父が子どもに手をあげるなんて想像もしていなかった筆者は、殴った理由を問い詰めました。すると、父は「自分の大切なマンガ本に触ったから」と。父が発した幼稚すぎる理由と行き過ぎた行為に怒りを覚えると同時に、なんだか覚えがあるような不思議な感覚を味わったのです。

意識の奥にしまい込んでいた幼少期の記憶

筆者の性格を言い表すなら、まさに「猪突猛進」。これまでの人生、目の前の課題をクリアするために夢中で生きてきたように思います。常に前しか向いていないので、過去に起こった嫌なこともすぐに忘れられるのが長所です。

ところが、「マンガ本に触った」という幼稚な理由で孫娘を殴った父を見た一件から、忘れるというのは記憶から完全に消えることではなく、“脳の奥にしまい込んでいるだけで、ちゃんと残っている”ということを思い知らされることに…。

筆者の幼少期、母はバリバリのキャリアウーマンだったため、土日に父と子どもたちだけで過ごすこともありました。記憶をたどると長女である筆者が6歳くらい、妹たちが4歳、2歳くらいまでの出来事だと思います。

駄々をこねた妹をかかえあげ、玄関から外に投げ飛ばす父…

何かを嫌がる妹を風呂場に連れて行き、妹の顔を浴槽に沈める父…

暑くてたまらない競艇場の駐車場の車内。ちょっと用事があると言って何時間も帰らなかった父…

それまで、一度も思い出すことのなかった恐ろしい記憶が、どんどん蘇ってきました。そんな父の行動について、下の妹の記憶には残っていないようですが、筆者と年子である上の妹はいくつか共通する記憶があると言います。