紙オムツに使われている化学素材とは

紙オムツメーカーには、ユニ・チャーム(8113)、大王製紙(3880)など四国を基盤とする企業が多くあります。これは、四国の豊かなパルプ資源を赤ちゃんの尿を吸収する素材として商品がスタートしたのが始まりです。

その後、高吸水性樹脂(以下、SAP)が開発され、パルプの消費量を抑えた現在の紙オムツが登場することになりました。SAPには、それ自身の重さの数十倍もの尿を吸収してジェル状に固める性質があるため、SAPを吸収体として使用する紙オムツが一気に主流となったのです。

SAPは石油を原料に作られるアクリル酸と苛性ソーダから製造されます。生産には吸収率、保水率などの微妙な技術が必要とされ、これに長けた日本メーカーが世界をリードしています。

なぜ株式市場で高吸水性樹脂が注目されるのか

日本は既に少子高齢化の時代に突入しているため、赤ちゃん用紙オムツの需要は伸び悩んでいるのが現状です。しかし、今後はさらなる高齢化に伴い、大人用紙オムツの需要が劇的に増える可能性が指摘されています。

国内の生産枚数を見ると、依然として赤ちゃん用が大人用の2.1倍(2015年実績)の規模となっています。ただし、大人用製品のSAPおよびバックシート素材の単位当たり使用量は大赤ちゃん用の数倍もあるため、大人用オムツのSAP総使用量は赤ちゃん用と互角との見方もあります。

※バックシート:紙オムツの外側表面材料

最近では訪日観光客による日本製紙オムツの“爆買い”も話題になっていますが、これは日本製の紙オムツの品質・安全性が世界的に評価されている証左であると言えるでしょう。

他方、中国での1人っ子政策の見直し、新興国(インド、東南アジア、中近東諸国等)での人口増加、さらには欧米、中国、日本などで急速に進行する高齢化による大人用オムツの需要が上乗せされる見込みです。

ちなみに、1人当たりGDPが3,000ドルを超えると紙オムツの普及が進むとの分析もあるようです。こうした状況を踏まえると、紙オムツおよび関連材料の世界市場は、少なくとも2020年まで成長し続けると言っても過言ではないでしょう。

アナリストが注目するポイントと関連銘柄

SAPの世界市場は2015年(暦年)で約230万トンと見られ、今後も年率+6~9%の成長が見込まれます。仮に年率+8%で成長すると、2020年には330万トン以上の需要が見込まれることになります。

他方、世界の供給能力は2015年末で350万トン弱と推定されているため、現時点では供給過剰の状態です。2015年下期以降、SAPメーカーの株価が下落し続けている背景には、こうした供給過剰によるSAP出荷価格の低下で収益が悪化すると懸念されていることがあると考えられます。

しかし、世界トップクラスの紙オムツメーカーは、価格が安いからと言って後発の新興国SAPメーカーから調達はしません。訪日外国人がなぜ日本で紙オムツを“爆買い“するのかを考えれば、答えは自ずと明らかでしょう。したがって、実質的には現時点で需給関係がアンバランスということはなさそうです。

2017~2018年には日本触媒(4114)、住友精化(4008)、三洋化成工業(4471)(SDPグローバル)が中心となって年産能力を+29万トン増やす計画となっていますが、この程度の増強では2020年時点では供給不安懸念も予想されます。

他方、紙オムツのバックシートの材料である不織布(ポリプロピレン製)は、現時点でも需給がひっ迫している模様です。それを物語るかのように、トップメーカーの三井化学(4183)は最近、国内の生産能力を大幅に引き上げる計画を公表しています。なお、東レ(3402)は紙オムツのバックシート(不織布)で世界最大手です。

前述のように、新興国での人口増加や先進国で進む高齢化により、今後も世界の紙オムツ需要は着実に増加すると見られます。中長期的視点で考えれば、こうした企業の株価を下落した局面でコツコツ拾うのも一考に値するかもしれません。

 

LIMO編集部