海外投資家が株価の戻りにあわせてしっかり売ってきた

2016年6月第1週(5月30日-6月3日)の投資部門別株式売買状況が日本取引所グループから発表されました。気になる動きがありますのでご説明します。

この週の相場を振り返ると、前週末に1,349.93で終わったTOPIXが5月30-31日にかけて連騰し、高値1,380.88をつけましたが、6月に入って調整が進み1,337.23で終わりました。

さて、この週は海外投資家が2週連続で売り越しました。5月第1週に▲3,143億円売り越しましたが、最近ではこれに続く規模の売り越し▲1,462億円になりました。株価上昇局面でしっかり売ってきているという印象で、大変気がかりです。

主要な買い手は事業法人

買い手で目立ったのは事業法人で、買い越し額は+1,150億円でした。6週連続の買い越しになっています。5月に入り買い越し額も緩やかな増加基調にあると言えます。

むしろ問題は、事業法人以外に目立つ買い手が不在なことです。以前は信託銀行や個人が下げ局面で積極的に買っていましたが、最近は大変控えめな動きになっています。

新たな買い手を待望する

この週の材料を復習すると、日本は消費税増税の延期を決め、米国では早期利上げ観測が高まっていました(これが変わったのは週末の5月の雇用統計を見てからです)。

米国の利上げは、ドル資産の要求利回りを高めることから株価にはマイナスの面がありますが、米国の景気の足取りの確かさやドル高を示唆するというプラス面もあります。つまり、この週の材料を考えるとそれほど悪い環境ではなかったと思われます。

その中での海外投資家の戻り売り姿勢というのはやはり気になります。

事業法人の買いには自社株買いが多く含まれていると思いますが、ここは、ぜひその現金をM&Aも含めた事業投資に振り向け、新しいストーリーを投資家に語り、信託銀行・個人・投資信託などの買い越しが増えていくような循環を作り出してほしい局面です。

日本はこれから株主総会のシーズンに入りますので、しばらく大きな動きは出ないでしょう。しかし、その後は、海外投資家が日本株を売ることを躊躇するような新しいストーリーが始まることを期待したいです。その時には、事業法人以外の積極的な買い手も登場してくれるはずです。

 

LIMO編集部