほど東南アジアを成長のドライバーにしたいというお話をしました。ただし、東南アジアといっても、一つ一つの国を見ると、ずいぶんまだらな状況です。

その中で、今後はベトナムやカンボジア、また今はミャンマーの話も進めていますが、このあたりでは、ショッピングセンターがとても待望されているエリアです。

私どものメインクライアントのイオンモール様とともに、ベトナム、マレーシア、ミャンマーといったところで、ショッピングセンターを中心としたビジネスを展開していきたいと考えています。

シンガポールについては、もはや大型ショッピングセンターの時代ではなくなっており、いろいろと特徴的なデザインが施されたお店がたくさん生まれています。そこで、このような状況下で私どものデザイン力を使って、お役に立っていきたいという考えを持っております。

次に、専門店のお話です。今のお話とも重複しますが、やはりマーケットの中で個性や特徴を持ったお店が支持されているのではないかと考えています。結果論ですが、ジェネラルなものを売っているチェーン店が割と弱くなり、個性のある専門店が伸びている状況です。

このような中、私どもとしてはきちっと収益があげられるお客さまとお仕事をしていくというところから、結果的にそのように見えてしまうのではないかと思っています。

3つ目のご質問は、粗利率ですね。こちらは曽我からお話しします。

曽我:市場分野別の粗利についてご説明します。先ほどご質問を頂戴した大型複合商業施設では、平均で10パーセントから12パーセントといったところです。これに対して、新規の注力分野は15パーセントから17パーセントと、総じて利益率が高い状況です。

質問者1:そうすると、シンガポールは大型商業施設ではなく、レストランのような小さいお店の集合だったということでよろしいでしょうか?

八嶋:そのとおりです。

質問者1:海外の利益率は、足元の実績と今後の計画はどのようになっていますでしょうか?

八嶋:現状は、まだ国内よりも高くなっています。今後も、もちろん高い利益率を維持していきたいとは思っています。高い対価がいただけるというのは、私どものデザインの価値をどれぐらいありがたいと思っていただけるかということでして、ソフトの値段なのです。

施工の部分は、私どもが出ていってもローカルの施工業者を使って工事するしかないため、そこで日本の会社が大きな収益を得ることはできません。やはり、私どもが提供するソフトの力をどれだけ高く買っていただけるかにかかっています。

そのような意味でも、もっとデザイン経営に力を入れてブランドを高めていくことを進めていかざるを得ないということです。

質疑応答:「BIM」の導入状況やメリットについて

質問者2:20ページのVRやARについてです。これは現状、試験的な導入なのでしょうか? それとも、すでに案件の半分ぐらいで使われているツールになっているのでしょうか?

またその効果について、施主さんが「実際にできてみたら思っていたものと違う」ということで発生するような手戻り工事が減って、採算が改善するような効果は出ているのでしょうか?

八嶋:BIM推進室を立ち上げたのは当期の後半ですので、まだ端緒についたところです。私どもとしては、今おっしゃっていただいたように、お客さまとの打ち合わせの中で発生する行ったり来たりの手戻り感のところで、今までは修正があるたびに図面を大掛かりに修正しなければならなかったのですが、BIMでは比較的ハンディに対応できます。これによって業務のスピードがアップし、コストが大幅に抑えられることは確信しています。

先ほどご覧いただいたデモの映像は、実際の海外のショッピングセンターの構想です。私どもにとってもお客さまにとってもそうなのですが、クライアントも関係者が多い場合はわざわざ現地に行かなくても「このようなつくりになっています」というものを、臨場感をもって見ていただくことができます。

お互いに、図面よりも誤解や勘違いが最小限にとどめられるのではないかと思っています。実際に海外では、ゼネコンを中心にかなり「BIM」を使っており、むしろ海外事業のほうが入りやすいというのが実際のところです。

質疑応答:現在の受注環境やインバウンド減少の影響について

質問者3:当期の上期は苦戦したのですが、受注と受注残はけっこう増えていて、下期にその消化が進んだかたちになっています。期末の受注残が前期比では増えていますが、中間から比べると消化が進んだ分だけ少し減っていると思います。

このあたりで、今の受注環境をどのように見ればよいでしょうか? インバウンドの減速感なども出てきているため、投資に二の足を踏んだりする部分も出てくるのではないかと思いますので、どのように見ているかを教えてください。

八嶋:新型コロナウイルスの拡散によって悲観論が出てきたのは、本当にここ1週間から2週間のことだと理解しています。いろいろなイベントの中止といったニュースが日々入ってきますが、現時点では、我々の特定のクライアントと話していたプロジェクトの中止や延期といったニュースは入ってきていません。

ただし、おっしゃったように、目下インバウンドの売上が急激に落ちています。さらに内需と言いますか、日本人が消費するところも、この1週間から2週間の動きの中で、特に飲食を中心に相当大きな打撃を受けるのではないかと予想しています。よって、今後の推移は注視していくしかないと思っています。

質問者3:中国では、イオンモールのかなりの施設でフルに営業できていない状況だと思います。そのあたりの影響はいかがでしょうか?

八嶋:上海の現地法人から聞いているところでは、サプライチェーンに問題があり、物資はそう豊富ではないとのことです。中国では自宅謹慎がスタンダードになっており、スーパーマーケットとコンビニの類は政府から優先的に営業を続けるように指示を受け、またサポートを受けているという状況で、売上は非常によいと聞いています。

ただし、具体的な数字等々の情報は、私どももまだ得ていません。

質問者3:最後に、どうしても過年度のトレンドとして、粗利率が少し下がってきたと思います。受注残であったり、現在取り組んでいる部分は、従来よりも採算のいい部分を取りに行っているということで、粗利率の部分では当期がボトムで、今期は反転する方向で見ているということでよいでしょうか?

八嶋:経営改革がこの中計からということで、おそらく当期の上期は、まだそのあたりを実行しておらず、生かされていなかったということです。下期から徐々に改革の効果が表れてきているのではないかと思っています。

今期が正念場になりますが、実際に当期の上期をボトムとして、営業利益率をしっかり確保して上げていくことを経営指標にしたいと思っています。

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